IZUMO ~蒼き戦士の戦記~ ~赤の英雄、蒼の復讐者~外伝   作:龍牙

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第二楽章 『妖しの森』
第ニ楽章 -1-


「……ふぁ……。…良く寝たな…。っと、ガタックゼクター…頼む。」

森で過ごした一夜を終えて亨夜は目を覚ますと、直にガタックゼクターに指示を出して、森の中へと放つ。

朝食…食事になりそうな、食べられそうな木の実などを探してきてもらおうと考えた結果である。昨晩、最後の食料を渚が食べてしまった結果、夕食抜きになってしまっているのだから、少しでも胃に入れておいた方がいいだろうと考えてガタックゼクターに頼んだのだ。

そして、ガタックゼクターを見送った後、最初に思い出すのは昨日の“異変”の数々である。突然の地震と、怪物が闊歩する誰も居なくなった学園からの脱出、“ガタック”の姿を七海達の前で見せた巨大蜘蛛との戦闘と、渚との合流…そして…。

「…あれは、夢だったのか…? それとも…あれは…現実…なのか?」

夢か現実か理解できない不思議な夢(?)の中で出会った楓…。

そう呟いて手を広げると、そこには黄色と黒の縞模様の宝玉が有った。僅かな時間の間、その宝玉を眺めると直にポケットの中へと仕舞う。…その宝玉は大切な物であると彼の心が告げているのだ。

「……バカらしい……あれは、ただの夢だ。…顔でも洗ってくるか。」

異常に対する耐性が有る亨夜だが…飽く迄、それは高度な知性を持つ地球外生物(ワーム)に対する物限定であるのだ。現在進行形で自分が巻き込まれている現状は、それとは関係がなく明らかに自分の許容範囲から外れている。

そう考えて思考を切り止めると、亨夜は近くの河で顔を洗う。

「……ふあぁ……。」

その音がうるさかったのか七海がふにゃふにゃとした声を上げて目を覚ます。

「おはようございまふ、先輩。」

「おはよう、七海ちゃん。昨日は疲れただろうし、別にもっと寝ててもいいよ。」

「いえ……私も起きます。」

実際、戦闘になれている亨夜とは違って七海達には縁がない事だったのだから、昨日一日の出来事で疲れているだろうと考えるが、七海の様子から考えてそれほど、心配は無い様に見える。

「じゃあ、顔を洗うといい…すっきりして目が覚めるよ。」

「はい。」

「………ううっ。」

声が聞こえてきた場所…綾香が寝ていた方向へと視線を向けると、綾香も目を覚ました様だ。

「ん、綾香さんも起しちゃったみたいだね。」

「……うぅ……うるさいわね、なあに?」

続いて聞こえてくるのは当然ながら渚の声だ。

「なんだ、渚まで目を覚ましたか。はぁ、これでまた五月蝿くなるな。」

「もう、そんな意地悪言っちゃダメですよ。」

最後に目を覚ました渚へと、『やれやれ』とでも言う様な動作で態とらしく溜息をつきながら、冗談のつもりでそう言った亨夜に、七海は苦笑を浮かべながら注意する。

「ねむい~。」

「ほら、そこの河で顔でも洗って来い。」

まだ眠そうにしている渚に対して近くを流れる河を指差しながら、亨夜はそう告げる。

「あう~。」

そんな声を上げて河で顔を洗ってくる渚を一瞥しつつ、右手を広げるとそこに森の中からガタックゼクターが戻ってきた。

「どうだった?」

そう問いかける亨夜の言葉にガタックゼクターは体を左右に動かす事で『NO』を表現する。

「そうか…ご苦労様。」(…拙いな…。早く、この森を抜けないと、ここままだと、最悪は飢え死にの危険も有るんじゃないのか…?)

ガタックゼクターに労いの言葉を掛けつつ、そんな事を心の内で考え始める。『最悪の場合は大規模は森林破壊も人命救助の一環として割り切るしかないか?』とも考えながら、亨夜も身支度を整え始めた。

それから、数分ほどで全員が完全に目を覚まし、身支度を整えた。

「じゃあ、そろそろ、出発しよう。なんとしても…今日中には、この森を脱出する!」

全員が準備を整えた事を確認すると、表情を引き締めながら、亨夜は七海、綾香、渚の三人に向けてそう宣言する。

「おーっ!」

「分かりました。」

「張り切って行こう!」

亨夜の言葉に元気良く上から、渚、七海、綾香の順に返事をする。

…その時だった…。『がさ』と言う音が頭上から聞こえて来たのは。

「誰だ!?」

その音に反応して、亨夜は頭上へと視線を向け、木刀を抜き放ち臨戦体制を取る。亨夜の視線の先には、枝の上に腰掛けて亨夜達を見下ろしている少年がいた。

(…人…なのか?)

