【完結】ハリー・ポッターとワシ使いの傭兵   作:丹寺 錯視屋

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映画のノクターン横丁シーンは色々と好き


ノクターン横丁の貴族

1992年 8月 隠れ穴

 

 食事を終えて、お茶をしてしばらく。

 

「――なるほど。カサンドラはマグルと魔法使いが戦争になった場合、魔法使いは勝てないと考えていらっしゃるんですな」

「ああ。まあ、多少大げさに言っているというのはあるが。技術、数、それもあるが……。特に十年前に闇の魔法使い共に信頼関係をぐちゃぐちゃにされたのが致命的だ」

 

 アーサーとカサンドラは子供たちが楽しげに話しているテーブルから離れ、窓際で話していた。カサンドラは壁にもたれかかり、アーサーは神妙な様子でメモを取っている。カサンドラとしてももう少し楽しい話をしたかったが、アーサーが魔法省の役人で、しかもマグルから見た魔法界はどう感じるかと聞かれれてしまえばやむをえない。政府側に危機感を持ってもらわねばならないのだから。

 

「それほどまでに、ですか」

「個人的な意見だがな。もし仮に特定の地点に行って死ぬまで戦ってこいと命令されて素直に従う魔法使いがそれほど多いとは思えない。それこそ、ダンブルドアが命じたのでもない限り」

「……それは、そうでしょうな」

「だがマグルの軍隊は階級章さえついていれば、ダンブルドアが命じたかのように忠実に命令に従う。集団としての強さが天と地ほども違うんだ。もはや、英雄が一人いたくらいで戦争に勝てる時代じゃない。万が一ヴォルデモートが復活し、奴がマグルに戦争を仕掛けでもしたら……勝てるとは思えない」

「しかし、我々には……不本意だが、闇の魔術がある」

 

 カサンドラとして同意したい。確かに、服従の呪文をうまく使えばそれなりには戦えるだろう。むしろ、勝利を目指すならそれしかないと言えるほどである。

 

「それはそうだが、アーサー、マグルへの勝利を目指して闇の呪文を運用するなら、ホグワーツの授業に『闇の授業』か『禁じられた呪文学』の科目が必要になるぞ。もちろん教師はヴォルデモートだ」

 

 問題は、闇の魔法使い、もっと言うなら死喰い人陣営でないと闇の魔術に精通した人間がいないということだった。

 

「その二つが科目にあるホグワーツはホグワーツとは言えません」

「私もそう思う」

 

 というかそこまで行くと兵士の養成学校だ。

 

「その、私はマグルがそんなに強いとはとても思えないのですが……そんなに、ですか?」

 

 カサンドラは思い出すようにして語る。

 

「まぁ……確実に核は使わないだろう。なんだかんだ言ってイギリス国内だからな。使うとしたら……ライフルくらいか? 空爆もしないだろうしな。300メートル先から死の呪文が毎秒10発くらい飛んでくる武器を兵隊全員が持ってると考えてみろ。しかもその人数は10人20人じゃないぞ、数千人、下手したら数万人だ」

「……」

 

 呆然とするアーサーを、カサンドラはまっすぐにみられなかった。

 

「去年、クィレルはそんなマグルを撃滅する手段としてヴォルデモート復活を選んだ。アーサー、頼むから魔法使いがマグルと上手くやっていけるような魔法界に変化させてはくれないか?」

「ど、努力はしますが……それができるかどうか」

「期待してる。私は……ハリーたちがマグルの銃弾で殺されるところなんて見たくないし、マグルか魔法界か、どっちについて戦うかなんて考えたくもない」

 

 カサンドラは首を振った。

 

「もう辛気臭い話はやめよう。煙突飛行粉(フルーパウダー)の使い方を教えてくれ。魔法使い体験ツアーだ」

 

 アーサーはしばらくメモに何やらを書いていた。そして、書き終わるとメモ帳をくたびれたスーツの中にしまった。

 

