IZUMO ~蒼き戦士の戦記~ ~赤の英雄、蒼の復讐者~外伝   作:龍牙

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第ニ楽章 -4-

龍牙達との情報交換と彼等への口裏合わせも終わった後、亨夜は七海達の所へと戻った。

「………。」

「亨夜、ぼーっとしちゃって、どうしたの?」

「……しっ、ちょっと静かにしてくれ。」

何かに集中する様にボーっとしていた亨夜に話しかけた渚に亨夜はそう言葉を返す。

「……?」

「…なるほど、川の音か…。」

亨夜の言葉を渚が疑問に思っていると、目を閉じて聴覚に意識を集中させた龍牙が、そう呟いた。

「ああ。川の音が聞こえる。」

「……あっ、本当だ……。あっちの方からです!」

「ああ、行ってみよう…もしかしたら、出口かもしれない!」

亨夜のその言葉に頷き会うと龍牙と剣を加えた一行は、川の音が聞こえた方向へと駆け出して行く。

数分後…

「……で、出られたぁっ!」

ある種、一番長く森をさ迷っていた渚が心の底から嬉しそうに宣言した。目の前に広がっている光景はガードレールと車が通れる様に舗装された道路。そう、無事に森の中から抜けられたのだ。

「やっと森を抜け出せましたねっ!」

渚と同様に七海も嬉しそうに宣言した。

「もしかして、さっきのバケモノは私達の事を化かしていたのかもしれないわね。」

「なるほど、それで元凶を立ち切ったから、それで術が解けたのか。」

綾香の言葉に亨夜がそう答えた。過去に戦ったワームの中にも幻覚を見せる能力を持っていた相手が居たのだから、あのバケモノがそれと同じ能力を持っていたとしても、何ら不思議はない。

「…それにしても…随分と酷い事になっていたんだな。」

龍牙は山の上を振り返り、亨夜達が迂回した崖崩れの向こうに有る出雲学園を眺めながらそう呟いた。

「…酷い事って、お前達は地震の事は知らなかったんだな。」

「ああ。」

龍牙の言葉に小声で答えた亨夜に更に剣が小声で答えた。

実際、色々と亨夜、七海、綾香の三人と渚、そして、最後に合流した龍牙と剣の二人と、色々と時間の感覚がずれているのだ。時間逆行…ハイパークロックアップによって引き起こされた一種の時間の異常かとも考えたが、それにしては、説明がつかない事が多いのだ。

「あれだけ歩いたのに……まだこれだけしか進んでなかったんですね。」

「まあ、とにかく…今は出られて良かったよ。」

「うん……とんだ一夜になっちゃったけど、これでおうちに帰れるわね!」

「私は兎に角お風呂! もう二日も入ってないんだもん、汗だくで気持ち悪いっ!」

「私は弓道着も洗濯したいな。」

無事に家へ帰れる未来を想像して女の子らしい感想を零す渚と七海を微笑ましく眺めながら、亨夜は…。

「まあ、無事に帰れたらしたいようにすればいいよ。」

「ああ…無事に帰れたらな。」

「どう言う意味だ?」

「とにかく、行こう!」(…帰ったら、ZECTに連絡だな…ワームの動きも気になるし、赤いガタックゼクターを連れたスサノオとか言う奴の事も報告しておかないと…。)

亨夜と剣も、龍牙の言葉に引っかかる事を感じながら、そう言い、ワームが製作したゼクターとの考えも捨てきれないスサノオが連れていた『赤いガタックゼクター』の事も含めて、今日体験した事を一通りZECTへと報告しようと考えていた亨夜だった。

