仮面ライダーカブト ~赤の英雄、蒼の復讐者~   作:龍牙

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第二話

「無茶な奴だな、お前は!?」

 

 

叫びながらガタックへと叩き付けられるカブトの拳。

 

 

 

 

「黙れぇ!」

 

 

叫びながら放たれたガタックの蹴りがカブトの胸へと叩き込まれる。

 

 

加速した『時』の中での武器も使わず、技術も何も無い二人の戦士の『喧嘩』…。そう、それは既に戦いではなく『喧嘩』である。

 

 

 

 

 

 

 

 

『絶望』を抱き闇の中を歩き続けていた蒼き戦士『ガタック』と、『希望』を抱き光の中を歩き続ける赤き戦士『カブト』…。

 

 

そう、カブトとガタック…二人が対照的なのはその姿形だけではない…。彼等は彼等の生き方さえも対照的なのだ。

 

 

共に戦う意思は揺るぐ事も無い程強く持ち続けていた。だが、その戦意は常に復讐に支えられた『ガタック』に対して、『カブト』は『護る』と言う意思によって支えられていた。

 

 

『絶望』と『復讐』が生み出す『闇』に支えられ戦うガタック…亨夜に対して、龍牙の心に有るのは『希望』と『守護』の意思が生み出す『光』…近い意思を持ちながら支える物はまったくの正反対…其れさえも最も近く、最も遠い所に有る二人。

 

 

故にこの戦いはある種、当然の結果なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「カブトォ!!!」

 

 

咆哮を上げながら、ガタックはカブトへと向かっていく。それを視界に収めながら、カブトはゼクターに振れる。

 

 

 

 

《1》《2》《3》

 

 

 

 

向かって来るガタックに対してカブトはゼクター上部のスイッチを流れる様に押し、反対側に倒れていたゼクターホーンを元の位置に戻し、再び倒す。

 

 

それに気が付いた時、カブトに遅れながら、ガタックもゼクターのスイッチを押す。

 

 

 

 

《1》《2》《3》

 

 

 

 

「っ!? ライダーキック!」

 

 

「これで、頭を冷やせ! ライダーキック!」

 

 

『『Rider Kick』』

 

 

まったく同じタイミングで響く電子音、カブトとガタックの二人のライダーの上段回し蹴りが一点でぶつかり合う。

 

 

《クロック・オーバー》

 

 

二つの必殺技が激突した瞬間の衝撃によって、二人が弾き飛ばされると同時に時は再度動き出す。そして、時が動き出した瞬間に二つのゼクターは二人のベルトから外れ、飛び去っていく。

 

 

「痛…。」

 

 

龍牙は立ち上がってライダーキックを使った右足に触れる。流石にライダー同士で必殺技をぶつけ合う経験など持って居ない為に確実な事は言えないが、多分骨は折れていない。今更ながら《マスクド・ライダーシステム》の性能に感心してしまう。

 

 

「少しは頭は冷えたか、荒谷?」

 

 

「貴様ぁ!!!」

 

 

遅れて立ち上がる亨夜は、自分へと視線を向けながら告げられる龍牙の言葉にそう叫ぶ事で返す。

 

 

「…なんでお前はそこまでZECTでの出世に拘る? それに…その格好…学生との兼任で?」

 

 

「………ZECTは最低でも高校くらい卒業して無いと正式・・に入れないんだよ。」

 

 

「無駄な所で細かいな。…それ以前に…いいのか、折角のゼクターの資格者に対して其れで?」

 

 

『アルバイト=下っ端=有る意味ゼクトルーパー以下の立場の最強戦力ライダー』と言う図式が頭の中に浮かんでしまう。

 

 

『こんな所でも学歴社会!? ゼクターの資格者相手にそんな扱い!? それでいいのか、ZECT!?』等と思わずツッコミを入れてしまったのも無理もないと言えば、無理も無い。

 

 

(ん?)

