【完結】ハリー・ポッターとワシ使いの傭兵   作:丹寺 錯視屋

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羽付きピクシーは映画版設定です


恐るべき生き物

――

 

1992年9月 闇の魔術に対する防衛術、教室

 

「私だ」

 

 ハリーは愕然とした。

 貴族のような服を着て、豪奢な金の刺繍があしらわれたマントをつけたロックハートが堂々と、流れるようなしぐさで紙を配っている。小テストをするらしい。まあ、それはいい。

 スリザリンとグリフィンドールの合同授業で、さっき言い合いをしたマルフォイの席が近い。それもまあ、いい。

 

 なぜ、クラス中の女子生徒が、ロックハートをうっとりと見つめているのだ。しかも、あのハーマイオニーですら。

 

「ギルデロイ・ロックハート。勲三等マーリン勲章、闇の力に対する防衛術連盟、名誉会員。そして『週刊魔女』で五回連続『チャーミング・スマイル賞』受賞――尤も、そんな自慢話をするつもりはありませんよ。バンシーをスマイルで追い払ったわけではありませんしね!」

 

 ロックハートは教室が笑いに包まれるのを期待したようだったが、数人が愛想笑いをするだけで、そもそもジョークだとも理解されなかった。それでも女子生徒からの人気に陰りが見えないのは、たしかにそう、カサンドラが言うようにある種の才能なのだろう。

 

「……空気中に撒く『愛の妙薬』なんてあると思う?」

 

 ハリーは決して認めようとはしなかったが。

 

「スネイプに今度聞いてみろよ」

 

 ハリーの質問に、ロンはげんなりと答えた。

 

「それにしても、コリンはなんとかならないかな……」

「僕にはわからないよ。とにかくジニーと会わせないようにしないと。じゃないとあいつら二人で『ハリー・ポッターファンクラブ』を作りかねないぞ」

「やめてよ簡単に想像できちゃうから……」

 

 ハリーは隣の席のロンとおしゃべりしながら、前から送られてきた小テストを受け取り、後ろの座席に送った。そして、自分の机にある小テストを確認して、目を点にした。

 

『小テスト

 

 1、ギルデロイ・ロックハートの好きな色は?

 2、ギルデロイ・ロックハートの密やかな大望は何?

 3、ギルデロイ・ロックハートの……

 ・

 ・

 ・

 ・

 30、ギルデロイ・ロックハートの誕生日はいつで、理想的な贈り物はなに?』

 

 裏と表、びっしりと書かれた30問のくだらない質問を小テストと言い張る度胸を、ハリーは称賛したかった。もしかしてロックハートはこの授業をカサンドラに見せたかったのか? 冗談だろう? 男女の機微とかそういうことに全然疎いハリーですら、この小テストを最初にやらせる授業を好きな人に見せびらかしたら、その時点でフラれるってことがわかる。

 

「全員、私の本を揃えているようで、実になによりです。今日は最初にそのテストを実施したいと思います……心配ご無用! ただ、どれだけ()()を、つまり、私の本を読みこんでいるかという確認をしたいだけなので、点数が低くても減点は致しませんとも。もちろん、加点はありますので、皆さん頑張ってください」

 

 それとももしかしてこの小テストをカサンドラにもやらせる気だったのか? 普通に考えれば、カサンドラがこんな生徒を愚弄したようなことを許すわけがない。

 

「時間は三十分……皆さんに用紙がいきわたったようですね。それでは、はじめ!」

 

 だが、今のハリーには、苦笑しながらこんなバカみたいなテストに付き合い、冗談まじりに答えを本人に確認しながら項目を埋めていくカサンドラの姿が想像できてしまった。

 ハリーはもう何もかもがバカバカしくなって、超適当に解答することにした。

 

『1、ドドメ色

 2、ダンブルドア暗殺

 30、1月1日、泥のケーキ』

 

 一言だけ文字を書いて、早々にテストを終わらせたハリーは、他の男子生徒が――マルフォイでさえ――やっているように、教科書を山にして枕にし、机に突っ伏した。

 一生懸命に、嬉しそうに答案用紙に書き込むハーマイオニーの姿が、今まで見てきた中で一番バカっぽく見えた。

 

 答案を回収したロックハートは、一枚一枚答案を確認する。

 

