ネクロフィリアの未熟児   作:紅絹の木

24 / 29
生贄たち

 

「……何の為に依頼を受けるんですか?」

 

 それ、もう少し信頼関係を築かないと答えてもらえないやつー!

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 ワーカーたちとの交流は、上手くいった。

 モモンと、ワーカーの一人である御老公の手合わせのおかげで、こちらの強さは示せた。何というか打ち解けられたと思う。

 ワーカーたちの視線が、尊敬を含んだものに変化している。

 さすがモモン。英雄の演技も慣れたものだ。

 

 

 

 帝都から目的地までは馬車で移動する。

 ワーカー側と冒険者側で別れて馬車に乗り込む。

 馬車はスレイプニール(八足馬)という魔獣に引かれて、最近発見された遺跡に向かっている。

 遺跡……つまりナザリックに、だ。

 

 ワーカーたちは生贄なのだ。

 可哀想だとは思わない。必要な事だから。

 

 それよりもここ最近、モモンの機嫌は良くない。

 すべて終わった後、たくさん甘やかしてあげたいと思う。

 

 

 

 馬車を走らせて二日目の夜だった。

 その頃には好奇を含んだ視線を投げられるようになった。

 何でだ?変な行動はしていないと思うけれど……?

 休憩中にぼんやり考えていると、声をかけられた。

 

「どうした、ゴーン」

「モモン……その、何だかチラチラと見られている気がして」

「ああ、それは……」

 

 モモンが俺の腰に手を回す。

 

「私たちの仲が良いからだろう」

「あ、そうか」

 

 周りの視線が一気に集中する。

 恥ずかしくて、俺はモモンの優しい拘束から抜け出した。

 

「その、家に帰ってから……ね?」

「ええ。もちろん」

「――え?あの噂ってマジなの」

 

 誰かの呟きがはっきり聞こえたので、そちらを見た。

 ワーカーの一人、たしかヘッケランさんだったかな?

 彼は俺たちに気づいて、バチッと合った視線をそらす。そして、仲間の一人であるハーフエルフの女性に殴られていた。痛そうだ。

 俺はモモンから離れて、ヘッケランさんの方へ歩いた。ちょうど良い……つかず離れずの場所で止まり、声をかける。

 

「あの、どんな噂か教えてもらえませんか?自分たちの評判はきちんと知っておきたいのです」

「……なんて事ありませんよ。お二人が付き合っているという噂話だったんですが……本当だったんですね」

「――そうですね。モモンと俺は付き合っています。その他は、ありませんか」

「うーん……」

「あるんですね」

「ゴーン」

 

 さらに聞き出そうとして、モモンに止められた。

 モモンの方を振り向いて「どうした?」と聞く。

 

「その辺にしておけ」

「気になるんだ。ダメか?」

 

 こてりと、頭を傾けるとモモンは呻いた。

 

「ぐ……相手を困らせるものではない。さあ、今夜は早めに休もう」

「わかった。すみません、失礼しました」

 

 ぺこりと頭を下げる。

 相手方も、頭を下げた。ちょっとだけ引きつった笑みを見せている。

 就寝の挨拶を済ませて、帰ろうとした。

 モモンが一緒に来ない。

 

「モモン?」

「先に行ってくれ。ちょっと、連絡事項を思い出した」

「そうか、わかった」

 

 俺は先にナーベが待つ、魔法の簡易テントの中へ入った。

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 ゴーンが簡易テントの中へ入ったところを見届けてから、私はワーカーの男性に向き直る。

 

「あの、それでモモンさん。連絡事項とは……?」

「それは嘘です。ここに残りたくて、ね」

「そ、そうですか」

「先ほどは、噂の続きを言わないでくれて感謝する」

「……モモンさんは、噂の続きをご存知なのですか?」

「ああ。……ゴーンの事だろう?――すべて嘘なので、忘れてほしい」

「わ、わかりました」

 

 俺は男の態度に満足して、頷いた。

 

「では、失礼する」

 

 相手の返事を待たず、簡易テントへ足を向ける。

 ゴーンの噂……遊び歩いているだとか、アダマンタイトとしての力はないだとか……根も葉もない噂だ。

 ゴーンを陥れたいのか、はたまたチーム漆黒の評判を落としたいのか。それはわからないが……。

 

「(――俺の恋人を傷つける奴は、許さない)」

 

 今、恐怖公が情報を収集している。

 噂の根元を枯らすには、もう少しだけ時間がかかる。

 歯痒かった。

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 

 一行が遺跡(ナザリック)の近くに到着した。

 その深夜、ワーカーの皆さんは遺跡に潜入。

 冒険者である俺たちはキャンプの警備にあたる。

 

 そう……他の冒険者たちは、ね。

 俺たちはこれから、ナザリックに帰還しワーカーたちの相手をする。

 その為に、先に休憩をもらったのだ。

 チーム漆黒はテントへ向かう。

 

 皆のテントから少し離れた場所に、俺たちのテントを設置した。

 中の音を漏らさない、そんな魔法のテント。

 

 決して広すぎず、対して防衛魔法もかかっていないマジックアイテム。だが、この世界では貴重品で、かなりいいお金になるようだ。

 国ができたら、その特産品にこういうテントを作り、販売したらいいんじゃないかな?

 

 すでにテントの奥では、モモンの変わりにパンドラズ・アクターが、俺の変わりに被造物のドッペルゲンガーであるエードラムが、それぞれに変身していた。

 

 自分の目で、モモンや俺が跪く姿を見るのって新鮮だなあ。

 

「ご苦労。では、これから私たちはナザリックへと帰還する。それまでの間、何かあった場合はナーベ……いやナーベラル、お前の方で上手く対処せよ」

「かしこまりました。アインズ様」

「それと、何かあれば即座に連絡を頼んだぞ」

「それじゃあね。皆、後をよろしく」

 

 全員が深く頭を下げたのを見てから、モモンガさんが作ってくれた〈転移門〉をくぐる。

 そして、ナザリックの心臓部である玉座の間、その前の部屋へと転移した。

 

 外からナザリック内へと転移は障壁があってできない。しかし、俺たちはリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを装備している為、それらに邪魔されず、ナザリック内へと転移できた。

 

 

 

 アルベドに案内されて、玉座から侵入者たちを監視した。

 ――玉座の前……そこにはテレビのモニターのように画面が表示される。そして侵入者たち……ワーカーたちの姿をうつしている。

 

 あーあ、俺たちの物に手を出しているよ……。そうなるように仕向けたとはいえ、腹は立つ。

 

 玉座にはモモンガさんが、その左には俺が立っていて、右にアルベドがいる。

 やがて、階層守護者たちも集まってくるらしい。賑やかになるな。

 

「さて、剣の練習台は……」

「老人とは手合わせをした。あのチームは練習台に向いていない。軽く手を合わせた彼らもいらない……。そうなると、フォーサイトですね」

「確かそんな名前でしたか」

「チームの雰囲気も良いですし、アインズさんが望む殺し合い、できると思いますよ」

「だと、良いんですがね……」

 

 深く息を吐くモモンガさん。

 俺は、彼の頬を優しく撫でた。

 

「……なんです?」

「慰めたくて」

「それなら膝枕してくださいよ」

「全部終わったら、ちょっとだけのんびりしましょうか」

「よし!」

 

 やる気が入ったモモンガさんを見て、俺は「現金だなあ」と笑う。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。