そう言って通いなれた帰り道を歩き始める亨夜達だったが…

「…嘘…だろう…?」

山を降りて目の前に広がっている光景を眺めながら、亨夜は呆然とそう呟いてしまう。

「…家が……いや、町全体が…無い…。」

「まさか、地震でみんな……。」

目の前の光景に青ざめながら呆然と呟く七海。それを亨夜と龍牙、そして、綾香の言葉が否定する。

「それなら、火事の焼け跡くらい残るはずよ。」

「綾香さんの言う通りだ。…ここまで何もかも無くなるのは変だ。」

「…ああ、地震で起こった地割れに飲み込まれたにしても、火事が起こったとしても、数日程度で町が完全に無くなる事は無い。どんなに酷くても、瓦礫の山程度は残っているはずだ。でも、ここは人が住んでいた形跡も完全になくなっている。」

「あたし達、まだ何かに化かされているかしら…。」

「だとしたら、まだあの森の中に…!」

不安そうに呟く渚と既にサソードヤイバーを持っていて、今にもサソードゼクターを呼び出してサソードに変身して再び森の中に入っていきそうな勢いの剣。

そう、途中で途切れたアスファルトの道路の向こうには見渡す限りの大平原が広がっていた。

一人、ある仮説を持っていた龍牙を除いて、その場に居た誰もが言葉を失っていた。

「…あの辺りには駅が有ったはずだよな…。」

「ずっと線路が伸びてて、そこに踏切があって…。」

「あっちには商店街があったはずよ。」

「そしたら、あの辺には小さな川が流れていたはず……。」

亨夜、七海、渚、綾香の順に続いていく自分達の記憶の中に有る町の風景を目の前の光景に当てはめていく。

「…商店街の近くに夕美のバイト先が有って…家の高校は駅を挟んだ向こう側だったな。」

「オレの屋敷はその辺だったな。」

「…ああ、高校よりも離れていたから間違いないな。」

一人冷静な龍牙が会話へと加わり剣の言葉を補足する。

「でも…何も無い…。車一つ走っちゃいない…。」

「……どうしよう……お母さん、お父さん……。」

腰を抜かした様に七海がその場にへたり込み、泣き言を言った。

「な、七海ちゃん、元気出して! きっとどこかに無事に逃げてるわよ!」

「そうよ、今はそう信じて、とにかく町がどうなったのかを調べましょう。」

俯いて地面を見つめている七海に渚と綾香が励ましの言葉をかけ、亨夜は七海の肩に手を置いて言った。

「七海ちゃん、大丈夫?」

「…………。」

恐らく昨日からの一連の事件に気疲れが溜まっていたのだろう。今までバケモノ達と戦えているとは言っても、彼女達は亨夜や龍牙達とは違い、精神的にも以上事態になれている戦士ではないのだから。

