【完結】ハリー・ポッターとワシ使いの傭兵   作:丹寺 錯視屋

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多忙につき、前話分の感想返しは出来ませんでした。すみません


初対面のマッドアイ

 魔法省の人間が一人、3人の闇の魔法使いに囲まれている。

 

「助けてくれ、『死』が、『死』がやってきてるんだ! お、お前らが何かしたんだろ!? 頼む、もうしない、俺たちは自首する! だから」

「知らんと言っているだろうが! もうすぐ増援が来る、それまで大人しくしていたら信じてやるから、お前らは離れろ!」

「いやだ! 離れたら『死』が俺たちをつかま――」

 

 カサンドラは死喰い人が全員背を向けた瞬間を見計らい、その背中に『レオニダスの槍』を投擲する。

 

 ――瞬間、音もなく。

 

 カサンドラは槍の元へと移動していた。本人としては普通に歩いているだけなのだが、外からその光景を見れば瞬間移動しているようにしか見えない。胴体を貫いて突き出た槍を、胸側の柄を掴んで引き抜く。時間間隔が延長され、カサンドラは次の獲物を見定める。すぐ隣の男の首を貫いて、さらにその隣の男の胴体も貫いて暗殺する。

 ほとんど同時に、死喰い人の死体が金色の光に包まれ、そして誰の目にも見えなくなった。魔法省の人間は驚愕で目を見開き、恐怖でへたりこんでしまった。カサンドラは彼に目を向けることすらせず、次の場所へと向かう。

 そのようなことをどれほど繰り返しただろうか。

 

 ――ダンブルドアが、一人の死喰い人と相対していた。

 

「だ、ダンブルドア先生、助けてください。もう悪いことはしません。どうかお願いします。『死』が、『死』が私たちを襲っているのです。お願いします、どうか、どうか助けてください」

「おお……マッケンジー」

 

 ダンブルドアの目は笑っていなかった。跪いて祈るように顔を俯かせている死喰い人には、普段通りの、校長先生のダンブルドアと同じように思っているのだろう。

 

「おとぎ話は知っておるかの」

「ええ、ええ! お伽話の『死』が、我々を――」

「『死』から助かる方法はの、『透明マント』しかないのじゃよ。ワシにはどうしようもないし、できたとしても……果たしてワシは、それをお主に貸すかのう?」

「え――?」

 

 顔を上げようとしたその瞬間、男は側頭部をクロスボウに射抜かれて死んだ。冷たい目をしたダンブルドアを見ずに済んだのは、せめてもの救いだろうか。

 

「『死』よ。もう十分じゃ」

 

 しばらく、何も反応がなかった。がさがさと草むらをかき分ける音がして、メイスを担いだカサンドラがダンブルドアの前に現れた。ローブを脱ぎ、ハリーたちと会っていた時の格好だ。まるで今までその格好で歩き回っていたかのようにだった。

 

「もういいのか?」

「うむ。しかし……考えたのう」

 

 ダンブルドアは素直に感心した。

 今回の出来事で、大量の死者を出した『死』とカサンドラを結びつける魔法使いはいないだろう。ダンブルドアでさえ何割かは本当にお伽話の化け物がいるのではと思うほどの神秘、不思議だったのだ。何も知らない人間にとってみれば、お伽話の化け物がいたということ以外結論付けようがない。

 

「なんのことだ? 死喰い人は『死』とかいう化け物に怯えていたが……」

 

 これでカサンドラは手の内を隠しながら仕事を完遂したことになる。なるほど、この狡猾な手口はまさしく古き良きスリザリンのやり方と言えるだろう。

 組み分け帽子は正しかったのだ。ダンブルドアはそう確信した。

 

「そうじゃの、魔法使いのおとぎ話じゃよ。それにしても……この傷痕、銃かのう?」

 

 いや、とカサンドラは背中に担いだクロスボウをダンブルドアに見せた。小さくコンパクトな、拳銃のようなクロスボウだった。

 

「クロスボウだ。小さめのボルトの長さをさらに削って小さくしたのを使ってるから、頭に打ち込めば完全にめりこむ」

「実に恐ろしいのう」

「ダンブルドアも警備か?」

「そうじゃのう、似たようなものじゃよ。クラウチと今回の件について少し話しておったのじゃ」

「なるほどな。もういいって言ってたが……つまり、もう()()()ってことでいいのか?」

「うむ。ハリーたちと合流するかの?」

 

