【完結】ハリー・ポッターとワシ使いの傭兵   作:丹寺 錯視屋

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クィディッチ、暴れ玉

――1992年12月クィディッチアリーナ

 

 ハリーは程よい緊張の中、自慢の相棒ニンバス2000を握りしめていた。クィディッチの選手控え室で、オリバーが試合前の演説を行なっていた。

 

「諸君! 試合だ! 相手はあのスリザリン! しかも今年は我らがエース、ハリーの相棒よりも性能のいい箒を敵が持ってる。しかも、全員!」

 

 練習前に聞くそれとは違い、試合前の演説はオリバー自身も熱が入っているし、チームメイトも彼の言葉で奮起する。もしかしたらオリバーの練習前の演説は、今日この日のためにあったのかも。そう思うとあの日々も――いや、やっぱりないな。ハリーは思い出を美化する前に我へと帰った。

 

「だが、その事実は我々の敗北を決定付けるものなのか? ――否、まったくもって違う! 敵は強大だ。箒にかまけて練習を怠るような愚か者じゃない。分は悪い。それは諦める理由になるのか? 違う!

 我々は今日、無様に負けに来たわけじゃない。雑魚を倒していい気になるためでもない。勝ちにきたんだ! 強大な敵を打ち倒し、ホグワーツにグリフィンドールありと讃えられるほどの勝利を掴むためにやってきた! 我々はできる。我々は勝てる! 勝つぞ! 前評判など忘れてしまえ。下らない戦力分析など彼方に追いやってしまえ。我々は、戦士としてグリフィンドールに勝利をもたらすのだ!

 

 グリフィンドールに栄光を!」

 

 ハリーは叫ぶ。

 

「グリフィンドールに栄光を!」

 

 選手たちがピッチに入り、箒で飛び回る。ハリーも同じように飛ぼうとしたところで、ダンブルドアよりも一つ段が低い席にカサンドラがいるのを見つけた。彼女はいつもとは違い軽装で、武器も携帯しているようには見えない。ただ、ハリーの目には両腕につけた革の籠手が嫌に目についた。

 

 ――アサシンブレード……。

 

 ハリーはかぶりを振って、余計なことを頭から追い出す。今は関係ないことを考えるわけにはいかない。そう、カサンドラがアサシンだなんて、そんな人殺しだなんて。そんなことは一切関係ないのだ。

 

「――僕は戦士だ」

 

 自ら鼓舞するように、ハリーは呟く。そう、ハリーは今戦士なのだ。カサンドラみたいに凄いことができるわけじゃない。

 

 けど。

 今だけは。

 このアリーナの中でなら。

 

「僕は!」

 

 カサンドラよりも強い!

 

 ハリーは箒に乗って飛び上がった。

 

――

 

 カサンドラはびゅんびゅん飛び回る生徒――いや、選手達を見て感嘆の声を上げた。

 

「凄いな。あんなひょいひょいパスを回せるのか」

「我が寮の選手は粒揃いであるが故に。ややシーカーに不安は残るが、なに、シーカーですら覆せない点を取れば問題はない。そして、スリザリンにはそれが可能なだけのポテンシャルがある」

「確かにな。もう60点リードか。これでもまだ安全圏じゃないってのが、焦れったいな。ただ、グリフィンドールも負けてはないな」

「それがクィディッチというものだ、カサンドラ」

 

 クィディッチ談義をするスネイプという、一段高いところにいるダンブルドアでさえ目を見開くような光景が教員席には広がっていた。

 

「毎年こんな熱狂なのか……。マクゴナガルがハリーに箒を贈るわけだ」

「彼女は、贔屓の限度を知らないと見える。我々の給料一年分といえば、その凄まじさが分かるだろう」

「よく変な噂が立たなかったな」

「マクゴナガルのクィディッチ狂いは有名なのでな」

 

 ヒュパン、といい音がしてスリザリンがまた得点した。リー・ジョーダンのグリフィンドール贔屓の実況が悲鳴を上げる。

 

「いいペースだな。このままなら勝てるか?」

「残念ながら、試合の成り行きはシーカーにかかっているのだ。逆転の目があるうちはな」

 

 シーカーの二人は一等高いところで静止し、必死になってアリーナをキョロキョロとしている。

 

