ネクロフィリアの未熟児   作:紅絹の木

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幸福な時間

 

 

 

 

 カルネ村でゴタゴタとあったり。それが理由でルプスレギナを叱ったり。

 こっちが先だったかな?ンフィーレアがポーション作りで少し成果を上げたり。

 

 ナザリックではナーガを配下に加えたり。

 アルベド含む、階層守護者たちと足湯で交流したり。

 

 そんな平和な日々が過ぎてから、ンフィーレアとエンリ、エンリの妹であるネムを、ナザリックへ招待した。

 

 何も俺とアインズさんは、第一階層から、案内したワケではなく。

 ナザリックの外周部分に造らせた木造の建物に、ナザリック内深部へ一気に転移できる鏡を置いた。

 そこから第九階層へ転移してもらったのだ。

 

 まずは玉座の間で、一般メイドたちと共にンフィーレアを迎える。

 それからは応接用に準備した部屋に通した。

 ネムがナザリックを、たいへん気に入ってくれたので、俺とアインズさんで、少しだけ内部……安全な場所を案内した。

 ネムは楽しんでくれたみたいで、終始はしゃいでいたよ。

 

 次は食事だ。

 ンフィーレアたちだけにしてやり、マナーなど気にせず、コース料理を楽しんでもらう。

 

 デザートも終わり、食後の紅茶を楽しんでいるところで、再び俺とアインズさんは三人がいる部屋を訪ねた。

 

 俺とアインズさんは上座に座る。

 俺は客人たちの顔を見た。

 みんな表情を緩ませており、満足しているようだった。

 

「食事は……楽しめたみたいだね。それは何より」

 

 俺がそう言うと、ンフィーレアが片手を胸に当てて言う。

 

「はい。すごくおいしかったです。これもゴウン様と、えと……」

「そのままゴーナイトと、呼んでくれて構わないよ。私は家名を付けなかったからね」

「わかりました。……ゴウン様とゴーナイト様のおかげです。ありがとうございます。ごちそうさまでした」

 

 ンフィーレアに続いて、エンリ、さらに続いてネムも頭を下げる。

 今度は、アインズさんが鷹揚に頷く。

 

「気に入ったのならば、何よりだ。また成果をあげた際には、何かを贈るとしよう」

 

 それに食いついたのは、ネムだ。

 手を天井に向けてぴっと、挙げる。

 

「ゴウン様。また食べたいです!」

「ふふ、ではンフィーレアに頑張ってもらわないとな」

「頑張ってね!」

 

 キラキラと目を輝かせてお願いする幼子が、可愛らしく、またおかしくて。

 俺たちは穏やかに笑った。

 

 

 

 

 ——————

 

 

 

 

 

 ンフィーレアたちが帰った後は、ちょっとした休憩時間だ。

 アインズさんと隣同士でソファに座る。

 身を寄せ合って、手を取り合い、体温を混ぜるように。

 

「……ゴーナイトさん」

「はい。何でしょう?」

「家名、付ける気はありますか?」

「家名ですか?その必要は今のところ感じてませんね」

「そうですか……」

 

 アインズさん、どうしたんだろう?

 俺はアインズさんと繋いだ手、指先を動かしてすりすりとさする。

 

「なんで、家名の話を?」

「えーとですね……必要なら、その、あの……」

「はい」

「俺と……同じものを、付けませんか?って、思って……」

 

 自分に目があれば、ぱちくりと瞬かせていただろう。

 思わずアインズさんを見た。

 

「いいんですか?」

「はい」

「それ、いわゆるプロポーズですよ?」

「そうでしゅ」

 

 あ、噛んだ。

 でも口には出さない。

 俺はアインズさんの腕の中に飛び込んだ。

 アインズさんは抱きしめてくれた。

 

「嬉しい。すっごい嬉しい!」

「良かった……断られたら、どうしようかと」

「でも、何でこのタイミングで言ったんですか?」

「今日、ンフィーレアと話していた時、家名の話が出たでしょう?その時から考えていたんです。……一緒の名字だったら嬉しいなって」

 

 俺の背中を、アインズさんの手がゆっくり撫でる。

 

「俺と、ずっと一緒にいてくれますか?」

 

 なんて返事をしよう。

 ああ、でも飾らなくてもいいだろう。

 素直な気持ちを言おう。

 

「……病める時も健やかなる時も、富める時も貧しい時も、どんな時だって、一緒に乗り越えていきましょう」

「——はい!」

 

 俺たちは自然と顔を合わせて、それから重なった。

 

 

 

 ——————

 

 

 

 報告書を持ってきてくれたアルベドが、言った。

 

「それで、式はいつ頃なされるのですか?」

 

 なんでその事を知っている!?

 俺はアインズさんと顔を見合わせた。

 

 言ったの!?

 言ってませんよ!!