「そうですな。重ね重ね、フレッドを救っていただいて本当にありがとうございます」

「怒鳴られる覚悟もしていたんだがな。息子を刺したんだぞ?」

()()()から解放されるためなら、その程度なら軽いものです。あの時代を知る者なら、誰もがそう言うでしょう。あの子の笑顔が二度と見れなくなる可能性もあった。……ああして悪戯をする光景を見ることがなくなっていたかと思うと、肝が冷えます。まあ、私の車を強奪するのは避けてほしかったですが。……切実に」

「だろうな。さ、行こう」

「ええ」

 

 アーサーは厳しい表情を柔らかく変化させた。

 

「さあ、子供たち! そしてハリー。新学期に向けて買い出しに行こう。さあ、一番乗りは誰だい?」

「俺が行くよ!」

 

 双子の片割れが立ち上がった。

 

「よし、行きなさいフレッド」

「いいや、俺はジョージだよ、パパ」

「何? そうだったか。ジョージ、行きなさい」

 

 双子の片割れは悪戯っぽく笑うと、暖炉のそばにある灰のような粉をひと掴みした。

 

「ほんとは俺がフレッド。『ダイアゴン横丁』!」

 

 ぼん、と音を立てて煙が立ち上り、それが晴れるとフレッドはいなくなっていた。

 

「すごいな。不思議で、まさしく魔法だ」

「その通り。あの粉をひとつかみ。そして行き先を叫ぶ。『ダイアゴン横丁』」

 

 どんどんとウィーズリーたちが煙に包まれ、消えていく。

 

「さて、ハリー。お先に失礼するよ」

「うん。先に行ってて」

 

 カサンドラは粉をつかむ。なぜかはわからないが変に緊張する。そういえば去年一年、魔法界にいたとはいえ魔法自体に触れたことはなかった。そう考えれば、これが初めての『魔法体験』というわけだ。もちろん、闇の魔術で拷問されたことはカウントしない。

 

「んん、よし、こうか? 『ダイ()ゴン横丁』!」

 

 んー、間違ったかな? そう思ったが、同じように煙に包まれたので大丈夫だろうとカサンドラは楽観していた。

 

 ――

 

 煙が晴れると、そこはずいぶんとくたびれた様子の家だった。ウィーズリー一家が一人もいない。

 

「……ここはどこだ?」

 

 どうやら店の一つらしい。だが、妙だ。干からびた人の手が吊り下げられていたり、血まみれのトランプ、時々震える髑髏など、あきらかに、いかにも『呪われていますよ』と主張するようなアイテムが大量に並べられている。

 

「いらっしゃい。うちに暖炉飛行するとは珍しい。……ん? その恰好、お前、マグルか?」

「私はホグワーツ勤務だ」

「そうかい」

 

 そういえば、バーノンに会いにいったままの格好なので、今のカサンドラはスーツにジャケットという、いかにもマグルな装いだった。だが、ホグワーツ勤務といえば男はカサンドラへの興味をなくしたらしい。

 

「すまんが、お前さんの相手はしてられん。今日は上客がいらっしゃるんでな」

「気にするな。適当にみておく」

「命か心が惜しいなら、けっして手を触れんことだ」

 

 カサンドラはうなずくと、ウィンドウショッピングに興じることにした。なになに。『磔の呪文で狂死したマグルの頭蓋骨。触れたものに磔の呪文と同じ苦痛を与える』。隣の髑髏を見てみる。『みぞの鏡に魅入られ、餓死した人間の頭蓋骨。触れたものを狂った世界に誘う』。ろくでもない店だということが一瞬で判明した。早急に出るべきか。ただまあ、店主は『いかにも』な店の割には普通だし、手を触れるなということは、逆に言えば手さえ触れなければ安全ということだ。なら気にすることはないか。マグルの銃器店と似たようなものだ。

 カサンドラは好奇心を満足させるべく店を回る。すると、店の入り口が開いて、一人の男性と、その男性をそのまま子供にしたような少年が入ってきた。少年はカサンドラを見るとあからさまに顔をしかめた。

 

「げ、カサンドラ……。なんでここに」

「おお、マルフォイか。元気だったか?」

「おかげさまでな。お前に会わなければもっと素敵な夏休みだったろうに」

「そりゃ悪かった。まあ、狭い魔法界だ。こういうこともあるだろう。……えっと。あんたは? 私はカサンドラ。ホグワーツで警備員をやっている」

 

