ネクロフィリアの未熟児   作:紅絹の木

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お友達になりたいな

 

 

 ツアレに化けたエードラムは誘拐された。

 予定通りだ。

 

 本物のツアレは屋敷の地下室に、俺と俺についている護衛たちと一緒に隠れていたのでバレなかった。

 というか、地下室の扉を幻惑で隠しておいたので、簡単には見つからないのだ。

 

 誘拐犯たちが屋敷から出て行く気配を感じつつ。充分な距離があいてから、俺たちは地下室を出た。

 

「よし、もういいぞ。皆、ついてこい。ツアレは隊列の真ん中な」

「はっ」

「か、かしこまりました」

 

 俺が先頭を歩く。次にシモべ、ツアレ、シモべといった感じで、ツアレをサンドイッチする。

 敵が屋敷にいないのはわかっているが、念の為な。

 

 当たりをつけた、ある部屋に入る。灯りはつけない。屋敷の主人であるセバスたちがいないのに、明るかったら変だろ?

 部屋のテーブルには置き手紙があった。

 俺は上座のソファに座り、手紙を読んだ。もちろん、マジックアイテムの力を使って読む。

 ご丁寧に時間と場所を指定してきた。

 

「……うん、またまだ時間に余裕があるな。もうしばらくは、セバスたちも帰ってこないし。ツアレ、こっちに来て座れ」

「し、しかし……」

 

 断るツアレに、シモべたちがヘイトを向ける。ツアレはまた体を縮こませた。俺は片手を上げた。緊張した空気が緩む。

 

「いいから、おいで。立ってても意味ないんだし」

 

 優しく声をかけてやると、やっとツアレが動き出す。

 か細い声で「失礼します」と言い、俺の向かいのソファに座った。

 

「うん。それでいい。楽にしてていいからな」

「はい……」

 

 良し。俺ってば、セバスが拾った子の面倒をちゃんとみれてる。上出来じゃん。

 機嫌が良くなった俺は、小さく鼻歌を歌いながらセバスたちを待つ。

 

 あ、そうだ。一応報告しておこう。

 〈伝言〉を発動し、恋人に繋いだ。そして、エードラムが誘拐されたことを伝える。

 

『では、俺たちの可愛い子供たちに手を出した愚か者共に、鉄槌を下しましょう。デミウルゴスを責任者として、セバスを支援する部隊を編成させます』

「はい。よろしくお願いします。では俺はセバスと合流次第、小麦を持って一旦ツアレとナザリックに帰るので」

『はい。待ってますね』

「すぐ戻ります。ではでは〜」

 

 そこで〈伝言〉を解除した。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

「おう、おかえり」

「ただいま戻りました」

 

 セバスとソリュシャンが帰ってきた。二人は俺に膝をつこうとしたが、それを止める。

 

「それよりも、セバス。お前宛てに手紙を預かっている」

 

 誘拐犯からの手紙をセバスに渡す。

 セバスはマジックアイテムを起動させて、読んだ。顔をしかめた。

 

「そこに書いてある通りだ。ソリュシャンと一緒に行ってこい。本当にツアレが攫われた気持ちで行くんだぞ?それからソリュシャン、いつもの姿に戻っていいからな」

「かしこまりました」

「かしこまりました」

「それじゃ、俺たちはナザリックに帰るか。セバス、ツアレは客室に案内しておく。世話は一般メイドたちに頼んでおくから、大丈夫だろう。他に何かあるか?」

「いえ、ございません」

「良し。アインズさんに〈転移門〉を発動してもらおう」

 

 また〈伝言〉を発動する。

 横目でチラリと見ると、セバスがツアレの手を握ってあげていた。熱いね。

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 ナザリックに帰還して、ツアレをメイドたちに預けた。

 それから大至急、冒険者ゴーンとしてエ・ランテルに向かう。ゴーンの代名詞である白い鎧に“早着替え”を付与しておいて良かった。すぐにゴーンに変身できる。

 

 なんでも名指し依頼してきた貴族から、連絡があったらしい。なので、一度エ・ランテルの拠点に〈転移門〉を繋いでもらった。

 そして、貴族から送られてきたマジック・キャスター二名に従い、俺たちは空を飛んでいる。〈浮遊板〉に乗って。

 位階は低いけれど〈浮遊板〉便利だなあ。ゲームだとこんな使い方はできない。

 

 

 

 

 王都上空、数時間ほど遅れてやっとたどり着く。

 そして、モモンが気づいた。

 

「待て!見ろ!まただ。あそこで魔法と思われる輝きがあったぞ」

 

 貴族の元からやって来た二人のマジック・キャスターは、多分といった感じで賛同する。

 