 カサンドラは首を振った。

 

「いや。このまま帰る。ちょっと今日は……殺しすぎた。気取られたくない」

 

 血の匂いも火薬の匂いも、カサンドラには付いていない。だが、今のカサンドラは精神がやや古代に立ち戻っている。普段通りの言動とは違うことを言うかも知れなかった。

 

「そうかのう。なら、クラウチが安全のために避難させたということにしておくかのう」

「悪いな」

「いやいや。気持ちはワシもわかる。ワシとて、今はあの子らに会うのは避けたい」

 

ダンブルドアも、今は完全に校長先生としての顔は脱ぎ捨てて、カサンドラと同じように、英雄としての苛烈な面が前面に出ている。お互いに、今の自分は子供たちには見せたくなかった。

 

「ああ。じゃあ、あとは任せてもいいか?」

「もちろんじゃよ。カサンドラ、よくやってくれた。けが人や、施設への攻撃は止められんかったが……一人という都合上、漏れはどうしても出る。じゃが死者はおらんし、『死』が猛威を振るうようになってからは自首するものも出てきた。間違いなく、お主の功績じゃよ」

「まあ、雇い主からそう言ってもらえるなら、働いたかいがあるってもんだ。じゃあ、私は帰る。ハリーたちによろしく言っておいてくれ」

「うむ。荷物はどうしようかのう」

「離れたところにテントを立ててある。そこに寄ってから帰るから気にしなくていい」

 

 カサンドラはそう言うと、装備を担いで音もなく立ち去った。

 

「……よもやあそこまで強いとはのう」

 

 ダンブルドアはしみじみと呟いた。ハリーからカサンドラがどれほど強いのかは聞いていたつもりだった。バジリスクと真正面から戦って勝利すると。膂力が強く、クィディッチアリーナの塔から飛び降りても無傷なほど、殊更に頑丈なのは知っていたが……。まさかあんな風に音もなく、影さえ見えず、淡々と始末するアサシンのような芸当もできるとは。

 

「……ふーむ……」

 

 ダンブルドアは長い顎髭を撫で付ける。あれほどいろいろなことができるなら……。

 それならば、もっと任せられることがあるのではないか。ダンブルドアはそう思った。

 

――1994年8月 カサンドラ探偵事務所

 

 カサンドラはトーストを齧ると、日刊預言者新聞を机の上に投げた。

 

「シリウス、最近日刊預言者新聞のゴシップ度が増えてるんだがどういうことだ?」

 

 カサンドラは紅茶を一口飲む。対面にシリウスが座ると、彼は新聞を手に取った。

 

「……魔法省赤っ恥、『死』の再来か、ねぇ。随分暴れたみたいだが……何をどうすれば御伽噺の化け物の仕業にできるんだ?」

「去年、ドラコ・マルフォイってヤツが吸魂鬼のコスプレをして悪戯してたのを見て思いついたんだ。極限状態でローブを着たヤツがいたら、魔法使いは化け物と勘違いするんじゃないかってな。結果はそこに書いてある通りだ」

 

 シリウスは首を傾げながら記事を読んでいく。読み進めれば読み進めるほどに眉間にシワが寄っていく。

 

「クィディッチ観戦の観客にもいくらか被害が出た……と書いてあるがハリーは無事なのか?」

「大丈夫だ。死人はでなかった。死喰い人以外にはな」

 

 カサンドラが言うと、シリウスはあからさまにほっとしたような顔をした。

 

「ならよかった。……俺の目がおかしくなったのでなければ、『死』は魔法省の人間の目の前で死喰い人を殺し、死体を光に変えてしまったと書いてあるが?これを、マグルのカサンドラが?」

「私は特殊なんだ。……話しておくか。ある程度は情をかわしたんだからな」

 

 シリウスは新聞をテーブルに置いた。

 

「聞こうじゃないか。どう特殊なんだ?『死』の子孫とかか?」

「『死』の祖先かも知れないぞ?」

「……?」

 

 カサンドラはソファに深く腰掛け、腕を組んだ。

 

「改めて自己紹介といこう、シリウス。私は、ニコラオスに育てられしピタゴラスの子カサンドラ。生まれはギリシャのスパルタ。育ちはケファロニア島。生まれは紀元前480年代。2400歳を超えてるが、細かい年齢は数えてないから忘れた」