 カサンドラは男性に手を差し出す。男性は応えなかった。

 

「私はルシウス・マルフォイだ。全く。まさかマグルが堂々と魔法界を闊歩するようになるとは。嘆かわしい……」

「気持ちはわかるが、ダンブルドアの判断をもう少し信用したらどうだ」

「そのダンブルドアが耄碌したと私は言っている」

「そう見えるか?」

 

 マルフォイはカサンドラに眉を上げたが、すぐに興味をなくしたらしい。

 

「ドラコ。一切、ほんの少しも手を触れるんじゃないぞ」

 

 すでに周囲の品々に興味津々な息子に、ルシウスは鋭く注意する。ドラコは干からびたとぐろを巻いた蛇に向かっていた手を慌てて引っ込める。

 

「わかっています、父上。それで、今日はいくつまでなら買っていただけるのですか?」

「ひとつ()。そう、ただの一つもここでお前に買い与えることはない。あとで箒を買ってやるから、それで我慢しなさい」

「なぜです? てっきり、プレゼントしてくれるものだと」

「ふむ。カサンドラ。去年の息子の成績をご存じかな?」

「ん? まあ。結構上位だったように覚えている。ドラコ、去年は頑張ったじゃないか」

 

 廊下にでかでかと張り出されていた試験結果はカサンドラも確認していた。交流のある生徒の分しか確認していなかったが、ドラコのは覚えていた。

 

「ほら、父上!」

「ドラコ」

 

 あきれたようにルシウスが言う。

 

「マグルに『結構上位』で済まされる成績、つまり、何位か覚えてもらえないような成績で、この私に褒めてもらえると思ったのなら、それは、それはすさまじい見当違いだと言っておく。それに、マグル生まれの生徒にありとあらゆる科目、試験で負けたことを私が知らないと思っているのか?」

「グレンジャーに勝てって? 知ってる父上。あいつは先生に贔屓されているんだ。なんたって100点満点の試験で1()2()0()()取ったんだ!」

「そこで『贔屓にされている』と感じる感性を、恥じ入るべきだと私は考えるが。普通、贔屓するにしても満点が限度だ。そこに考えが至らないからマグル生まれに負けるのだ」

「……でも、ポッターは贔屓されてる。額にバカみたいな傷があって、それで去年はクィディッチのシーカーに選ばれて、マクゴナガルからニンバス2000をプレゼントされたんだ! あんな、名声だけの、問題児が! どうせ去年の秘密だって、カサンドラにおんぶだっこで守ってもらったに違いないんだ!」

 

 ルシウスはめんどくさそうにため息をついた。

 

「その話を何度すれば気が済むんだ? ドラコ。私は嘆かわしい。栄えあるマルフォイ家の嫡男が、よもやくだらない陰口を、そして聞くに堪えない僻みを休み中親に聞かせるように育つなど。それに、何度言い聞かせれば理解できるんだ。ハリー・ポッターと表立って敵対してお前になんのメリットがある? ハリー・ポッターと仲良くなり、友人となっていれば、今頃お前もハリーの栄光の一部をかすめ取ることができたというのに……。全く。セブルスは一体何を寮生に教えているのだ。スリザリンの狡猾さとは、陰口を叩くだけではないと本当に教わっていないのか?」

「え、あ……その」

 

 助けを求めるような目を向けてくるドラコに、カサンドラは肩をすくめた。どっちもこっちも、子供の教育は大変だな。

 

「――噂に名高い最強無敵の、ふ。最強か。……最強の傭兵殿はいかがお考えかな? まさか、ホグワーツの警備員ともあろうものが、スリザリンだけ差別するようなことは、あるまいな?」

「当然だ。人は悪意と善意、そのバランスがなければ進歩しない。スリザリンは多少ほかの寮への当たりが強いが……寮の中での結束、友情はどの寮よりも強い。あまり交流はなかったが、クラッブやゴイルなどは、スリザリンでなければ上手くやっていけないだろう。ご子息がよく面倒を見ていたのを覚えている」

 

 まあスリザリンが問題を起こすことも多いが……カサンドラにしてみれば、そんなもの他の寮も変わらない。カサンドラが事態を収めた数なら、スリザリンよりもグリフィンドールのほうが多い。