思わずそう考えて警戒を浮かべてしまう。そもそも、人に化ける地球外生命体と戦っている身の上なので、外見上人間だとしても、油断は出来ないと考える。明らかに現在の異変とワームは無関係なのだが、それでも、姿形だけでは安心できないのだ。何より、亨夜自身、目の前の相手からは敵意を感じているのだ。

「お前が亨夜か……。あまり、“あいつ”には似てないな。」

(…あいつ?)「どう言う意味だ?」

彼の言葉に亨夜は木刀を握る手に込めていた力を更に強くし、空いた手で何時でも、ガタックゼクターを取り出して変身できる体制を取る。

そんな亨夜の言葉に答えもせずに彼は木の枝から無造作に飛び降りて、亨夜達の前にたった。

「ふん、そろいも揃って間抜け面。お前等如き、この森を抜ける事すらかなわぬだろう。」

亨夜達をバカにする様な口調で言い放つ彼に対して、亨夜は一瞬だけ笑みを浮かべつつ…。

「…いや、最悪は…一直線に木を薙ぎ倒そうって考えてたけど…。」

「「「「って、それはダメだろう(でしょう)(ですよ)(よ)!!!」」」」

何故か初対面のはずの少年も会わせた四人の息の合った言葉でツッコミをされる亨夜だった。

「……いや、軽い冗談だって。…それで、お前はナニモノだ?」

『飽く迄それは非常手段』と心の中で呟きつつ、目の前の少年を殺気を込めて睨みながら、亨夜はそう聞き返す。

「そういきり立つな。俺はスサノオ。お前等を仕留め損なった出来そこないの蜘蛛女の、元ご主人様よ。」

「…スサノオ…蜘蛛女の主人だと?」

「ふっ。」

驚愕を浮かべて名乗られた名前を確認する様に呟く亨夜を眺めて笑いを浮かべるスサノオ…だが…。

「スサノオに蜘蛛女と言う事は…お前はまさか、BADANの大首領!!! って、これは…『仮面ライダーSPIRITS』とのクロス作品だったのか!?」

「って!!! 違ぁーう!!! それはスサノオ違いだ!!! 大体、蜘蛛女なんて出てきてないだろうが!!!」

亨夜のボケにズッコケながらも直にツッコミを入れるスサノオ(偽)だった。

「ちょっと待て、(偽)とはなんだ、(偽)とは!? 大体、外見からしてあっちとは違うだろうが!!!」

「いや、出来損ない(ミスクリエーション)って…向こうが良く言う台詞じゃ。」

「訳の分からない言葉を使うなぁ!!!」

収集が付かないので…気を取りなおして、TAKE2。

「「って、勝手に進めるな!!!」」

はいはい…気を取りなおしてやりなおし、やりなおし。

「……蜘蛛女……?」

スサノオと名乗った少年から出た言葉に対して『もしかして、楓のことか?』と亨夜は彼の言葉と昨日の出来事から推測する。

「取り敢えず、俺の下僕を掠め取った借りは返してもらうぜ!」

「悪いが、踏み倒させてもらう!!!」

その瞬間、『バン!!!』と言う音が弾けた。

「なに!?」

並みの反射神経の持ち主では反応すら出来ないであろう速度で打ち込まれた強烈なボディーブローを亨夜はその手でしっかりと受け止めていた。

(…こいつ…下手なワームより強いな…。)

表面的にはスサノオの拳を簡単に受け止めていた亨夜だが、実際にはそれはギリギリであった。一瞬でもタイミングが遅れていれば、自分は今、地面に倒れていたであろう事は、彼の拳を受け止めた腕から想像できる。そして、それが彼の全力ではない事も…。

「先輩!」

「亨夜!」

「亨夜ちゃん!」

「来るな! 逃げろ!」

慌てて駆け寄ろうとする三人に向かってそう叫びながら、スサノオを狙い逆手で持った木刀を振るうが、それは簡単に避けられ、距離を取られる。

(…龍牙以来だな…人間相手に変身しようなんて思ったのは…。)「っ!? ガタックゼクター!!!」

本能的に危険を感じ取り、思わずガタックゼクターの名を叫ぶと亨夜のポケットから飛び出したガタックゼクターが紅い影と激突し合う。

「ふん、随分とモテるじゃないか、色男。…それに、紅丸に似た奴を連れているとはな。」

スサノオの言葉につられて赤い影へと視線を向ける。

(…あれは…ガタックゼクター!?)

