IZUMO ~蒼き戦士の戦記~ ~赤の英雄、蒼の復讐者~外伝   作:龍牙

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第ニ楽章 -6-

叫んだ後、亨夜は軽く呼吸を整えると、

「ごめん。」

二つの意味での龍牙と剣を除く全員への謝罪。彼の中の闇を知らない者達へそれをぶつけてしまった事への謝罪だ。

「………オレは、力にはなれない。オレにはやらなきゃならない事が有る。オレの命を掛けてでも…。それに…。」

そう言った後、亨夜は七海の方を向き、渚、綾香の順で視線を向けていく。そして、最後に…明らかに他の意思が込められた視線を龍牙へと向ける。その視線に込められた意思は『この世界にワーム持ち込んでどうする気だ?』だ。

「今はただ、みんなを家に帰したい…。…オレのやらなきゃならない事の為にも、みんなと一緒に元の世界に…オレ達の世界に帰りたいだけなんだ。」

「亨夜さん…。」

明らかに肩を落した様子でアマテラスは俯いた。悪霊達と戦えと言われれば、戦えるだけの力は有る。それだけの意思は有る。だが…彼には成し遂げなければならない『復讐』が有るのだ。

「……本当にごめん。」

「私も………ごめんなさい。色々お世話になったけど、恩返しできない……。」

「……すいません。」

「ごめんね……力になってあげたかったけど。」

「兄さんが言っていた。『受けた恩には、必ず報いなければならない。』だけど…協力したい所だが、オレにも元の世界でやる事が有る。」

「すまない。オレもすべき事が有る。」

亨夜の言葉を最初に、渚、七海、綾香、龍牙、剣の順に謝罪の言葉が告げられて行く。

「…………。本当に……救世主様じゃないんですか?」

泣きそうな顔でアマテラスが言った。

「ああ。それは違う。…………オレはただの…。」

思わず『復讐者だ。』と告げそうになった言葉をそこで飲み込んだ。

「……そうですか……。」

哀しげな声でそう言われてしまうと罪悪感も増して行くのだが、亨夜自身が見とめられないのだ。…例え嘘でも、『救世主』と名乗る事を…。『復讐者』の名こそが名によりも相応しい人間なのだから。

「教えて欲しい。…オレ達が元の世界…アシハラノクニに戻るには、何をすればいいんだ?」

「どうしても……帰ってしまわれるのですか?」

「ああ。オレ達は帰りたい。いや、なんとしてでも帰る。オレには……やらなきゃならない事が有る。」

元の世界に居るであろう美由紀の顔が脳裏に浮かぶが、それと同時に…力を…憎悪を持って力を渇望した瞬間…母と妹を失った瞬間の光景をが浮かぶ。

復讐者としての自分、日常の中の自分、そして、仮面ライダーガタックである自分の全てが戻る事を望んでいるのだ。

「……方法は……有ります。」

「本当か!?」

「はい、たった一つだけですが……。」

「帰る方法が有るなら、なんでもする! 教えてくれ!」

何処か言い辛そうなアマテラスに亨夜は真剣な表情で頼み込む。彼女の気持ちは分かるが、優先すべき事は、やはり元の世界に帰る事なのだ。

「反魂の術を使えば、魂を消滅させる事無く、この世界からアシハラノクニへと貴方達を帰すことが出来ます。」

「ハンゴンノ…ジュツ?」

「反魂…なるほど、名前からして死者蘇生の術と言う訳か。」

「はい。本来は自然の理を曲げる邪法なのですが、場合が場合ですから仕方ないでしょう。」

アマテラスは亨夜と龍牙の二人の言葉にそう答える。

(…自然の理を曲げる方法か、簡単には出来そうにないだろうな。)