「私も一度、スニッチを見せてもらったが、飛び回るあれを見つけるのは至難の業だろ?」

「故に、花形なのだよ」

 

 スネイプは楽しげに試合の推移を見守っていた。

 

――

 

 ハリーは周囲を素早く観察しながらも、悪態をつきたくなった。左後方、上方から暴れ玉ブラッジャーがやってくる。狙いは頭。もしかしたら胴体かも。ギリギリまで引き付けて、ハリーは箒からぶら下がるようにしてブラッジャーを回避する。懸垂で箒にまたがり直すと、また観察に戻る。

 

 クアッフルがスリザリンにとられた。それでも探す。

 ブラッジャーに当たってジョージが腕を押さえてる。それでも探す。

 点差がどんどん開く。それでもハリーはスニッチを、金色の小さな球体を探す。その冷静さ、胆力はまさしく戦士のそれだった。

 暴れ玉ブラッジャーがまたハリーにおそいかかってきたので、箒を派手に動かしたり、またぶら下がったりと、アクロバティックなことをしなければならなかったが、一瞬たりとも周囲の観察をやめたりはしなかった。

 

「バレエの練習かい?」

「マルフォイ」

 

 ハリーはマルフォイの嫌味にもなんの反応も返さずに箒に跨り直す。顔と視線は忙しなく動き、スニッチの存在を探す。まだ見つからない。

 

「ポッター、僕にも教えてくれよ」

「いいよ」

 

 ――見つけた。

 

 ハリーはマルフォイに向かって一直線に箒を飛ばす。ぶつかりそうになるその瞬間になっても速度を緩めない。慌ててマルフォイが上空に上がってハリーを避ける。

 

「反則スレスレのチャージなんてよくやる……なに?」

 

 ハリーが何かに向かって箒を操っていることを確認したマルフォイは、いつもの嫌味も皮肉も忘れて箒を駆る。金のスニッチを、マルフォイも見つけたのだ。リードされたことに焦るが、確実に差は開いた。

 

「――クソッ」

 

 だが、異変は起こっていた。

 

――

 

 カサンドラは眉を顰めた。

 

「ようやく見つけたと思ったら暴れ玉に追いかけられてるのか。不運だなあいつも」

「ブラッジャーは特定の選手を追いかけるような真似はせん」

「そうなのか? だが私の目の前の光景は『違う』と言ってるが」

「誰かが細工した……? いや、ブラッジャーを構成する魔法は高度だ。学生に妨害できるものではない。校長!」

 

 スネイプは後ろを振り返って叫ぶ。

 

「わかっておるよ。しかし――選手達は、対処可能な事態だと思っておるようじゃの」

「手をこまねいている場合なのか? 私で止められそうか?」

「そうじゃの。おそらくカサンドラには無理じゃろう。何せ守る方も害する方も飛び回っておるでな。方法は一つ。術者を見つけて、やめさせることじゃよ」

 

 スネイプは教員席を穴が開きそうなほど睨みつける。去年のように呪いをかけている教員は見つからなかった。

 

「早くしないとやられるぞ」

「ワシは、ハリーを信じておる」

 

 ダンブルドアがうむうむと頷きながら言った。

 

「そうは言うが」

「カサンドラ。クィディッチは死人こそ出ないものの、けが人はしょっちゅうの危険な競技なのじゃ。危険故、人々は惹かれる。とまぁそういうわけじゃ」

「理屈はわかるが――」

「それにほら、見てみるといい」

 

 ダンブルドアが指差した先では、ハリーがブラッジャーに追いかけられていること自体を利用した作戦を立てて、実行しているグリフィンドールの姿があった。

 

「彼らは弱くないのじゃよ。このアリーナの中では、彼らはカサンドラに負けず劣らずの戦士なのじゃ」

「――そうか」

 

 カサンドラはどっかりと座り直す。ダンブルドアがそう言うなら、ここはじっくりと黙って見ていよう。もちろんすぐに動けるように、備えはするが。

 

 ダンブルドアが言うようにグリフィンドールは強かった。ハリーはブラッジャーに追われながら、マルフォイの妨害を潜り抜け、スニッチを追う。

 

「――ああいう姿を見てると、あいつが英雄って感じがするな」

「……実に、まことに不本意だが」

 

 スネイプは鋭く前を睨むハリーの目をじっと、じっと見つめる。勝利を貪欲に求める獰猛なそのヒスイ色を、じっと。その目は、スネイプが一度も見たことがないような、そんな鋭い目をしていた。

 

――

 

 もう少し、もう少しだ!

