ネクロフィリアの未熟児   作:紅絹の木

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【3】(番外編)バケモノなモモンガ×人間味マシマシなゴーナイト

 

 

 

 モモンガさんとイチャイチャ……違う、戯れた後。

 飲み物を飲み干したアルベドとセバスは、仕事があるので、モモンガさんの部屋から出ていった。

 

 二人……といっても、NPC達に囲まれつつ、俺は次のやるべき事を考える。

 ナザリックの隠蔽とか、消費アイテムの生産をストップと各階層の無駄なコストカットは、おそらく原作通りにできた。

 細かい事は、アルベド達に任せておけば大丈夫だろう。

 次だ。

 

 転移してから三日目の夜ぐらいだったか?

 夜空をデミウルゴスと見て、ナザリックの行動方針が決まる。次にマーレとアルベドにリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンをあげる。

 四日目(?)の朝までにカルネ村を探し出し、法国の襲撃者から村人を助ける。

 

 序盤の重要な部分は、こんなところだろうか?

 原作で使われたマジックアイテムの遠隔視の鏡ならば、俺の自室に二つある。それを使ってモモンガさんとカルネ村を探せばいい。

 モモンガさんに仕事があるなら、俺の創造したNPC“エードラム”を側に置こう。念の為に〈転移門〉を覚えさせておいたんだ。

 ナザリックからカルネ村に移動する時は、お願いするとしよう。

 

 いや、それとも今からカルネ村を探した方がいいか?ついつい原作通りに、と考えてしまったけれど、俺がいるせいで同じ道は辿れないんだ。

 好きにやるのもアリか?

 

「ゴーナイトさん」

「……ん、はい。すみません。考え事をしていました。何か?」

「何を考えていたんだ?」

「――俺についているメイドと護衛の数、減らしてもらえないかなって思ってました」

「……シモベ達が、何か粗相でも?」

「違いますよう。ただね、ナザリックの最高位にいるモモンガさんと、俺が同じ扱いを受けるってのは、ちょっと違う気がしまして。命令系統がごっちゃに混ざってしまわない内に、色々決めておきませんか?」

「ふむ。……具体的にはどうしたいのだ?」

 

 俺は簡潔に考えている事を話した。

 メイドと護衛の数を減らしたい事。命令系統が混乱しないように、モモンガさんの命令を最優先にしたい事。

 

「あと、マーレとアルベドに指輪(リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン)を渡したいですね。どうでしょうか?」

「メイドと護衛の件は了承した。私も減らしたいと思っていたところだ」

 

 視界の隅でメイド達が絶望の表情を浮かべている。待って、仕事を取り上げたいワケじゃないの。

 

「あー……仕事が減った分は何か、他の仕事を任せましょうね」

「何をやらせるのだ?」

「例えば、一日限定で俺たちの専属メイドになってもらうとか。専属メイドの時は、俺たちにそれぞれ付きっきりで、仕事を手伝ってもらうんです。これをローテーションでおこないます。護衛達も同じく。……どうでしょう?」

「まあ、いいんじゃないか?」

 

 モモンガさんの返事を聞いて、メイド達の表情が、花が咲くように明るいものに変わる。

 

「良かった。それと休みなく働いていたら効率が落ちるので、専属として働く前日は、休みにしましょう。専属の日は、それぞれ“モモンガ当番”と“ゴーナイト当番”という名前でいいですかね?」

「ああ、それでいいとも」

 

 そしてメイド達はキツく目を閉じた。休みなく働きたいと思っているのだろう。だが言わない。きっと発言を許可されていないから。

 ごめんな。休みなく働かせたくはないから、このまま進めるぞ。

 

「次に命令系統の件ですが……すみません。モモンガさんにばっかり、重いもの背負い込ませてしまって」

「構わない。私も、ゴーナイトさんの言う通りにした方が良いと考えていた。――決してあなたを、蔑ろにしている訳ではないぞ?」

「ええ、わかっています。全ては、俺たちやナザリックのみんなの為に。それで、指輪の件はどうでしょう?」

「アルベドとマーレに、か。必要だろうな。だが、それは今か?」

 

 モモンガさんが背もたれに、深く体を預ける。そして顎をさすった。考え込んでいるようだ。

 俺は体をひねって、モモンガさんの方を向く。もっと見ていたいという気持ちと、俺の考えを話す為に。

 

「アルベドに必要なのは、当然ですよね?守護者統括としてナザリック内を駆け回るんですから」

「そうだな。緊急時に“はやさ”は命だ」

 

 モモンガさんが鷹揚に頷く。

 