 

 そんなやり取りを視線だけで行う。

 

 

 

 プロポーズの後、少しだけイチャついた。

 それが終わった後で、今日の報告をアルベドから聞こうと部屋に呼んだのだ。

 

 アルベドは非常に上機嫌だった。

 共に入ってきたメイドたちとシモベたちは、興奮していて、目をキラキラと輝かせていた。

 

 そして、言われたのだ。「式はいつだ?」と。

 俺たちは当然、パニックになった。

 

 アインズさんは咳払いをわざとして、動揺を隠すように言った。

 

「ごほん!あー……何のことだ?」

「隠さなくても良いではありませんか。至高の御方々のご結婚ともなれば、ナザリック全てのシモベが祝福に尽力いたしますわ」

「……どこで知った?」

「扉の外で待機していたメイドから、報告を受けました。その……よく聞こえたそうです」

「あー……なるほど」

 

 俺たちは、また顔を見合わせた。

 

「声、小さくしませんでしたからね」

「聞かれていても仕方ない、か」

 

 二人して頷く。

 俺はアルベドに、慎重に聞いた。

 

「それで?この事は誰が知っている?お前たちだけか?」

 

 それなら、式が決まるまでシモベたちには内緒だな!大事になるし!と、考えていた。

 アルベドは美しく笑う。

 

「皆、知っております」

「なんだと?」

「今も緊急連絡網を使って、ナザリック全階層にこの報せを届けております」

「そっか……」

 

 遅かったみたいだ。

 俺とアインズさんは、やっぱり顔を見合わせる。

 

「どうしましょう」

「発表、するしかないですね」

「そうですね」

 

 アインズさんは命令を下す。

 

「アルベド、すぐに皆……ギルドメンバーが創造した者たちを集めよ。玉座の間にて、発表する」

「はっ!直ちに行います!」

 

 部下たちは表情を喜びの色に染めて、深く頭を下げた。

 

 

 

 

 一時間後。

 防衛の為に動かせない者たちを除いて、ギルメンが作ったNPCたちが、玉座の間に集まった。

 そこで俺たちは発表する。

 

「私ことアインズと、ゴーナイトさんは……結婚する!」

 

 ——うおおおおおおお!!

 

 広い部屋を揺るがす程、喜びと祝いの声が響いた。

 涙ぐむ者までいる。

 

 こんなに皆が、喜んでくれるとは思っていなくて。

 俺とアインズさんは隣に立ち、こそっと話す。

 

「……言って、良かったですね」

「ええ、喜んでもらえるって嬉しいです」

 

 穏やかにそう話していると、アルベドがアインズさんの後ろに立つ。

 何か言いたい事があるようだ。

 アインズさんが気づいて、声をかける。

 

「どうした?アルベド」

「式はいつ頃になされますか?」

「そうだなあ」

 

 アインズさんは俺を見た。

 俺もアインズさんを見た。

 俺は話しかける。

 

「リアルだと、六月でしたよね。ジューンブライド」

「そうですね。俺は、そこらへんのこだわりはないですけれど……ゴーナイトさんは?」

「ないです。いつでもいいですよ」

「そうですね。外部でやるワケでもないし」

「ですです。ナザリック内でやるワケですし」

 

 そこまで言うと、アルベドや話を聞いていた者たちが、きょとんと不思議そうな顔をした。

 アルベドが口を開く。

 

「ナザリック内だけで、よろしいのですか?」

 

 俺は頷いた。

 

「ああ、家族みんなに祝ってもらうだけでいい。それだけで満ち足りる」

 

 そうして考える。

 大好きで、親しい人たちに祝ってもらうのって、結構な贅沢だったりするよな……と。

 アルベドは心得た、と言わんばかりに頷く。

 

「かしこまりました。素晴らしい式をご用意します」

「いやいや、私たちの方で考えるよ。決定次第、連絡するから」

 

 俺はそう断り、アインズさんの方を向く。

 

「それでいいですよね?」

「ええ、構いませんよ」

 

 アルベドは、他のNPCたちもちょっぴり寂しそうにしつつ、最後には頷いてくれた。

 

 こうして結婚発表は、つつがなく終わったのだ。

 

 

 

 

 ——————

 

 

 

 

 俺の自室。アインズさんと一緒に戻ってくる。

 ソファに座ろうかと思ったが、アインズさんがチラチラと寝室の方を見るので、寝室へ移動した。

 

 寝室に入るなり、ベッドに押し倒された。

 

「式の案を、考えないんですか?」

「……運動したら、いい案が浮かぶかもしれませんので」

 

 アインズさんの瞳が、ギラギラと紅く輝いている。

 どうやら先程の戯れだけでは、足りなかったらしい。

 

 俺は両手をアインズさんの肩へ回し、撫でる。

 

「そうですね。お手柔らかにお願いします」

「善処します」

 

 部屋が一段、暗くなった。

 

 

 

 

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