ネクロフィリアの未熟児   作:紅絹の木

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終幕・ヤルダバオト

 

 

 デミ――じゃない、ヤルダバオトとの決戦にて。

 モモンとヤルダバオト。

 俺と大量の悪魔たち。

 ナーベはプレアデスの三名と。

 イビルアイさんが、プレアデスの中でも真面目な二人と。

 

 それぞれ戦闘が決まった。

 モモンさんとヤルダバオトが、離れた場所で戦闘を開始する。俺は挑発スキルでザコ悪魔のヘイトをガンガンに集めて、切っては切りまくる作業に取り掛かった。

 

「私が他の悪魔を抑えている間に、メイドたちは頼んだぞ!」

「わかった!こちらは任せろ!」

「かしこまりました」

 

 なんかイビルアイさんの口調が素に戻っているようなので、こちらもゴーンの素の口調で話す。

 モモンも、なんか素の口調だったし、いいかなって思った。

 

 どのくらい時間がたっただろうか。地震がおきて、ちょっとびっくりした。

 それでもスキルは控えめに使って、悪魔たちを切ったり投げたりしていれば、ヤルダバオトがこちらに吹っ飛んできた。あらら、派手だね。でも、傷だらけだ。心が痛むなあ……。

 

 遅れてモモンが登場する。こちらの漆黒の鎧も傷だらけだ。

 あたかも二人の間に死闘があったようだ。

 

 その死闘は続く。

 

「モモン!」

「こちらは問題ない!あと少しだけ、踏ん張ってくれ!!」

 

 俺、手伝いに行かなくていいの?って感じで呼びかける。すると「筋書き通りです。そのままでお願いします」と返ってきた……多分。

 そういうことだと納得して、俺はまた悪魔たちをほふる。

 

 やがてその時は来た。

 突然、悪魔たちが動かなくなった。俺の動きも止めて、構えたまま警戒する。

 モモンとヤルダバオトの会話が聞こえてきた。

 

「本当にあなたは、そしてあれだけいた悪魔たちを倒してしまったあなたの仲間も、お強い」

「お前もな、ヤルダバオト」

「それでどうでしょう。提案があるんですが?……この辺りで退きますので、勝負はこれぐらいにして、お互い手を引きませんか?いえ、より正確に提案するのであれば、私は今回はこれで手を引きますので、あなたも追撃を止めてほしいと言うところですか」

「ふざけるな!」

 

 イビルアイさんが激高した。

 ちょっと黙ろう?アインズさんとデミウルゴスが話し合っているんだから。

 

「構わない。いいな、ゴーン」

「私も、構わないよ」

「そんな……!?なぜ!」

 

 イビルアイさんの疑問に、ヤルダバオトはやれやれと肩をすくめる。そして言うのだ。考えればわかるだろう、と。

 

 ヤルダバオトは、悪魔の群れをいつでも王都全域を襲えるように待機させているらしい。

 準備いいな。

 

 王都全域が人質に取られていては、仕方ない。

 という訳で、ヤルダバオトはメイド五人と、辛うじて生きている残りの悪魔を引き連れて、転移魔法で消えた。

 

「行ったな……」

「そうだな」

 

 しばらくザコ悪魔の顔を見たくないや。そう思って頷く。

 

「うわああああああああああ!」

 

 うお!びっくりした!

 イビルアイさんは走って、モモンに抱きついた。

 ――おい。

 俺はモモンと、彼に抱きつくイビルアイさんに背を向けた。

 

「やった!勝った!勝った!流石はモモン様だ!」

「……離れてくれ」

 

 殺気を抑えるのに集中する。えー?俺こんなに嫉妬深い奴だったかなあ。あ、でも父さんがいつもヤキモチやいていたなあ。母さんと目が合った男の人を、敵視してた気がする。

 遺伝かな……??

 

「ゴーン、ゴーン」

「あ、え、なんですか?」

 

 いつの間にか、モモンが後ろに立っていた。

 振り返ってモモンの顔を見る。……なんか、覚悟決めちゃってる??

 

「……ハグしてくれ」

「は?」

 

 一瞬、空白があった。

 

「――私は、あなたとの未来を守りたくて、死力を尽くした。ハグの一つでもしてくれたっていいんじゃないか?」

「……は?」

 

 今度はイビルアイさんの声が聞こえた。

 俺は、慌ててモモンの口元に手の平を当てた。そして小声で言う。

 

「何言ってるんですか?!ハグなんて、ねえ!??」

 

 そんな態度でいたら、俺たちの関係バレますよ!!!