 

 ハリーはチラチラと周囲を見ながらまっすぐに、金色の小さな球体を追いかける。地面スレスレに飛んでいる今、僅かな狂いが致命傷になる。後ろから突っ込んでくるマルフォイとブラッジャーをバレルロールの要領で回避する。マルフォイと並ぶ。

 

「勝つのは僕だ! ニンバス2001を持つ、この僕がスリザリンに勝利をもたらす!」

 

 不安を払拭するようにマルフォイが叫ぶが、ハリーはもはや一言も発することはなかった。不安、疑問。恐怖。それらを何もかもを削ぎ落として、スニッチに手を伸ばす。前からブラッジャーが向かってくる。

 

「ブラッジャー……!」

 

 マルフォイにも当たるかもしれない。頭に当たればリタイア。胴体に当たれば同じくリタイア。腕に当たれば死ぬほど痛い思いをするが、まだ戦える。

 ハリーは真っ直ぐ向かってくるブラッジャーを避けるように、一瞬スニッチから離れるような軌道を取る。

 

「クソッ! ブラッジャーめ!」

 

 マルフォイはハリーがそれで逃げると思ったのだろう。体勢を立て直すために一旦離れる。――ニンバス2001の速度は、ハリーから離れる速度も早かった。

 

「――!」

 

 ハリーはほんのわずかに軌道をずらしただけで、ブラッジャーの直撃コースから完全に離れなかった。このままだと体のどこかにブラッジャーが当たる。だがスニッチは手が届く範囲にいる。

 

(もし当たってもこのコースなら腕で済む……!)

「しまった! イカれてるぞポッター!」

 

 自分がフェイントにかけられたことを悟ったマルフォイが急襲するも、もう遅い。

 

「取った!」

 

 ハリーが金のスニッチを手にした瞬間、ブラッジャーの一撃がハリーの腕を直撃し、骨も何もかもを破壊した。

 

「――!?」

 

 ハリーは思わずバランスを崩し、箒から墜落する。

 

「ハリー・ポッターがスニッチをキャッチ! グリフィンドール150点追加! グリフィンドールの勝利! ――ハリー!」

 

 地面に激突し、何度も地面を転がる。痛い。腕の感覚がない。ハリーはそれでも満足していた。だってそうだろう?

 

 ゆっくりと、ハリーは上体を起こし、感覚のない腕を気合いだけで掲げる。ほとんど動かないその掌の中には、それでも小さなスニッチを握りしめていた。

 

「僕らの勝ちだ!」

 

 ハリーは降りてくるチームメイトに向かって、宣言するように叫んだ。

 

「――ポッター! 避けろ、後ろだ!」

 

 マルフォイの警告に何事かと思って振り向くと、何故かまだ生きて動いているブラッジャーがハリーの頭を狙っていた。慌てて頭を下げて避けるが、ブラッジャーは変わらずハリーを狙い続ける。上空高く飛んで、再びハリーを殺害せんと加速する。

 

「もう試合は終わったな!? 私は行くぞ!」

「行くぞと申されても。ここは塔の上だが」

「下に行くのに魔法はいらん!」

 

 カサンドラは立ち上がると教員を押し除けて教員席塔のヘリに足をかける。

 

「カサンドラ! 死にますよ!?」

 

 フリットウイックが悲鳴を上げるが気にせず、カサンドラは飛び降りた。近くにいた生徒達が悲鳴を上げる。

 

 ――だが、誰もがカサンドラがピッチの染みになることを予想したが、カサンドラは何事もなくピッチへ降り立った。カサンドラは駆け出しながら、呆然と飛んでいるビーター、フレッドに向かって叫ぶ。

 

「フレッド! 棍棒を貸せ!」

「おうよ!」

 

 ひゅん、と回転しながら投げ渡された棍棒を受け取る。しっかりと握ると、ハリーの前までたどり着く。

 