そんな亨夜の言葉に反応したのか、七海は彼を少し青い顔で見上げる。

「落ち着くまで、少しここで休もうか?」

「…そうだな。それがいいかもしれない、オレと神代で調べてこよう。」

「何故、オレがお前に命令されなければならない!」

亨夜の言葉に同意を示し、言外に亨夜にここの守りを任せて自分と神代で偵察してくると言っている龍牙に神代が反応する。

「なんだ、お前も疲れたのか? だったら、仕方ないな…お前も休んでいて良いぞ、オレ一人で様子を見てこよう!」

「そんな事は言っていないだろう! オレは「なら、決まりだな。」…分かった。」

亨夜が彼等の会話を聞きながら、それを頼もうとした時、七海はぎゅっと目を閉じて、覚悟を決める様に深呼吸する。

「…ああ、すまいが任せ「いえ、大丈夫です。綾香先生の言う通り、町の人を探しましょう!」七海ちゃん。…ああ、そうしよう。」

亨夜の言葉を遮って七海がはっきりした声でそう答えた事で、亨夜は彼女手を伸ばし、

「ほら、立ち上がって。」

「……はいっ。」

彼女がその手を取るとそのまま彼女を引っ張り上げた。

「すいません、心配かけて。」

「大丈夫、なんとかなるって!」

(…そうだな、『仮面ライダー』が三人も居るんだ…絶対になんとかしてみせる(・・・・・)。)「ああ。それじゃあ、みんな。…行こう!」

亨夜の言葉に頷きあうと一同は気を取り直して、まずは大平原を探索する為にどこへともなく歩き始めた。

一同の殿を歩いている龍牙に亨夜は小声で話しかける。

「…やけに冷静だな…。」

「…焦っているさ…。でも、そんな時だからこそ、冷静にならなきゃならない。…それで、お前は…異世界の存在を信じたのか?」

「…馬鹿らしい…。そんな物が有る訳「町がこんな風になるまで何年掛かると思う? オレ達は何処かの漫画の様に未来にでも飛ばされたのか?」…異世界よりは現実的な「…だったら、どうしてクロックアップが出来ない。ここが人類が滅んだ未来だとしたら、それさえ出来れば、大規模なハイパークロックアップで過去へ時間逆行できる。」……。」

龍牙の言葉にある異世界と言う言葉を否定するが、その都度、自分達の身に起こっている異変の説明がつかない部分を上げられる。

「…………。…神代、お前はどう思う?」

僅かに考えながら、剣の方に視線を向けて彼の意見を聞こうと、そう問いかける亨夜だったが、彼から帰ってきた反応も『分からない。』という物だった。

「あら?」

三人が話していると綾香が何かに気付いて声を上げた。

「あれ、何かしら………?」

そう言った綾香の視線の先に有るのは、盛り上がって先の見えない丘の向こうから白く立ち上っている煙。

「煙……みたいですね。」

「何かが燃えてるのかな?」

良く見ると煙は一定の距離を開けて十から十五本位の数で上がっていた。

「…もしかして…あれは、人が?」

「そうですよ、火を焚いた人が居るって事ですよ!」

「良かった、私達助かったんだわ!」

一足先に走り出した渚の後を追いかけて、

「もう、せっかちなんだから!」

「綾香先生、渚先輩、待ってよぉ~っ!」

女性陣が嬉しそうに駆け出して行く。内心亨夜は不安を抱えているのだが…横へと視線を向け、彼等の表情をみると、龍牙と神代の二人も同様なのだろう喜びの感情は浮かんでいなかった。

「オレ達も行こう。」

「「ああ。」」

亨夜の言葉に二人が答えると、渚達を追いかけて走り出した。だが、彼等の視界に飛び込んできたのは、想像以上の光景だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

亨夜達は丘の上から煙の出ている方を見下ろしている。

「これは…?」

粗末な藁敷きの屋根の竪穴式住居が数十戸と、それらの中心に立てられた朱塗りの高床式の神殿。

「な、何よあれ!? 映画のセット!?」

「…何かの…遺跡か?」

「…それにしては、新しいが…最近になって復元された物か?」

渚、亨夜、龍牙の順に感想をこぼしてしまう。確かに歴史の教科書にでも載っていそうな光景が広がっていた。

「でも、煙が上がってるって事は、誰かが住んでるってことですよ?」

「………弥生時代の村かしら……ほら、あそこに土器を焼く窯がある。」

「そんなバカな……幾らこの辺が田舎だからって。」

そう言った後、龍牙へと視線を向け『ハイパークロックアップで弥生時代にでもタイムスリップしたのか?』と問いかける視線を送る。龍牙も『流石にそこまで(千年以上)の長距離の時間移動は簡単には無理だろう。』と言う様な視線を返す。

「とにかく、降りて見ましょうよ。ここで見ててもしょうがない。」

渚の言葉を最もだと思い、亨夜達は村へと向かって足を進めるのだった。

(まったく、どうなっているんだ?)