 

「ふむ。正しくホグワーツの職員としての意識があるようで何よりだ。マグルが警備員と聞いて不安でしようがなかったが。貴様ならそう大きな問題は起こさないだろう」

「お褒めにあずかり光栄だ。それで、ルシウスはこの店に何の用か聞いてもいいか? その、誉れあるマルフォイ家の当主が来る店だとは思わないが」

 

 カサンドラが興味本位で聞くと、ルシウスは顔をゆがませた。

 

「私とて来たくて来ているわけではない。……少なくとも今は」

 

 ルシウスは懐から紙を取り出すと、カウンターに置いて、とんとんと指をさした。

 

「へえ、へえ。マルフォイ様。いつも御贔屓にしていただいてありがとうございます。若様も、ようこそいらっしゃいました。それで……ふむ、このリストの品を揃えればよろしいのですな?」

「逆だ」

「へえ?」

「このリストの品を売りに来た。額は適正ならばどうでもいい。重要なのは、私がこの品を所有していたと、そんな事実は()()()()()事だ」

「もちろんでございます」

「……全く。忌々しい。最近は闇の魔術に関する物品の所有規制が激しくなっていく」

「いやいや。マルフォイ様。魔法省なんかがマルフォイ様に立ち入り検査など……そんな愚弄するような真似、できるわけがありませんぜ」

()()()()な。我がマルフォイ家はまだ先祖代々の尊敬を維持している。だが、役所は……魔法省は、徐々に、だが確実にうるさくなっていく。最近はマグル保護法などが制定されるという動きもある。忌々しい、赤毛の、アーサー・ウィーズリーめ」

 

 おっと。カサンドラは気まずい思いをする。まさかアーサーの政敵が目の前にいたとは。確かにルシウスとアーサーが仲良く事務机を並べている姿は想像できない。杖を向け合っている光景なら想像できるが。

 

「……マグルとしてはどうなのかね、保護法は」

 

 忌々しそうに、カサンドラに話題を振ってくる。もしかしたらカサンドラの言葉すら妨害に使うつもりだろうか。

 

「どんな内容なんだ。その、『保護法』とは」

「基本的にはマグルに敵対的な魔法を使うなという内容だ。それに、マグルの工業製品に魔法をかけることも禁止している。所持は合法だが」

「……まあ、ノーコメントだ。ここで私が話して、マグルに対する対応が左右されたら、責任を負いきれない」

 

 カサンドラが言うと、ルシウスは鼻を鳴らした。

 

「賢いことだ。長生きするぞ」

「もう十分生きた」

 

 カサンドラの返答に怪訝な表情をしていたが、ルシウスは気にせず店主に向き直った。

 

「よいか。このリストにある品は全て、私の屋敷にある。間違いなく、回収に来るんだな?」

「もちろんでございます」

 

 大人の話に興味をなくしたドラコが、19人のマグルを絞め殺した呪いのネックレスに興味を惹かれ、手を伸ばす。慌てて、カサンドラはその手をつかむ。

 

「カサンドラ、何を」

「触るなと、言われただろうが。私は魔法には全く詳しくないが、触れた瞬間にこのネックレスがお前の首に巻き付いたらどうするつもりだったんだ」

「そんなことあるわけがないだろ!」

 

 ふむ、とルシウスの厳しい声が響く。

 

「まったくもって実に忌々しいが、私は彼女の意見に同意する。ドラコ、私は、なんと言った?」

「……触れるなと」

「そう、一切、何も、手を触れるなと。そう私は言った。――ドラコ。箒もなしになりたくなければ、大人しくしておくんだ」

 

 イライラとしている様子でルシウスは言った。商談に入りたいらしいが、ルシウスは息子が気になって仕方ないようだ。もう店をあらかた楽しんだカサンドラは、ルシウスに提案する。

 

「……店の外で待っていようか? 出てくるまで、ご子息の面倒は見ておく」

「――。それには及ばん。……と、言いたいがな。私の息子は私が想像している以上に愚図のようだ。是非、お願いしてもよろしいかな」

「ああ。気にするな」

 

