IZUMO ~蒼き戦士の戦記~ ~赤の英雄、蒼の復讐者~外伝   作:龍牙

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第三楽章 -4-

「亨夜さん、教えて頂いてよろしいでしょうか?」

 

 

「……。何を?」

 

 

真剣な表情でアマテラスが亨夜にそう問い掛ける。

 

 

「…何故、貴方は“悪霊の鎧”を纏えるのですか?」

 

 

「…悪霊の鎧…?」

 

 

アマテラスの言葉に自分の周りを飛んでいるガタックゼクターへと視線を向ける。確かに森で出会ったスサノオは赤いガタックゼクターを連れていたが…。

 

 

「ああ、こいつ(ガタックゼクター)の事か? それについてはこっちが聞きたい位だ。本来、君達が“悪霊の鎧”と呼んでいるのは“マスクドライダーシステム”、こいつらはその中心部分になる“ゼクター”と言って…。」

 

 

「…ま、ますくどらいだぁーしすてむに、ぜくたぁーですか?」

 

 

亨夜の説明にすっかり混乱している様子のアマテラスだった。…流石に専門的な事までは亨夜も知らないが、自分が知っている範囲でも、アマテラスには理解しにくいのだろう。

 

 

「…あー…。とにかく、これはオレ達の世界で作られたレスキュー…救助の為の道具で、オレのガタックゼクターは本来これだけしか存在して居ない筈なんだ…。」

 

 

「…つまり、亨夜さんも何故同じ物が有ると言う事は分からないのですね…。」

 

 

「そう言う事になるな。本来、ガタックは同じ物が作られたなんて話しは聞いてないし、何でオレ達の世界の道具(最強兵器)がこっちに有るのかは悪いけど、オレにもわからない。」

 

 

「…そうなのですか…。」

 

 

何処か納得していない様子のアマテラスだが、実際亨夜もゼクターについては詳しい事を知らないのだし、何故赤いガタックゼクターがこっちに有るのかは分からないのだから。

 

 

大体、一号機であるカブトにはその試作品(プロトタイプ)である0号機『ダークカブト』が存在しているが、ガタックにはそれが存在していると言う話は聞いた事がない。第一、ガタックに試作品が作られていたとしても、この世界に有る理由が理解できない。

 

 

故にスサノオの赤いガタックゼクターには謎が多いのだ。

 

 

ここに赤いガタックゼクターが存在している理由として考えられるのは二つ…

 

 

今回の自分達や龍牙達の様に何らかの理由で迷い込んだか?

かなり有り得ない可能性だが、この世界で作られたか?

 

 

後者の可能性は完全に否定できるが。はっきり言って科学技術が無いのだから、作る事は不可能だろう。

 

 

(…本当に分からない事だらけだな…。)

 

 

 

 

 

 

 

 

暫く、アマテラス達が来た道を進んで行くと亨夜達は分かれ道になっている場所に出た。

 

 

「私達はこっちから来たから…。」

 

 

「この道しか無いか。」

 

 

渚の言葉に亨夜がそう答え、残された道に進んで行こうとした時、亨夜とアマテラスはその場に立ち止まる。

 

 

「どうしたの?」

 

 

無言のままアマテラスが進もうとした道に石を投げると、『バリバリッ!』と言う電流でも流れた様な音が響き、石は消滅する。

 

 

「見えない壁みたいな物が有るか…これじゃあ、直に触れたら危なそうだな。」

 

 

「…どうやら、結界が張られているようですね……。」

 

 

「結界? だとしたら…。」

 

 

「私達の目的地はこの先になのかなぁ?」

 

 

「はい、恐らくはそうでしょう。」

 

 

綾香の言葉にアマテラスが同意する。そもそも、何も無い所を態々結界など張って守る奴は居ない。敵の守りが強くなればなるほど、その先には絶対に何かが有る。

 

 

「強い怨念を感じます。この結界の依代となる物を見つけないと、先には進めませんね。」

 

 

何処かに目の前の見えない扉を開ける為の鍵があり、それを見つけなければ先へは進む事が出来ない。…彼らが来た道を一度戻るべきかと考えた時、

 

