IZUMO ~蒼き戦士の戦記~ ~赤の英雄、蒼の復讐者~外伝 作:龍牙
SIDE ???
スサノオとブラッドガタックゼクターの少し後を彼女は付いて行く。彼等の歩く青々と茂った草原は、まるで大海原の様にどこまでも広がっていた。
「足は大丈夫か?」
後を振り向き、スサノオが気遣う様に聞く。
「う、うん、大丈夫。」
「そうか……別に急いでいる訳じゃないんだ。休みたくなったら言えよ。」
「うん。ありがとう。」
確かに感じ取れるスサノオの優しさを感じ、他に頼れる者の居ない彼女には、素直に嬉しかった。
「……この分だと、明日には着くな……。」
楽しそうに飛びまわるブラッドガタックゼクターを肩へと止まらせ、スサノオは空を見上げて呟く。
「また、戦うの?」
「そう言う事になるだろうな。」
彼とブラッドガタックゼクターにとってはいつもの事なのだろう、特に何の感情も込めずにそっけなくそう答え、遠く…地平線の向こうで彼を待つ戦場、人間達の住む村に思いを馳せる。
「ふん、人間共め、蹴散らしてくれる。」
そんなスサノオの言葉に反応して、ブラッドガタックゼクターは彼の肩から飛び上がり、何かを訴える様に顎を開きながら、意思を表現する。
「なんだ、久しぶりに、お前を使えと言うのか、紅丸? それだけの価値が有る奴が居れば良いんだがな。」
そんなスサノオの返答にブラッドガタックゼクター…紅丸は嬉しそうに顎の鋏を鳴らす。…この『ネノクニ』では、ヨモツオオカミを奉じる悪霊達と、イザナギを奉じる人間達との戦いがもう2千年以上も続いている。
そして、真紅の戦いの神、ブラッドガタックゼクターの主であるスサノオは、その何千何万の悪霊達を束ねる将軍なのだ。……同じ戦いの神の主でも、下っ端君(アルバイト)の亨夜とは大違いである。(『ほっとけ! by.亨夜』)
彼女は複雑な感情を隠しきれずに、押し黙る。
「……お前はオレが捕まえた捕虜だ。オレの物なんだ。何も怖がる事は無い。」
「…………。」
「誰もお前を傷付けない、オレが守る。全ての人間が滅びても、お前だけはオレの側に置いてやる。だから……。」
少しだけ悲しそうな目をして、スサノオは彼女を見つめる。
「だから、そんな顔をするな。」
「…………。」
SIDE OUT
亨夜が桃花と契約した翌朝…
「じゃあ、アマテラス…オレ達は行って来る。もてなしてくれて、ありがとう。」
「いえ……それより、本当に行かれるのですか? 危険ですよ? それに…。」
亨夜の言葉にアマテラスはちらっと龍牙と剣の二人の方へと視線を向ける。
「あの方達は…。」
「…性格には問題あるけど、少なくとも、戦力にはなるから、好きに使ってやってくれ。と・く・に、昨日話してた『緑の化け物』と戦う時とか。#」
「は、はい…。」
思いっきり視線を外している龍牙と誇らしげにこちらを見ている剣…そんな二人に亨夜は『頼んだぞ。』と言う視線を送る。
ワームを残したままでは、はっきり言って帰った所で寝覚めが悪い。ならばその原因を作り上げてくれた龍牙には…こう言うのも問題が有るが、この村の者達を囮にしてワームを迎え撃ってもらう必要が有る。人間と悪霊、そのどちらに擬態していたとしても、ワームを迎え撃つには、この村は最適なのだ。逆に数人なら、自分一人でも守れるだろうとも考えた結果である。…亨夜の本心としては、残すのは一人だけにしておきたかったのだが、万が一の場合と村の規模を考えての龍牙の意見から二人残す事となったのだ。
ゼクトルーパー一人でも全滅できそうな程度の戦力しか持っていないこの村では、はっきり言って…一体のワームが現われた時、全滅していなかっただけでも奇蹟だ。元々、ワームに対抗する為のマスクドライダーシステムなのだから、多いに本来の役割を果して貰おうと考えての結果である。
「それに、危険は承知の上だ。元の世界に戻る為にもな。」
「………。」
四聖獣の神殿が有る場所は、大体アマテラスから聞き出し、龍牙達も知っている。あとは、亨夜達の問題なのだ。村長であるアマテラスにワームの事も有るし、これ以上迷惑は掛けられない。
「渚達もそろそろ起きてくる頃かな…? ん?」
亨夜がそう言って小屋の方へと視線を向けると、
「ふあぁ……。」
「うう、床が固くて、なんか肩凝っちゃいました。」
「でも、お腹一杯食べたからかな、よく寝た~。気分すっきり。」
それぞれ、欠伸をしたり、伸びをしたりしながら、女性陣は小屋から順番に外へ出てくる。
「みんな、準備は良いか?」
一足先に準備を整えておいた亨夜は龍牙と剣の二人の離脱を告げた後、三人に声をかける。
「はい。」
「うん、いつでもOK!」
「本当はお化粧とかしたいんだけど……無理だし。」
それぞれ、そんな事を言って、亨夜を元気付ける様に笑う。『なんとかしてみせる』と言う意思は有ったが、それによって込められていた余計な力が抜けて、僅かに楽な気分になる。
(…そうだな…。不謹慎かもしれないけど…オレ一人じゃなくて良かったな。)
そう、守るべき大切な人達…そんな人達がいるからこそ、《戦士(仮面ライダー)》は挫けずに戦える。
「それじゃあ、行こう…四聖獣の神殿へ!」
「はい!」
「がんばろっ!」
「張り切っていこう!」
「我が友、アラーヤ! ここの事は任せておけ! オレは守る事においても頂点立つ男だ!」
「そう言う事だ。戦力的には、お前達よりも大きい可能性がある。心配しないで、自分達の事だけを考えていればいい。」
残留組の龍牙と剣も含めた五人からそれぞれの返事が帰ってくる。気合を入れて出発しようとした時、
「待って下さい!」
「えっ?」
アマテラスが亨夜達を呼びとめた。
「私も……お供します!」
「…アマテラス…君も、か? でも……。」
「私も少々槍の心得がございます。きっと亨夜さん達のお役に立てるはず。」
「……いいのか? 昨日も言ったけど、オレは救世主でもなんでもない。ただ…自分の世界に戻りたい。…それだけなんだ?」
「それでも、私は貴方が神の使いだと信じます。だから……是非、お供させて下さい。」
「………。」
「いいんじゃないのか、ここまで言ってるんだ、お供させてあげれば。」
アマテラスの言葉を聞き、どうするべきかと悩むと、龍牙がアマテラスの味方をする。そして、『どうする?』と七海達の方を見る。
「アマテラスさんに一緒に来て貰えたら、心強いです。」
と、七海
「そうね……あたし達、こっちの事何にも知らないもの。」
と、渚
「うん。一緒に来てもらおうよ、亨夜ちゃん。」
と、綾香
「…分かった。」
満場一致の賛成を受け、亨夜はアマテラスへと向き直り、
「じゃあ、アマテラス。一緒に来てくれ。」
「はいっ、亨夜さん!」
亨夜達は龍牙と剣の二人とカブトゼクターとサソードゼクターに見送られながら、はるか彼方から細く伸びる日差しを浴びながら、新たなる冒険への第一歩を踏み出したのだ。