「……冗談だよな?」

 

 カサンドラは首を振った。

 

「証明は出来ないがな。私は長いこと生きた……」

「信じられない……俺はホグワーツ創始者よりもおばあちゃんを抱いたのか!?」

 

 最初に出る感想がそれとは。カサンドラは苦笑する。

 

「見た目もおばあちゃんじゃなくてよかったな。もしそうだったとしても、私なら気にしないがな」

amazing(なんてこったい)……」

 

 シリウスは衝撃に打ち震え、顔を覆って俯いてしまった。

 なんてことだ……と何度も繰り返している。余程年齢の差が気になるらしい。

 

「……まぁ、見た目も、肌のハリも若々しかったろ?」

「とんでもない若作りじゃないか! カサンドラ、教えてくれ、どうしてマグルのお前がまだ骨にならずに済んでいるんだ?」

 

 古代ギリシャなら骨すら残っていなくてもおかしくはないな。そんな他愛もないことを考えながら、カサンドラはポツリポツリと話していく。

 

「突拍子もない話だ。『かつて来たりし者たち』が作った『秘宝』の守護者に選ばれたんだ。来るべき時が来るまで、私は『秘宝』を守り、時が来たら継承者に『秘宝』を渡し、旅路を終える」

「――つまり、継承者がいつか現れるんだな? それはいつだ?」

「少なくとも、あと10年くらいしかない」

「――10年? それがお前の寿命なのか?」

「そういうことになる。たった10年しかいられないのに、結婚するのは違うだろう?」

 

 ブラックは悲しげに眉間にシワを寄せた。

 

「そんな顔をするな。さっきお前が言ったように、普通ならとっくに化石になっててもおかしくないんだ。私は死ぬが……それは長い長い旅路を終え、永遠の休息と安らぎを得る。それだけなんだよ」

「――本当におばあちゃんなんだな。ダンブルドア先生と似たようなことを言う」

「いいか、シリウス。私をおばあちゃんと呼ぶな。実年齢はともかく、身体は若い。隅々まで知ってるだろう?」

 

 シリウスは顔を和らげて、肩を竦めた。

 

「そういやそうだったな。それでカサンドラ。歳のことと化け物のフリをできるのとはまた別のことだと思うんだが?」

「私は『かつて来たりし者たち』の血を引いてる」

「……たしか、魔法界のヤバくて凄い魔法具の作成者たちのことだろう? 憂いの篩に『真なる』逆転時計とか、ああ、ジェームズが使ってた『本物』の透明マントとかもそれのはずだ」

「そう言う奴らの血を引いてるから、魔法じみたことができるんだ」

 

 なるほどな、とシリウスは頷いた。

 

「カラクリがわかってスッキリしたよ。ありがとう、カサンドラ」

「気にするな。それで、この記事はなんだ? 最近特にレベルが低いんだが」

 

 カサンドラは記事を指差す。そこには先日の事件の一部始終が綴られていた。

 

『テント場で怯えながら、情報を今か今かと待ち構えていた魔法使いたちは魔法省からの情報には酷く失望させられた。『闇の印』の出現からしばらくして魔法省の役人はこう宣言したのだ。誰も怪我人はなかったと。それから一時間後に数人の遺体が森から運び出されたという噂を、この発表だけで十分に打ち消すことができるかどうか、大いに疑問である……』

 

「大体事実なんじゃないのか? 運び出された死体ってのは、カサンドラが消したやつのことだろう?」

「違う。闇の印が打ち上がったと言うのに死喰い人への警告をしないなんて何を考えてる? それに文面がいくらなんでもセンセーショナルすぎるぞ」

「死喰い人に残党がいてまだまだイギリスで元気いっぱい……そう報じるだけでパニックになると思ったんだろうさ。文面は……ああ、こいつが書いてるからだろうな、リーター・スキーター。ゴシップみたいな記事を書くので有名だ。中傷記事や根拠の薄い記事を書くのが得意っていうどうしようもない奴だよ」

 

 カサンドラは渋い顔をする。

 

「マスコミは嫌いだ」

「そこまで嫌うか?」

「去年からマグルの世界でも中傷が目立つ。信じられるか? マイケルが子供に性的な虐待をしたって書いてるんだぞ。連日連夜酷かった。ツアーも中止になるし……クソッタレのマスコミ連中め」