 

 

そこまで考えた後で気が付く事が有る。『学生との兼任』と言う理由は説明されたが、まだ『何故、ZECTで出世したがる』理由の説明にはまったくと言って良いほどなっていない。

 

 

「おい、一つ目の質問の答えにはなってないぞ。」

 

 

「………貴様にそれを答える理由は無い。」

 

 

「……そうだな、余計な質問だったな……。」

 

 

そう簡潔に答えると亨夜に背中を向けながら龍牙は歩き始める。

 

 

「待て! まだ話は「答えはNOだ。それに無意味に戦っても、お前に得は無いと思うぞ。」くっ。」

 

 

亨夜の言葉を遮るように告げられた龍牙の言葉に納得してしまう。

 

 

それもそうだろう。このまま戦った所で結果はさっきと対しては変わらないだろう。それ以前に自分の目的は…ZECTからの指令は飽く迄『カブトゼクターの資格者の勧誘』にあるのだ。既に勧誘と言う任務には失敗している以上、これ以上の戦いは龍牙の言う通り、無意味だ。

 

 

「…天道…龍牙ァ…その名前、絶対に「違う。」なに?」

 

 

再び亨夜の言葉を遮る様に告げられる龍牙の言葉。そして、龍牙は空を…否、天を指差して言葉を継げる。

 

 

「兄さんが言っていた。オレは『天の道を行く龍』…『天道 龍牙』だ。」

 

 

「………えーと………天道龍牙…だよな? あれ? 何処が違ったんだ? まあいいか。天道龍牙、その名前…忘れないぞ!!!」

 

 

龍牙の言葉に一瞬だけ呆気に取られた後、誰にでもなく自分自身に確認する様に呟くと、立ち去っていく龍牙を睨みつけ、憎しみを込めて亨夜はそう叫ぶ。

 

 

龍牙は背中にぶつけられる憎しみの篭った亨夜の絶叫を一瞥もせず、その場を立ち去っていく。

 

 

龍牙の背中を見送ると、亨夜は携帯電話を取り出して登録してある電話番号を選択、通話ボタンを押す。公園を閉鎖しているであろう上司の連絡先の番号。するべき事は不名誉な任務失敗の連絡。

 

 

「…済みません…カブトの適合者の勧誘、失敗しました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ…あいつに付き合ってたら遅くなった。」

 

 

(ん? …そう言えば、もうすぐスーパーの特売の時間だったな、寄りながら帰るか。)

 

 

携帯電話を取り出し、時間を確認すると既に五時近くを廻っている。現在地と目的地であるスーパーの位置を考えて帰り道を帰る。一応、自分の立場は一人暮しの高校生と言った物であるのだ。安い時に買い物は住ませて置きたいと言うのが龍牙の心情であった。

 

 

(……それにしても……オレだけに用が有ると言っていた事から考えて、亮也の情報は向こうに伝わってなかったのか? 一応、後であいつにその確認と注意をして置いた方がいいな。)

 

 

ゼクターの所持者として開発元であるZECTから、何らかの接触をしてくると言うのは当然予想していた事であり、その為にある程度は警戒して動いていた。

 

 

だが、知られてしまった以上はこれ以上各巣必要は無いと判断して、今後は動き易くなったとも考える。

 

 

(…物は考え様だな。それに巧くやればオレが囮になって、亮也の事を暫く隠す事が出来そうだ。)

 

 

今後の対策、自分の取るべき行動を考えながら帰り道を歩いていると、見慣れた物が龍牙の視界の中に飛び込んでくる。自分と同じ学校の女子の制服を着た少女。何処か哀しそうな印象を与える瞳と短く切り揃えられた黒い髪の少女だった。…亨夜の物とは違いこの辺では良く見かける物で器にする必要は無い。だが…

 

 

「え゛?」

 

 

橋の柵を飛び越え様として身を乗り出そうとしている。何処からどう見ても投身自殺を図っている人間にしか見えない。

 

 

「ちょっと待て!!!」

 

 

龍牙がそれに気がついて走り出したが、時既に遅し。既に少女は飛び降りた後だった。少女を追い掛けて片手で橋の一部を掴み、片手で少女の手首を掴み落下を阻止する。だが、それでも少女から反応が無い。恐らく気絶しているのだろう。

 

 

「…おい…何が有ったかは知らないけどな…目の前で死なれたら、夢見が悪いんだ。」

 

 

かなり無理がある体勢だった為、橋の一部を掴んでいる手が二人分の重さに巻けて少しずつ滑っていく。

 

 

「っ!? カブトゼクター!!!」

 

 