「ふむ、ふむ。さすが、女子生徒は得点が高いですね……しかし、ふむ。みなさんなら満点を取れると思っていたのですが……。まさか私の好きな色がライラック色だということを覚えている生徒がこれほど少ないとは。ボーナス問題のつもりだったのですが。それに……おお! 皆さん! ハーマイオニー・グレンジャーは私の大望を知っていました! この世界から悪を打ち払い、私が立ち上げたブランド整髪料が世界を席巻することだと! それだけではありません! ハーマイオニーが満点! 満点を取りました! みなさん拍手! そして、グリフィンドールに20点!」

 

 パチパチと女子生徒が拍手するなか、男子生徒はげんなりとしている。今年最初の得点が、こんなにも下らないことだなんて思わなかった。ハリーはハーマイオニーに目を覚まさせるのにはどうすればいいだろうか、と考えながら嬉しそうに答案を確認するロックハートを睨む。

 

「さてさて。みなさんはちゃんと私の著書……いや、教科書を読みこんできたようですね。素晴らしい。カサンドラから去年の生徒は悲惨な授業だったと聞いています。ですが、もう心配ご無用。なぜなら最高の教材に、最高の教師。それはつまり、最高の授業です。では皆さんに今年の授業を象徴する一幕を、ご覧に入れましょう」

 

 ロックハートはそう言って、覆いを被せられた円筒形の何かを教卓にどん、と置いた。大きさはちょうど、そう、ヘドウィグの鳥籠サイズ。おそらく中にいるのもそのサイズの生き物だろう。きぃーきぃーと金属が擦れるような嫌な鳴き声がたくさん重なり、鳥籠はガタガタと不安定に揺れている。

 

「皆さん! 注意してください。

 この中に、恐ろしい化け物がいます。けして、驚かないで。けして、騒いではいけません」

 

 ロックハートは生徒たちの瞳が不安げに揺れるのを確認してから、さらに言う。

 

「なぜなら――彼らが、興奮してしまうのでね!」

 

 パッと覆いを外すと、教室中で短い悲鳴が上がる。

 

 まるで小さな小鬼のような、青白い肌に白目のない、黒目ばかりの目玉。蝙蝠みたいな耳に、痩せぎすの体。皮膜のついた羽は、狭っ苦しい中でも忙しなく動いている。

 

 ――悪戯妖精、ピクシーが、すし詰めになって鳥籠に入れられていた。

 

「そう! 彼らはコーンウォールから直に仕入れてきたピクシーです。なんとも恐ろしい外見です」

「先生」

 

 グリフィンドールの生徒、シェーマス・フィネガンが半笑いで聞いた。

 

「こいつらが、()()()()()()()()、ですか? 全然、そうは見えませんけど」

「思い込みはいけません! 確かに、彼らは()()()()、弱っちくて容易く退治できそうな外見です……。しかし、経験してみないことにはわからないでしょう。なので、皆さん――この恐ろしい化け物相手にどう対処するのか……お手並――」

 

 ロックハートが鳥籠の扉に手をかける。

 

「――拝見!」

 

 解放されて、ピクシーたちは一斉に飛び出した。我が世の春とばかりに生徒たちに悪戯しまくる。生徒たちは上を下への大騒ぎになった。ロケットのようにビュンビュン飛び回るピクシー相手に、ピクシーと同じくらい甲高い悲鳴を上げて逃げ惑うしかできない。

 数匹がガラスを突き破って、教室をガラスの破片塗れにした。机に置いてあるインク瓶をひっつかむと水を撒くみたいに振り撒いた。他にも杖を取り上げられて勝手に使われるもの。本を奪われて中身をビリビリに破かれるもの。フィネガンなんて四匹がかりでシャンデリアに吊るされてしまった。数分もすると、生徒の大半は机の下に避難し、少しでもピクシーに見つからないよう息を潜めるようになった。

 

「おや、おや。()()()()()()()ピクシー相手に手も足も出ないようですな。では、私が対処して差し上げましょう」

 

 ロックハートは杖を取り出す。若干緊張した面持ちで、杖を振る。

 

「『ペスキピクシペステルノミ――ピクシー虫よ去れ!』」

 

 ロックハートが呪文を唱えるもの、まるで効果がない。つまりそれは、ウィーズリーの悪戯双子よりも厄介な飛び回るピクシー達に対応できる人が誰一人いないことと同義だった。何度か同じ呪文を唱えるが結果は変わらない。呆然としているロックハートの杖をピクシーの一匹がさっと奪い取り、窓の外へと放り投げた。いよいよおしまいだ。もうこの教室はピクシーの王国へ変わるんだ。ハリーは絶望した。今年一年ピクシーに占領された教室でこの授業を受けることになるなんて!