 

 シリウスは眉を顰めた。MDに入っているマイケルの曲を聴きながらランニングしている彼にとって、素晴らしい音楽を発表するアーティストのスキャンダルに、思わず驚いた。

 

「マイケルが……子供に?」

「……もうどうしようもないことだ。向こうだとほとんど決着がついてる。ったく。去年は散々だ。冤罪ばっかりだ。お前に、マイケルに、バックビークに」

 

 カサンドラが深いため息をつく。ふと壁にかかっている時計に目を向ける。

 

「シリウス。そろそろ今年の顔合わせがある。マクゴナガルが迎えにくるから、寝室に引っ込んどけ」

「マクゴナガル先生……。その、去年迷惑かけたから謝りたいんだが」

「あの時のマクゴナガルは本気で怒ってたからな。罰則代わりに魔法が飛んでくるぞ。悪いことは言わない。やめとけ」

 

 カサンドラはシリウスを立ち上がらせると、寝室に押し込んだ。しばらくして、事務室の扉がノックされた。

 

「探偵か、傭兵か? ――マクゴナガルか」

「こんにちは、カサンドラ。迎えに来ましたよ。今年から直接『姿現し』するのは避けるよう校長先生から通達がありましたが……何か?」

「ん、まあ私にもプライバシー意識が芽生えたってだけだ。さ、行こうか」

「ええ」

 

 カサンドラはマクゴナガルの服の裾を掴んだ。

 バシン、と音がして、事務室からカサンドラが消えた。

 

――1994年 8月 ホグワーツ職員室

 

 カサンドラが職員室に入ると、職員全員に緊張が走っていることに気が付いた。いつもならテーブルに積まれたお菓子をつまみながらおしゃべりしているフリットウィックとスプラウトも大人しく座って、若干緊張した面持ちだ。ハグリッドなんて今にも殺されるんじゃないかって顔をしている。スネイプも警戒心をあらわに、いつでも杖を引き抜けるよう片手がローブの中に伸びている。普段通りなのは、愉快そうな笑みを顔に浮かべたダンブルドアくらいだった。どうやらあの日以来校長が英雄としていきなり苛烈になった……というわけではなさそうだ。

 

「何があった?」

「じきにわかります」

 

 マクゴナガルと一緒に、空いているソファに座る。すると、ダンブルドアがうなずいて、宣言した。

 

「そろったようなので始めようかの。そろそろ新学期が始まる。今年の『闇の魔術の防衛術』の教授を皆に紹介するとしよう。今年も間違いなく優秀な先生であると言えるじゃろう」

「去年も同じことを聞きましたぞ、校長。結果は……復讐に憑りつかれた、どうしようもない人狼でしたな」

「これこれ、そのような言い方はよろしくないじゃろう。ホグワーツとしては、ルーピンは依願退職じゃよ」

「……さようで」

 

 悪戯っぽく笑うダンブルドアだった。カサンドラは苦笑する。こんなジョークを言うダンブルドアなんて、きっと生徒たちは想像もしていないに違いない。生徒たちが思うダンブルドアはちょっと『変』なおちゃめな老人だ。

 

「それで、今年の新任が優秀だと言える根拠はあるのか?」

「当然じゃよ。今までにないくらいの根拠があると言える。何せ今年の教授は元闇祓いの優秀な使い手で、アズカバンの半分を死喰い人で埋めたという逸話を持つほどしっかりとした人物じゃ」

「そりゃ期待大だ」

 

 ダンブルドアは頷いた。

 

「では、入っていただこうかの」

 

 バン! と職員室の扉が力強く開け放たれた。カサンドラは思わず立ち上がった。右足が木の義足をしていて、奇妙な眼帯をした男だった。モノクルのように目の部分だけが開いた眼帯を付けており、その中心には瞼のない眼球がぎょろぎょろと周囲を見回している。何よりもそいつはどういうわけか杖を構えて杖の先を各職員に向けているのだ。カサンドラは自分に杖の先が向けられる前に身を翻しソファの陰に隠れた。

 

「ダンブルドア!? そいつはどういうつもりなんだ!」

「ムーディ、杖を下ろしてくれんかの?」

「……ダンブルドア、去年は殺人鬼がホグワーツをうろつきまわっていたんだろう? だというのに教員たちのこの反応の鈍さはなんだ!? マグルの警備員しか『まとも』な反応ができんとは、どういうことだ!」