…それは確かに…マスクドライダーシステムのコア…ゼクターだった。しかも、現在存在を確認されている物の中で赤は龍牙の持つ太陽の神(カブトゼクター)だけのはずなのに…それは…鮮血の様な鮮やかな赤に染まった…ガタックゼクターだった。

(…どう言う事だ? ガタックゼクターが何で…それに…同型が有るのは、設計中のカブティックシリーズと稼動中のホッパーシリーズを除けば一号機のカブトだけのはずだろう!?)

そう、本来なら同型は試作型(プロトタイプ)であるダークカブトを除けば存在して居ない筈の同型のゼクターの存在…それも、ガタックゼクターの同型機の存在に対して驚愕を露にする。…しかも、それを従えているとすれば…。

「亨夜ちゃん、確りして!」

「ッ!?」

綾香の声に亨夜の意識が思考から現実に引き戻される。

「先輩から離れてください! さもないと、撃ちますよ!」

「よくも、亨夜をやったわね!」

何時の間にか弓を構えてスサノオを狙っている七海と剣を構えている渚の姿も見える。亨夜の言葉を聞かずに三人とも、立ち向かおうとしている様子なのだ。

(…まったく…頼むから、逃げてくれれば良いものを…。)

彼女達を一瞥し苦笑を浮かべると、スサノオへと向き直り、視線を鋭くする。

実際、亨夜にしてみれば、勝敗は別にして、全力で目の前のスサノオと戦った場合、周りを巻き込まずに済む自信はないのだから、逃げてくれた方が彼女達の安全をある程度確保できて戦いやすいと言うのに。

「本来なら、この場でお前らなんぞ始末してやればいいところなのだが……。」

にやりと笑いながら、スサノオはすさまじい殺気を放ち、紅丸と呼ばれたゼクター…ブラッドガタックゼクターが顎を開きながら、威嚇する。それに対して、彼女達の前に立つ亨夜は動じる様子もなく、ただ睨み返していた。

「………くくっ。」

(来るか?)

「それなりに使える奴一人に、女が三人か。お前ら程度なら、暫くは泳がせておいてやろう。“桃花”の奴とでも遊んでいれば良い。」

そう言い残して、スサノオは両足で地面を蹴って跳び上がると、そのまま煙の様に消えて行った。

「…………。」(クロックアップとは違うか?)

「き、消えた!?」

その光景に驚いて七海が声を上げる。

「……引いてくれた……。そう考えるべきか。」

全身に寒気を感じながら、木刀を下ろし構えを解くと全身が汗で濡れているのが分かった。表情には表していなかったが、実際、ただ睨み合っていただけでも酷く疲れを感じてしまっていた。

そして、全身を襲う疲労から、そのまま地面へと崩れ落ちてしまう。

「先輩、先輩っ、大丈夫ですか!?」

「あいつ、一体……。」

「消えちゃった……、何者だったのかしら?」

駆け寄ってきた七海に肩を借りて何とか立ち上がる。ガタックゼクターの同型の存在と、それを従えた…スサノオを名乗る少年の存在…冷静な『復讐者』の部分でそれは間違いなくZECTに報告すべき事だろうと考える。

だが、同時に“普段”とも『復讐者』とも違う部分では…報告すべきではないと言う考えへと至っていたのだ。

「って、ちょっと!!! さっきから飛んでる、それはなによ!!! あいつも同じのを連れてたし。」

そう叫ぶ渚の視線の先には……ガタックゼクターの姿が有った。

(…ああ…そう言えば…。)「あの時はお前は居なかったな…。」

そう、学園を出てから合流した渚にはまだガタックゼクターの事を紹介していない事を思い出し、出発前にするべき仕事が一つだけ増えてしまったと思い至る。

だが、全身の疲労が回復するまで少しは休む必要が有る為、ある種、好都合とも考えられる。

「…なにから説明するべきか…。」

「何でも良いから、早く教えなさいよ!!!」

渚に対して、何から説明するべきかと考えながら、一つ一つ、七海達に説明した内容を思い出して行く。

(…日が高くなる前に出発出切れば良いかな、これは。)

思わずそう考えてしまう亨夜だった。

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