 

「あー……。諸君! ピクシーを檻に戻しておくように。では今日の授業はここまで!」

 

 あっという間に、あっさりと。ロックハートは生徒たちにそう宣言すると一方的に授業を切りやめ、教室から出て行った。責任感の欠片もない所業に、ハリーは叫ぶ。

 

「何が! チャーミングスマイル賞だ! ピクシー退治もできないくせに! こんなザマをカサンドラに見せようだなんてよく言えたよ!」

 

 ハリーは机の下に身を隠しながら、周囲をうかがう。もうみんな机の下に避難している。していない生徒は全員被害にあって気絶してるかシャンデリアにつるされている。

 

「何よハリー!」

 

 ハーマイオニーは杖を引き抜きながら机の下から躍り出た。右手に杖を、左手に本を持って、毅然と立ち上がる。ピクシーが2匹殺到するが、ハーマイオニーは本で一匹を叩き落とし、剣のように杖を振るって、もう一匹を迎撃する。

 

「ロックハート先生は私たちを試してる最中よ! 私たちならそれができると信じてくださってるだけ! 私は証明してみせる!――

 

 

 ――こんな風に!『イモービラス――動くな』!!」

 

 

 

 ロックハートのへっぽこ魔法とは違い、完璧に制御された静止魔法は、空をビュンビュン飛んでいた全てのピクシーの動きを止めた。鬱陶しい金切り声と大暴れする羽音が聞こえなくなって、生徒たちはゆっくりと机の上から出てくる。

 ハーマイオニーは健気にもロックハートの言いつけを守り、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら空中に止まっているピクシーを掴んでは籠に入れていく。

 

「――みんな、一緒に籠に戻すのを手伝って?」

 

 ハーマイオニーはキョトンと教室にいるみんなに促す。自信に溢れたその立ち振るまいは、去年のハーマイオニーと違い、みんなの目に眩しく映った。

 

「ハーマイオニー、ありがとう。ホント、すげえや。その、ごめん。酷いこと言った」

 

 絶賛『ロン・ウィーズリー空気扱いキャンペーン』中のハーマイオニーがその言葉に返してくれるかどうかはロンにとっては賭けだった。

 

「――。……。ええ。まあ、いいわ」

 

 クラス中の称賛を浴びている最中のハーマイオニーは気分がよかったらしく、なんとか、しぶしぶロンを許してくれたようだ。

 

「それにしても……あいつ、本当にあれで教師を名乗るつもりなのかな」

 

 ハリーがロックハートが出て行った扉を睨みつける。

 

「ハリー。ロックハート先生は私たちに体験学習をさせたかっただけよ。その証拠に、もうピクシーを侮る生徒はもう一人もいないはずよ」

「体験学習? ハーマイオニー、重要なのは彼が自分の功績の割に低い能力しか生徒に見せなかったってことだけだよ」

 

 ハーマイオニーは最後のピクシーを籠に叩き込み、鳥かごを閉めた。

 

「ハリー。彼の著作をちゃんと読んだかしら? 教科書よ、教科書。あれほどの……カサンドラに匹敵するくらい、冒険を積み重ねてる。それは称賛されるべきよ」

 

 本人はやったとおっしゃいますがね、とロンは言いたかったが、また無視されては困るので、なんとも言えない表情で首を振ることしかできなかった。

 

――

 

 今年は最悪だ。ハリーはそう思わずにはいられなかった。なにせ、ロックハートの『有名学』はふらりと彼に出会う度に開催されたし、ハリーのおっかけと化したコリンは昼夜問わず写真にサインにと鬱陶しい。しかも「やあコリン、おはよう」と声をかけるだけでまるで映画俳優に出会った時みたいに大騒ぎするものだから、ハリーの精神はがりがりと削られる。ロックハートの『有名学』はハリーの心情とかけ離れていてまったく参考にならなかったが、唯一『熱心な追っかけをやんわりと断る方法論』だけは役に立った。ロックハートに言われた通りに振舞って、コリンが驚くくらいあっさり引き下がった瞬間だけは、ロックハートを心の中で『先生』と呼んだ。次の『闇の魔術に対する防衛術』の授業の内容が『演劇』だった瞬間には呼び捨てに戻ったが。

 問題を抱えているのはハリーだけではなく、ある意味ロンもそうだろう。暴れ柳に突撃したときに誤って杖がぽっきりと折れてしまったのだが、その状況が一切改善していないのだ。スペロテープとかいうダクトテープと違いがさっぱり分からないテープでくっつけてとりあえず『杖』と呼べるような形状に整ってはいるが、その中身は全然違う。具体的に言うとありとあらゆる魔法がまともに発動しない。逆噴射して泡塗れになったりするなどしょっちゅうだ。他にも全然違うところに魔法が飛び出したり、効果が違ったり……。新しい杖を買ってもらおうにも事情が事情だ。『そのまま今年度一杯、『退学体験』としてそのまま過ごしなさい』とでも吠えメールが届くのが関の山である。