 咎めようとしたら、モモンの口元に置いた俺の手に、彼の手が重ねられる。

 

「愛しています」

「――モモ、ン」

「愛する人を不安にさせるなんて、恋人のする事じゃない。だから、隠すのはやめます」

 

 モモンの顔が近づいて、カツンと金属同士が当たる音がした。

 ――クローズドヘルム越しに、キスされたのだ。

 それからギュッと、抱きしめられる。

 

 俺は嬉しくて、戸惑って困惑した。

 誤魔化さなくていいのか?隠さなくていいのか?

 

 視界の端で戦士長が見える。冒険者に兵士たち、それに蒼の薔薇の面々。

 後戻りはもうできなかった。

 

 俺は喜びに身を任せて、モモンを抱きしめ返した。

 

 

 勝利は、静かだった。

 

 

 

 

 

 

「……はああああああ!???」

 

 

 そうでもなかった。

 

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 

 

 それから五日間。

 王都にある冒険者の宿の中でも、最高ランクの宿屋を紹介してもらう。そこに宿泊した。

 部屋はロイヤルスイート。モモン、俺、ナーベの三人が一緒に泊まれるからいいね。

 宿屋の代金は払っていない。レエブン侯が出してくれたらしいのだ。ありがたく受け取らせてもらおう。

 

 ――モモンとの関係を公表したら、好奇の眼差しで見られるかと思っていたが、それは案外少なかった。

 ほとんどの人が、冒険者を筆頭に、兵士も蒼の薔薇の面々も「驚いたな」って話すだけで、男同士である事を蔑んでこない。

 ……まだ出会っていないだけかなあ?

 

 

 

 ボロボロになった装備は、王都の鍛冶師たちに超特急で直してもらった。装備が直ったので、エ・ランテルに帰る。

 

 王都外れ。

 朝。快晴。太陽は眩しいし、空は雲がなく青い。

 帰りも〈浮遊板〉に乗る事になった。レエブン侯のはからいだ。ありがたく乗らせてもらう。

 王都に来たときと同じ魔法詠唱者に、送ってもらえるようだ。二人に手を振ると、振り返してくれた。

 

 見送りには、レエブン侯と蒼の薔薇のメンバーが来てくれた。

 やっぱりイビルアイさんからは、凄く視線を感じる。居心地悪いや。

 

「今回は非常に世話になりました」

 

 レエブン侯が感謝を述べて、俺たちは軽く頷く。

 

「陛下もあなた方に直接お礼を申し上げたかったそうですが……」

 

 それはね、宮廷の礼儀作法なんてわからないので、お断りさせていただきます。

 王様と会うとか胃が痛くなるイベント、回避したいよ。本当に。

 

「王、および第二王子、第三王女より連名で、モモン殿に対する感謝の書状が届いております。それと王直轄領に関する通行税の一切を免除するという証明板。更には王より短剣を頂いております」

 

 レエブン侯は短剣をモモンに渡した。モモンは後ろに立つナーベに渡した。

 なんでモモンの功績が一番大きいかというと、一番ヤバイ敵だったヤルダバオトを退けたからなんだよね。

 俺とナーベ、それからイビルアイさんは二番目って事になる。

 

 蒼の薔薇の面々が何か話しているが、レエブン侯との会話に集中しているため、あまり聞こえない。

 

「ではそろそろ私たちは行くとしよう。レエブン侯。いろいろと感謝します」

 

 レエブン侯に挨拶し、蒼の薔薇に挨拶する。

 そして俺たちは〈浮遊板〉に乗った。

 それはゆっくりと浮かび上がり、空を滑り出した。

 

 

 

 王都がぐんぐんと小さくなっていく。

 モモンが言った。

 

「今回も大変だったな」

「そうだね。結構疲れたよ」

「褒美が欲しいな」

 

 モモンがこちらをじっと見てくるので、私は頷いた。

 

「あるよ」

「ほう?」

「家に帰ったらね。おいしいごはんが待ってるよ。ね、ナーベ」

「はい。すぐに準備いたします」

「――食事か。楽しみだよ」

 

 ふふ、アインズさん「俺、食事できないんだよな〜」って考えてるだろうな。

 食べられなくても、楽しい思い出になると思うから、楽しみにしててね。

 

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