さて、ガゼフたちである。
シモベたちが俺の方針を守ったのか、アルベドが気を利かせてくれたのか、ガゼフ部隊は死んでいなかった。
まあ、両手足が折れていたり、縄で巻かれて地面に転がされていたりする。命があるだけマシだよね?
馬たちは、地面に転がっていた。
俺は思わず声に出してしまった。
「え、馬たちって死んでいるの?」
その問いにアルベドが答えてくれる。
「いえ、暴れたので魔法で寝かせております」
「そっか!ありがとう!」
良かった〜!死んでたらショック受けていたよ。
前世の影響か、動物が無闇に死んじゃう事に、抵抗があるんだよな。
俺は機嫌良く頷き、アインズさんに向き直る。
「あれらから、情報を得ても?」
「どうぞ」
「ありがとうございます」
俺は戦士たちに近づいた。後ろにはエードラムが付き従う。まあ、いいか。困らないし。
側に寄ると、戦士たちからすっごい睨まれた。
やばい、すごい怒られてる。まずは謝ろうか。
「あー……手荒な真似をしてすまない。この中で一番偉い者は?リーダーは誰だ?少し話がしたい」
「――私だ」
アニメで聞いた事がある。ガゼフだ。
戦士長殿は俺から左奥にいた。エードラムに指示を出す。
「彼だけ治してやれ」
「はっ」
エードラムは〈飛行〉を唱えて、ガゼフの真上に行き、低級の回復呪文を唱えた!
ガゼフの傷はふさがった!
「拘束をといてやれ」
「はい」
続いて拘束もとく。
ガゼフは立ち上がり、俺を睨みつけた。すっげー警戒されている。まあ、魔物の親玉だものね。人間からすれば怖いか……。
「何の真似だ?」
「今から話すのに、ケガを負わせたままってのは、良くないでしょ?」
「……」
「こっちにどうぞ。少しお喋りしましょ」
ガゼフは静かに、俺の前までやってきた。
背筋を伸ばし、まっすぐ俺を睨みつける。
全然怖くない。
うん、素直だね。まあ、部下の命がかかっているとか、思われているのかも。
俺は取る気ないけれど、アインズさんたちが欲しがったら止められる気ないや……許せ。
「さて、お名前は?俺はゴーナイトだよ」
「……ガゼフ・ストロノーフだ」
「ガゼフさんって呼んでも?」
「構わない」
「ありがとう。ガゼフさんは、この村を助けに来たの?」
「そうだ。お前たち魔物から、村を救いに来た」
「俺たちは村を襲っていないよ?襲ったのは、あなた方と同じ人間、武装が統一されたどっかの戦士たち。証拠もある……出そうか?」
その言葉にガゼフは詰まる。
そして信じられないように、言葉を紡ぐ。
「村を襲った連中を、お前たちが倒したのか?つまり……結果的に、この村を助けた?」
「いや助けるのが目的で来たんだ。襲われている事を知って、すぐに動いた」
「……」
「他に聞きたい事は?」
「なぜ、助けた?」
「?……困ってたから」
ガゼフはポカンと口を開けた。
「それだけ……か?」
「ああ、そうだよ」
俺たちの間を、風が流れていく。
あまりにもガゼフが何も言わないので、俺は首を傾げた。
声をかけようとして、それよりもガゼフが早かった。
頭を下げられたのだ。
「――ありがとう!」
ガゼフの後ろで、彼の部下たちが騒めく。ざわざわと「戦士長!?」「どうして?!」と口々に言った。
ガゼフは頭を下げたまま、言った。
「あなた方のおかげで、無辜の民の多くが助けられた!彼らを守るはずだった者として、心から感謝を!ありがとう!ありがとう!」
「信じるの?」
「ああ。嘘をついている様子はない。そしてこちらの様子を窺う村人たちにも、おかしな様子は見受けられない。他の者たちはどうかわからんが、あなたは……ゴーナイト殿は信じよう」
「……ガゼフさんって人が良過ぎるって言われるでしょ?」
「フッ……時々な」
俺は思わず吹き出した。
ガゼフも笑みを見せる。
この場だけは、和やかだった。
と、そんな時間も束の間。
俺の敵感知に引っかかったヤツがいる。
「ガゼフさん、敵だ」
「――何だと?」
「俺たちが対処します。いいですよね?だって、あなた方はこの村を守れなかった。それに、俺たちに捕まっている。“この国の問題だから……”なんて言葉は、通じない」
ガゼフは何か言いかけて、俺は背を向けた。
「エードラム、彼らを守ってやれ。この場から動かすな。必要な物があれば、みんなから借りなさい」
「はっ!かしこまりました」
「待ってくれ!ゴーナイト殿!」
「……それから、多少の無礼は許すように」
「――はっ」
俺は戦士たちから離れて、アインズさんに近寄る。
そして隣に立った。
「お待たせしました。じゃあ、パーティ会場へ行きましょうか?」
「それは……どんな催し物があるのかな?」
「ナザリックへの、お土産を持って帰れますよ」
場所は変わって草原。準備を整えて挑む。
ニグンたちと相対するのは、俺、アインズさん、そして護衛のアルベドだ。
ニグンたちは、アインズさんを見て酷く驚いた。
何度も「スルシャーナ様!お戻りください!」と叫んでいた。
アインズさんは呆れたように言った。
「私こそ、アインズ・ウール・ゴウン。この世を支配する者だ」
え?
