【完結】ハリー・ポッターとワシ使いの傭兵   作:丹寺 錯視屋

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悪夢

――1993年11月 ホグワーツクィディッチアリーナ

 

 カサンドラがアリーナにたどり着くと、マクゴナガルが駆け寄ってきた。

 

「まぁ、何てこと……」

「怪我はない。だが……」

「ええ、ええ。私が医務室に運びます。カサンドラは校長のところに」

 

 マクゴナガルが杖を一振りすると、ぽん、と音を立てて宙に浮く担架が現れた。カサンドラがハリーを担架に下ろすと、ひとりでに担架が動いた。

 

「では、私は事情の説明のため医務室に」

「ああ」

 

 カサンドラは雨の降りしきる中、アリーナに入る。すると、アリーナの真ん中でダンブルドアが指揮者のように杖を振るっていた。

 

「ダンブルドア」

「おお、カサンドラか……。カサンドラには奴らが見えんのじゃな? 実に、実に惜しい……。ワシの金庫を空っぽにしてでも、奴らの殲滅を頼もうかと思っていたところじゃ」

 

 初めて耳にするくらい過激なダンブルドアの言葉に、カサンドラはたじろぐ。普段温厚な好々爺がキレるとここまで怖いとは。

 

「それで、なぜ奴らはここに来て、しかもハリーを襲ったんだ?」

「それは奴らが欲に負けるような意思薄弱な輩で、ハリーとブラックとの区別もつかない無能だからじゃ」

「……怒ってるのはわかった。なぁダンブルドア。私を呼んだってことは私にできることがあるってことなんじゃないか」

 

 ダンブルドアは杖をしまうと、カサンドラに向き直った。

 

「うむ。少し冷静さを欠いておった……。その実、もはややるべきことは少ないのじゃ。しかし、よもや吸魂鬼が生徒を襲うなど! お主が何人もいれば、このような苦労をすることもなかったろうに」

 

 ダンブルドアは冗談のつもりで言ったのだろう。だがカサンドラは頬を痙攣らせた。

 

「ダンブルドア、頼むからやめてくれ。人間の複製なんてできるのか?……できないよな?」

「もしできておれば、一体ワシは何人に増やされるかのう」

「……ならいいんだ。ホント、やめてくれよ……」

 

 カサンドラはげんなりと言う。

 

「……それにしてもじゃ。このことはウィゼンガモットに抗議せねばならん。厳に、厳重にの」

「ダンブルドアの抗議か。恐ろしいな」

「ワシとて許せぬものはある。あのような、人の幸福を吸い取るような化物に……ホグワーツの生徒はやらせはせん」

「とりあえず、生徒達を寮に返そう。見えない新入りはどうやら敵と味方の区別もつかんらしいからな」

「そうじゃな」

 

 今だに怒りの感情を顔に滲ませるダンブルドアに、カサンドラはそら恐ろしいものを感じた。

 

――1993年11月

 

 ハリーは夢を見ていた。凄惨な夢だった。

 ハリーは母親の背を見ていた。どこか知らない部屋で、周囲を見回せば子供部屋だろうことがわかる。

 ハリーを背にした母親は、黒いローブを着た闇の魔法使いに祈るように跪いていた。闇の魔法使いはフードをかぶっておりその顔は見えない。

 

「さあ……どけ」

「やめて、お願い! 殺すなら私を殺してください、どうか、どうか……ハリーだけは、ハリーを殺すことはやめてください!」

 

 闇の魔法使いが一歩ハリーに近づく。母親がそのローブに縋り付いた。

 

「お願いします、お願いします、どうか、ハリーだけは殺さないでください!」

「どけ、どくのだ。子供などまた産めばいいだけの話だ!」

「偉大なる御方、私たちも陣営に加わります、だからどうかハリーだけは!」

「そうはいかない。ポッター、お前達の子供だけは殺さねばならんのだ!」

「どうか、どうか……!」

 

 ハリーの母親はそう言いながら何度もハリーの命乞いをする。けれど、その魔法使いはほんの少しも譲らない。

 

「邪魔立てするな!