「カサンドラ!?」

「ハリー! あの丸を通れば得点なんだな!?」

「え!? そうだけど」

 

 カサンドラは棍棒を振りかぶる。ハリーに襲いかかってくるブラッジャーに合わせて、フルスイング。

 

「オオオオオオオオオオッ!」

 

 凄まじい打撃音とともに、ブラッジャーを打ち返す。すさまじい膂力で打ち返されたブラッジャーはスリザリン側のゴールリングを一直線に通り抜けた。

 

「おおっと、カサンドラ、すさまじいシュート!」

 

 思わず実況が叫んだ。

 

「よし、時間が稼げたな。ハリー、もうすぐ先生がくる。それまで守ってやる。さて、何点取れるかな」

「あー。ブラッジャーは得点にならないよ……」

 

 それは残念、とカサンドラは肩をすくめた。

 

「もう必要ないわ!」

 

 その時、ロンとロックハートを連れたハーマイオニーが走ってきた。男二人は遥か後方で息を切らしている。

 

「ハーマイオニー? 危険だ、下がれ」

「カサンドラ、私に任せて!」

 

 再び迫ってくるブラッジャーを見て、ハーマイオニーは叫ぶ。杖を取り出し、しっかりと杖先をブラッジャーに向ける。そう、大丈夫だ。本で読んだ。しっかりと引き付けて、確実に当たるところで撃つ。射撃の基本だ。

 

 怖い。

 

 狙いを正確にするため、ハーマイオニーはブラッジャーの直撃ルートに身を置いている。外したり、仕留めそこなったら猛スピードで突っ込んでくる鉄の塊を胴体に食らうことになる。死ぬかもしれない。――だけど、できる。

 

「おい、引き付けすぎだ!」

「私は、やると言ったらやるのよ!」

 

 もう少し。行ける。

 

「『レダクト――粉々!』」

 

 ハーマイオニーの杖から赤色の閃光が飛び出し、正確にブラッジャーに当たり、弾けるようにして砕けた。

 

「……どう、カサンドラ」

「まったく、肝が冷えたよ。……よくやった」

 

 ガシガシと乱暴に頭を撫でられる。にっ、とハーマイオニーは笑う。

 

「だが、もうやめてくれ。本当に危なかった」

「カサンドラ。友達の為なら危険なんてへっちゃらよ」

「……早死にするぞ」

「死なないために、勉強してるのよ」

 

 ハーマイオニーは腕を組んで、自信満々に宣言した。

 

「……まいったな」

 

 カサンドラは苦笑する。本当に、ハーマイオニーならなんでもやってのけそうだ。……だが、そこでハーマイオニーに甘えるようになってしまってはいけない。疫病に侵されたアテナイの、あの日のことが脳裏によぎる。

 

「助かったが……。もうこれっきりにしてくれ」

「トラブルが向こうからやってこなかったら、これっきりよ」

「わかった、わかったよ」

 

 カサンドラはお手上げだとばかりに両手を挙げた。

 

「……やめて! 何もしないで!」

 

 その時、ハリーのほうからすさまじい悲鳴が聞こえた。

 

「ハリー?」

 

 ハーマイオニーが杖を構えて振り返る。そして、慌てて下ろした。ロックハートが負傷したハリーの腕に杖を向けているのだ。

 

「ハリー、どうしたの?」

「ハーマイオニー、カサンドラ、助けて! ロックハート先生が僕に魔法をかけようとしてるんだ!」

「気にすることはありません! 私は同じように腕の治療をしたことが何度もあります。心配はいらないのです!」

「ハリー、そうよ。ロックハート先生はそれくらいやってのけるわ」

 

 ハリーは絶望したような表情になる。

 

「ハーマイオニー目を覚ましてくれ! ロックハートが僕らの前で『やってのけた』ことが一度でもあったか! いいから助けて、お願い!」

 

 見かねたカサンドラがロックハートに言う。

 

「なあギルデロイ。こういうことは専門家に任せるべきじゃないか? 一分一秒を争う状況ってわけでもないだろう?」

「確かに。しかし私は栄光とはチームメイトと共有すべきだと考えています。ハリーだけが医務室だなんて、そんなことは彼の勝利に対して不誠実だとは思いませんか?」

「言いたいことはわかるが……」

 

