【完結】ハリー・ポッターとワシ使いの傭兵   作:丹寺 錯視屋

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 クィディッチの試合そのものは原作と同じなのでカットします。


夜と共に死が来る

――1994年6月 ワールドカップテント会場

 

 カサンドラはトランクを開けた。中には古代からずっと持ちつづけている武器や、歴史の節目節目で手に入れて隠し続けていた武器、御禁制になっていない武器などがみっちりと詰まっていた。艶消しの黒に塗られ、金属部分も黒金で作られたクロスボウを手に取ると、手のひら大の大きさの矢を腰のホルダーに入れる。短い矢は凶悪だ。胴体や頭に撃ち込めば完全に矢が体の中に入り込んで、医者にかからなければ抜けなくなる。

 カサンドラはポロシャツの上から吸魂鬼が着るような幅広のローブを着て、フードをかぶる。足の先も手の先も、そして顔すらも完全に隠蔽するローブを着たカサンドラは、まるで『死』そのもののようだった。

 

「……」

 

 クィディッチは楽しかった。ビクトール・クラムが敗北上等でスニッチを掴むという、カサンドラにとってしてみればよくわからない行動で試合が終わったが、結果としてみれば大盛り上がり。ハリーやロンは興奮してハーマイオニーやカサンドラにさっきのプレイの名前がどう、このプレイの意味はこう、このフェイントの難易度がどうこうと、熱心に解説、実況してくれた。

 クィディッチに熱が入りすぎて、マスコット達も激しくやり合っていたときはもう最高だった。ヴィーラの正体をみた時の男連中の顔ときたら、ずっと笑いものにできるほど可笑しかった。

 クィディッチの時のことを思い出すと、カサンドラの顔に笑みが浮かぶ。面白可笑しいワールドカップに、ハーマイオニーもすっかり元気を取り戻したようだった。本当に……真面目な子だ。

 

 カサンドラは音もなく林を移動する。誰にも見られず、巡回する。

 そこかしこで宴会が起こっている。大騒ぎだ。楽しそうに顔を赤らめて、あのプレイがどうだった、あの時の動きはクソだっただの感想を言い合っている。

 アーサーのテントのそばにたどり着く。子供たちはすっかり疲れ果てて、眠っているようだ。

 

 このまま何事もなければいい。だが、すでに兆候はある。

 明るい格好で騒ぎまくる人間に混じって、カサンドラと同じような黒いローブを着た人間を何十人もみかけた。だいたいは二人から四人くらいのグループで、杖を片手にヒソヒソと囁き合っている。――だいたいはマグルが近くにいた。

 カサンドラは空を見上げた。イカロスが羽ばたいている。カサンドラは目を閉じると、イカロスと視界を共有し、怪しい奴らをあらかた見つけ、位置を記憶する。

 

 カサンドラが偵察を終えて目を開けると同時。

 

 上空に、緑色の閃光で出来たドクロが浮かび上がった。巨大な髑髏だった。エメラルド色の星のようなものが集まって描かれており、髑髏の口からは蛇が舌のように這い出している。カサンドラは予め、ダンブルドアからそのマークを教わっていた。クソッタレ魔法使いことヴォルデモートの配下、死喰い人が殺しを行うときに空に打ち上げるマーク、『闇の印』。死喰い人全盛期に、これを打ち上げるだけで人々を震え上がらせたというおぞましき印。それが煌々と光り輝いている。カサンドラはその印を睨む。

 

 生意気にも死喰い人はこんな楽しいイベントを、死で汚そうとしている。

 

「死喰い人……か」

 

 カサンドラはローブを着た人間が一斉に動き始めたのを感じた。近くにいたマグルを縛り上げ、空に浮かしたり、服を脱がせたり。マグルを虐待して愉しんでいるらしい。――なんて前時代的な。

 それを阻止するべく、カサンドラは仕事をする。

 

 ――ハーマイオニーならなんて言うだろうか。

 ロンならどう思うだろう。

 ハリーなら止めるだろうか。

 