「……じゃあ、それをやってもらえれば、あたし達は帰れるのね!」

「ええ。でも、その為には、どうしても必要なものがあるのです………。」

そう言って、うなだれながら、溜息を吐くアマテラス。内心、簡単には出来ないだろうと考えていた亨夜は納得していたが。

「ネノクニには、四聖獣と呼ばれる大いなる力を持つ四人の精霊がいます。」

「シセイジュウ……。」

「四聖獣…青龍、白虎、玄武、朱雀…の四神の事か。」

アマテラスの言葉に聞き返す七海に、そう呟く龍牙。

「はい。御存知でしたか?」

「ああ。オレ達の世界にも『四神』として伝わってるんでな。」

僅かに驚きの感情を浮かべてそう言ったアマテラスに説明する様にそう告げると、龍牙は話しの続きを促す。

「はい。それぞれ、この村の東西南北に有る神殿に奉られていたのですが……。残念な事に、もう何百年も前に悪霊達の手に落ち、四聖獣の力は失われているのです。」

亨夜はアマテラスの言葉に自分達が元の世界に帰る為にするべき事がはっきりと見えてきた。

「四聖獣の加護無しには、反魂の術は行えません。だから、アシハラノクニに戻るためには、四聖獣を悪霊達の呪縛から開放しなくてはなりません。」

「なるほど、その為にも悪霊達を追い払う必要が有るって事か。」

「そうです。だから、とても危険なのです……。それに、最近では、今まで見た事のないこの世の者とは思えない、恐ろしい緑の怪物も現われて…どうかされたのですか?」

アマテラスの言葉に思いっきり横を向きながら…その方向に居る龍牙に全力で冷ややかな視線を送っていた。

「いや…別になんでもない…。」

思いっきり、アマテラスの言う『緑の怪物』に心当たりが有る亨夜は『お前等、何、人様に迷惑かけてるんだよ?』と言う意味が込められている。

流石にこの世界にワームを連れてきてしまった龍牙達も責任を感じているのだろう、視線に耐えられなくなり明後日の方角に視線を向けていた。

「その…緑の怪物って、どんな奴なの?」

「はい。人にも虫にも似た姿で、人間に化け、今まで村の仲間だった者が怪物達にとって変わられていた事もありました。」

渚の問いに答えるアマテラスの言葉に思いっきり、ワーム(サナギ体)の特徴と合致している彼女の上げる緑の怪物の特徴に、無言のまま龍牙達を睨みつけるしかない亨夜だった。

間違いなく、彼女達の言う所のアシハラノクニ…亨夜達の世界の嫌な原産品である『ワーム』達をこの世界に持ち込んでしまった原因達を睨みつけつつ、どうすべきなのか考え込んでしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜…

「すぅ、すぅ……。」

「すやすや……。」

「んぐぅ~……もう……食べられない……。」

食事をたっぷりと御馳走になった後、亨夜達は川で水浴びをさせてもらい、村で一番良い小屋に止めて貰う事になった。救世主でもないのに、来賓としての扱いを受けて恐縮しながらも、その好意に甘える事にしたのだ。

女性陣が眠っている間に、亨夜、龍牙、剣の三人の男性陣(仮面ライダー達)が集まって話し合っていた。

「それで、自信のほどはどうだ?」

「さあな…森の中や学園で二度も戦ったけど、ガタックに変身しなかったらどうなってた事か?」

龍牙からの問いにそう答える。二度目の大木の化け物と戦った時は、最初からガタックには変身していたし、蜘蛛…楓との戦いでは追い詰められてからの変身だったと言う違いも有るが。

「それに…敵は悪霊だけじゃない、こっちにもワームも居る。」

悪霊と呼ばれる者達以上に気にしなければならないのは、龍牙達の言葉とアマテラスの話しからはっきりとその存在が明らかになったワームの存在なのだ。

幸か不幸か、クロックアップが出来る成体の存在は確認させておらず、サナギの姿のワーム達以外には確認されていないが、クロックアップが使えず相手が使えるかどうか分からない以上、戦闘能力の上での不利は否めない。そして、戦闘力以上に危険なのが、ワームの持つ擬態能力に有る。

「連中がクロックアップが使えようが、使えまいが、ワームと戦えるのは結局、オレ達三人だけだ。」

そう、ワームを確実に殲滅できるのはライダーシステムの持ち主である亨夜達三人だけ…。元の世界では、カブト、ガタック、サソード以外にも、ザビー、ドレイク、キックホッパー、パンチホッパーの系七人のライダーが存在していた。だが、此方に居るゼクターの持ち主は謎の赤いガタックゼクターの所持者であるスサノオを除けば、三人だけなのだ。

「…今回はオレ達に全面的に非があるな…悪い。」

「すまない、アラーヤ。」

「謝る相手が違うだろう。」

「そうか。それで、四聖獣の開放は如何する気だ? やらないと言う選択肢は考えてないが…。」

龍牙の言葉に込められている意思は理解できる。『場所を聞いて三人で開放する』と言う考えなのだ。カブト、ガタック、サソードの三人のライダーで一気に四聖獣を開放すると言う判断も魅力的だが…。

「七海ちゃん達も付いて来るだろうし…そうじゃなかったとしても、ここにまたワームが現われないとも限らない。」

そう、来るなと言った所で付いて来る可能性もある彼女達の事を考えた上に、ワームの動きが分からない以上は対ワーム用の戦力とも言えるライダーを一箇所に纏めておくのは危険と判断できる。

「オレ達が三人纏まって行動するのは危険だと思う。」

「同感だな。」

「ああ。」

龍牙の言葉に他の二人も同意し、敵の動きが分からない以上、最悪、何人かはワーム対策の為に、この村に残しておく必要もあると判断する。なにより…

「少なくとも、龍牙…ワームの事は多分、お前がまいた種なんだから、責任持って害虫駆除しろ。」

「…今度ばかりは全面的にオレが悪かった…。」

冷ややかな視線と怒りを込めた言葉で放たれる言葉に対して、素直に謝ってしまう龍牙だった。…どう考えても、自分が悪いし。

それから、森の中で出会った、もう一つのガタックゼクターを持ったスサノオの事を二人に伝え、今後の事をある程度話し合うと、今日は休む為に龍牙と剣の二人は先に小屋の中へと戻って行った。

