ネクロフィリアの未熟児   作:紅絹の木

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帝都

 

 ぜーんぶ上手くいった!

 

 冒険者・チームモモン対ヤルダバオトたちの戦いで、俺たちの評判は鰻上り!貴族とのパイプもできたし、いい事あるよね!

 

 王国を裏から牛耳っていた反社会組織を手に入れたから、これからもっと情報収集や情報操作がしやすくなるぞ!

 

 それに……それに、モモンとゴーンが付き合っていると、モモンが公表してくれた。恋人と隠れずデートできるのは嬉しい。

 例え、それが潜入中であっても。俺は浮かれてしまう。

 

 なので、俺は考えた!

 モモンガさんにプレゼントを贈ろう、と!

 さあ、皆でBBQだ!!

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 ナザリック地下大墳墓、地表部分。

 ちょうど昼飯時。俺が主催者となり、アインズさんやデミウルゴスたち――作戦の参加者たち――を、招待した。

 

 誰でも参加できるわけではない。

 俺たちギルドメンバーが創造したNPCのみが、中心だ。そして、お疲れ様会をBBQにしたのは、皆が食べられる食材が肉だったからだ。

 もちろん、野菜も焼くよ。ナザリックにある野菜も、品質が良い物ばかりだから、おいしいらしい。

 

 BBQの準備は、セバスを中心にプレアデスと一般メイドたちがしてくれた。

 皆に飲み物が行き渡ったところで、一段高く作られた台に上がる。瞬間、すべての視線がこちらを向いた。そして静かになった。

 緊張したが、傍にはアインズさんがいてくれた。心強い。

 持っていたグラスを回し、覚悟を決めて声を張った。

 

「皆、集まってくれてありがとう。今日は頑張った分、おおいに楽しんでくれ」

 

 拍手がおこる。

 俺はそれを片手を上げて、止めた。

 

「さて。食べ始める前に、紹介しておきたい新人がいる。セバス頼むぞ」

「はっ。ツアレ、こちらへ」

「は、はい」

 

 台の下、セバスの隣にツアレが並ぶ。

 おどおどしているが、恐怖にのまれてはいない。ちらちらとセバスの顔を伺っているのは、安心したいからだろう。

 

「こちらは、ツアレニーニャ・ベロインです。一般メイドとしてナザリック地下大墳墓にて働く事になりました」

「よ、よろしくお願いします」

 

 よし。練習通り言えたな。

 深々と頭を下げたツアレに対し、俺は拍手をおくる。

 続いてNPCたちからも拍手がおこった。

 よしよし。とりあえずはコレでいい。

 

「そう言うわけだ。皆……特に一般メイドたちはよろしく頼むぞ。皆の新しい妹になるからな。優しく、時々厳しく仕事を教えてやってくれ」

 

 ……一般メイドたちの表情に揺らいだものを見て、俺は言葉を続けた。

 

「――君たちが、俺たちにとって娘同然に可愛いのは、変わりないからな」

 

 そう言うと、一般メイドたちが頬を上気させて喜ぶ。

 うん、不安を拭えたならばよかった。

 

 紹介が終わったので、二人には下がってもらった。

 そしてグラスを掲げる。

 

「乾杯!」

 

 皆の声が重なった。

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 この時までは良かった。

 モモンガさんも、シモベたちも皆が機嫌良く過ごしていた。

 けれど、その後の集まりで……。

 

 デミウルゴスが厳かに言った。

 

「アインズ様、ゴーナイト様。私はナザリック地下大墳墓という国を作り上げることを提案いたします」

 

 この言葉で、俺たちはめちゃくちゃ悩む羽目になったんだ。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 結局、デミウルゴスの言葉通りにする為、チーム漆黒は帝国に入る。リーダーのモモン、美姫ナーベ、白金のゴーンだ。ゴーンは、最近マントを白色から黒色へと変えている。チーム漆黒の黒色を取り入れた為だ。

 

 今回の目的は、帝国の大魔法詠唱者“フールーダ・パラダイン”に会う事。会って、フールーダをナザリック側のスパイにする。

 シモベたちがもたらしてくれた情報を元によると、フールーダに自分たちのマジックポイント(MP)を見せれば、すぐに従うようになるだろうと言われた。

 

 そんだけ?そんなチョロい人なのか?

 

 俺たちは帝都をちょっとだけ観光してから、そのフールーダというお爺さんに会いに行った。

 

 

 

 アダマンタイトの冒険者として、フールーダさんを訪ねた。アポなしでも通してくれたところをみると、チーム漆黒の名声はこちらにも届いているらしい。

 俺たちはとある豪華な部屋に通されて、中で待つことになった。

 

 フールーダさんは、身支度を整えていたのだろう。

 二十分ほど待って後、その人はやって来た。

 

「(ん?)」

 

 入って来て早々、扉の前で立ち尽くすお爺さん。こちらをキョトンと見る様に悪意はない。けれど異変は見過ごせない。俺は少しだけ警戒した。

 

「――失礼。不躾でしたな」

「いえ。こちらこそ、失礼しました」

 

 フールーダさんが謝罪したので、こちらも謝る。警戒がバレていたようだ。圧が強過ぎたかな?