 空に浮かすだけ。

 服を脱がすだけ。どうにもその先はやる気はないらしい。

 テントを倒したり、燭台をめちゃくちゃにしたり。

 なるほど、悪戯レベルだろう。三人ならきっとやり過ぎだと言うに違いない。

 だが、カサンドラは空に打ち上げられた闇の印を見上げる。

 死喰い人を名乗り、死喰い人として悪事を働くのなら。今は悪戯レベルの悪事だったとしても、いつ気が変わって死の呪文が出てきてもおかしくはない。

 だからこそ、カサンドラは務めを果たす。

 

「何が正しいかなんて……今でさえ、わかりはしない」

 

――ハーマイオニーの前ではとても言えなかったが。

 

 ある程度、正しさなんて勝者が作るものだ。勝者になれば、正しいかどうかなんて、割とどうでもよくなる。歴史も、世論も、勝手に勝者を善き者として扱ってくれる。何を持って勝利とするかは、時代によって変わるが、そういう面があるのは間違いない。古代ならば、敵対勢力の皆殺し、今のマグルならなんだろうか。マスコミを引き込み、世論を味方につけることだろうか。今の時代、どうすれば勝者になれるのか、カサンドラはすぐには思いつかなかった。あるいは、ロックハートのように悪事が露見しても人気に陰りがなければそれでいいのかもしれない。

 

 だが、今この場、死喰い人相手に勝利するにはどうするのか。それは、それだけはよくわかっていた。

 

――

 

 彼は杖を振り、マグルの管理人を宙に浮かせた。急に浮いたことに、老人のマグルは慌てふためき、何かを叫ぶ。そのザマが実に愉快だった。

 

「ははは! どうだ! 恐ろしいか! このまま逆さにして地面にぶつかればどうなるかなぁ? ははは!」

 

 彼は遠くブルガリアに逃れていた死喰い人の下っ端だった。ワールドカップがイギリスで開催されると知って、旧友と連絡を取り、死喰い人再興をこの場で誓うつもりだった。これは狼煙だ。老いたマグルが()()だと足りないだろう。行動に移す前に見た限りだと、彼と同じ考えの人間がかなりの数上っていた。クィディッチで熱狂し、酒でハイになって、そしてあのお方への変わらぬ忠誠をアピールするのだ。

 

「いいぞライア。このままあのお方復活のための狼煙とするのだ。さて、そろそろこいつも十分怖がったろう? 始末するか」

「そりゃいい! さあ、じいさん、あの世にいく準備はできたか? 遺言は? ぎゃはは!」

 

 男、ライアは杖を振って管理人を逆さにひっくり返す。管理人の顔が視界一杯になるまで近づく。その顔を恐怖に歪み、震える唇からは微かに命乞いの言葉が漏れていた。手は神に祈るように組まれ、実に滑稽だった。

 

「なんだ、神に祈ってるのか? お前のようなジジイを助ける神なんているものか! はは! さて、一緒にやるか、ハーウェイ」

 

 ライアはにやにやしながら振り返った。その瞬間、彼の笑みは消え失せた。

 

 

 ――誰もいない。

 

 

「……ハーウェイ?」

 

 キョロキョロと周囲を見回す。魔法が使われた様子もない。誰かが攻撃したようにも見えない。姿現しだろうか? いや、音はしなかった。不可解だった。なにが起こったのかさっぱりわからなかった。

 

「一体……なにが……」

(ニュクス)が彼を助けるそうだ」

「え」

 

 慌てて振り返り、彼が最期に見たものは。

 金色に輝く槍の穂先と、ローブを着た『死』だった。

 

――

 

 片手で管理人を掴み、もう一方の手で首を貫いた槍を引き抜くと、死喰い人の体が僅かに金色に光る。その光が収まる頃には、彼の死体は誰の目にも見えなくなった。死体が消えたわけではない。触れればそこにある。だが、見えない。騒いでいたもう一人も、同じようにして『消した』。

 

「……まだ二人か」

 

