【完結】ハリー・ポッターとワシ使いの傭兵   作:丹寺 錯視屋

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冬休みが明けて

――1993年 12月 ホグワーツ大広間

 

 ハリーたちが大広間に着くと、大広間はすっかりクリスマス模様に変わっていた。普段ダンブルドアが座っている席の場所に巨大なモミの木が鎮座しており、キラキラと飾り付けられている。

 

「おお、メリー・クリスマス! さあさあ、座りなさい」

 

 ダンブルドアが三人を見ると、柔らかい笑顔で三人を手招きした。普段テーブルは各寮ごとに分けられているが、現在は大きなテーブルが一つ中央にあるだけである。そのテーブルには教員、生徒、寮問わずホグワーツにいる全員が座っている。ダンブルドア、マクゴナガル、スネイプ、スプラウト、フリットウィックをはじめとする教職員に、古びた燕尾服を着たフィルチがいる。生徒はハリーたちのほかには三人しかいない。一年生が緊張した様子で借りてきた猫みたいに大人しく座っている二人。居心地が悪そうなスリザリンの5年生が一人。そして真っ黒なパーティドレスを着たカサンドラがいた。完全武装のカサンドラに慣れていたハリーは体型がしっかり出るドレスに身を包んでいることに少しだけドキリとする。

 

「メリー・クリスマス」

 

 三人は口々に言いながらテーブルについた。

 

「これだけしかいないのにわざわざテーブルを分けるのは寂しく思えたのでのう。さあ、クリスマスパーティと言えばこれがなくてはのう」

 

 ダンブルドアがパン、と手を合わせると、各人の前に大きな銀色のクラッカーが現れた。ハリーたちは意気揚々と、スネイプは渋々それを手に取って紐に手をかける。

 

「では、宴を始めるとしようかの。さあ、クラッカーを!」

 

 ダンブルドアが紐を引っ張るのに合わせて、パン、パン、とクラッカーが鳴らされる。きらきらとしたラメが空中に雪のように舞い、床に落ちると淡くなって消えてしまう。そして、クラッカーを鳴らした全員が動物のはく製をてっぺんに乗せた魔女の三角帽子をかぶっていた。スネイプはその帽子を外すと、くしゃりとまるめてテーブルの下に置いてしまった。カサンドラは不思議そうに帽子を眺めていた。

 

「さあ、さあ、どんどん食べましょうぞ」

 

 ダンブルドアが言うと、テーブルの皿に料理が一瞬で盛り付けられた。全員が思い思いに会話しながら楽しく宴を楽しむ。

 

「おや、遅れてしまったようで」

 

 ハリーがマッシュポテトを自分の皿に山盛りにしたところで、大広間の扉が開いてシビル・トレローニーがやってきた。普段の喪服みたいな黒服ではなく、お祝いの席に相応しい緑色のドレスに身を包んだ彼女はすーっと滑るようにしてテーブルまで近づいてきた。

 

「本当に珍しいのう、シビル」

「ええ、水晶玉を見ていると、皆で昼食を取る私が見えまして。こうして急いで支度してきましたの」

「それなら、席を新たに用意しようかの」

 

 ダンブルドアが手を振るとポン、と椅子が現れ、手を叩くと皿が何枚もトレローニーの席の前に現れた。すぐにその皿が料理で一杯になる。

 

「……あら、ルーピン先生は?」

「奴は、今日は療養だ。そのご自慢の予知でご存じかと思いましたが」

 

 スネイプがどうでもよさそうに答える。トレローニーは席に座りながらしたり顔で頷いた。

 

「知っていましてよ。しかし、『すべてを悟れる者』であることをひけらかしたりはしませんの。『内なる眼』を持っていないようにふるまわなければ、人々を恐れさせてしまうでしょう?」

「そりゃいい。全部が終わった後に『全部知ってた』か。ピュティアの仕事も楽になったもんだ」

 

 カサンドラが皮肉げに言う。トレローニーはそんなことは言われ慣れてると言わんばかりに平静そのものだ。

 

