IZUMO ~蒼き戦士の戦記~ ~赤の英雄、蒼の復讐者~外伝 作:龍牙
さて、学園前まで引き返し、森へと入っていった亨夜達三人だが…
(おかしい…確か、ここは十分程度で抜けられる程度の森だったはずだ…。)
「せ、先輩……この森って、こんなに広かったですか……?」
七海の不安げな声が表すように亨夜達はすっかりと道に迷っていた。
数分前…
「もう、すっかり日も落ちちゃったね……。」
「夜の森って……ちょっと不気味です。」
「確かに『何か』出てきそうで、オレも怖いな。」
そうは言っているが、対して恐怖など感じていない亨夜であった。それもそのはず、亨夜の言う『何か』は具体的に言うと『ワーム』で有り、それらが隠れている可能性もある場所に二人を連れていくのは不安なのだが…。
「だけど、他に道は無いしな…。」
「気をつけていけば大丈夫よ。行きましょう!」
「うん。行こう!」
綾香の元気付ける言葉を肯定して、不安げな七海を元気付ける様にそう言って亨夜達は森の中へと入っていったのだが…。その結果は…
(おかしい…確か、ここは十分程度で抜けられる程度の森だったはずだ…。)
「せ、先輩……この森って、こんなに広かったですか……?」
「そうね……もう三十分は歩いたと思うわ。」
日も暮れて時計等の時間を知る為の道具も無く、時間的な感覚が無いから分からないのだが…間違い無く、綾香の言葉通り既に三十分前後は歩いている。
「…この森がそんなに広い訳は無いはずだよな…?」
「それって、道に迷ったって事ですか?」
「真っ直ぐ来ただけなのに、道に迷うはず無いんだけどな。」
心の中で『樹海じゃ有るまいし』と付け加えながら、現在はポケットの中に引っ込んでいるガタックゼクターへと意識を向ける。
(ガタックゼクターに上から様子を見て来て貰うか? いや、最悪の場合、合流できなくなったら拙い。)
そう考え見たものの実際、現在進行形で異常事態に巻き込まれている真っ最中なのだ。迂闊にガタックゼクターと離れてしまって合流出来なくなってしまったら拙いと考えて、その考えを却下する。
「「「…………。」」」
そして、暫くの間、三人は無言のまま顔を見合わせる。
「…どうしよう?」
「引き返しますか?」
亨夜の言葉に七海がそんな案を出す。『確かに引き返した方がいいのかもしれない』と弱気になる三人。そんな弱気な考えを否定する様に綾香は少し考えて言った。
「もうすっかり夜中だし……引き返す方が逆に時間が掛かって危ないかも。」
確かに引き換えした所で外に出られる保証もないのだ。だったら、後戻りするよりも先に進んだ方がいいのかもしれないと考える。
「確かに。早く家に帰りたいし、少し不安だけど、ここは先を急ぐ事にしよう。」
そう…最悪の場合は『森林破壊』でも何でもして無理矢理にでも一直線に進む事は出来るのだからと心の中で思っていた事は亨夜だけの秘密である。
さて、そう結論付けて、二人が頷いた時…亨夜は何かの気配を感じ取る。気配は未だ遠い…だが、確実に自分達の方へと近づいてくる。
「ガタックゼクター。」
亨夜が相棒の名前を呼ぶと、ポケットの中に隠れていた相棒が彼の手の中に飛び込んでいく。
「先輩?」
「亨夜ちゃん?」
突然の彼の行動を疑問に思った二人がどうしたのかと言う表情を向けてくる。
―がさささっ!―
そんな音が聞こえてくる。その音の位置は頭上の木の枝。葉が擦れ合う音だが、今は風も無く、それは明らかな人工的な音。