いつから支配者になったの??
こういう時、顔が無くて良かったと思う。
部下たちの前で、情けない表情を見せなくてすむから。
ニグンたちの表情は絶望に染まる。
顔色は悪く、表情が無くなり、へたりと座っていた。
「そこに横たわれ。苦なく殺してやろう」
「――総員、天使を召喚せよ!スルシャーナ様を弱らせて、正気に戻す!立て!!!」
天使たちが次々に召喚される。
「目標!あの男戦士だ!殺せ!」
「え、俺?俺が首魁なの?」
「そうみたいだな」
「的外れもいいところだよ……」
そうこうしていると、ニグンは、懐から手の平に余るぐらいの大きな水晶を出した。
それを使い、大きな天使を召喚する。ニグンの部下たちが召喚した天使たちとは大きさも、清浄さも段違いだ。
でもそいつ、俺たちからすれば、弱いんだよねー!
その時、空が割れた。
ああ……法国の皆さんが覗いたか。今回は、アインズさんが原作よりも凶悪な魔法をかけたから、法国がめちゃくちゃになっても不思議じゃないぞ。
やっべ。チャイナおばーちゃんの相手どうしよう!考えてなかった。
天使たちが迫る。
剣を抜こうとして、アインズさんに止められた。
どうしたの?
「ゴーナイト、アルベド。下がれ」
「かしこまりました」
「わかりました」
俺たちは十メートルほど離れる。
そして、アインズさんは辺りに“死”を撒き散らす。
「おお、死のオーラだ」
相手に即死の効果をもたらすんだよね。
オーラをまとったアインズさんは歩んで進み、ニグンたちも天使たちも飲み込んで、永遠に眠らせた。
戦いは終わる。
オーラが消えたところで、俺たちはアインズさんに近寄った。
「さすがアインズさん!お見事です!」
「ああ……」
「あれ、元気ないですか?どうしました?」
「――あなたを悪く言われて、気分が良いわけがない」
「あ〜……えへへ。ありがとうございます」
「何がだ?」
「大切にしてくれて。嬉しいから、ありがとうございます」
「そうか」
もうすぐ夜だ。
俺はアインズさんの隣に立った。
「後片付けしたら、帰りましょう」
「面倒だな」
「俺がやっておきましょうか?」
「いや、最後まで一緒だ」
「――はい!」
ニグンたちを回収、ガゼフたちは傷を治して、縄を解いてやった。
馬たちは朝に目覚めるだろう。
俺はガゼフに言った。
「王国がイヤになったら、部下たちと一緒に、俺たちの所へおいでよ。コキュートスの部下にしてあげる。いい奴なんだ」
「……お気遣い感謝する。だが、この剣は我が王に捧げている。だから、あなた方に仕える事はできない」
「そっか……それもいいな。じゃ、戦場で会わない事を祈るよ」
「ああ、世話になった。また、いつか」
「そのうちね」
俺たちはナザリックに引き上げる。
――――――
戦後処理して褒賞あげて、報告書読んで指示飛ばせば、俺たちの仕事は終わりかな??
多分。
だって、俺、今アインズさんと二人っきりだし。
――なんなら俺の部屋の寝室で、ベッドに押し倒されてる。
俺が、アインズさんに!
どうしてこうなった!?
俺は弱々しく言った。
「こ、こういうのは、半年経ってからでは……??」
「思ったんだが」
「はい……」
「いい大人が、ノロノロとステップを踏む理由が、あるのか?」
「ない……です」
あー!!!腹をくくる時ですかね!??
俺は怖くて、恥ずかしくて、照れてしまって、顔を背けた。
アインズさんは動揺する。
「俺が怖いんですか?」
「いえ、いや……ちょっとだけ。でも、それ以上に恥ずかしくて……!」
いやいやと首をふると、アインズさんの顔が迫って。
こつん。
頬にキスされた!