 

『アバダ・ケダブラ――息絶えよ!』

 

 緑色の閃光が、母親を貫いた。絶叫も、怨嗟の声も、ハリーを想う遺言一つなく。ハリーの母親は殺された。

 

「ママ!」

 

 ハリーは叫んで母に駆け寄ろうとする。だが出来ない。闇の魔法使いが近づいてくる。杖先を油断なく、ただの赤ん坊に向けながら。

 

「愚かな女だ。お前もそう思うだろう、ハリー・ポッター」

 

 死の呪文を唱えるその刹那。フードから覗いたその顔は、ハリーが一昨年対峙した蛇面の男、ヴォルデモートその人だった。

 

「うあああああああああああっ!」

 

 ハリーは飛び起きた。荒く息を吐く。汗を吸ってべったりと背中に張り付く制服が気持ち悪い。

 

「大丈夫、ハリー」

 

 ハーマイオニーが心配そうに声をかける。その声は涙声で、彼女の目は赤かった。

 

「僕……どうなったの? 試合は?」

「箒から落ちたんだぜ、君。それと……箒が」

「え?」

 

 ハリーは恐る恐る、ロンが指さした先を見た。丸椅子の上に、包みがある。バキバキに折れた棒状のものがまとめて包まれているように見える。ロンはゆっくりとその包みを開けた。

 

「……そんな」

 

 ハリーは絶望した声を上げた。そこにあったのは無残にボロボロになった相棒、ニンバス2000があった。

 

「その、どうしようもなかった。暴れ柳に突っ込んだんだ」

「ああ……そんな」

 

 ハリーはひたすらに落ち込む。だが、ハリーの絶望はまだ終わらない。

 

「それと、試合なんだけど……」

 

 ロンは眉間にシワを寄せながら言う。

 

「試合はハッフルパフの勝ち。ディゴリー先輩はいい奴だ。無効試合だって言ってくれてな。でもフーチは認めなかったし、ウッドも負けを認めた」

「……ウッドは……? 僕、謝らないと……」

 

 負けた。ハリーはその言葉がズンと重くのしかかる。ずっと勝ってた。試合そのものに出られなかったことはあったけど、ハリー・ポッターは試合に出ればスニッチを取る最強のシーカーだったのに。

 負けてしまった。

 

「いや、ウッドは気にしてないって言ってるぜ。ずっとシャワー室から出てこないけど。溺死するつもりなんじゃないか」

「僕……負けた」

「あのクソ吸魂鬼のせいだ! 君が気にすることない!」

「でも!」

 

 ハリーは叫ぶ。

 

「でも、汽車の時もそうだ。みんな吸魂鬼に近付かれても気絶したりなんかしない。僕だけが、吸魂鬼に強く影響を受けちゃう。きっと僕が弱いからだ」

「それは違うわ。本で読んだもの。吸魂鬼はその人が感じる恐怖を増幅させて、弱った獲物の魂を吸うんだって」

「だったらなおさらじゃないか。僕はちょっと怖いくらいで気絶するような、そんな弱虫だってことなんだ!」

「違うわ……違うのよ、ハリー」

「何が違うって言うんだ!」

 

 ハリーは思うままに叫ぶ。弱い自分が認められなくて。弱い自分が悔しくて。

 

「ハリー、落ち着けよ。吸魂鬼は大人になれば本気でヤバイ存在になるんだ。アズカバンにぶち込まれたヤツがみんな頭おかしくなるのはそのせいだ」

「……どういうこと、ロン」

 

 んー、とロンは言葉を選ぶように悩む。

 

「パパから聞いた話だけど……。吸魂鬼は、かなり厳密に言うと、そこまで他のヤツにどうこうしたりできないらしい。正直学者が言うような分類だから、僕らには実感ないんだけど」

「……よくわからないよ」

「僕も正直よくわかってない。なんて言うのかな、そう、パパが言ってた。『恐怖を与える』んじゃなくて『恐怖を思い出させる』って。だから、怖い思いをしたことがある人ほど、吸魂鬼に弱くなるらしい」

 

 それは、ハリーにとって救いのようなものだった。

 