「っ!? 誰だ!?」
何時でも変身できる様に身構えたその時、
「うきーっ!」
「へ? うわ!!!」
上を振り向いて叫んだ瞬間、その声の主を見て唖然とした亨夜の顔面に声の主が彼の顔面を踏みつけながら、飛び降りた。
「せ、先輩っ!?」
「亨夜ちゃんっ!?」
思いっきり目を回してしまう亨夜であった。二人は慌てて彼に駆け寄ろうとする。その瞬間、倒れている亨夜の上に立っていた声の主は…。
「ぎろ!」
「ひっ!」
七海を赤く光る不気味な瞳で睨みつけたかと思うと、
「きょ~っ!」
「きゃぁぁ~っ!」
行き成り奇声を上げて、足がすくんで逃げられない七海に飛びかかる。
「た、助けてぇ~………。」
声の主に捕まって連れ去られていく七海の悲鳴がフェードアウトしていった。彼女を脇に抱え上げ、声の主はそのままぴょんぴょんと木々の間を飛び跳ねて何処かへと去っていく。
「ガタックゼクター!」
素早く亨夜の指示に従い彼の手から離れたガタックゼクターが七海を攫って行って相手を追跡していく。
「ひええ………。」
余りの事に腰を抜かして呆然と見ていた綾香だが、
「綾香さん、追いかけるぞ!」
「えっ……、あっ、うん!」
亨夜が立ちあがって呆然としていた綾香に声をかけるとようやく我に帰って、亨夜の後をついていくのだった。
とても、人一人抱えているとは思えない身軽さで、木々の間を飛び跳ねながら遠ざかっていく声の主とそれを追跡するガタックゼクターと、
「せんぱぁ~い~……。」
七海の悲鳴も右へ左へと宙を飛び交う。
「…ガタックゼクターが付いて行くのがやっとなんて…無茶苦茶速いぞ!? …まったく、どうなってるんだ“あいつ”は?」
「お、お猿さん?」
「いや、綾香さん…お猿さんが何で七海ちゃんを攫うんだよ!」
綾香のボケにツッコミをいれながら、全速力で追い掛ける亨夜達だが、それでも少しづつ引き離されていく。…やがて五分ほど走りつづけていると、流石に綾香の体力が尽きた。実際、亨夜自身も今日は体力を消耗が激しいのだ。いい加減限界が近い。
「はぁ、はぁ…バケモノか、“あいつ”は。」
「うひぃ……もうだめぇ……走れない……。」
スピードが落ちていく亨夜達を尻目に、声の主とそれを追跡するガタックゼクターは夜闇の向こうへと消えていった。
「後はガタックゼクターに期待するしかないか…。」
「見失っちゃったね……。」
「「…………。」」
追跡しているのが、最近大人しくなってきたとは言え、適合者候補を何人も病院送りにした武勇伝(前科)を持つ“あの”ガタックゼクターなのだ。…大いに心配が有る…あの声の主の身の安全が。
「…まったく、何をしてるんだ、“あいつ”は?」
思わず頭を抱えてそう呟く亨夜だった。
一方その頃
「や、やめてくださいぃっ!」
「………。」
手足を縛られて転がされている七海。
「こんな格好をさせて何しようって言うんですか!?」
「ぬっふっふっ…。」
「あうっ、今日は縛られてばっかりです……。」
まあ、その度に亨夜(ヒーロー)に助けられているのも彼女なのだが。
「ホットケーキ……ぷっくりころころ……美味しそぉ♪」
「だ、だれがぷっくりころころですかっ!! …って、それどころじゃない、やめて、やめてくださいぃっ!!!」
「いっただきまぁ~すっ!」
「“渚先輩”やめて、私を食べないでえっ!」
「何をやってんじゃ、お前は!!!」
パンパンパンパパーン!!! がつん!!!