「お言葉ですが」

 

 マクゴナガルがこめかみをひきつらせながら言った。

 

「ここは職員室ですよ、ムーディ先生」

油断大敵!! いついかなる時も敵が襲ってくると思え!」

「先生の教育方針はよくよく理解できました。カサンドラ、もう大丈夫ですよ」

 

 カサンドラは頭を上げた。

 

「ひやひやさせるな。そいつは武器でもあるんだぞ」

「その通り! 実にわかっているな。そして無礼を謝罪しよう。警備員として申し分ない反応だった」

「お眼鏡に適ったようで何よりだよ」

 

 カサンドラはため息をついてソファに戻った。

 

「うむ……。まぁ、どのような人物かの紹介はもう不要じゃろうな。彼はアラスター・ムーディ。経歴はさきほど伝えた通りじゃ。生徒たちに実戦的な授業をしてくれることじゃろう」

「大丈夫なのですか、校長先生」

 

 フリットウィックは不安そうだった。

 

「さきほどのやりとりを見るに、去年度のカサンドラのように『抑える』ことができるようには見えませんが。闇祓いの新人研修体験授業が続くようでは困るのでは?」

「その点は心配しておらんよ。のう、アラスター」

「無論。生徒に攻撃の方法を教えたところで、害になるだけだ」

 

 ムーディは憮然とした様子で座った。

 

「ならば、是非とも期待しようかの。では今年の注意事項じゃ。今年は三大魔法学校対抗試合(トライ・ウィザード・トーナメント)が開かれるゆえ、クィディッチは中止じゃ。選手には三大魔法学校対抗試合(トライ・ウィザード・トーナメント)に集中できるよう、様々な配慮をお願いすることになるじゃろうが、そこはホグワーツのために汲んでやってほしい」

「つまり――宿題の免除などをしろと?」

 

 マクゴナガルが厳しい表情で聞いた。ダンブルドアは頷く。

 

「うむ。時に、試合は命に関わる可能性があると魔法省から通達があった。おそらく万が一レベルじゃろうが、可能性があるなら生徒には万全を期してもらいたいのじゃよ。宿題と、試合とを天秤にかけさせるようなことはさせたくないのじゃ」

「そういうことならわかりました」

 

 不承不承といった風にマクゴナガルは言った。

 

「うむ。次に、今年はその関係でボーバトンとダームストラングの学生が今年いっぱいホグワーツで生活する。様々な文化の違い故、衝突することもあるじゃろう。しかし、ぶつからねばわからぬこともある。難しい塩梅じゃろうが、先生方はそのところを配慮してほしい」

 

 ダンブルドアは教員たちの顔を見回した。

 

「そして、もう一つ。今年は学校同士の交流もかねて、ダンス・パーティが開催予定じゃ。その前後、学生たちが恋愛に燃えるじゃろう。愛し合うことを止めろとはいわんが、痴情のもつれは恐ろしい。人間関係で思い詰める生徒がいないかどうか、目を光らせてほしい」

「それからカサンドラ」

 

 スネイプが釘をさすようにカサンドラを見た。

 

「くれぐれも、生徒を誘惑しないように、強く警告差し上げる。わかっておろうな?」

「あー、まあ、誘われたらわからんぞ。私は古代からこっち、基本的に誘われたら乗ってきたからな」

「貴様、一体どういう貞操観念を――」

「セブルス。ワシは強くは言わんよ。ただ、カサンドラ。今は古代と違うのは理解しておろうな? ホグワーツの1年生に手を出すような真似は……さしものワシでもお主に厳しい処分を考えなければならん」

「わかってる、わかってるよ。皆まで言うな。具体的には何歳くらいならいいんだ」

「そうじゃのう、ダンスパーティに参加する……4年生から上としようかの。その年齢になれば、自分の相手は自分で選んでもよいじゃろう」

「了解だ」

 

 カサンドラはうっすらと笑みを浮かべた。

 

「カサンドラ、くれぐれも、著しく風紀を乱すようなことは避けてください」

 

 マクゴナガルにも釘を刺された。カサンドラは肩を竦める。

 

「わかってるよ」

「なら、この話はこれで終わりじゃの。では、顔合わせはこの辺で終わりにしようかの」

 

 ダンブルドアがそう言って、今年の顔合わせはお開きになった。

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