 カサンドラはなんと説得したものか、と悩む。

 

「善意の行動が良い結果につながるとは限らない。私はそう思うんだが?」

「マグルの世界はそうかもしれません。しかし、私は常に善きことを行っていたつもりです。これからすることも、善行の一つです」

 

 ハリーはもうやけくそだった。

 

「ゆ、許さないから、僕の腕に『何か』したら、絶対に許さないから!」

「恐れることはありません。『ブラキアム・エンメンド――折れた骨よ消えよ』」

 

 ロックハートが杖を振り回すと、すーっと痛みが引いていくのを感じる。もしかして成功したのだろうか。ありがとうございます、と口にしようとその瞬間、全く動かない腕に気が付いた。

 

「え……ええ!?」

 

 見てみれば、ハリーの折れた腕はぐんにゃりとしていた。まるでゴムがやんわりとしなったような、弾力のあるぐんにゃり具合だった。

 

「ギルデロイ。これが『善きこと』か? ハリーから離れろ! 医務室に連れていく!」

 

 大丈夫か、と声をかけながらカサンドラはハリーを抱き上げる。

 

「ぼ、僕歩けるよ」

「腕を動かさない方がいい。ギルデロイ、もう私がお前の魔法を信用することはない」

 

 ロックハートは慌ててカサンドラに詰め寄った。

 

「それは! 今回はその、いえ! 魔法は成功していました。折れた骨は、なくなったのですから」

「ギルデロイ。人の体に骨がなぜ必要なのかから説明がいるのか?」

 

 カサンドラがそう吐き捨ててロックハートから離れると、彼はうなだれた。

 グリフィンドールのチームが次から次へとハリーに集まってくる。

 

「ハリー、大丈夫なのか?」

「キャプテン。うん、痛みはなくなった。これからどうなるのかな……」

「心配するな。マダム・ポンフリーは『クラゲ魔法』と『ぐにゃぐにゃ薬』を一緒に食らった生徒を一日で治したらしい。……その日一日医務室からそいつのうめき声が収まらなかったらしいけど」

「マジ?」

 

 ハリーは思わず叫んだ。

 

「ああ。カサンドラ、ハリーを頼んでいいか? 俺はロックハートに文句を言ってくる」

「任された」

 

 ロックハート! と怒鳴りながらオリバーが走り出した。カサンドラの両隣に、にやにや笑いの悪戯双子が箒で飛んできた。

 

「ナイスシュートだったな。あれがクアッフルだったらカサンドラに10点だ。ハリーは大丈夫そうなのか?」

「いや……骨折なら多少知識もあるが、骨が『なくなった』なんて全くわからん」

「あのへっぽこめ」

 

 ジョージは首だけ振り返り、オリバーに詰め寄られているロックハートを見た。

 

「今度糞爆弾をダースで奴の部屋にぶち込んでやる」

「フィルチに見つかるなよ」

「もちろんさ。俺達には秘策があるのさ」

 

 ジョージの言葉に、フレッドが渋い顔をする。

 

「おい、気取られるぞ。それに今『()()』は手元にないんだぞ」

「……悪い、フレッド。ああ、それから、カサンドラ。念のために聞くんだが、古い羊皮紙を拾ったりしてないか?」

「古い羊皮紙? いいや。何かの悪戯グッズか? あまりフィルチの手を煩わせるなよ?」

 

 カサンドラが言うと、ジョージは飄々と首を振った。

 

「それが俺たちの生きがいなのさ。まあ知らないならいいさ。ハリーを頼んだぜ、カサンドラ!」

「ああ。任せろ」

 

 ジョージは箒でチームのところに飛んで行った。

 

「まったく。ジョージめ。不用心な」

「お前ももう行け」

 

 苦笑しながらカサンドラが言うと、フレッドは同じようにハリーのことをカサンドラに託し、飛んで行った。

 

「さて、ポンフリーがなんていうか……」

「ひ、酷いことにはならないよね?」

「私にはわからないんだ、ハリー」

 

 カサンドラは不安がるハリーにそう言ってやることしかできなかった。




映画のこのシーンハリーが本当に可哀そう
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