「そうでないと確証がほしいのでしたら、どうしてもとおっしゃるなら。私が見るところによると……ルーピン先生はそう長くはないでしょう。ルーピン先生自身も悟っていらっしゃるのでしょう。水晶玉で占って差し上げようとしたら、さりげなく逃げなさったんですよ」

「それはそうでしょうとも」

 

 マクゴナガル先生はさりげなく辛辣に言った。

 

「で、具体的にはいつなんだ」

「まあ、まあ。カサンドラ」

 

 ダンブルドアがつっけんどんなカサンドラを窘めるように声をかけた。カサンドラは肩を竦めて黙った。想像以上に予言者を嫌うその姿に、ハリーは二年前、みぞの鏡の前で語ってくれた過去を思い出した。予言者によって滅茶苦茶にされた人生を思えば、嫌いになる理由もわかる。

 

「リーマスがそんな危険な状態でないことは知っておるじゃろう。セブルス、リーマスにまた薬を作ったのであろう?」

「無論です」

「結構。それならばすぐによくなるじゃろう。さて、二人とも、ソーセージは食べたかの?」

 

 一年生がダンブルドアに話しかけられて、恐縮したように真っ赤になってしまった。震える手つきでソーセージの大皿からソーセージをよそう。

 それから二時間、ハリーたちは穏やかに昼食を終えた。席を立つと、三人で顔を見合わせる。ハーマイオニーが先頭になって、マクゴナガルの席の前に立つ。

 

「どうかしましたか、グレンジャー」

「その、お話があるんです。寮の談話室まで来てもらえないでしょうか」

「いいでしょう。護衛は必要そうですか?」

「いいえ」

 

 結構、とマクゴナガルは席を立つ。

 

「では、失礼します」

 

 マクゴナガルは三人を連れて談話室まで歩き出す。

 

「何があったのです?」

「今朝、僕宛に箒が届いたんです。差出人不明で、メッセージカードも何もなかったんですけど」

「それは素晴らしい! どんな箒ですか? ニンバス2000よりも性能が劣るとは言え、そこは技術でカバーできるでしょう」

「その……ファイアボルトって言う箒なんです」

 

 ハーマイオニーが言うと、うきうきしたようすのマクゴナガルの表情が一気に険しくなる。大喜びしてもらえると思っていたハリーは、二人の懸念は正しかったのではないかと思い始める。

 

「それは……」

「おかしい、ですよね?」

「ええ。非常に、とても、実に不本意ですが警戒せざるを得ません」

 

 マクゴナガルの顔は去年の末と同じくらい緊張していた。

 

「……ポッター。何か伝言はなかったのですか? カードも、メモもなしですか?」

「はい」

「そうですか……」

 

 グリフィンドールの寮まで来ると、マクゴナガルは合言葉を言って寮に入る。すると談話室に中央にぷかぷかとファイアボルトが浮かんでいるのが見えた。

 

「ポッター。残念な知らせがあります」

「はい先生」

「この素晴らしいファイアボルト……いえ、この箒はあずからせてもらいます」

 

 想像していて、覚悟もしていたが実際にそう言われると、ショックが隠せない。

 

「どうしてもですか」

「どうしてもです」

「でもこれがあればグリフィンドールは優勝できます!」

「ポッター。私が好き嫌いで何を優先すべきかを見誤ると思っているのですか?」

 

 ハリーは黙った。

 

「ハリー、気持ちはわかるぜ。でもマクゴナガル先生だってできればこの箒をハリーに使ってほしいと思ってるって」

「その通りですロン・ウィーズリー。なんの呪いもかかっていないということが判明すれば、その時は間違いなく、ポッターに返します」

「でも、その、誰が僕に呪いをかけるって言うんです!? そうだ、だってこんなバカ高い箒をわざわざ買って呪いをかけるなんてありえないよ。効率が悪すぎると思いませんか?」

 

 マクゴナガルはそれでも首を縦に振らなかった。

 