「…心配しているだろうな…美由紀の奴も。」

立ち止まり月を見上げると、ふと、向こうの世界に残してきた美由紀の存在が気になってくる。七海までこの世界に来てしまっている以上、向こうでは完全に孤立してしまっているだろう。

「まったく…もう少し早くここに来ていたら、気にしないで済んだだろうにな…。」

思わずそう毒づいてしまう。

「亨夜様。」

「ッ? 誰だ!?」

不意に後から誰かに名前を呼ばれて振り返った。

「物思いに耽っておられるのですか、亨夜様?」

大きな桃の木に花びらが散ったかと思うと、次の瞬間、幅の広いスカートのような和服を着た女性が一人、根元に立っていた。

「…何者だ…?」

亨夜は明らかに彼女の普通じゃない現われ方に警戒心を露にしてそう問い掛ける。そんな彼の態度を気にもせずに女性は笑顔で一礼して名乗った。

「先ほどは御迷惑をおかけしました。オオカムツミの桃花と申します。以後、お見知りおきを。」

「オオカムツミ? 桃花? あの時の…。」

楓の事も有り、彼女の言葉から森の中で最後に戦った相手を思い出す。思わず大木の化け物と目の前の女性の姿がイメージの中で重なってしまい。最後の一撃を撃ち込んだ瞬間、かなり罪悪感の浮かぶ光景を想像してしまった。

「はい。私は森の精霊、スサノオ様の命令で、貴方達をあの森の中に閉じ込めていたのです……。」

「…やっぱり…あの時のヘンな化け物はお前だったか!?」

「ヘ、ヘン…ですか?」

ガタックゼクターを呼び出し何時でも変身できる体制を取り、桃花を睨みつける亨夜だが、当の彼女はそんな彼を恐れもせずに、ちょっと傷ついた様子で彼を見つめていた。

「……私って、どこかヘンなんですか……?」

「え、えーと、その……。」

「………。」

「…別にヘンじゃないとは思うな…。」(………多分。)

黙り込んで不安そうに見つめられていると、桃花とは妙に戦う気になれず、戦意が削り取られて行く思いのする亨夜であった。いや、完全に戦意を喪失したと言った方が正しいだろうか。つい、フォローしてしまう。

「………うふふ、お優しい方なんですね、亨夜様。」

そんな亨夜の様子がおかしかったのか、桃花は機嫌を直したように、ちょっと笑いながら言った。

「それで…何の為にここに? 森のリベンジに来たなら、受けて立つぞ。」

「いいえ。」

霧散しかけている戦意をかき集めながらそう言う亨夜に対して、桃花は表情を変え首を横に振り、『NO』の意思を示し、

「お願いがあります……私と契ってくださいませ。貴方様のお力になりたいのです。」

彼が森の中で女郎蜘蛛の楓からも言われた事と同じ事を言った。

「…アンタも、楓さんと同じなのか?」

「ええ。貴方の気を分けて頂く事で、私は貴方様に使える事になるんです。」

「………。」

彼女の言葉に思わず黙ってしまう。流石に二度目ともなると理解は早くなるが、何故と言う疑問も浮かんでくる。

(…これで二度目か…。楓さんの時は思わなかったけど、何でオレに…? 単純にあの姿の彼女を倒したのがオレだからか…?)

「あの……私とじゃ、お嫌ですか?」

「いや、それは別にいい…戦力が増えるのはありがたいし。…オレでいいのか?」

「もちろんです。私、貴方のような強いお方が好きなんです……。」

彼女の言葉に少なくとも悪意は無い事だけは分かる。ならば、自分達にとっても利が有るこの取引に、断る理由は無い。

「分かった。契約を交わそう。君の力を貸してくれ。」

「はい、亨夜様……。」

視界がフラッシュアウトし、再び感じる楓との契約の時の様な不思議な感覚。

「……強いお方、優しいお方……。」

姿が見えなくなった桃花が呟く言葉。

(…強くなんかは無い…優しくなんかは無い…。オレは大切な者も守れなかった…弱者だ。…ただの復讐者だ。)

口には出さず彼女の言葉を心の中で否定する亨夜。思い出すのは過去の自分…母と妹をワームに殺された頃の無力だった頃の自分。

「私はオオカムツミの桃花。貴方にお仕えいたします……。」

ゆっくりと目を開くとそこには誰も居なかった。肌寒い風が吹く中、ガタックを象徴する様な蒼い月の光に照らされながら、過去(かつて)の…現在(いま)の己の弱さを思いながら、立ち尽くしていた。

(…オレは変わってないか…無力だったあの頃と…? そうに決まっているさ。だから、オレは…周りにいる人を傷付けるんだ。)

気がつくと、手の中には一つの宝玉が握られていた。それが先程の事が楓の時と同じく桃花との出会いが夢や幻でない事を告げている様に感じられた。

「…分かってるさ…オレの無力さは。」

そう呟き、亨夜は桃色の宝玉をポケットの中に仕舞い、振り返り小屋の中へと入っていった。

(…オレは弱い…どれだけ力を持っても…オレは弱いさ。…だから、オレは…『復讐者』なんだ。)

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