 何人消せば大人しくなるんだろうか。

 カサンドラは助け出した老人に何も言わず、夜を駆ける。死喰い人が見える。子供に襲い掛かろうとしているヤツ。

 寝ている人がいるテントを燃やそうとしているヤツ。シンプルに死の呪文を使おうとしているヤツ。

 何人も、何人もの死喰い人残党がクィディッチの熱に浮かされたまま大暴れする。そこかしこで闇の印が打ち上がり、魔法使い達の悲鳴が上がり、その悲鳴に気を良くした死喰い人がさらに調子付く。

 

――カサンドラは、目に付く端から消していった。

 

 子供に襲いかかる寸前。テントを燃やそうと杖を振り上げた瞬間。死の呪文の頭を唱えた途端に。

 

 彼らは絶命した。一人一人順番に、カサンドラは悪行を見つけ次第、その槍に血を吸わせ、その死体を神秘によって隠蔽する。一人、また一人と消していく。

 だが、それでもカサンドラは一人だ。何十人も分散して悪事を働くものだから、どうしたって漏れは出る。なんとか食い止めていたが、ついに会場のどこかで火の手が上がった。悲鳴が聞こえる。哄笑が響く。カサンドラは歯噛みするがやるべきことは、わかっている。

 

 カサンドラの心は、戦乱の時代に戻りつつあった。

 

――

 

 アーサーは子供達のテントを開けると、怒声と共に子供達を叩き起こした。

 

「起きろ! 急いで!」

「え、なに!? パパ?」

「ロン、今モリーがハーマイオニーを守ってる。私がモリーのところまで連れて行く。モリーと一緒に、けして、動いてはいけないよ」

 

 ハリーは寝ぼけながらもテキパキと身支度を進める。オリバーに叩き起こされ慣れてることがこんな場面で生きるとは。ハリーはロンと一緒に外に出る。

 

 外は大騒ぎだった。

 

「な、何が……」

 

 そこかしこで悲鳴が聞こえる。テントが燃え、燭台が倒れ、幸せで楽しいお祭り会場は業火揺らめく戦場に変わってしまっていた。

 

「おいで」

 

 アーサーは杖を引き抜いてハリーとロンを引率する。

 

「ウィーズリーさん、カサンドラは!?」

「彼女は大丈夫だ。――一人で守りきるなんて無理だとファッジには言っていたのに!」

「パパ、ジニーとハーマイオニーは!? それに、他の兄貴達は大丈夫なのか!?」

「みんなモリーのところだ。ビル、パーシー、チャーリーは助太刀だ。私もじきに行く」

 

 アーサーは妻と子供達がいるテントを見つけると、駆け出した。

 

「モリー、無事か!」

「アーサー! 私が下っ端にやられるような女だと思っているのですか!」

 

 そう言いながら、モリーは杖の先を木々の間に向けて、衝撃の魔法を無言で放つ。黒いローブの男が吹き飛ばされて、見えなくなった。

 

「も、モリーさん、ふ、吹き飛ばしただけで、大丈夫なの?」

 

 ハーマイオニーはジニーと同じようにモリーにしがみつきながら聞く。その声は震えていて、涙声だった。

 

「まあ! あなたが気にする必要はないのよ。――あら、珍しい」

 

 モリーが呆けたように言うのも無理はない。木々の間をすり抜けるようにして、マルフォイ一家がやってきたのだ。ハリーとロンは身構えるが、なんとルシウスは両手を上げて害意がないことを示した。

 

「ま、マルフォイ? ここになんの用ですか?」

 

 さしものアーサーも困惑した様子で聞いた。

 

「私はかつて服従の呪文の影響で、死喰い人筆頭として扱われたことがありましてね。恐るべき守護者に勘違いされてはひとたまりもない……。ここはどうか、我々を助けると思って共にやり過ごしませんか?」

 

 ルシウスはある意味で必死だった。魔法省でそれなりの地位を築いている彼だからこそ、今この場にいる死喰い人はなによりも恐ろしいリスクを犯していることに気付いていた。万が一にでも一家丸ごと死喰い人と判断されて消されてはたまったものではない。