「本当なの?」

「ああ。たとえば僕とかが吸魂鬼に近付いても気絶するほどじゃないけど……大人だと、近づくだけで死にかける人もいるらしい」

 

 なあハリー、とロンは続ける。

 

「きっと、君は他の人より怖い思いをたくさんしてきたから吸魂鬼に弱くなってるんだ。一昨年は例のあの人。去年はバジリスクだろ? 無理もないよ」

 

 ハリーは項垂れる。自分が弱いから吸魂鬼に気絶させられるのではないのがわかっただけでもよかった。でもそれならそれで別の問題がある。

 

「ねえロン、どうすれば吸魂鬼に負けないようになれるかな」

「それなら、ルーピン先生に頼んでみろよ。きっと教えてくれる」

 

 ロンの言葉に、ハリーは光明を見出したような気持ちになった。

 

「二人とも、本当にありがとう」

「いいの。――友達でしょ?」

「そういうことだよ、気にするなよ」

 

 一週間が経った。ハリーはポンフリーに言われて特に痛いわけでも辛いわけでもないのに医務室に縛りつけられた。その間ハリーの元には凄まじい量の見舞いの品と、面会があった。ハグリッドは黄色い花束を両手に抱え切れないくらい持ってきたし、ジニーは『早く良くなってね』と書かれたメッセージカードを髪の毛と同じくらい顔を赤くしながら持ってきた。カサンドラは御守りとして純銀の十字架のネックレスを持ってきた。

 

 ――だけど。

 

 ハリーはため息をついた。ハリーの苦悩はロンの提案のおかげで少し楽にはなった。だが全部が全部、解決の兆しが見えたわけではない。

 全ての始まりは、トレローニーの『占い学』の初回授業の日だった。死神犬……グリムに憑かれており、そのせいでハリーは今年中に死ぬと、そう予言されたのだ。マクゴナガルや他の生徒たちは、トレローニーはへっぽこ占い師の上毎年生徒の死を予言するから恒例行事だと軽く見ていたが、ハリーはそう受け止めなかった。

黒い犬には見覚えがあった。しかも今年度の頭からだ。プリベット通りをトランク片手に歩いていた時もちらりと見かけたし、クィディッチのアリーナの外、森の方でも見かけた。もしかして自分は本当に死神の犬に取り憑かれていて、死ぬまでずっと見え続けるんじゃないか。そんな気さえする。今年が終わっても、死ぬその瞬間までずっと、付きまとわれるんじゃないか。

 ずっと相棒だったニンバス2000が無残にボロボロになったことも、ハリーの心をかき乱す。

 そして、夢で見た光景がずっと頭に焼き付いて離れない。

 母がヴォルデモートに命乞いをする一瞬が無限に繰り返されているかのようだった。

 

 ただ、悪いことばかりでもなかった。ルーピンに吸魂鬼対策の魔法を個別に教えてもらえるよう約束を取り付けたこともそうだし、ハッフルパフがレイブンクローに嘘みたいな点差で大負けしたおかげでグリフィンドールが優勝する目が出てきたこともそうだ。これからただの一度も敗北することは許されなくなったが、その状況、逆境は余計にチームと、そしてハリーを燃え上がらせた。オリバーはいつもの数倍は厳しい練習をチームに課したが、全員がそれに応えた。ただ、学校貸し出しの箒は亀かと思うほど鈍く、早急に新しい箒が必要だと強く感じた。

 マルフォイはグリフィンドールのクィディッチ敗北の可能性が出てくると、今まで厳重に巻いていた包帯をあっさりと外し、その代わりとでも言うように箒から落ちるハリーと、吸魂鬼の真似をしてハリーをからかった。ハリーはそのバカみたいなからかいにイライラさせられたが、怒るほどのことでもなかった。13歳にもなってローブをすっぽりと頭までかぶって「うあー」だなんてバカみたいだとハリーは思った。

 

――1993年12月 ホグワーツ職員室

 

 冬休みを直前に控えた学期最後の週末。カサンドラは二回目の授業を終えて職員室に戻ると、マクゴナガルとフリットウィックが外行きのローブを羽織っているのが見えた。となりにはゴツいコートに身を包んだハグリッドもいる。