 カサンドラはドラコの手をつかんだまま、店の外に出た。その瞬間、ドラコが手を振り払った。

 

「何するんだよ!」

「それはこっちのセリフだ。いいか、呪いの物品の中にはおそらく『秘宝』もある。絶対に近づくんじゃない」

「『秘宝』? なんだよそれ」

 

 興味が引かれたらしいが、カサンドラは何も面白おかしい話をするつもりはなかった。

 

「かつて来たりし者……簡単に言えば、我々人間よりもはるか前にこの世界を支配していた存在だ。被造物である人間が手に負えなくなったから、すさまじい『秘宝』を作って人間を制御しようとした」

「……それって、神様のことか?」

「神のようでいて、神ではない。神は殺せないが、かつて来たりし者たちは殺せるし、死ぬ。現に一人も生き残っていない」

「……そいつらが作った『秘宝』ならすごいアイテムじゃないのか?」

「資格を持つものでなければ、使うどころか心を操られて無茶苦茶になる。呪物にはそんな『秘宝』に負けず劣らずの危険物が山ほどある。自分の父親を殺したあとに自殺するような事態になりたくないなら、不用意に呪いの品に触るな」

 

 ドラコは不思議そうだった。

 

「『秘宝』だって? そんなの、父上からも聞いたことないよ」

「その父上に『みぞの鏡』について聞いてみろ。あのネックレスだって、どんな効果があるのかわかりもしないのに触ろうとするなんて」

「マグルを絞め殺したんだろ? 効果はわかってるじゃないか。首にかけなきゃ大丈夫だ」

 

 カサンドラはため息をついた。

 

「手に触れたら効果が発動し、勝手に体を乗っ取って首にかけられるとは考えなかったのか」

「……あ」

「お前は闇の呪物を扱うには視野が狭すぎる。今は父親の元でよく学ぶといい」

 

 カサンドラの言葉に、ドラコは訝しげな表情をした。

 

「……カサンドラは、闇の魔術に関することに家が関わってても、何も言わないんだな」

「闇の魔術だろうが、普通の魔法だろうが、しょせんは使う人次第だ。それに、完全に闇の魔術を排除したら、どうやって闇の魔術に対する防衛術の授業をするんだ」

「……変なマグル」

 

 カサンドラは肩をすくめた。ちょうど、ルシウスが店から出てきた。

 

「迷惑をかけたな、カサンドラ。報酬だ」

 

 ルシウスはガリオン金貨を差し出してきた。カサンドラは特に何も思うことなく受け取る。

 

「これだから貴族相手の仕事はやめられない。金払いがいい」

「いろいろと礼を考えたのだがな。どうやら傭兵を名乗っているらしいじゃないか。ならば、金がいいだろうと思ったまでだ。満足したならそれでいい。とっとと私の視界から消えてもらえれば、もっと嬉しいのだがな」

「ああ。私もおそらく連れ合いが待っているはずだ。まいどあり。ドラコ。また新学期、待ってるぞ」

「か、金に意地汚い」

「私は今でも傭兵だからな」

 

 そういうと、カサンドラは周囲を見る。ちょうど看板があった。ここはどうやらノクターン横丁というらしく、ダイアゴン横丁への道は矢印で示されていた。

 

「じゃあ、また何か依頼があれば報酬と内容次第で承る。ホグワーツの警備員をしている最中でなければな」

「……。覚えておこう」

 

 カサンドラは手を振りながら、ダイアゴン横丁へと歩いて行った。

 

「……あれがマグルなら、保護が必要なようには見えないな」

「保護? カサンドラを? ずいぶん冗談がお上手ですね」

「まったく。お前はもう少し口の利き方に気をつけろ。敵を作るばかりだぞ」

 

 ルシウスはドラコを乱暴に撫でた。

 

「では、我々も行くとするか」

「はい、父上。箒ですね。しかし、まだチームに選ばれてもいないのに……」

「なに、買収とは何もガリオン金貨を目の前に積み上げるだけではないのだ」

 

 ルシウスは貴族としてのスマートなやり方を息子に教育することにした。

 その教育がちゃんと息子に届くかどうかは、今はまだわからない。

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