ネクロフィリアの未熟児   作:紅絹の木

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【5】(番外編)バケモノなモモンガ×人間味マシマシなゴーナイト

 

 

 

 

 さて、村人たちの治療は終わった。

 一度解散してもらって、亡くなった方々の葬儀をしてもらおうか。

 そう思っていた矢先、側にいたアインズさんに声をかけられる。

 

「ゴーナイトよ、少々話せるか?」

「いいですよ。向こうで話しましょうか。では村長殿、これから葬儀を行われると思うのですが、そちらが終わり次第、またお話しさせてください」

「かしこまりました。それでは失礼いたします」

「失礼いたします」

 

 村長殿と奥さんは深く腰を折って、頭を下げた。

 俺は緩く手を振って応える。

 それで、アインズさんの話したい事ってなんだろうな?

 俺は、アインズさんに案内されるまま村人たちから離れ、森に入った。

 もちろん、セバスとエードラムも一緒だ。いつの間にか俺の後ろについていた。

 

 

 森の中に入ってすぐに、数人の影が見えた。

 アルベド、アウラとマーレ、他は護衛の為のシモベたちが複数。

 俺たちが姿を現すと、NPCたちは深く頭を下げた。

 俺は皆に片手をあげる。

 

「面をあげよ。……アルベドとアウラとマーレも、来てくれたんだな。ありがとう。心強いよ」

 

 感謝を込めてそう言うと、三人は微笑んだ。アルベドが、美しい形の唇を開けようとして……遮られる。

 

「あー、ごほん」

 

 アインズさんのわざとらしい咳によって。

 全員がアインズさんに注目した。どうしたんだろう?

 アインズさんは確かめるように、話す。

 

「それで、ゴーナイトよ。村をどうするつもりなのだ?ナザリックの物だと、さっさと宣言した方がいいと思うぞ?領地は多いに越した事はないからな」

「……?」

「隣人というのは、建前なのだろう?」

 

 どうしてそんな考えに至るんですかね!??

 カルマ値が極悪に振り切っているからですかね?!

 

 俺は天を仰いだ。――木々に遮られて、微かな陽射ししか見えない!

 

 俺は空を見るのを諦めた。顔を前に向ける。

 どう足掻いても支配する事になるなら、せめて、原作のように穏やかな日々を過ごさせてあげたい。

 俺は賭けに出た。

 

「ねえ、アインズさん?」

 

 気持ち悪くならないように、それでも甘い声を出す。

 俺の雰囲気が変わったので、周りのNPCたちの目が大きく開いた。

 かなり恥ずかしいと思いつつ、いや、人の命がかかっているから、と自分を叱咤する。

 わざと下からアインズさんを覗き込む。

 

「この村全てを、俺にプレゼントしてくれませんか?お願いします」

 

 アインズさんは顎をさすりつつ、俺をマジマジと見た。

 まるで珍しいものを見るかのように。

 決して、気味悪く思われてはいない、と思う。

 

「――どうしようか」

 

 アインズさんは悩むそぶりを見せた。

 本気っぽくは、なさそうだ。俺の反応を見ている、と思う。

 俺は、胸の内に広がる羞恥を蹴っ飛ばし、さらに続けた。

 

「プレゼントしてくれたら、俺からも何かプレゼントしますよ」

「ゴーナイトからも?」

 

 食いついた。

 俺は、声に優しい笑みを含ませる。

 

「はい。できる限り、素敵なものを」

「それは何だ?」

「ここじゃ言えませんよ……ねえ……わかるでしょ?」

 

 そして声に艶をのせる。

 アインズさんに届けー!!!

 艶っぽいって感じてー!!!

 

 しばしじっと見つめ合い、サッとアインズさんが目を逸らした。

 うん?どうしたんだろう?

 アインズさんは困ったように言う。

 

「しかしな、プレゼント交換をしたくても、だ。この村は初めての収獲だ。皆で分け合うべきでは?」

「そうですね。その通りだと思います。でもでも、俺、欲しいと思っちゃったんですよ。ねえ、ちゃんとナザリックの為に有効活用しますから……お願いします」

「ふむ。どのように活用する?」

 

 俺は指折り数える。

 

「まず作物を作らせます。より良い作物を作らせて、それをシュレッダーくんにかけます。そうして金貨をうませます」

 

 シュレッダーくんとは、宝物殿にある箱の事だ。

 投入したアイテムを換金してくれるマジックアイテムで、ユグドラシルではない今、唯一の金貨を得られる収入源である。

 めちゃくちゃ大事な物だよ。

 