 お爺さんはモモンの前に座った。チラリとナーベを見ている。その目に欲はない。ただ、不思議そうだった。

 

「ふむ。ナーベ、そろそろ指輪を外したらどうだ?」

「はっ!」

 

 ナーベが探知阻害の指輪を外した途端、フールーダさんは腰を抜かした。

 何やらぶつぶつ言っている。

 今度はモモンが黒のガントレットを外して、指輪の一つを外した。

 

 お爺さんは泣き始めた。

 

「(え、ええー……)」

 

 まさか泣かれるとは思っていなかったので、めちゃくちゃ驚いた。

 大丈夫なのかと声をかけようとしたら、涙をそのままにお爺さんは片膝をついた。

 

 なにやらモモンを神様だと言っている。お、おう。

 そして平伏した。

 

「失礼と知りながらも伏してお願いいたします!」

 

 お爺さんは、魔法の深淵を覗きたいと言った。

 その代価に――全てを支払うと。

 

 モモンは、モモンガさんは鷹揚に頷いた。

 

「……よかろう。全てを差し出すというのであれば、私の知識はお前の物。望みを叶えてやろう」

「おお!おお!」

 

 お爺さんは、平伏したままモモンガさんににじり寄り、足の甲にキスをした。

 ――ナーベがすっごい嫉妬している、そんな顔をしている。

 

 フールーダさんの忠義がわかったところで、彼を椅子に座らせて、最初の命令を下す。

 まずは生贄をナザリックに送る事。フールーダさんは片手を胸に当てて、深くお辞儀をする。

 こうして、フールーダさ……フールーダとモモンガさんの禍々しい師弟関係が始まった。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 ナザリックに送る生贄たちは、ワーカーという冒険者から脱落した者に決まった。

 フールーダは準備の為に部屋を出ていった。俺たちも帝都に戻る。

 自己紹介はお互いにまだだ。フールーダが信用できると判断された後、俺を紹介してくれるってモモンガさんが言った。

 

 そして帝都の主要な箇所を巡る。

 俺としては闘技場が、一番気になる場所だったかな。

 ユグドラシルにも大会があって、プレイヤー同士が公式で戦いあったっけ。懐かしいな。

 

 フールーダに会ってから数日後。

 帝都の拠点である宿屋に、チーム漆黒を訪ねる使者が来た。とある貴族の使者だ。

 どうやら、ナザリックを調査する生贄……ワーカーたちの護衛してほしいみたい。

 

 モモンとアイコンタクトをとって、頷く。

 モモンはいくつか交渉した後、依頼を受けた。

 

 ナザリックの計画が順調に進んでいる。喜ばしいけれど、うん、モモンの心は荒れているだろうな。

 

 

 

 

 

 まだ太陽が上らない時間帯に、とある貴族……伯爵の敷地に俺たち冒険者は集まった。

 アダマンタイトはチーム漆黒のみ。他は金級の冒険者チームだ。……他所のチームはメンバーが多いな。少なくとも、メンバーが三人だけなのは漆黒だけだ。

 

 簡単な自己紹介を済ませた後は、早速仕事にとりかかる。まずは荷物をどんどん馬車の中へと積んでいく。

 

「……あの、荷物運びでしたら、私たちがしておきますよ」

 

 金級冒険者の女性の一人からそう言われた。

 俺はできうる限り優しく言った。

 

「やらせてください。……お邪魔じゃなければ、ですけれど」

「そんな事ありません!すごく助かります」

「それは良かった。では、ジャンジャン運んでいきますね!」

 

 重い荷物を率先して持ち、馬車へと入れていく。

 後ろでは「すごい怪力だ」「俺たちも負けていられないぞ」など言われている。

 ……もしかして、二人で持つような荷物も一人で持ってしまっていたかな!?怪力過ぎて怪しまれていないかな!?

 

 そ焦りはあっという間に沈静化する。

 冷静になった頭で考えた。

 

「(俺はチーム漆黒で最も強い戦士……という設定だし、怪力でもなんら問題ないだろう)」

 

 大丈夫!多分!

 

「ゴーン!ナーベ!」

 

 モモンが呼んでいる。

 

「はい、すぐに行きます!すみません、少し離れますね」

「重い荷物はもうありませんので、ゆっくりしてくださっても大丈夫ですよ」

「そうですか?ありがとうございます」

 

 俺は一礼してから、持ち場を離れた。

 

 

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