 

 

《HEN-SHIN》

 

 

 

 

完全に手が離れた瞬間、龍牙が相棒の名を叫び、龍牙のベルトへとカブトゼクターが装着され、彼の全身を銀色の装甲が包む。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…今日は厄日か?」

 

 

飛び去っていくカブトゼクターを一瞥しつつ、ゼクターホーンに鞄を引っ掛けながら橋から走り出す時投げ出した鞄を持ってきてくれた事を感謝しつつそんな事を呟く。

 

 

先日のワーム退治と今日は亨夜に呼び出された後、自殺者の救助にと…既に一日の内に合計二回もカブトに変身しているのだ。

 

 

「………ん。」

 

 

「…目が覚めたか?」

 

 

龍牙は少女へと視線を向けて問い掛ける。

 

 

「…私…生きてる…?」

 

 

回復する意識の中で彼女はそう呟く。

 

 

「…当たり前だ。オレが助けたんだ、感謝しろ。大体、何が有ったかは知らないけどな…自殺し様なんて…。」

 

 

「……………さい……………るの。」

 

 

「え?」

 

 

「うるさい!!! 何が分かるの!? 私は…私は貴方とは関係無い…だから………放っておいて………。」

 

 

少女は絶叫する。それは…全ての感情を出しきるように。

 

 

「…何で…何で…私を助けたの…。」

 

 

「…簡単な話だ…。目の前で死なれたら夢見が悪い。」

 

 

「何で「名前…?」え?」

 

 

龍牙から告げられた予想もしていなかった言葉に思わずそんな反応を示す。

 

 

「…だから名前だ。…お互い、まだ自己紹介もしてないだろう?」

 

 

「………夕美………『氷川 夕美』。」

 

 

何でそんな事を聞くのだろうと言う疑問と共に少女は自分の名前を答える。

 

 

「オレは…。」

 

 

天を指差しながら、龍牙はゆっくりと口を開く。

 

 

「天の道を行く龍、天道龍牙だ。」

 

 

「龍牙…。」

 

 

「ああ。まあ、何を考えての自殺でも、良い事とは言えないと思うぞ。兄さんが言っていた。『命の価値は全て同じじゃない。だが、失っていい命は一つも無い』ってな。」

 

 

「何それ?」

 

 

龍牙に冷たささえ感じる視線を向けながら夕美はそう呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

『そうよね。そいつは何も分かってない。彼は貴女の事は何も知らないのよ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

笑いながら一人の少女が近づいてい来る。驚いた事にその少女も夕美と同じ顔と姿形をしていたのだ。

 

 

「ワーム。」

 

 

(狙いは彼女か?)

 

 

状況について行けずに呆然としている夕美を一瞥すると龍牙は正面に立つ擬態夕美を睨みつける。

 

 

「大丈夫…私達と一緒になればみんな友達になれるから。」

 

 

そう囁くと擬態夕美はワームの姿へと変わる。蜘蛛の特徴を持った赤いワーム『アラクネアワーム・ルボア』へと。そして、それに合わせて、緑色の体色を持ったサナギワームが数体、姿を表す。

 

 

(まったく、今日は本当に厄日だな。)

 

 

「な、なに…これ?」

 

 

「仕方ないな。夕美だったな? 隠れてろ、こいつ等の相手はオレがする。」

 

 

夕美へとそう告げて空高く腕を振り上げる。龍牙の周囲を旋回する様に飛び回り、カブトゼクターが龍牙の手の中へと収まる。

 

 

「変身!!!」

 

 

 

 

《HEN-SHIN》

 

 

 

 

本日二度目となる叫び声を上げ、カブトゼクターをベルトのバックル部分へと差し込むと同時に電子音が響き、三度龍牙の体を銀色の装甲が包み込む。

 

 

龍牙が『仮面ライダーカブト・マスクドフォーム』へと変身すると同時に、サナギワーム達が一斉に龍牙へと向かっていく。

 

 

マスクドフォーム時の主力武器、クナイガンを取りだし、それをガンモードでサナギワームの中の一体へと向けて撃ち込み、反対から近づいてきた相手を空いた手で殴り飛ばし、素早くアックスモードへと持ち替えたクナイガンで切りつける。

 

 