 

「――わかりました。しかし、我々の確執はそう拭えるものではありません。お互い、会話はよしましょう」

「――感謝します、ウィーズリー」

 

 ロンとハリーはルシウスがおかしくなったのではないかと思い、まじまじと彼の顔を見た。

 純血主義の筆頭貴族で、ハーマイオニーやカサンドラを嫌悪し、ウィーズリーを『血を裏切る者』として敵対視しているはずのルシウスが、アーサーに「感謝します?」世界がひっくり返っても起こらないはずの出来事が今起きていた。

 

「元気だったか、ポッター、ウィーズリー」

 

 同じことをドラコも思ったのだろう、彼の顔は困惑気味だった。

 

「ドラコ。余計なことを言えば放り出す。仲良くしろとは言わんが、黙っていなさい」

「父上。僕はもう14歳ですよ? 取り繕うことくらいできます」

「そう言っている時点で取り繕えてなどおらん」

 

 ドラコはムッとした表情になった。

 

「――マルフォイ、一体何が起こってるんだ?」

 

 ハリーが聞いた。ロンはマルフォイに普通に質問するなんて、と言う顔をしている。

 

「僕が教えてほしいくらいだ。だが……大凡推測はつく。グレンジャー、気をつけるといい。奴らはお前のようなけが――」

「――ドラコ」

 

 トン、とマルフォイはステッキで地面を軽く突いた。

 

「――すみません父上。とにかく、死喰い人は()()()を気にする。絶対にどこかへ行くんじゃないぞ。嫁の貰い手がなくなるような目に遭っても知らないからな」

「わた、私がここから離れるほど馬鹿な女に見えるって言うの!?」

 

 ドラコは肩を竦めた。

 

「ただの忠告だ」

「それよりも、マルフォイ。お前達がここにいたら死喰い人がやってくるかも――」

 

 ロンが詰め寄ろうとしたまさにその時。死喰い人が一人、木陰からやってきた。顔は白い仮面で隠されており、人相を窺うことはできない。彼はにこやかな雰囲気でルシウスのそばまで歩いた。

 

「これはこれは、マルフォイ様。穢れた血に――血を裏切る者。流石ですな。あとは人を集めて纏めて始末するだけ……。おお! なんと、ここにはおぞましきハリー・ポッターまで! 大手柄ですな!」

 

 あやかりたいものです、なんて言う死喰い人に、ルシウスは冷たく返した。

 

「何をおっしゃっているのかわかりませんな。私は死喰い人などではない。侮辱するのも大概にしてもらおう」

「――は? 何をおっしゃって……。――まさか、マルフォイ様、あなたも! あなたも偉大なる御方への忠誠を忘れ、保身を考えるような愚か者なのですか!」

「残念ながら私自身、例のあの人に忠誠心を抱いたことは一度もない」

 

 ルシウスの言葉に、男は簡単に激昂した。ジニーとハーマイオニー、モリーの方へと向き直ると、杖を突きつけた。

 

「では彼らが死ねばあなたは戻らざるを得ないわけだ!」

「この場で最も弱い人間を標的にするような弱卒と同じ組織? これほど酷い侮辱、経験がありませんな」

「何を! さあ、死ね、この穢れた」

 

 男は後頭部を殴られたかのような素振りを見せると、そのままその場で崩れ落ちた。

 

「――え?」

 

 ハリーとロンは呆然と呟いた。

 

「ハーマイオニー、ジニー、見てはいけません」

 

 モリーがジニーを固く抱き寄せながら言った。ハーマイオニーは崩れ落ちた男に視線を釘付けにされている。

 

「ま、ママ……な、何が、あの人、どうしちゃったの?」

「いいこと、私の服にしがみつきなさい。そうすれば次顔を上げる時、きっと何もかも終わってるわ」

 