「ファイアボルトを買えるほど資金があって、ポッターに悪意があり、なおかつこのような遠回りな方法を使わねばならない人物に心当たりがあるからですよ、ポッター」

「……シリウス・ブラック」

 

 ハリーは呆然とその名を呟いた。

 

「ええ。その人物が強烈に興味を惹かれる物で吊って殺害せしめるのは、有名な手口のようです」

 

 では、とマクゴナガルは杖を振るって箒に魔法をかけた。彼女は踵を返して、談話室から出て行った。その背を、ファイアボルトがふよふよとついていく。その箒が持つ最高速度の1%も出ていないような鈍さである。

 

「ハリー、仕方ないことなのよ」

「ブラックが僕にファイアボルトを送り付けてきたって? 10年くらいアズカバンにいた犯罪者がどうやってそんなお金を出すって言うんだ?」

 

 ハリーの疑問はもっともだった。ハーマイオニーも疑問に思う。

 

「そりゃ、ブラック家だからだろ? 純血魔法使いの名門だぜ? 金ならうなるほどあるだろうぜ」

「だからって……僕を殺すためだけに、そんなお金を使うって言うの……?」

 

 ハリーの声は怯えたように震えていた。この悪辣さは去年も感じた。日記を使ってジニーを操り、ホグワーツ中を恐怖に陥れ、マグル生まれを誰にも気づかれずに殺そうとしていた。そのことを知った時のような恐怖が、ハリーの心をぞわりと撫でた。

 

 結局、ハリーの気持ちは冬休みが終わり新学期が始まるまで上昇することはなかった。グリフィンドールの塔ががやがやとうるさくなって、ハリーの友人たちがホグワーツに戻ってきてようやく、ハリーの気持ちは明るくなった。

 

「ハリー、いいクリスマスだったか?」

 

 新学期が始まる前の夜、談話室でオリバーがハリーに話しかけてきた。

 

「まあまあかな」

「そうか。俺は休み中ずっと考えてた。前回の試合のことだ。つまり、忌まわしき奴らに……」

「そのことは考えてるよ。ルーピン先生が吸魂鬼対策を教えてくれるって。学期が始まってすぐくらいには始めてもらえるはずだよ」

「そりゃいい。正直、それが上手くいくかどうか、俺は心配していない。ハリーならやれるさ。……ただ、それよりももっと大事なことがあってだな。その『後継者』の話だ」

「あー、うん」

 

 ハリーは目に見えて気落ちする。

 

「どうした? もしかしてまだ決まってないのか? よし、今カタログを持ってくる。一緒に決めよう」

「いや、その、クリスマスにファイアボルトが贈られてきたんだ」

 

 オリバーは瞠目した。

 

「……なんだって? ハリー、冗談だよな? 本物のファイアボルト!? それならなんでそんなに暗い顔をしてるんだ!? もう勝ったようなものじゃないか!」

「まって、続きがあるんだ。今手元になくて……。マクゴナガル先生の手元にあるんだ」

「取り上げられたのか!?」

「ううん。ちょっと違う」

 

 ハリーはそれからオリバーに休みの間にあったことを話した。

 

「呪い、か。でも誰が?」

「ブラックだよ。あの脱走犯。イカれた理屈で僕の命を狙ってるらしいんだ」

「待て待て。よく考えろよハリー。確かにブラック家なら資金は問題ないだろうけど、どうやって買うっていうんだ? 逃亡中で、魔法省が夜も寝ないで捜索してるんだぞ? そこをのこのこ『箒専門店』で優雅にお買い物ができるとでも?」

 

 ハリーは確かに、と思った。

 

「そうかも。でも僕の命を守るためには仕方なく呪い調べをしないといけないんだって」

「呪い調べが何をするのか知ってたら絶対、何があってもマクゴナガルの手には渡さなかっただろうさ! ハリー、いいか。箒に呪いがかかっていないか調べるためには、箒をバラバラにするんだ。枝先の一本一本調べられるように!」

 

 絶叫のようなオリバーの声に、ハリーは驚く。オリバーの顔は真っ青だった。

 