「……確かに……魔法の……ようですね」

「間違いないですよ」

 

 俺がそう言うと、モモンも「ですよね」と確信を持った。

 

「あそこがどこか、わかりますか?」

「あの場所は襲撃をかけるはずの八本指の拠点の一つです」

「なるほど。間に合わないと思ったが、少しは役立てそうだ」

「モモン。俺が飛んであなたを運ぶから、合図してくれ。そこで落とす」

「了解した。ではゴーン、ナーベ、行くぞ」

「はっ」

「お二人とはここでお別れです。乗せてくださってありがとうございました!」

 

 二人のマジック・キャスターと別れて、俺とナーベは空に浮く。そして、俺はモモンの両腕を掴み、その巨体を持ち上げた。

 

 

 

 

 

 戦闘していたのは、仮面をつけたデミウルゴス。そしてこちらもまた仮面をつけた知らない女性――?女の子?だ。

 彼女の離れた所には二人の――やっぱり女性の死体があった。デミウルゴスがしたのかな?

 そんな事を考えていると、仮面をつけた女性が声を張り上げた。

 

「漆黒の英雄!!私は蒼の薔薇のイビルアイ!同じアダマンタイト級冒険者として要請する!協力してくれ!」

「――承知した」

 

 モモンがデミウルゴスから女性を隠すように立つ。

 うーん、そこだとモモンとデミウルゴスの戦闘に巻き込まれると思うんだよね。

 俺はナーベよりも素早く地面に落ちる。そして、女性の近くに大きな音を立てて、立った。女性は大変驚いた。

 

「誰だ!?」

「驚かせてすみません。チーム漆黒の仲間で、ゴーンと申します」

「……聞いた事がない」

「合流してから日が浅いので、こちらでは話題に上がっていないかもしれませんね」

 

 話を聞いていたモモンが、俺を紹介してくれる。

 

「ゴーンは漆黒の仲間で間違いありません。彼と一緒に下がっていてください。私はデ――デーモンと戦います」

「しかし……」

「ほらほら、下がりましょう。大丈夫です。モモンはとっても強いので、負けたりしませんよ」

 

 イビルアイさんと数メートルほど下がる。

 彼女はモモンの姿を見る為なのか、俺の隣に立つ。

 俺たちがちゃんと離れた事を確認してから、二人は話し始めた。情報交換である。

 

 デミウルゴスはヤルダバオトと名乗っている事。

 モモンは貴族の依頼をうけて王都に来た事。

 デ――ヤルダバオトの目的は、王都に内にあるらしい悪魔を召喚できる強大なアイテムの回収である事。

 モモンとヤルダバオトは戦うしかない事。

 

 強大なアイテムって、ナザリックから持ってきた物なのかな?

 悪魔召喚アイテムって、悪を愛したウルベルトさんが好きそうなアイテムだよな……。俺、ウルベルトさんの事、全然知らないけれど。

 

 そうこうしている内に、モモンとヤルダバオトの戦いが始まる。

 戦士化の魔法をかけているゆえに、体の動きは元々の前衛職と遜色ない。コキュートスとの練習にも出ている為、剣を振るう動きも鮮やかだ。

 何よりモモンのこれまでの努力あってこそ、それらは輝いている。

 

「すごい……」

「でしょう?モモンは素晴らしいんですよ」

 

 モモンの努力を褒められた気がして、俺は声を弾ませた。

 それに対して呆れたようにイビルアイさんが言った。

 

「……あなたはどれだけ凄いんだ?」

 

 ――瞬間、イビルアイさんを殺さんばかりの圧が、空から降り注ぐ。

 イビルアイは弾けるようにして空を向く。

 

「!?」

 

 その圧を、片手を上げて制した。

 圧の根源は、ゆっくりと空から降りてくる。

 

「ナーベ、ダメだよ」

「しかし」

「ダメ」

「……かしこまりました」

 

 ナーベはやっと圧をかける事を止めてくれた。

 うんうん。それで良し。

 

 ゴガン、という音がして、ヤルダバオトが大きく吹っ飛んだ。石畳の上を滑る。

 モモンから数メートル後退した辺りで、彼は服のホコリを払った。

 

「お見事です。あなたのような天才戦士を相手にしたというのは私の唯一の過ちかもしれませんね」

 

 モモンは自分の背丈よりも少しだけ短い――常人からすれば十分な――大剣を、石畳に突き刺した。

 そして、ヤルダバオトに「まだ力を隠しているだろう?」と言う。

 それを聞いたイビルアイさんが、聞いた事がない言葉を発する。

 

「もしや……神人か?」

 

 ――この子とは、仲良くなっていた方がいいな。

 ゴーンは横目でイビルアイを観察した。

 

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