「では、なぜマーレにも必要なのか。……敵との戦闘を見据えて、か?」

「そうですね。それもあります。俺たちと戦うなら、敵は軍隊を用意するでしょう。あの日の侵攻のように。一対多数ならば、マーレが適任です」

「あの子以外いないだろうな。――指輪を渡す他の理由は、守護者たちのやる気を出すためか?」

「ええ、明確な目標の有無は、やる気が段違いですから」

 

 モモンガさんが、ジッと俺を見つめる。

 

「今、指輪を渡すのはそれだけの理由があるから、だな?」

「その通りです。アルベドには緊急時を見越して、マーレにはナザリックを隠蔽し、敵から守った功績によって」

「どれも重要だな。よし、今日の夜に被造物である者たちを玉座の間に集めよ。そこで渡すとしよう」

 

 モモンガさんが命令すると、メイドたちは深く頭を下げた。

 そこに付け加える。

 

「あとさ、ここでの会話は内緒にしてね。俺との約束だよ」

 

 ここでの会話がアルベドやデミウルゴスにバレて、深読みされたら何が起こるかわからないものね。うん。内緒にしておいた方がいいな。

 

 柔らかく、茶目っ気を含ませて言えば、メイドたちや護衛の者たちに笑みが溢れる。

 そして再び、深く頭を下げられた。

 

 あっ!

 

「モモンガさん!大事な事に気づいた」

「なんだ?」

「被造物の子たち全員は、玉座の間に来られないよ。防衛の意味でも、動かせないという意味でも」

「……ああ」

 

 俺たちは顔をしばし見合わせて、笑いをこぼす。

 あはは、抜け落ちてたなあ。

 

 

 

 その日の夜。

 無事に、必要なメンバーだけが玉座の間に集合した。

 アルベドとマーレに指輪は渡され、特に守護者たちが目を輝かせる。

 ――いつか、自分も。

 そう思ってもらえたのなら、成功だな。

 

 集いはそこで終わらなかった。

 

「――ここで、皆に告げておきたい事がある」

 

 モモンガさんからのサプライズである。え?何ですか??

 動揺を態度に出したら、今の雰囲気が台無しになる気がしたので、ジッと耐えて話を聞く。

 モモンガさんは立ち上がり、数歩前へ。そして魔法で、自分の旗を落とした。

 はえ??もしかしてー?

 

「私はこれから“アインズ・ウール・ゴウン”を名乗る。異論はないな?」

 

 ええー!?なんで?!カルネ村事件前なのに、なんで!?

 驚きと静まり返った静寂の中で、俺は声に出してしまった。

 

「モモンガさん?いえ、アインズさん??」

「はい。何か?」

「どうして、今、名前を変えられるんですか……?」

「簡単だとも」

 

 モモ……アインズさんはガパリと口を開けて、笑う。

 

「私の名前を、敵か味方かを判別し、さらにはユグドラシルプレイヤーかどうか判別する為の、試金石にするのだ」

「ああ、それならば納得です。この世界に先に来ているかもしれない、さらには未来に来るかもしれない、ギルドメンバーを探す意味も兼ねているんですね」

 

 うんうん、と何度と頷く。

 

「名声が高まれば、広まるのは名前だ。広く遠くまで届ける為に、名前を変えるんですね」

「そうだ。……サプライズになってしまい、すみません」

 

 アインズさんが軽くだが、頭を下げた。

 ザワリと、静かだけれど確かに騒めきが起こる。

 なんでザワザワするの?

 ちょっとビビリながらアインズさんと話す。

 

「大丈夫ですよ。ただ、今回の件は先に話を聞きたかったです」

「サプライズにしたのは、理由があるんですよ」

「それは……?」

「私の部屋で話せますか?」

「いいですよ」

「では、行こう。皆、今日はよく集まってくれた。今後とも励め」

 

 俺も何か言っておくか。

 

「今日はありがとう。みんなの忠義に感謝を。――休める時にはちゃんと休むんだよ。それじゃ、ちょっとごめんね」

 

 退室するのではなく、ある場所に向かう。

 モモンガさんの旗が落ちた場所だ。そこで、彼の旗を拾う。

 旗は長く大きいので、どうやって畳もうか迷ってしまった。一人では難しい。戦士職ゆえに力があるから、重くはないんだがなあ。

 

 するとコキュートスが横から現れた。

 

「おお、コキュートスか」

「ハイ。ゴ迷惑デナケレバ、オ手伝イイタシマス」

「ありがとう。手伝ってほしい。では、下側を持ってくれ」

「カシコマリマシタ」

 

 二人でササッと素早く畳み、俺のアイテムボックスに仕舞う。

 これでいい。

 コキュートスに向き直り、礼を述べた。

 

