戦士職が転移したら、困った事になりそうですよね。
――これはまだ、転移して間もない頃のお話し。
まだアインズがモモンガさんだった頃。
「モモンガさん、俺やばいかもしれない」
「な、なんですか?どうしたんですか」
NPCたちに聞かれてはマズいと、円卓の間にモモンガさんを呼び出した。
二人は膝をつきあわせてごにょごにょと話す。
円卓の間の外には護衛がいた。しかし、部屋には魔法がかけられており、外には話し声が聞こえない。
それでも大声で話す事は、はばかられた。
だから内緒話をするように顔を近づける。
モモンガはこっそりドキドキした。
ちなみにゴーナイトもドキドキしている。
「あのね、俺って戦士職じゃないですか」
「そうですね」
「でもね剣の振り方を知らないんですよ、やばいですよね」
「あ〜、なるほど。それは問題ですね」
モモンガは納得した。自分というマジックキャスターとは違い、ゴーナイトは剣を扱う。
その剣の扱い方を知らないとなれば、問題だろう。
「それで、相談なんですけれど」
「はい」
「コキュートスに剣の扱い方を教えて貰えないかなって思いまして」
「それはいいですけれど……ゴーナイトさんが剣の扱い方を知らないという事がバレたら、問題になりませんか?」
「ええ。なので俺ちょっと考えました。――知らなかったのではなく、忘れたことにすれば良い……と」
――――――
円形闘技場。
アウラとマーレはいない。円形闘技場の広場に俺とコキュートスがいる。
俺はコキュートスの前で剣を軽く振った。すると、コキュートスは顎を鳴らした。ちょっと怖くないか?それ。
「どうだった?率直な感想を聞かせてくれ」
「……僭越ナガラ、良イ太刀筋カト」
「それだけだろ?」
「……ハイ」
「大丈夫だよ。コキュートス、お前が感じたことは正しい。私はギルド内の戦士職ランキングでは下位だ。武人建御雷さんの攻撃をかわし続けたとはいえ、防御は紙の様だし、攻撃力もない。運が高いから、クリティカルヒットはそれなりに出せるがな」
「ゴーナイト様……」
「次は手合わせだ。現在の私の能力に異常がないか確かめるためにも、手を抜く事は許されない。頼むぞ」
「御意」
結果はコキュートスの勝ちだ。
うん、なんら不思議はないな。コキュートスの装備の中には俺対策の物もあったし。多分、建御雷さんが渡しておいたんだろ。
手合わせも終わった後にその予想を話してやると、コキュートスは納得したようだ。
「私ガ勝ッタノハ、武人建御雷様ガ助ケテクダサッタカラナノデスネ」
「そうだな……。そうとも言える。だが、アイテムの力だけではなくて、自身の能力や判断力もあって私に勝ったのだ。その事を誇れ」
「ハイ!」
「ところで、コキュートス。私の動きに何か感じることはなかったか?率直に頼むぞ」
「……ソノ、動キガマルデ初心者デシタ」
「やっぱり?」
俺がうんうんと納得していると、コキュートスは驚いた雰囲気をかもし出した。
あらかじめ用意しておいた理由を言う。
「実は転移の時に、これまでの経験というか……記憶がおぼろげになってしまっている部分があってな。簡単に言うと、剣の振り方を忘れてしまった」
「ナント!」
「だから、コキュートス。俺に稽古をつけてくれないか?」
「至高ノ御方ニ、私如キガ教エル事ナド恐レ多イ事デス」
「でも、お前がやってくれないと私はこのままだぞ?……コキュートス。どうか、私を助けてくれ」
願われるように言われて、拒否はできない。
このまま、至高の存在を曇ったままにもできない。
コキュートスは頷いた。
「……カシコマリマシタ。コノコキュートス、至高ノ御方ノ剣トシテ、ゴーナイト様ニ剣ヲオ教エシマショウ」
それから、コキュートスが稽古をつけれくれるようになった。
その輪の中には、冒険者として出ていくモモンガさんも参加するようになった。