何時の間にか掛けつけていた亨夜が何処からか取り出した双剣サイズのハリセンで某ゲームの主人公を思わせる連続攻撃を叩き込んだ後、長剣サイズのハリセンで一撃、トドメとばかりに拳骨を一撃した。
「ふぎゃあ!」
「きゃあ!」
まあ、その拍子で渚が持っていた蜂蜜が零れて七海に掛かってしまったのだが…。
「…えーと、七海ちゃん、大丈夫? 怪我とかは無い?」
「うう……怪我は無いけど……恥ずかしくて死にそうです……。」
既に手足の拘束はガタックゼクターによって解かれているが、先ほど零れてしまった際に足全体に掛かった蜂蜜が気持ち悪いのか、もじもじとしている。
「あ、あの、ごめんなさい……あっち、向いてて貰えます?」
「あ、ああ。いや、こっちこそ、ごめん。」
恥ずかしそうにそう言う七海にそう答えつつ亨夜は真後ろを向く。後から七海が近くの小川で足を洗う音が聞こえてきた。
「……でも、どうしちゃったのかしらね、渚ちゃん?」
「…まったく…何を考えてるんだ、このバカは……。」
そう言って二人が視線を向けるが、当の渚は……日頃、龍牙達他のライダー達(主に龍牙、次に神代、そして影山と風間が並んでいる。)相手に鍛えられ、ZECTでは通称『ツッコミマイスター』と呼ばれている荒谷亨夜の必殺のツッコミコンボに、頭にこぶを作って完全に伸びてしまっている。
「うう…ぷっくりころころ……。」
「だから、私はぷっくりでも、ころころでもないですぅ!」
「ちょっと診るわね……。」
「綾香さん、危ないよ。」
亨夜の静止も聞かずに綾香は渚の側にしゃがみこみ、
「どれどれ……。」
口を開けて中を覗き込んだり、脈を取ったりして診察を始めた。
「……お腹すいた……。」
「はいはい、分かったからおとなしくしててね。」
「………うう………。」
「…………。」
暫く診察を続けていると何かに気が付いた様に綾香が手を止める。
「まさか。」
「何かわかったの?」
「うん、多分……よっこいしょ!」
綾香は渚の脇に腕を刺し入れて、立ちあがらせる。
「ほら、こっち来て。」
「うう……きぼちわるい……。」
「何か悪い物食べたんでしょ……ほら、全部吐いちゃいなさい。」
「う…………。」
そちらの方向から目をそらしつつ、亨夜はガタックゼクターへと視線を向ける。
「…ご苦労様、相棒(ガタックゼクター)。」
七海を捕獲した渚の追跡を続けていたガタックゼクターが、渚がこの場に留まった事を確認して直に亨夜達を呼びに戻ってきたくれたお蔭で、思っていたよりも速く二人を発見する事が出来た。そんな相棒(ガタックゼクター)へと労いの言葉を掛ける。
「はいはい…全部出しちゃったら、すっきりするからね?」
「ううぅ、死ぬぅ~。」
後の会話を聞かないようにしつつ。
「…なるほど、つまりお前は、その辺に生えているキノコを拾い食いしたって事か?」
「うう、だってお腹空いてたんだもん……。」
まあ、確かに餓え死ぬ位ならば泥を啜ってでも、土を食べてでも生き残る事を考えるべきだろうが…。幾らなんでも、キノコだけは止めておいた方がいいと言うのが亨夜の弁である。少量で命を落すような危険な毒キノコもあるのだから。
「まったく、意地汚いな。」
その点についても注意はしておくべきなのだろうが、つい何時もの調子でそう言ってしまう。
「ちゃ、ちゃんと確かめたのよ!? 縦に裂けるのが毒キノコで、横に裂けるのが大丈夫なキノコ……。」
「…………渚ちゃん、それ迷信よ?」
「…………渚、それは迷信だぞ。」
綾香と亨夜の一言が矢の様に『グサッ』っと渚の心に突き刺さったのでした。
「うう……あたしとしたことが、なんと言う失態を……。」
(まあ、何とも無くて良かったな…。)
悔やんでいる様子の渚を一瞥しながら、亨夜は内心彼女の無事に安堵する。そして、気を取り直した一同はこれからどうするのかを考える事にした。
「でも、なんでお前まで、こんな所をウロウロしてたんだ? しかも、こんな時間に。」