「ありがとう。助かったよ」

「役ニ立テタノデシタラ、コレ以上の喜ビハアリマセン」

「ふふ、そうか?それじゃ、みんなと一緒に励んでもらおうかな。その時は頼むよ」

「ハッ!何ナリト仰ッテクダサイ」

 

 臣下の礼をとるコキュートスの肩に、右手をポンっと優しく乗せる。

 俺もよく上司にされたんだよな。期待は重かったけれど、何も言われないよりかは嬉しかった。

 だから、俺も。

 

 肩に乗せた手を離し、コキュートスの横を抜けて、玉座の下に降りてきていたアインズさんの隣に戻る。

 

「お待たせしました。行きましょう」

「うむ」

 

 今度こそ、俺たちは退室した。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 それから、アインズさんの自室にて。

 俺は壁ドンされています。

 アレです。俺は背中を壁にくっつけて、アインズさんが俺を囲むように、両手で行手を塞ぐ……あの壁ドンです。

 ときめくけれど!どうしてこうなった!?

 

 嬉しさと困惑、好きな人が目の前にいる緊張でどうにかなりそう。

 鼓動を速めていると、アインズさんに顎クイされる。

 あ、顎クイ!?少女漫画でしか見た事ないやつ!!

 

 そのまま顔が近づいてきたので、俺はたまらず「まって」と弱々しく言った。

 アインズさんは止まってくれた。

 

「どうして?」

 

 なぜ止めるのか、そんな疑問を含んだ声だ。

 俺は逃げも隠れもできない。だから、正直に言った。

 

「だって、まだ、こいびとじゃないから……」

「――それだけか?」

「俺にとっては、すごく重要です」

 

 夢なのだ。好きな人と恋人になり、その……色々する事は。

 アインズさんは、空洞の目の奥、輝く紅い光を瞬かせる。

 

「ゴーナイト」

「はい」

「愛している」

「――はい」

 

 ふへへ。好きな人に告白してもらっちゃった!

 

「俺も、その、す、好きです」

「うん?愛していないのか?」

「そうじゃなくて、その、あの、うう……」

 

 うわーん!愛してるって伝えるの、めちゃ勇気いるー!!両想いでも、めっちゃ勇気いる!恥ずかしい!!

 俺はどうにも言えなくて、それでも伝えたくて、アインズさんを抱きしめた。

 優しく、心を込めて。

 

「好き、大好き……大好きです」

「ふふ、すまない。イジワルを言ったな。今は、それでもいいさ」

「うう、ズルくてごめんなさい」

「かまわない。いつか言わせてみせるさ」

 

 ぐわー!カッコイイ!外も中身もカッコイイとか!

 さすがアインズさん!!

 

 抱きしめる腕に力を込めたら、アインズさんが痛く感じるだろうから。頭をぐりぐりと押し付けた。もちろん、痛くない程度に。

 

「これで、はれて私たちは“恋人”だな?」

「う……はい……」

「――キスはしたくないのか?」

 

 違うんですー!

 頭をゆるく振った。

 

「アインズさんとなら、キスも、その先もしたいです。でも、そういうのって……」

「うん?」

「三ヶ月経ったらするんですよね?」

 

 ガクッ!

 アインズさんが軽く体勢を崩した。

 あれ?変な事言ったか??

 

 アインズさんは崩れた体勢を直し、咳払いをする。

 

「ごほん!……ゴーナイトの考えはわかった。恋人としての歩みは、あなたに合わせよう」

「ありがとうございます!」

「うむ」

 

 よかった!なんだかよく分からないけれど、ゆっくり進んでくれるようだ!

 そこでふと、思い出した。

 彼に押し付けていた頭を起こして、目を合わせる。

 

「ところで、アインズさん。名前を変える事を内緒にしていた理由ですけれど」

「ああ、秘密にしていた理由は……」

「理由は?」

「あなたに褒められたかったからだ」

 

 今度は、俺が軽く体勢を崩した。

 アインズさんが支えられながら、俺は体勢を直す。

 

「そ、それだけ?」

「そうだ。良い案を出して、あなたにまた褒められたい。私からすれば、重要な理由だとも」

「そ、そうですか……」

 

 うう、嬉しい!アインズさんがそんな風に考えてくれていたなんて!

 俺は、彼の背中に回していた右手を外した。

 そしてアインズさんの頭を丁寧に撫でる。

 

「さすがアインズさん。スゴイ!カッコイイです!」

「ふふ、そうだろう?」

「はい!」

 

 得意気なアインズさんの声に、俺は喜びが胸にしみ渡るのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

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