足を進めながら、亨夜は現状に対して内心でそう毒づいてしまう。明らかにワームが関連していない異常、思わず混乱してしまいそうな現状…自分が知る異常の数々でも説明できない現実に対して。

そして、遺跡か映画のセットかと思われる場所に辿りついて聞こえてくる牛や馬の鳴く声、積まれた穀物の草っぽい香り…それがそこに人が住んでいる事を教えていた。

「歴史の教科書の中に入り込んだ気分だな。」

「立派な屋敷だ。」

珍しく頭を抱える様にそう呟く龍牙と、神殿と思われる建物を眺めながらの感想を零す剣。

「…やっぱり、人が住んでる村みたいだな…。」

「でも、誰も出てこないわよ?」

「…………。……何か有ったのかな……?」

人の生活している痕跡が存在していると言うのに、村の中に入り込んだ自分達に対して何も対応が無い事を疑問に思うと、龍牙が亨夜の隣に立って小声で話しかける。

「…争った形跡が無い…。人が居ない事は、多分オレに巻き込まれたワーム達とは関係無いはずだ。」

「…そうみたいだな…。ガタックゼクター達も敵(ワーム)を警戒している様子も無い。」

二人へと剣が近づき、小声で話しかける。

「その通りだ、アラーヤ。周りにはワームの気配はないが…。」

「ああ。妙な気配が有る。」

「確かに…さっきから誰が見ている。」

さっきから周囲から感じ取れる気配…明らかに何者かの視線が有るのだ。

「ちょっと、なに男同士でヒソヒソ話してるのよ!」

「ああ、悪い。何でも無い。」

亨夜達はそんな会話を交わしながら、村の中心に有る広場へと辿りついたその時、

「…ここが村の中心か…。」

「気を付けろ、何か仕掛けて来るとしたら、このタイミングだ。」

「ああ。」

「あの、何かって…。」

七海が亨夜達の会話を不思議に思ってそう聞き返した瞬間…

『動くな!』

彼等を威嚇する声が響く。

「っ!?」

「きゃっ!? 何!?」

「抵抗すれば殺す! 武器を捨てて、手を上げてしゃがむんだ!」

行き成り亨夜達の周りを鎌や槍で武装した男達が取り囲んだ。その数は、ざっと数えると十数人。明らかに友好的な態度と様子ではないし、その武器は明らかに撮影の小道具ではなく…本物の武器だ。

(…武装もゼクトルーパーにも劣る原始的な品物だし、倒せない数じゃないな…。)

「怪しい格好をしおって、お前ら何者だ!」

「こいつら、悪霊の森から出てきたぞ……奴らの仲間なんじゃないのか!?」

(…悪霊の森…? あの森の事か? …奴ら…ワーム…じゃなさそうだな。…そうなると考えられるのは、スサノオとか名乗った奴か。)

最後の手段として一人残らず叩きのめす事を考えながら、平和的な手段で解決しようと、攻撃的な口調で問い詰める男達の言葉から言っている言葉の内容と、言葉と一致する記憶の中から考えを纏めると弁明をする。

「待ってくれ、オレ達は別に…。」

「動くなといっただろう!」

(チッ!? 興奮している相手に迂闊過ぎたか。)

行き成り喉元に鎌の刃端を突き付けられ、自分の迂闊さに心の中で舌打ちする。龍牙や剣の態度から、二人の考えを推測すると。

「…悪かった…動かないから、武器を下ろしてくれ。」

今はおとなしくした方が相手を落ち着かせる事に繋がり得策かと考えて、両手を上げて降参の意思を示しながら、亨夜はそう言う。だが、

「ちょっと、何すんのよ!」

男達の態度が頭に着たのか、渚が怒鳴りつけて男に食って掛かる。

(…バ…バカ!!!)