 

「デートか、三人とも」

「我々が三人で? カサンドラ、冗談はおやめなさい」

「三人は三人で良さがあるものだ」

「なんてこと」

 

 カサンドラとマクゴナガルのやりとりに、男性2名はちらりとも入ってこない。セクシャル・ハラスメントという発生してそう時間が経っていない言葉を知っていたわけではないが、女性の下ネタに口を突っ込むと血を見ることになるのはよく知っていた。なにせ、全寮制の学校なのだ。

 

「もうすぐ夕暮れだ。逢引きにはちょうどいい」

「ではカサンドラも参加なさいますか」

「は?」

「そうすれば、やましいことなど一つもないと理解できるでしょう」

 

 ああ、そっちか、とカサンドラは内心安堵する。古代ギリシャの道楽者、アルキビアデスとそれなりに『楽しんだ』カサンドラだったが、小人、巨人のハーフとの経験はない。どれか一つでも珍しいのに一遍だなんて、カサンドラでさえ尻込みしてしまうだろう。老婆とのお楽しみは経験があるが。

 

「あ、ああ。だが警備はどうする?」

「カサンドラ。あなたいつ休んでいるんです?」

 

 マクゴナガルは珍しく本気で心配したように聞いた。カサンドラは毎日欠かさず巡回警備を忘れない。生徒たちとの交流も盛んに行っており、そして今年は臨時とはいえ教師もやっている。いつ休んでいるというのだ。

 

「まあ、そこまで休息が必要な体じゃないんだ。三人で楽しんできてくれ」

 

 マクゴナガルは責めるような目を男性二人に向けた。

 

「……な、なあカサンドラ、是非一緒にホグズミードに行かんか? その、三本の箒で一杯ひっかけよう。なに、酒ってわけじゃねえ。バタービールは芯からあったまる」

 

 ハグリッドがカサンドラを誘うと、それが正解だったらしい。マクゴナガルは顔をほころばせてカサンドラに詰め寄る。

 

「そうですよ。カサンドラ、ホグズミードはそこまで遠い場所ではありません。校長先生に一言言ってお許しをいただければすぐにでも行けますよ」

「マクゴナガル、残念だが私は許可証に親のサインがないんだ」

 

 カサンドラが肩を竦めると、バシン、と音がしてカサンドラの隣にダンブルドアがいた。ご丁寧にスリザリンの外出許可証にダンブルドアのサインがある。

 

「ワシが書いておいたよ」

「……そういうことはハリーにしてやれよ。ずっといけないって腐ってるぞ」

 

 ダンブルドアは顔を曇らせる。

 

「ワシとて、そうしてやりたい。しかしわかるじゃろう? ブラックの件じゃ。ハリーを付け狙う犯罪者がうろついておるのでは、不用意に許可は出せん。それに、今のホグズミードはハリーにとって愉快な場所ではないのじゃ」

「というと?」

「定期的に吸魂鬼の臨検が入る」

 

 カサンドラはげんなりした。

 

「またその化け物か。ハリーがここにいる以上、私としてはホグワーツを離れるわけにはいかないと思うんだが」

「ふむ……ワシとしてはカサンドラにはぜひホグズミードを体験してほしいんじゃ」

「私はここに遊びに来てるんじゃないんだぞ」

 

 ダンブルドアは頷いた。

 

「確かにそうじゃ。しかしここは軍隊でも、役所でもない。学校じゃ。学校とは学びと体験を提供するものじゃよ。教員、生徒問わずにの」

「しかしな」

「それに、じゃ」

 

 ダンブルドアはなおも言い募るカサンドラに続ける。

 

「今回はただ遊びにでかけるわけではないんじゃ」

 

 カサンドラは首をかしげた。

 

「どういうことだ?」

「コーネリウスと非公式の会談の場所を設けておる。お主としても、魔法省大臣と話せる機会は悪くないと思うがのう」

 

 その言葉が決め手で、カサンドラは自室から魔法使い変装用のローブを取り出すことに決めた。

 

――1993年12月 ホグズミード 『三本の箒』

 

