IZUMO ~蒼き戦士の戦記~ ~赤の英雄、蒼の復讐者~外伝   作:龍牙

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第一楽章 -最終楽章-

「何だ?」

何時の間にか、亨夜は一人で森の中に立っていた。…自分以外の人影も気配ない。

「っ!? 七海ちゃん! 綾香さん! 渚!」

名前を叫ぶが其処には誰からの返事も返ってこなかった。

(どうなっている? 誰も居ない…オレが寝ている間に引き離されたかの?)

その時だった。

「亨夜様……。」

彼を呼ぶ声が聞こえてきたのは…。

「亨夜様…こちらへ…いらしてくださいな!」

「誰だ?」

「亨夜様…。」

彼を呼ぶ聞き覚えの無いはずなのに、懐かしく優しい声に導かれる様に足を進めそうになるが慌てて我に返る。

(…危険だけど…会ってみるしかないか…。)

現状で言って見る以外に道は無いと判断する。その道の先に崖が有る可能性も否定できないが、危険を犯してでも行動する意味は有る。

「亨夜様…。」

声の主は蜘蛛の巣の様な黒っぽい和服を着た美人だった。年齢は亨夜よりも上、恐らくは綾香くらいだろうと推測できる。

「君は…?」

「私の名は『楓』……先ほど貴方様に退治された妖しの者、この山に住まう『女郎蜘蛛』ですわ。」

「女郎…蜘蛛…?」

それを聞いた瞬間、亨夜の表情が鋭さを増し、大きく楓から距離をとる。

「…知らなかった…。いや、前例が無いから気付かなかったと言うべきか?」

「あ、あの…亨夜様?」

「まさか、ワームにもイマジンやファンガイアみたいに巨大化する奴が居たなんて! 来い、ガタックゼクター!!!」

「って、違います! 私はワームではありません!」

「って、嘘付け、自白しておいて何を言うか!? 大体、人間に姿を変える虫が他にいるか!?」

亨夜の叫び声に思わずずっこけてしまう楓。

「私はちゃんとしたこの世界の生き物です!!!」

「……って事はファンガイア…あれはサバトだったのか?」

「……私はこの国の妖しの者です!」

「……じゃあ、イマジン…ギガンティス…。」

「私は未来人でもありません!!!」

「……えーと、じゃあ、オルフェノクか? さっきのは激情体で…。」

「この作品はカブトとIZUMOのクロスであって、キバとも、電王とも、555ともクロスしていません!!!」

「えーと…じゃあ…。」

「私はグロンギでも、アンノウンでも、ミラーモンスターでも、上級アンデッドでも、魔化魍でもありません!!! そもそも、人では有りません!!!」

「…だったら…やっぱりワームだろう!!! 正体をあらわせ、来いガタックゼクター!!!」

再びずっこけてしまう楓。

「だから…。」(最初に戻る。)

数時間後…散々ワームと勘違いされた楓はやっとの事で、自分があの『女郎蜘蛛』で有る事、ワームじゃない事と前の主人の命令で亨夜達と戦ったのだが、亨夜達に敗れた為に契約解除されたような状態らしいと言う事を説明できたのだった。

「…それで…山を降りてしたい事があるから、その契約をする必要が有ると? 残念ながら、契約のカードもカードデッキも持ってないぞ、オレは。」

「ですから、私はミラーモンスターでもありません! それに『契り』です。そんな物は必要ありません、儀式を行うのです!」

『#』マークが楓の頭に浮かんでいるのはどう見ても見間違いではないだろう。

「儀式…?」

頭の中で某カードゲームアニメの主人公が混沌の剣闘士を呼び出す瞬間が頭に浮かぶ(遊☆戯☆王デュエルモンスターズHERO‘sもよろしく)が頭に浮かぶのだが…。

「…亨夜様が考えている物ではありませんよ。」

「…イ、イエス、ユア、ハイネス。」

妙にダークオーラを背負っている楓に対してどこぞの帝国の敬礼と共に大人しく従う亨夜であった。

「そうです。貴方に私の主になって頂きたいのですわ。契りを結んで頂ければ、私はこの力を貴方の為に使いましょう。」

微笑みながら彼女は亨夜に対してそう告げる。

「…仲間になってくれる…そう言う事でいいのか?」

「はい。及ばずながら、この女郎蜘蛛の力、貴方や貴方のお友達のために使わせていただきます。」

そう言って小首をかしげて微笑む楓。

「一応聞くけど…それは断ることは?」

「ええ…もちろん、無理にとは申しませんが…。」

ふと、彼女の表情が曇る。与えられる選択肢は強制ではなく、亨夜自身に委ねると言うのだろう。それはその表情が物語っているのを感じた。

「さっきまで命がけで戦ってたのは…別にどうでも良いか。」

「あの戦いは、前の主の命によるもの……。敗れた今、私には新しい主が必要なのですが…どうでもいいんですか?」

「いや、ガタックゼクターにも最初は殺されかけたし。」

二人の脳裏に浮かんだのは…鋏を開きながら威嚇する蒼い機械昆虫(ガタックゼクター)の姿であるのは言うまでも無いだろう。

「それに…亨夜様はこの山をお降りになるのでしょう?」

「そのつもりだけど。」

「楓も山を降りたいのです。新しい主に付かなければ、私はこの山を降りられぬ身なのです……。」

「…分かった。その契約、受け入れよう。君の力を貸してくれ。」

「ありがとうございます。きっとそう言って頂けると思いました。」

「いや、お互いのメリットが一致したなら、断る理由は無いさ。」

「やっぱり貴方は……お優しい方ですのね。」

「…そんな事は無いさ…オレはただの…『復讐者』だ。」

七海達に言われた時もそうだったが、優しさなんて自分の『復讐』の道には必要無いと思って切り捨てていた感情だと思っていたのに、そう言われてしまうとどこか複雑な心境である。