口には出さなかったが、渚の迂闊過ぎる行動の対してそう思わずには居られなかった。

「逆らうか、こいつ!」

「きゃっ!」

槍を持った男が渚を突き飛ばした。渚はその勢いで頭から後に転んでしまい、

「………痛っ………。」

頭を抱えてその場にうずくまってしまった。

「……貴様等……。」

それに怒りを覚えた亨夜が行動に移ろうとした瞬間、

「うわぁ!」

数人の男達の武器が赤い影…カブトゼクターによって破壊され、同時に龍牙の打撃と上段蹴りが二人の男を薙ぎ倒す。

「…兄さんが言っていた…女の子に手を出す奴は最低だってな。」

それと同時に剣も動き、サソードヤイバー…仮面ライダーサソードの主用武器にして変身用のアイテムでも有るそれで男達の武器を切り裂き、同時にその剣技で、その武器を持っていた男達を薙ぎ払う。

本来、彼の剣技はサナギのワームを生身で倒せるほどの腕前なのだ、対人戦闘では遅れは取らないだろう。

「じいやが言っていた、男足る者女性を守る物だと。それが高貴なる者の振る舞い、ノブレス・オブリージュ!」

戦闘態勢に入り、そうした方がいいと判断したのだろう何時でも変身できる体制で、何時もの口癖でそう宣言する二人を何処か呆れた様子で眺めてしまう亨夜だった。

「こ、こいつがどうなっても…。」

鎌を亨夜に突きつけてる男がそう言った瞬間、乾いた音を立てて鎌の刃の部分が完全に砕け散った。

「まったく…先を越されたな!」

武器を…それも壊れ易い木製で壊れ易い部分ではなく、金属の部分が砕かれて驚愕しているガタックのライダーフォームでワームにでも放つような上段回し蹴りを叩き込み、弾き飛ばす。

それで、歯のニ、三本でも折れたかもしれないが、『殺そうとしてその程度で済ませたのだから、自分の温情に感謝しろ』と心の中で自己弁護をして、亨夜もカブトゼクターを手にした龍牙と同様にガタックゼクターを手に取り、何時でも変身できる体制を取る。そうしている間に男達は彼等を取り囲む。

「油断するな、こいつ等、強いぞ!」

「見ろ! 奴が連れているのは…悪霊の鎧だ!」

「やっぱり悪霊の一味かっ……。」

男達が口々にそう叫んでいる。

(…悪霊の鎧…? ゼクターの事か? こいつらの言っている『悪霊』はスサノオの仲間の事で間違い無さそうだな。)「仕方ない…やるぞ、龍牙、神代!」

「ちょっと、亨夜ちゃん!」

「何いってるんですか、先輩! 危険です!」

突然の事に固まって動けなくなっていた七海と綾香が、亨夜の言葉にそう叫んでしまう。渚は頭を抱えたまま、どうしていいのか分からない様子でオロオロとしている。

「ああ。これは、正当防衛だ。でも、怪我はさせるなよ。」

「任せておけ! オレは手加減においても頂点に立つ男だ!」

三人がそれぞれゼクターを変身用のアイテムにセットしようとした瞬間…

「「「変し…。」」」

「おやめなさい!!!」

神殿の方から女性の声が聞こえた。

(…気のせいか…何処かで聞いた気が…。)

「『アマテラス』さまっ。」

リーダーと思われる男達がアマテラスと呼ばれた少女に向かって跪く。残りの男達も相変わらず亨夜達に武器を向けていたが、輪って入った少女に対する畏敬の念に緊張するのが一目でわかる。

「…どうする…?」

龍牙が亨夜に向かって問いかける。何故かこの状況になってから、彼は判断を亨夜に任せているのだ。

「…向こうに動きがあるまで変身しない方がいいだろうな。…でも、何時でも変身できる様に…神代もいいな。」

「「分かった。」」

亨夜達がそんな会話を交わしている間に少女は神殿の階段を下りて、亨夜達の元へと歩いてくる。

(っ!?)