色々と聞くべき事は有るだろうが…先ずはそれだろうと考えて質問する。彼女も何か異常事態に遭遇しているのかも知れないのだから、確認しておくに越した事は無いだろう。
「だって……すごい地震があったでしょ? あたし、その時、家に帰る途中だったんだけど、急に目の前が真っ白になって、気を失って……。」
「あっ、私と一緒ですね。」
「…オレも似たような物か。」
地震の事に気づかずに寝ていた綾香以外の三人の身に同じ事が起こったとしたら、恐らくだが…綾香の身にも起こっていたのだろう…本人が気付かなかっただけで。
「で、気が付いたら森の中に居たのよ。」
だが、それはこんな時間に森の中をウロウロしていた理由にはなっていない。…亨夜に与えられた情報から推測していくと、有る最悪の『解』が浮かび上がってくるのだ。
「それにしたって、お前の家はすぐ近くなんだから、帰れば良かったのに…。」
その考えを気付かせる事の無い様に…その考えを否定する答えを出してくれる様に祈りながら、努めて何時もと変わらぬ口調でそう言う。
……その考えが当たっていたら……渚と合流できた事は幸運だったが…自分は自分の判断で『安全』を得る事が出来ると思いながら…『より危険な場所』に七海や綾香を連れてきてしまった事になるのだ。
「帰ろうと思ったわよっ! でも、いくら歩いても森から出られないんだもんっ!」
「っ!?」
渚から告げられた言葉に思いっきり反応してしまう。それは…自分が想定していた最悪の可能性に行き当たってしまったと言う事になる。
「歩いているうちにお腹は空くし、一人で心細いし、ずっと不安で寂しくて泣きそうだったんだから!」
「ち、ちょっと待ってください……森から、出られない?」
「そうなのよ! もう丸一日、足を棒にして歩き回ったのよ!?」
「ごめん、七海ちゃん、綾香さん、オレの判断が間違ってた。」
渚の言葉を聞き、七海達の方に視線を向けて亨夜はそう言って頭を下げる。
「そ、そんな、頭を上げてください、先輩のせいじゃないですよ!」
「そ、そうよ、そのお蔭で渚ちゃんとも会えたんだから!」
頭を下げる亨夜に対して七海と綾香は逆に慌ててそう言ってくれる。
「………。ん?」
二人の言葉を聞いてそう言ってくれた事に感謝しながら、渚の言葉を思い出して何処かに引っかかる物を感じた。
「丸一日?」
聞き流してしまう所だったが…渚はついさっき確かに『丸一日』と言っていた。
大蜘蛛を倒してからどれだけ時間が経過したか考えて見ても、まだそれほど過ぎていない。…自分や七海達が知る限り、地震が起きたのは『今日』なのだ。
「あんたら、今まで何してたのよ! 待ってても誰も助けに来ないしさ……。」
「ちょ、ちょっと待って……そんなはず無いわよ?」
「そうだ。地震が有ったのは、まだ三、四時間前の事だ。」
「……?」
綾香と亨夜の言葉に渚は不思議そうな表情を浮かべる。
「そんなバカな、地震があったのは昨日でしょ?」
何処かぎこちない笑いを浮かべながら渚はそう言うが…
「いえ……ついさっきのはずですけど……。」
七海がその言葉を否定する。
「「「………。」」」
「どう言う事なのかしら……?」
沈黙する亨夜、七海、渚の三人の心情を代弁する様に、綾香がそう呟いた。
(…渚だけ過去に戻されたとでも言うのか? バカらしい…そんな事は…『ハイパーゼクター』でも無い限りは無理なはずだ。第一過去にタイムスリップしたとしても、地震が起こったって言う事実は消せるはずもない。渚はもう一度地震に遭っているはずだし、森から抜けられない理由にはならない。)
渚の身に起こった異常を自分が知る限り、ライダーシステム以外で唯一時間に干渉できる存在としてワーム仕業かと疑ってみるが…どう考えてもワームでさえ、不可能だ。
地震が起こらない…いや、ワームの科学力で地震を止めたとしても…その場合は自分達がここに居る事さえないだろう。渚と同じく自分達も地震を体験しているのだから。第一、渚を連れてくるメリットさえ分からない。偶然巻き込まれただけと言う考えも出来るが…それでも…説明がつかない点が多すぎる。