 

「あっ……! ……千夏ちゃんの日記が……。」

 

 

七海の声に反応して振り向くと、あの時に拾った千夏の日記が青く発光していた。

 

 

「結界が!」

 

 

今度はアマテラスの声に振り向くと、元々見えない為に外見上は変化は無い。だが、亨夜が試しとばかりに石を投げると阻まれる事無く向こう側へと飛んで行った。

 

 

「それが、あの結界の依代だったのでしょう。すさまじい怨念を感じます。」

 

 

「…………。」

 

 

アマテラスの言葉に七海は無言のまま日記を強く抱きしめる。

 

 

「さあ、行きましょう!」

 

 

アマテラスの言葉に頷き、亨夜達一行は先へと進んで行く。その先は予想通りと言ってしまえばそれまでだが、悪霊の数も今まで以上に増えてきた。

 

 

だが、

 

 

「……邪魔を、しないで!!!」

 

 

今まで以上に張りきっている七海が弓で鼠型の悪霊達を射抜いていく。

 

 

「…どけ!」

 

 

微妙に戦闘モード(復讐者モード)が入っている亨夜の振るう木刀が骸骨の姿の悪霊を力任せに砕く。遠くに居る相手には衝撃波で迎撃しながら、時に蹴り飛ばしながら、次々と倒して行く。

 

 

…適材適所と言う物が有るが、骨が相手では切ったり、突いたりよりも砕く方が有効だろう。

 

 

「はっ!」

 

 

悪霊との戦いの経験では一番強いそれを持っているアマテラスは槍だけでなく勾玉を使っての戦い方で動いていた。

 

 

「くらえ、フレッシュー!!!」

 

 

どうやら、『フレッシュ』という名前らしい飛び込み突きで渚はスピードを主体にして戦っている。

 

 

「みんな、大丈夫?」

 

 

後方で勾玉を使っての回復と援護、攻撃に廻っている綾香と、その護衛として近づく悪霊を迎撃しているガタックゼクターと、チームとして亨夜達の練度は高まっていたようだ。

 

 

「ふう。」

 

 

木刀を血払いする様に振るい一息付く。元々木刀ではそうする必要も無いし、戦った相手が骸骨なだけに態々そんな事をしなくても良いのだが。

 

 

そして、亨夜は木刀を眼前まで持ち上げ、ゆっくりと木刀の刀身に指を這わせ破損やダメージが無いか確認する。

 

 

(…出雲学園や森の中で結構使ったけど、それほど痛んでないな…。少なくても、元の世界に戻るまではもってくれよ。)

 

 

出雲学園の理事長室で手に要れて以来使いつづけている木刀に対してそんな事を思った。変身すれば武器は有るのだが、流石にガタックに気安く変身するのは気が引けるのだ。

 

 

「………先輩。」

 

 

戦闘後の僅かな小休止を終え、再び歩き出した一行。歩きながら、七海が亨夜に声を掛けた。

 

 

「ん?」

 

 

「私、千夏ちゃんを救いたいんです。」

 

 

「…………。」(…七海ちゃんらしい答えだな…。)

 

 

それが彼女が悩み抜いて出した答えなのだろう。

 

 

「人を救うのに、力も正しさもいらない……。ただ、分かってあげられる人が居れば、それで救われる心も有るはずなんです……。」

 

 

彼女の告げる彼女なりの“答え”。それを聞いた亨夜は“七海らしい答え”に微笑を浮かべながら、

 

 

「そうだね。救われるはずだよ…絶対に。」

 

 

…彼女達の存在が亨夜に己の中の日常を与えてくれた様に…。自分もそれで救われていた部分も有るのだから。だが、

 

 

「あの日、先輩が私を救ってくれたように。」

 

 

「…あの日…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

『さいしょにもらってくれたお父さんは、おかねもちでした。だけど、びょうきにかかって、しんでしまいました。』

 

 

彼女の言葉に思い出されるのは、亨夜がまだ美由紀と離れて暮らしていた頃…

 

 