「よし、よし。ファイアボルトのためだ、俺が言ってやるからな。ああそうさ。マクゴナガルはきっとイカれたんだ。物の道理がわかってない……。ファイアボルトかぁ……。チームに()()箒が……。絶対に説得して見せる。マクゴナガルだって本心はその箒がゴミ捨て場じゃなくてハリーの手にあるべきだってわかってるはずなんだ……絶対説得して見せる……。ファイアボルトだ……」

 

 そうつぶやくように言ったオリバーの目は、誰がどう見てもおかしかった。

 

――1994年 1月 ホグワーツ 闇の魔術に対する防衛術教室

 

 新学期が始まって最初の授業は魔法生物飼育学だった。年が明けてハグリッドも考えを改めたのか、レタス食い虫の授業から一転サラマンダーという火を好むトカゲを題材にした授業を取り扱った。みんなで作った焚火の周りを楽しそうにぐるぐる回るサラマンダーを眺める授業は、久しぶりにハグリッドらしい楽しい授業だった。

 トレローニーの占い学は相変わらず、ハグリッドが言うところの『雰囲気』の授業のままだった。手相を見る授業だったが、ハリーにはさっぱりわからなかった。それよりも気になったのがハーマイオニーで、彼女はイライラした様子で授業を受けていた。彼女と占い学との相性が悪いことはよく知っていたが、彼女が苦々しい表情で授業を受ける姿をハリーは初めて見た。スネイプの魔法薬学でさえニコニコしているというのに。

 

 待ち遠しかった闇の魔術に対する防衛術の授業はグレムリンについてだった。マグルの機械に悪戯する妖怪で、元はノームだったらしい。

 授業が終わってハリーはルーピン先生に約束のことを切り出すと、夜の8時に訓練だ、と言った。

 

 そして夜、ハリーはカサンドラの護衛の元教室までやってきた。

 

「ルーピン先生、連れてきたぞ」

「ああ、ありがとうカサンドラ先生」

「気にするな。時間になったら来る」

 

 カサンドラはそういうと教室から出て行った。

 

「……さて、時間がない。さっそく始めよう」

 

 ルーピンはガタガタと揺れる棚の前にハリーを連れだした。

 

「……ボガートですか?」

「その通り。まず前置きだ。これから教える呪文はとても難しい呪文だ。大人の魔法使いでも使える魔法使いは少ない。守護霊の呪文と呼ばれる魔法だ」

「どのような魔法なんですか?」

 

 ルーピンは杖を取り出し、唱える。

 

「『エクスペクト・パトローナム――守護霊よ来たれ』」

 

 杖の先からぼんやりと白い靄のようなものが生まれ、それはやがて動物の姿を取った。半透明で白い狼は、さながら白銀の狼のようにも見える。

 

「これが、守護霊だ。この守護霊はいうなれば純粋な正の感情そのものと言っていい。正の感情を貪り食らう吸魂鬼はこの守護霊に攻撃をして……そして、負の感情がないが故に、吸魂鬼は守護霊に傷一つつけることはできない。自分が傷一つ付けられない存在を恐れ、吸魂鬼は退散せざるを得ない……。そういう呪文だよ」

 

 これだ、とハリーは思った。この魔法さえ習得すれば吸魂鬼は追い払える。希望が見えたハリーだったが、申し訳なさそうにルーピンは続ける。

 

「ただし、この魔法は恐ろしく高度だ。君には早すぎるかもしれない。この魔法は一人前の――」

「――どうやれば、上手くいきますか」

 

 ハリーの強い意志を感じ取ったルーピンは、それ以上呪文習得の難易度の話をする気がなくなった。どれほど困難だろうとハリーはやると、そう感じたからだ。

 

「呪文を唱え、最も幸せだった思い出を、最も強く思い浮かべたその時、守護霊は形になるんだ」

 

 幸せ。そういわれて、ハリーはパッとすぐに思いつかなかった。自分が魔法使いだとわかったときだろうか。クィディッチで初めてスニッチを取ったときだろうか。……いや、はじめて箒に乗ったあの瞬間だ。ハリーは思い出を決めた。