 ハーマイオニーもそうだ。去年度に比べて少し勇ましく、視野が広くなった彼女だったが、ロックハートに対しては目が曇ったままだった。演劇の授業を三回連続でした時点で男子生徒だけでなくほとんどの女子生徒が彼を見限ったが、ハーマイオニーだけは熱心にファンを続けていた。

 

 そう言った問題のもろもろを週末である今日、いつもの三人でハグリッドを訪ねて愚痴を言いつくそうと計画していたのに。ハリーはまだ日も登りきらないうちにオリバー・ウッドにたたき起こされた。

 

「え、ええ? にゃにごと?」

 

 寝ぼけたまま、ハリーは返事をする。めがねをゆっくりとつけると、ユニフォームに着替え、箒を持った彼が見える。

 

「オリバー、どうしたの?」

「練習だ! 10分後に練習ができる格好で談話室に!」

 

 それだけ一方的に告げると、つかつかとハリーの居室から出て行った。数秒後、同じような叫び声が別の居室から聞こえた。

 

「……本当に練習するの?」

 

 嘘だと言ってほしかったが、オリバーは本気も本気、マジだった。ハリーは慌ててユニフォームのローブを着て、ベッドわきに立てかけてあるニンバス2000をひっつかむ。談話室にあくびをしつつ降りると、もうチームは大体集合していた。

 

「……フレッド、もしかしてこれ、恒例だったりする?」

「ああ。この時期はオリバーがイカれるからな。まあ、じきに慣れるさ」

 

 ハリーはげんなりとする。最後のチームメイトの腕を掴んだままで登場したオリバーの目は爛々と輝いていて、いっそ不気味だった。まだ夜が明けたばかりでこのテンションである。

 

「オリバー、本当に練習するの?」

「当然! カサンドラから聞いたぞ、マグルのスポーツチームは『朝練』すると! 毎回チームから『朝早すぎる』と文句が出ていたのだが、マグルがやっているなら我々魔法族ができない理由はないだろう! さあ、今ならまだほかのチームは今年度の練習を始めていない。いくぞ!」

 

 カサンドラ……。ハリーは彼女を恨めしく思う。競技場に歩きながら、彼女にどう抗議しようかと考えていると、後ろからハリーを呼ぶ声が聞こえてきて、ハリーはため息をついた。

 

「ハリー、ハリー! オリバーがあなたを呼ぶ声が聞こえて! ねえ、おねがい、ユニフォーム姿を撮ってもいい?」

「ダメ。僕は今から忙しいんだ。チームの……クィディッチの練習があるんだ」

「わお! 空飛ぶ箒を使うんだよね! 僕も見学に行くよ!」

「……」

 

 写真とサインは断れても、競技場に行って見学するのを止めることはできない。ハリーは気分が落ち込むのを感じた。また勝手に写真を撮られることを思えば無理はない。

 

「朝から元気だな……」

 

 競技場までの道を歩いていると、眠そうなカサンドラがチームに合流した。

 

「おはようカサンドラ。どうしたんだ?」

「お前らが競技場に行くっていうから、一応な。今この学校で動いているのはお前らだけだ」

 

 あくびを噛み殺しながら、カサンドラが答える。

 

「そうか。警備はありがたいが、カサンドラ。くれぐれも、くれぐれも! 我々の練習風景を他言するのはやめてもらいたい」

「わかったわかった。そもそも私はそのクィディッチだったか? それのルールも勝利条件もしらないんだ。箒で飛ぶ競技という事しか知らない」

「なんだって?」

 

 オリバーが悲鳴のような声を上げた。

 

「カサンドラ、せっかく魔法界にいるっていうのに、クィディッチを、知らない! それはスポーツを知らないのと同義だ! いいかいカサンドラ……」

 

 それからオリバーのクィディッチのルール講義が競技場につくまで続いた。

 

「と、いうわけで、三つ目のボール、金のスニッチを取れば150点もの得点が追加され、試合が終了する。カサンドラほどの力があれば、クィディッチ選手としても優秀だろうに。本当に惜しい」

「スポーツはあまりやったことがなくてな。パンクラチオンくらいか?」

 

 カサンドラが競技名を言っても、誰もピンとこない。それもそうだろう。今やマイナー競技と化してしまった。

 