「それでは…じっとしていてください。今から儀式を行います。」

「ああ。」

楓がそっと手を伸ばして亨夜の肩に手を置く。触れた場所に暖かさを感じると…彼女の体から緑色の燐光が発せられ、視界がフラッシュアウトする。

「私の『氣』が貴方の中へと流れ込んでいくのが分かりますか?」

「…これが…?」

それが彼女の言う『氣』なのかは分からないが、何らかの力が自分の中に流れ込んでくる…そんな感覚は理解できた。

「私も貴方の『氣』を感じます。互いの氣を分け合う事で…。」

「…契約…契りを交わす事になる…か?」

「その通りです。目を閉じてください。大丈夫…すぐ終わります…。」

その言葉に従って目を閉じていくと、楓の気配その物が一点に収束して消えていくような感覚に襲われる。

「!?」

「大丈夫、私はここに居ます。」

楓の声はしっかりと彼の脳裏に響いていた。

「私は『女郎蜘蛛』の『楓』……貴方と、貴方のお友達の為に、力をお貸しいたします。」

その言葉と共に亨夜は意識を失った。

「………ん。」

目が覚めると亨夜は辺りを見渡した。

「むにゃむにゃ……素敵……私の王子様……。」

女の子らしい寝言を立てながら眠っている七海はいる。

「ぬふふ……世界が私にひれ伏すのよ……。」

女王様と言うか…随分と物騒な寝言を立てている渚も居る。

「……亨夜ちゃん、そんなものを食べたらお腹壊すわよ……。」

どんな夢を見ているのか大いに気になる綾香もしっかりといる。

どうやら、三人とも勝手な夢を見ながら、ぐっすりと睡眠をとっている様子だ。そんな三人の寝顔を眺めながら、亨夜は女郎蜘蛛の楓の事を思い出す。

夢なのか、現実なのか? それさえもはっきりしなかった妙な夢。あれも明晰夢と言う奴なのだろうか? それとも…あれもまた現実なのだろうか…? 考えが纏まらないまま亨夜は寝返りを打つ。

「ん?」

手の中に何か小さな丸い物を握り締めている事に気が付いた。手を開いて確かめて見るとそれは…

「なんだ?」

勾玉とは違う黄色に黒縞模様の入った美しい宝玉だった。

「…『女郎蜘蛛』…『楓』さん…か? まさかな。」

自分の浮かべた考えをすぐさま嘲笑する様な笑みを浮かべて否定した。

???

乾いて舞い上がる砂煙、どこまでも広がる荒野。“彼女"は行く当ても無くさまよっていた。

「はぁ、はぁ…。」

彼女は『どうしてこうなったのだろうか?』と問いかけるが、彼女の問に答える物は居ない。『いろいろ悪い事はしたけど、だからってこれはあんまりだ』とも思った。

「………っ。」

足首の辺りで千切れるような痛みが走ると、そのまま地面へと倒れてしまう。時間の感覚が無くなるまで歩きつづけてしまったせいで、とっさに身を縮めてかばう事も出来ず、そのまま倒れて動けなくなってしまった。

「…痛い…。」

見渡す限りの荒野に人影は誰も無く、誰かが通りかかる事も無いだろう。

「……どうしよう……。」

立ちあがる気力も無く、曇り空を見上げている瞳には涙が浮かんでいく。

「うっ……ぐす……。」

疲労のせいか、涙のせいか…段々と視界がぼやけて霞んでいく。

「あ……。」

意識は今にも消えてしまいそうで、こんな所で気絶したら大変だとも分かっていても、既に彼女には振り絞る気力も無かった。

(……もう……ダメ……。)

視界が黒く染まった瞬間、何かの足音が聞こえた。

「ん? どうした、紅丸?」

その声の主は天から降りて来た様に彼女に気配を感じさせずに近づいてきた。

「人間の女……か。なんでこんなところに。」

声の主はしゃがみ込んで“彼女”を覗き込む。

「息は有るのか……おい! 目を覚ませ!」

彼女の意識を覚醒させる為に声の主は軽く頬を叩く。

「う……。」

返事と言うよりも勢いで喉がなったという声を出した“彼女”の瞳には一人の少年と…彼の側を飛びまわっている“赤いクワガタ”の姿が飛び込んできた。

「お前、何処から来た? 一番近い村からでも、人間の足では一周間は掛かるぞ。」

「たす……けて……。」

「その軽装では、三日と持たんだろうに。」

「……………。」

彼に抱き起こされて気が抜けた“彼女”はそのまま再び意識を手放していった。

「あっ! ……話す前に気絶しやがった。」

彼は彼女の体を持ち上げる。

「仕方ない、連れ帰って手当てするか。行くぞ、紅丸。」

それが“彼女”、美由紀と『スサノオ』と彼の相棒である『ブラッドガタックゼクター(紅丸)』との出会いであった。

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