「ほわ!」
「キス一つで騒がないでくれ。可愛いな」
「可愛い!?ありがとうございます!あの、その、アインズさんはかっこよくてえ……今日も素敵でえ……」
あうあうと、息も絶え絶えにそう言った。
息なんてしていないが、もう、ないはずの胸が苦しいよう!
上から長いため息が聞こえてきた。
「はあー……先に進めようかと思ったが、延期するか……」
「へ?」
「無理に進めて、トラウマになってもダメだからな。もういい、ノロノロでも何でも、あなたと進めるなら、それが一番速い」
アインズさんは俺の上から退いて、隣に寝転がった。
俺は解放された。
ちょっと考える。
そして、アインズさんの方に寄って、ピッタリと彼の手にくっつく。
「何をしている?」
「アインズさんの邪魔にならないように、くっついてます」
「もっと近寄れば良いだろう?」
「ローブ姿と鎧姿じゃ、近寄ると、互いに動きにくくなりますよ」
「脱ごう」
「……脱いだ俺に我慢できますー?」
ふざけて言った。
アインズさんは黙った。
俺は察した。
「あ、ごめんなさい」
「ふざけてもいいが、抱かれると思ってくれ」
「はい」
それからはしばしの沈黙。
俺は今日の事を振り返っていて、わがままばっかり言っちゃったかなあ、と思った。
だから――。
「ねえ、アインズさん」
「なんだ?」
「プレゼント交換の話ですけど」
「ああ」
「何が欲しいですか?その、体はまだあげられないけれど、できる事なら、何でも……」
「……では、あなたの秘密を」
「――は?」
俺は頭を上げて、アインズさんを見た。
アインズさんも頭を上げて、俺を見ていた。
「転移直後から、あなたは普通過ぎた。転移前と何も変わらない。優しく、穏やかで、争いを好まず、助けられるものは助ける。あなたのままだ、ゴーナイトさん」
アインズさんは起き上がり、ベッドの上で胡座をかいた。
俺も起き上がる。ちなみに正座だ。
「私は違う。鈴木悟の残滓が極めてない。だから、人間共に優しくしようなんて思わない」
「あ……アインズさん……」
「どうしてこうも違う?なぜ?私たちに何があった?」
――俺の考えでは。
おそらく俺も、アインズさんと同じ人間の頃の残滓は、消えているだと思う。
でも、俺にはもう一つ、人間の頃の残滓があった。
それは前世の記憶。それは消えてない。だから、人間の頃の感覚が、今になっても残っているんだ。
答えなくちゃ。ちゃんと、好きな人に、嘘をつかず。
――例え、嫌われても。
俺は立ち上がり、言った。
「お持ちします」
俺は寝室の本棚を動かし、隠し扉を開けた。
隠し扉の中には、小さな部屋がある。
まるで隠れ家だ。書斎と言える。
その部屋には、机とイスのセット、本棚がある。
本棚から十冊のファイルを持って、アインズさんの前に出した。
「これは?」
「俺たちの差の答えです。俺ね、前世の記憶があるんですよ」
「――は?」
「そのせいか、未来を見たんです。これは見えた未来を、書き留めた物です」
アインズさんはポカンと、俺を見る。
俺は第一巻と書かれたファイルをすすめた。
アインズさんはそれを受け取り、読み始めた。
一時間後。
アインズさんはパタンとファイルを閉じて、ガパリと口を開いた。
「素晴らしい」
「へ?そうですか?」
「ええ、世界征服が早まる」
「……するんですか?世界征服」
「しますよ。あなたの安全の為に」
なくなった胸がギューン!と、音を立てた!
俺の為にするとか!トキメキが止まらないよう!
アインズさんが俺を見つめた。
俺も視線を交わす。
「一緒に頑張ろう」
「はい」
せめて、良い国作りをしよう。
俺は、受け入れられた安堵から、アインズさんとハグした。
《番外編・おしまい》
バケモノなモモンガさん!
容赦ない姿が好き!
身内に甘い、優しい攻めはもっと好き!
この後、しばしイチャイチャを楽しむ。
内外共に、ゴーナイトとの関係を周知させたい。
そして世界征服へ動き出す。
ゴーナイトさんと、ナザリックの皆と、末永く幸せに暮らした。
――――――
人間味マシマシなゴーナイトさん!
に普通な中身が好き!
ちょいちょい人間っぽくないところが、イイ味だしてる!
アインズさんと、もっとイチャイチャしたくなった。
でも、深読みしたデミウルゴスとアルベドから、「おめでとうございます!」とか言われて、恥ずかしくて部屋にこもる。
頑張って世界征服をしていく。
アインズさんと、ナザリックの皆と、末永く幸せに暮らした。