亨夜は見たところ、亨夜と同じ位の年齢に見えるその少女の顔に見覚えが有った。…いや、それは見覚え所ではない。学園の地下で銅鏡を見つけるまで見ていた夢に出てくる巫女そのままの姿だったのだから。

「あ、妖しい奴らを捕らえました、人間の姿をしておりますが、きっと悪霊の化身です。」

「って、人をワームと一緒にするな!」

男の言葉に、持ち前のツッコミ属性からか、『悪霊の化身』と言う所でついワームを想像してしまい思わずそう叫んでしまった後、慌てて口を押さえる。

そして、龍牙の溜息が『何やってるんだ、こいつは?』と言いた気な様子で響くのだった。

(…ワーム…って、先輩達…また言ってた。何の事だろう?)

(…ワーム…絶対に虫じゃないわよね。亨夜の奴、絶対、私達に何か隠してる。)

(…ワームって何の事かしら? 亨夜ちゃんのお友達もそう言ってたし。)

…七海達にも確りと聞かれてしまっていた様だ。

そして、興奮気味に話す男に少女は諭すような口調で言った。

「少し落ち着きなさい! その方々に邪気は感じられません、貴方達の勘違いですよ。」

彼女が男達の中に割ってはいると、モーゼの十戒の如く男達は道を開ける。そして、彼女は亨夜の前に立ち。

「ち、近づいてはなりません! そいつは凶暴な奴で、悪霊の鎧と同じ物を持っています。何をされるか……。」

亨夜の蹴り飛ばされた1番ダメージが大きいであろう男がそう叫ぶが、少女は亨夜へと穏やかな声で言った。

「村の物が乱暴を働いた様ですね。申し訳ありません。」

彼女の態度に、黙ってガタックゼクターを手放すと亨夜の上空を一回転し、彼の肩へと下りる。

「君は…。」

夢で見た少女と同じ顔をした彼女の顔を見ながら、呟いた。

「…似ている…。…オレの夢に出てきた…。」

「夢?」

きょとんとした顔でそう聞き返す少女…アマテラス。

「…ごめん…。君が夢に出てきた女の子に似ていたものだから…。」

「……?」

いきなり夢と言われても訳がわからない様子のアマテラス。…しかも、

「…亨夜…夢がどうとかって下手なナンパは止めておけ。」

「って、五月蝿い! 断じて違う!!! そんなつもりは無い!!!」

しかも、七海達からも白い目で見られているし…。気を取りなおしてアマテラスへと向き直ると、

「…忘れてくれ、単なる気のせいだ…。」

勘違いだと考えて、龍牙曰く『下手なナンパ』になってしまっていた言葉が恥ずかしくなった上に、女性陣から向けられる視線に耐えきれず、慌てて先ほどの言葉を忘れて貰う様に言う。

そんな亨夜に対してアマテラスは不思議そうな顔をしていった。

「……………。貴方の声……何処かで聞いた気がします。」

「………声?」

すっかり忘れていたが、あの夢の中で一応呼びかけた記憶も有った。

「…確かに…『どう言う意味だ?』とか、聞こうとした記憶は有るけど…。」

「随分と雰囲気ぶち壊しな呼び掛けだな。もう少し、気の効いた事は…期待するだけ無駄だな。」

「黙れ、龍牙!!!」

亨夜の言葉にある種納得名ツッコミをいれ、お前にそんな事を期待するだけ無駄だと言い切る龍牙に向かってそう叫ぶ亨夜。

「……それでは、貴方が……!」

そんな亨夜の声で何かに気付いたのか、彼女の纏っていた物が変わるのが目に見えて分かる。そして、アマテラスは驚愕の表情を彼へと向けて言った。

「貴方が救世主様なのですね!」

心から嬉しそうに、そう叫ぶと彼女は彼の胸へと飛び込んでいく。

「ああっ、神様! 感謝いたしますっ………やっと逢えた、やっと逢えました、私の救世主様!」

「ラッキースケベ。」

「お前は黙れ!!!」

一人そう呟く龍牙に向かって再びそう叫ぶ亨夜であった。

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