 

「呪文は、エクスペクト・パトローナム。さあ、やってみてごらん」

 

 ハリーは杖を取り出して、はじめて箒に乗った時の高揚感、幸福を強く想起する。

 

「エクスペクト・パトローナム!」

 

 ぼんやりと、杖の先から靄のようなものが現れ、ふよふよと空中を漂った。だが、形にはならない。

 

「すごいな。さすがだな……。よくできた」

 

 ルーピン先生は手放しでほめてくれるが、ハリーから見たら全然、全く足りなかった。

 

「ダメです。ちゃんと形にならないと意味がないんです」

 

 ハリーは一昨年、去年と思い出す。ヴォルデモート、バジリスク、リドル。それらの強敵と戦うカサンドラを。確実に勝利を得るために積み重ねられた力を見れば、こんな初歩的な成功で喜んでいる場合ではないのだ。

 

「もう一度、いえ、何度でもやります」

「……君は強いね、ハリー」

 

 それからハリーはカサンドラが迎えに来るまで練習を重ねたが、ただの一度も守護霊が像を作ることはなかった。

 

「ねえ、カサンドラ」

 

 グリフィンドールの寮に帰る道で、ハリーはカサンドラに聞いた。

 

「ん?」

「カサンドラは……強くなるためにどれだけ努力したの?」

「んー、物凄く、だな。ただ、ハリー。私が自分の強さと成長を実感するようになったのは、実際に戦うようになってからだ」

 

 なんの参考にもならない意見をカサンドラは言った。ため息をつこうとしたハリーだったが、カサンドラはさらに続けた。

 

「だが……今はそういう時代じゃない。当時のスパルタが間違っていたとは思わないが……。今の時代に合ったやり方はあるだろう。ハリー、前を見すぎるな。今だけ見ればいい。そして、先生の指示をよく聞け。そうすればいつか、ほしい力が手に入る」

「でも、『いつか』じゃ遅いんだよ。次のレイブンクロー戦までには仕上げないと」

 

 カサンドラは首を振った。

 

「気持ちはわかる。だが焦るな。クィディッチに関しては心配するな。校長先生を信じろ」

「でも、次もまた吸魂鬼が来たら……!」

「ハリー。校長先生が信じられないか? 魔法に関しては誰よりも優れた偉大なダンブルドア先生を?」

 

 ハリーは黙った。

 

「……ハリー、どっちも完璧にするなんて無理だ。確かに、今から余暇の時間全てを訓練に費やせば形にはなるだろう。秘密の部屋での動きを見るに、おそらく完成までもっていけるはずだ」

「なら……」

「だが」

 

 カサンドラはハリーの言葉にかぶせて言った。

 

「それは不可能だ。ハリー、お前はクィディッチの練習もあるだろう?」

「あ……」

「確実な勝利が欲しいなら、クィディッチの練習に集中しろ」

「……でも」

 

 まあ、とカサンドラは笑う。

 

「いやでも集中させられる。ウッドがクィディッチの練習に穴をあけることを許すとは思えない」

 

 ハリーはその時の光景を想像する。確かに、オリバーなら吸魂鬼対策よりも練習を重視しろというに違いない。カサンドラと同じようなことをすさまじい早口で言うオリバーを想像して、ハリーは思わずくすりと笑った。

 

「そうだね。僕、クィディッチの練習頑張るよ」

「ああ。応援してるよ」

「それなら、早くマクゴナガル先生に箒を返すよう言ってよ」

「プロに口出しすると痛い目を見るぞ?」

 

 グリフィンドールの寮の前まで来るころには、ハリーの気持ちはすっかりクィディッチの練習に向いていた。

 

「じゃあね、カサンドラ。おやすみ」

「ああ。おやすみ」

 

 カサンドラはハリーの送り迎えを終えると、また巡回業務に戻った。

 




 オリバーのクィディッチ狂いは原作準拠です

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