「ふむ、それから?」

「村を懐柔します。そうして、ナザリックは悪ではない……と情報を流してもらいます。周りとの敵対を防ぐ為です。ここはユグドラシルじゃありませんからね。レベル百以上の存在がいても驚きませんよ」

「確かに、敵は減らした方がいいな。または、敵対するまでの時間稼ぎをしてもらおうか。我々が相手の情報をかせぐ間な……」

 

 俺はうんうん、と頷く。

 

「それに仲良くしておけば、定期的に情報を流してくれるようになるでしょう。恩で縛れば、嘘はつかないはずです。恐怖で縛ると嫌われますからね。嫌われたら嘘をつかれます。それなら、初めから恩を売ればいい」

「ふむ……」

 

 アインズさんはジッと考える。

 何度か俺をチラリと見て、わざとらしく息を吐く真似をした。

 

「はあ……仕方ない。今回はプレゼントしよう」

「ありがとうございます!」

 

 やったー!エンリたちが、ゴブリンの軍勢を呼べるか実験できるぞ!ゴブリンたちもいい奴らだから、会ってみたかったんだよなあ!

 俺はガッツポーズを決めた。

 そんな俺にアインズさんは冷ややかに言う。

 

「――そんなにあの娘たちが気に入ったか?」

 

 なんだ?怒ってる?

 俺は冷静に返事をした。

 

「気に入ったというよりも、実験に使えそうなので、これから楽しみです」

「実験?」

「ええ、実験です。まずはコレから始めてみます」

 

 俺は、ユグドラシル時代にゴミアイテムと名高かった「ゴブリン将軍の角笛」を二つ、アイテムボックスから取り出した。

 

「うまくいけば、軍勢が見れると思っているんです」

「……まあ、やる価値はあるか」

「ええ、当たるも八卦当たらぬも八卦……ですよ」

 

 アインズさんは、ガパリと口を開けて、笑った。

 

「ふふ、そうだな」

 

 お、機嫌治ったかな?

 俺は胸を撫で下ろした。

 見れば、皆の顔色に安堵の色が見える。

 

 こうして、俺たちは話し合いを一旦終えた。

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 

 森から村へ帰ってきた俺たち。

 どうやら葬儀も無事に終わったらしく、村長殿が探しにきてくれた。

 それから、俺とアインズさんと村長夫婦は、村長殿の家に行く。外の護衛はアルベドに任せた。

 

 座れる椅子が二つしかなかったので、村長殿とアインズさんに座ってもらう。

 ここに配下の者が居なくて良かった。「自分がイスになります!」とか言われずに済むもの。

 

 俺たちが質問する形で、村長殿から「この世界の常識」を学ぶ。

 俺は用意していたメモ帳に、聞いた話を書き込んでいった。

 

 ……やっぱりユグドラシルとは、まったく違う世界に来てしまったらしい。

 しかし、原作と同じ場所……“現地”に飛んだようだ。

 つまり、ナザリック周辺の国の中じゃ、法国が一番厄介かな?

 

 ユグドラシルプレイヤーを召喚したきっかけを知るドラゴンが統治する国も、厄介なんだよな。

 今、悪に傾き過ぎているナザリックと、敵対待ったナシだろうし。

 

 気をつけなきゃ。

 やられて、飲み込まれて終わる。

 俺にできる事をしないとな。

 

 

 

 

 村長殿の休憩を挟みつつ、夕方まで質問を続けた。

 外に出る。うん、開放感がたまらないね。

 空が赤に染まる。遠い地平線の端では、すでに夜が見えていた。

 

「綺麗だなあ」

「そうだな」

 

 アインズさんと並んで、空を見上げる。

 自然の美しさを忘れかけていたけれど、今、こうして感じている。

 嬉しかった。楽しいし、幸せだ。

 何より隣にはアインズさんがいてくれるし。デートみたいでいいなあ。

 

 そこにアルベドが並ぶ。

 珍しい、いつも数歩下がった場所にいるのに。

 

「どうした?」

 

 声をかける。彼女は、恭しく頭を下げた。

 

「ご報告します。数十の軍勢が、こちらに向かって馬を走らせているようです」

「そうか、出迎えよう」

 

 多分ガゼフたちだろ。危険は少ないはずだ。

 

 俺はアインズさんに「いいですよね?」と聞こうとして、止まった。

 アルベドが言ったのだ。

 

「武器を手に向かって来た為、すでに捕らえ、広場に集めております」

「……おおう」

 

 返事なのか、そうでないのかわからない声を出してしまった。

 これはガゼフたちが悪いのか、俺たちが悪いのかな?

 

 ……俺たちかなあ?

 ガゼフたちが死んでませんように、と祈っておいた。

 

 

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