 寂れた酒場、という雰囲気の店に入ると、カサンドラの姿を見た何人かの生徒が驚いたような顔をした。ローブを着たカサンドラが珍しいのか、カサンドラがホグズミードにいるのが珍しいのか。どっちなのだろうか。

 

「まったく。私も生徒の間で厳格で通っていますが、あなたには負けます。まさか週末のホグズミードへの誘いに魔法省大臣を持ち出す必要があるなどと思いもしませんでした」

「性分なんだ」

 

 カサンドラは周囲を見る。多くの客は生徒だが、何人か成人の魔法使いがいる。ふと近くの席に、ロンとハーマイオニーがいるのが見えた。ハーマイオニーはさっと視線を逸らすと、魔法を使って近くの木の枝を折り曲げて、衝立のようにしてしまった。まあ気持ちはわかる。先生の姿がちらついていては友達と楽しく飲むこともできやしない。

 

「それに、私は行きたくてもいけない生徒がいることを知ってる。……彼らを思うとな」

「ハリーは残念だ。全く、あのクソマグルが」

「ハグリッド」

「おっと失敬」

 

 マクゴナガルに注意され、ハグリッドは口を閉ざした。

 

「さて、そろそろミスターファッジも着かれる頃と思うのですが」

「出迎えはいいのか?」

「非公式ですよ?」

 

 フリットウィックが不思議そうに言うところを見るに、魔法界は文化が違うと痛感させられる。カサンドラはテーブルに着くとバタービールを注文する。

 

「で、結局ハリーはこの先ずっとホグズミードはなしか?」

「少なくとも、今年は」

「ブラックの件が片付くまでは無理でしょうな」

 

 マクゴナガル、フリットウィックの二人が店員に注文してから言った。

 

「ですが……先生方、それじゃハリーが可哀そうです」

「まあ、来年は私が筆跡を真似て作ってやるさ」

「では私はそれを見逃すことにしましょう」

 

 女性二人の見事な連携に驚いていたハグリッドだったが、不意に声を小さくして言った。

 

「その、ブラックがその件をエサにハリーに近づいて来るってことはねぇんですか?」

 

 ハグリッドが言うと、他の教員はそろって難しい顔をした。

 

「ありえるかもしれませんね。ポッターにその誘惑を跳ねのけることができるかどうかは不明です」

「……外出許可証の話だよな?」

 

 カサンドラが言うと、フリットウィックは頷いた。

 

「ええ。シリウス・ブラックはポッターの名づけ親ですよ。後見人です」

「……親になる資格があるってことか? 魔法界の親代わりが殺人鬼とは、あいつもつくづく運がないな」

「運といえば、ポッターはどうやらトレローニーに死を予言されたらしいですね」

 

 マクゴナガルの言葉に、カサンドラは頷く。

 

「そういやマルフォイが言ってたな。まさか予言者まで雇ってるとは思わなかったが」

「聞きましたぞ、カサンドラ。どうにも激しく詰め寄ったとか」

 

 フリットウィックのからかうような声に、カサンドラは恥じ入るように首を振った。

 

「予言者にいい思い出がなくてな。占いも好きじゃない」

「まさか占いが嫌いな女性に出会えるとは思いませんでした」

「いや、マクゴナガル。私だって雑誌に載るようなお手軽な占いなら楽しめるんだがな……。水晶とか持ち出されるとつい身構えるんだ」

「変わりませんよ。トレローニーはマグルの偽物と同じように、話術でそれらしくしているだけですので」

「ずいぶん言うじゃないか。そういやハーマイオニーも占い学は嫌ってたな。秀才タイプは嫌うような学問なのか?」

「ありゃ……()()()の授業だ、カサンドラ」

 

 ハグリッドがしみじみ言う、彼がそういうということは、相当曖昧な授業なのだろう。

 

「そりゃ、ハーマイオニーが嫌いそうな授業だな。……おっとお出ましか」

 

 カサンドラは『三本の箒』の扉を見て言った。

 

「やあ、先生方」

 

 小太りの男、コーネリアス・ファッジがにこやかな笑みを浮かべて、カサンドラたちのテーブルにやってきた。

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