「記憶の混乱…とかじゃないのか?」
「失礼な、頭ははっきりしてるわよ!」
比較的現実的な可能性を上げた亨夜の言葉に憤慨する渚だが…それならば、余計に訳がわからなくなる。
「まあまあ……それより、森から出られないって本当?」
「そうなのよ…。森の直側に家のある私が言うんだから、間違い無いわ。この森は何かおかしいのよ!」
「そうだな。確かに可笑しいな。オレ達は渚を追いかけてかなり走ったはずなのに…。」
「そうね…全然森から外に出られそうな気配がないわ。」
沈黙が一同を包む。
「どうするのよ!」
「ううっ、お母さん…。」
完全に自分達が遭難の危機に有る事に気が付いて、取り乱し始めていた。冷静で居る亨夜も亨夜で、脱出の方法を考えるのに手が一杯で場のフォローまで意識が回らない。その時、
「まあまあ、焦ってもしょうがないわよ。」
綾香が拍子抜けするほどにお気楽な声で言ってくれた。
「そおだ。名案、ここで野宿をしましょう。」
『ぱちん』、と綾香は胸の前で手を合わせる。確かに化け物退治の後に渚を追いかける事となって疲れていないと言えば嘘になる。
「幸い、ちょっと広場になってるし。」
「やだ……じめじめしてるし、暗いし、怖い……。」
「大丈夫、ライターがあるから火は起せるわ。みんなで焚き火を囲んでいれば、どって事無いわよ。」
「……ホントに、ここで一晩明かすんですか?」
「うふふ、キャンプみたいでちょっと楽しいじゃない?」
そんな綾香の態度にちょっとだけ苦笑を浮かべてしまう。実際、綾香のその態度が心の底からであったとしても、元気付ける為の物であったとしてもその言葉はありがたいのだから。
「そうだね。みんなでキャンプファイヤーでもやろうか。」
みんなを元気付ける為に亨夜も綾香に調子を合わせる。
「……しょうがないですね。そうしましょうか。」
七海もその辺を察して納得したようで、少し作り笑いを浮かべて話しに乗ってくる。
「お腹空いて……それどころじゃないわよ……。」
渚はぶつぶつと文句を言っているが、彼女の言葉が本当ならば一日何も碌に何も食べていない事になるのだからしょうがないだろう。それを察した亨夜は
「ほら。」
ポケットの中から昼間に買ったカニコロパンを取り出した。一つだけだが、それなりにカロリーはあるだろうし、何より胃に食料が入っているといないとでは動ける時間も体力も違ってくる。
「これで、少しは腹の足しになるだろう。食えよ……っと、うわ!」
すかさず亨夜の手からカニコロパンを奪い取り、
「いただきまあっす! もぐもぐ…。」
「お前な…一口で全部食べる奴があるか!」
「むぐむぐ…ごくっ。むふふ、もうお腹の中だもんね~。」
「お前な…貴重な食料だから、三人で分けて食べる様にと考えたのに…。」
「先輩、三人って、私達は四人ですよ?」
亨夜の言葉を疑問に思いながら、七海が聞いてくるが…。
「オレはいいから、七海ちゃん達で食べて貰おうと思ったからさ。まあ、食べてしまった物はしかたないか…。」
いざとなれば自分だけなら泥を啜って草や土を食べてでも生き延びる事も出来るが、それを七海達にまで強いるのは酷であろうと優先的に彼女達に食料を回す事を考えていた亨夜だったのだ。まあ、その配慮も渚が全部食べてしまった事でダメになってしまったが…
ぼか!
取り敢えず軽く殴っておく事にした。
「いた! 何すんのよケチ! パン一個くらいで!」
殴り返してくる渚。
ぼか!
「やったな。お前は…せめて味わって食え!」
木刀を抜く亨夜。
「そっちこそ!」
剣を抜く渚。
「あーっ、もぉ、喧嘩しないでくださいよぉ~。」
「騒いだら余計にお腹が空くわよ?」
二人の言葉に渋々剣を収める渚と素直に木刀を納める亨夜であった。こうして、彼らは強行軍を諦め、ひとまずキャンプを張って休むにしたのだった。