そして、クナイガンの刃の部分『パヨネットアックス』を超高熱化させ、その場で回転し近づいてくるサナギワームをアックスモードのクナイガンの必殺技『アバランチブレイク』で纏めて叩き切る。

 

 

そして、残る敵がアラクネアワーム・ルボアだけとなった瞬間、力を溜めるような体勢を取り、そして、次の瞬間、アラクネアワーム・ルボアの姿が消える。

 

 

「ぐぅ。」

 

 

次の瞬間、突然襲い掛かった衝撃がカブトの体を弾く。何とかその衝撃に耐えた後、間を置かずに今度は次の衝撃が背中から襲い掛かる。

 

 

その後も、前後右左から絶え間無く衝撃がカブトを襲う。

 

 

「調子に…。」

 

 

カブトゼクターのゼクターホーンに振れた瞬間、カブトのマスクドフォームの装甲が僅かに浮かび上がる。

 

 

「乗るな! キャスト・オフ!!!」

 

 

そして、そのままゼクターホーンを一気に反対側まで移動させると同時に全身を包んでいる装甲が初速度、秒速2000mの速度で弾丸の様に撃ち出される。それによって加速状態のアラクネアワーム・ルボアは動きを止める。

 

 

そして銀色の装甲と言う殻に守られていた鮮やかな真紅のスーツを身に纏った姿を表し、顎のローテートを基点にカブトムシを思わせる『カブトホーン』が起立して頭部の定位置に収まり、真の姿《仮面ライダーカブト・ライダーフォーム》が現れる。そして、ゼクターより電子音が響く。

 

 

 

 

《Change Beetle》

 

 

 

 

そして、カブトの手が腰の部分に有るスイッチへと触れる。

 

 

「クロックアップ!!!」

 

 

 

 

《Clock up》

 

 

 

 

そう呟いた瞬間、電子音が響きカブトもまた加速状態へと入る。そして、カブトクナイガンをガンモード時のグリップ部分(アックスモード時の刃部分)から抜き、クナイモードにし、加速状態のアラクネアワーム・ルボアの姿を自身の視界の中へと捕らえる。

 

 

此方へと向かってくるアラクネアワーム・ルボアの攻撃をクナイモードのクナイガンで受け流しながら着実に切り付けて行く。

 

 

そして、アラクネアワーム・ルボアの懐へと踏み込み、カブトクナイガンを突き刺すと同時に真上に振り上げる。そして、それによって怯み、後に後退した瞬間を逃さず、カブトはゼクター上部のスイッチを流れる様に押し、

 

 

 

 

《1》《2》《3》

 

 

 

 

反対側に倒れていたゼクターホーンを元の位置に戻し、再び倒す。

 

 

「ライダー…キック!」

 

 

 

 

《Rider Kick》

 

 

 

 

電子音が響くと同時に頭部のカブトホーンから、右足へとエネルギーが流れて行く。そして、

 

 

「破ァ!!!」

 

 

放たれた上段回し蹴りがアラクネアワーム・ルボアへと叩き付けられる。

 

 

「グォォォォォォ!!!」

 

 

 

 

《Clock Over》

 

 

 

 

アラクネアワーム・ルボアが大地に倒れた瞬間、自身の勝利を確信したカブトが天を指差した瞬間、その勝利を告げるように電子音が響き、加速状態が終了する。

 

 

そして、アラクネアワーム・ルボアの爆散する花火がカブトの勝利を告げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カブトゼクターがベルトから外れ、カブトの装甲が飛び散っていくと、龍牙の勝利を祝福する様に上空を飛び回り、飛び去っていく。

 

 

「なに…あれ…?」

 

 

一人呆然と立ち尽くしていた少女…夕美が力が抜けた様に地面に座り込み、一言だけ呟きが漏れた。

 

 

「…何? なんて聞かれてもな…。」

 

 

そう呟いた後、意を決すると彼女の手を掴んで立ち上がらせる。

 

 

「な、なに?」

 

 

「…とにかく、今はここを離れた方がいい。また会いたくない奴と再会なんて言うのは御免だからな。納得できるまで説明してやる。」

 

 

「う、うん。」

 

 

夕美の手を引きながら龍牙はその場から走り去る。

 

 

 

 

 

 

つづく…

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