 モリーは知っていても答えなかった。まだ娘には早すぎるのだ。

 しばらくすると、また一人死喰い人がルシウスのところに駆け寄ってきた。余裕のある顔ではなく、その雰囲気は恐怖に震えているようだった。

 

「ルシウス・マルフォイ様! 助けて、助けてください! 死が! 『死』が我々を襲っています!」

 

 ルシウスは顔を引きつらせながら答える。

 

「ず、随分とまぁ情けないことですな。御伽噺を持ち出してまで……そんなに恐ろしい存在がいたとおっしゃるので?」

「助けてください、みんな、みんな消えたんだ! 何かちょっと物音がしたと思って振り返ったら、もう、もうクライスもライラもどこにもいなくなってた! 教えてください、イギリスには今何がいるんですか! ば、化け物が、我々死喰い人だけを狙い撃ちにする化け物なんて、そんなものがいるなんて、そんな馬鹿なことが! こんな、こんなことならフランスに引っ込んだままのほう――がっ」

 

 パタリ、と同じようにして男が倒れた。アーサーは首を振って男に近づく。後頭部に小さな穴が開いており、そこから血が流れていた。

 

「……このままだと、死体が山のように積み重なりそうですな」

「――実に、彼らは愚かですな」

 

 ルシウスとアーサーは軽く流しているようだったが、ハリーとロンはそれどころではなかった。

 

「ぱ、パパ、だ、誰がやったの?」

「わからない」

「わからないって……」

 

 アーサーはもっともらしく、疑問を口にした。

 

「二人の傷口は、『銃』で撃たれた時の物のように思える。けれどハリー、知ってるだろう? 銃は撃つ時に物凄い音がする。聞こえたかい?」

 

 ハリーは首を振った。弓矢ならどうだろうか?

 いや、と彼は思い直す。カサンドラが使ってる矢は長い。こんなふうに、穴だけ開けるなんてこと、絶対にできるはずがないんだ……。

 

「それじゃあパパ、本当にあの、御伽噺の『死』が死喰い人を襲ってるってこと?」

「……わからない。でも、こんな不思議なこと……」

 

 アーサーは繰り返す。

 ふと、アーサーたちのすぐそばで緑色の閃光が走った。甲高い悲鳴が聞こえた。

 大人たちは慌てて自分の子供たちを庇う。

 

 すぐ前に広がる林の真上に、闇の印が上がった。

 

「なに――っ!? 闇の印!? みんな、警戒するんだ! 死喰い人が押し寄せてくるかもしれない! 『姿現し』に警戒しろ!」

 

 その言葉は半分は正しかった。二十人ほどの人間が凄まじい音と共に姿あらわしをして、一斉に杖を突きつけたのだ。

 

 

「きゃあああああっ!? モリーさん助けて!」

 

 ハーマイオニーはパニックを起こしてモリーにしがみついた。

 

「あなたたち! 女の子をこんなふうに脅かしてどう言うつもりです! 魔法省の人間なら死喰い人が今どう言う格好しているかくらい把握してからいらっしゃい!」

 

 モリーが一喝すると、転移してきた人間は戸惑ったような顔をした。

 

「やめ――やめろ! おろせ、杖を下ろせ!」

 

 集団の中の指揮官が、大声で言った。

 

「ウィーズリー家だ! やめろ!」

「だが、マルフォイもいるぞクラウチ!」

「なおさら下ろせ! 指示に従えバカ者!」

「ハリー・ポッターもいるわ!」

「ああそうだろうな、だから下ろせと言っておろうが!」

 

 ぎゃあぎゃあと言い合って、それからしばらくしてようやく一団は杖を下ろした。

 

「全く、救助の人間がこうも怯えてどうする? ――諸君、無事かね」

「無論です、クラウチ」

 

 マルフォイが神妙に頷いた。

 

「結構!」

 

 クラウチは次に厳しい目をハリーたちに向けた。

 

「この死体は――まぁいいとして。

 この中の誰が闇の印を上げた? 返答次第ではまた諸君らに杖を向けなければならん」

 

 詰問するような口調で、クラウチがそう問いかけた。

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