「……その競技については知らないが。では、カサンドラはここで。作戦会議は遠慮してもらう」

「ああ。まあ、せっかくルールを説明してもらったんだ。練習を見学させてもらうことにするよ」

「別に構わないけど、くれぐれも」

「他人に言うな、だろ? わかってる」

 

 カサンドラが離れていくと、オリバーは控室に入った。

 

「いいか、カサンドラに聞かれても何も答えるなよ。彼女は傭兵だ。警備の仕事に支障が出ない範囲なら、少額依頼を頼めると専らの噂だ。スパイ行為を依頼されてる可能性があるからな」

 

 オリバーはそう前置きすると、作戦会議を開始した。それからが最悪だった。なにせ何枚もの羊皮紙を取り出したかと思うと、一枚の羊皮紙の説明に20分も30分もかけるのだ。しかももれなく芝居がかっていて大げさな表現を使うものだから、説明というより演説だ。2時間も演説するなんて、政治家みたいだ。なんてことを眠気に犯された頭でぼんやりと考える。三枚目の説明の時にハリーは半分意識を失い、5枚目の説明の最中に目が覚めた。周囲を見ると、他のメンバーもハリーと似たり寄ったりだ。もうすっかり日が昇り、今みんな朝食を取っている。6枚目の説明が終わったのと同時、オリバーがようやく箒をつかんだ。と、同時くらいにカサンドラが入ってきた。

 

「カサンドラ、入らないでくれと言ったと思うんだが」

「いや……2時間近く控室から出てこなかったから何事かと思ったんだ」

「む。……作戦会議をしていたんだ」

「そうか。いつもこれくらいなのか?」

 

 ハリーはめまいがしそうになった。これが毎回? 冗談だろう? 近くにいたジョージに視線を向けると、彼は肩をすくめて、小さく「あきらめろ」と言った。あきらめろ? あきらめろだって?

 

「ああ。だから次からは気にしないでほしい」

「わかった。じゃあ、私は客席にいるから」

 

 カサンドラはあっさりと控室から出て行った。

 

「よし、練習開始!」

 

 オリバーは意気揚々と競技場に出た。チーム全員が出たところで、眉をひそめた。観客席にカメラを構えて準備万端なコリンがいたのだ。

 

「……彼は?」

「さあ、僕は知らないよ」

 

 ハリーはため息交じりに嘘をついた。

 

「カメラを持ってるぞ? もしかしてあいつスリザリンのスパイなんじゃないか? ――誰かガリオン金貨を持ってないか? カサンドラに排除してもらおう」

「いや、オリバー、よく見て! 彼はグリフィンドールだよ」

「む? 本当だな。ならなおさらこんな()()()()競技場に?」

 

 オリバーが言うか言わないかのころ、ロンとハーマイオニーがやってきた。

 

「ハリー! もう朝飯終わっちゃったぞ? まだ練習してたのか? 信じられない!」

「ロン。聞いて驚かないでね。まだ練習してたんじゃないんだ。『まだ』練習が始まっていないんだ」

「……おったまげー」

 

 ロンは狂人を見る目でオリバーを見た。

 

「……やっぱりスパイかもしれない。僕、止めさせてくる」

「いや」

 

 フレッドがオリバーの肩をつかんで止めた。

 

「スパイなんて必要ないと思うぜ」

「なぜ?」

「見てみろよ。ご本人が登場だ」

 

 フレッドが指をさした方には、グリーンのユニフォームローブを着て黒色に銀色の飾りがついた箒を持った集団、スリザリンチームが歩いてきた。

 

「そんなバカな! ここは昼間まで確保してるんだぞ!?」

 

 昼間までやる気だったのか。ハリーは『栄養と運動』という言葉が脳裏に浮かんだ。

 

「話をつけてくる」

 

 オリバーは怒り心頭でスリザリンチームに駆け寄っていく。チームメイトもそれに追従し、徹底抗戦の構えだ。

 

「うわ……揉めるぞ」

「喧嘩にならないといいけど」

 

 ロンとハーマイオニーもついてくる。遠目では、客席からピッチに飛び降りるカサンドラが見えた。見間違いだろうか。客席からピッチの地面からはどんなに低く見積もっても5メートルはある。箒で飛ぶならまだしも飛び降りるなんて。

 

 だが、すぐにもハリーは気にならなくなる。

 

 毎年恒例の、スリザリン対グリフィンドールの争いが始まろうとしている。

 




あとから振り返るとピクシー回が一番授業っぽいのがロックハートクオリティ
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