『いさんがどうとか、そうぞくがどうとか、むずかしいことはわかりませんでした。ただ、そのばにいるおとなたちには、わたしはほんとうはじゃまなのだということ、それだけは、はっきりとわかりました。』

 

 

…母と妹が生きていた頃の事…。

 

 

『つぎのおとうさんは、いつもおさけのにおいをさせている人でした。らんぼうな人で、わたしはにばんめのお父さんはきらいでした。さいばんでしんけんとかいうものをあらそって、お父さんはお父さんでなくなってしまいました。』

 

 

幼い日の七海との初めての出会い。

 

 

『つぎのお父さんのことはよくおぼえていません。ほとんど、かおもあわせたことがないからです。すごくおしごとがいそがしい人で、いそがしすぎたのがわるいのか、またお父さんではなくなってしまいました。』

 

 

まだワームの存在も知らず…。

 

 

亨夜が幸せだった頃。

 

 

『そして、わたしは思ったのです。人はみな、かってにわたしのそばにやってきて、かってにさっていくのだと。だれもわたしのことをずっと見ていてはくれないのだと。だれもわたしのことを…ずっと愛しては、くれないのだと。』

 

 

そして…それは…

 

 

『よんばんめのお父さんとお母さんが、いまのお父さんとお母さんです。いさんなんかかんけいない、そんなことはどうだっていい、ちのつながりはなくても、わたしたちはかぞくだと……。そんなふうにふたりはいいました。』

 

 

亨夜が知る…初めて見た七海の…笑顔の記憶。

 

 

『でもわたしには、『かぞく』というものがよくわからなかったので、なにもこたえてあげることができませんでした。そんなあるひ、つれていかれたおやしきで、わたしはその人にあったんです。』

 

 

それに繋がる…過去。

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレはあらやキョーヤ。君は?」

 

 

子供用の胴着を着た幼い日の亨夜は初めてあった七海に、前からの知り合いの様に、話し掛けていた。

 

 

「……ななみ。」

 

 

幼い日の七海は亨夜の言葉に短く名前だけを答えた。

 

 

「ななみ?」

 

 

「うん、今の名前は、みなせななみ。」

 

 

「…今のって、じゃあ他にも名前があるの? ずこいな、なんか、ヒーローみたいだ。」

 

 

「………。前は、ちがうみょうじだったの。」

 

 

「え? なんで?」

 

 

「………。」

 

 

亨夜の言葉に周りの大人達が悲しそうな目で七海を見ていた。そんなとき、

 

 

「ちょ、ちょっと! おにいちゃん! うぅ~っ、バカ!」

 

 

「きょーおにいちゃん!」

 

 

亨夜は大人しそうな黒い髪の少女と一緒に現われた幼い頃の美由紀に殴られる。

 

 

「いて。みゆき、りん、なんでおこってるんだよ?」

 

 

「きょーおにいちゃんがわるいよ。」

 

 

事情が分かっている様子の美由紀とその少女…『荒谷 凛』に怒られている亨夜でした。

 

 

「え、えっと、私はおにいちゃんのいとこで、とうまみゆき。よろしくね。」

 

 

「私はりん。きょーおにいちゃんのいもうと、よろしくね。」

 

 

「………。」

 

 

殴られた亨夜を他所に美由紀と凛は七海に自己紹介する。

 

 

「でも、名前がいっぱいあるって、ふべんだな。」

 

 

「えーい、だまれ!」

 

 

「きょーにい、ダメ!」

 

 

そう言って今度は二人に同時に殴られる亨夜でした。

 

 

「いたぁ、なにするんだよ?」

 

 

「あー、もうっ、どうせつめいしたらいいのやらっ!」

 

 

「う~…きょーおにいちゃんのどんかん!」

 

 

そう言ってぽかぽかと殴りつづける美由紀と明後日の方向を向いてしまう凛。

 

 

「いた、いた! りん、みゆきがー、なんとかしてくれよ!」

 

 

「きょーおにいちゃんがわるい。」

 

 

年上なのに、年下の美由紀に負けて、妹に助けを求める亨夜。

 

 

「いもうとにたよるな! あにとしてのプライドはないのかあ!」

 

 

(どうかんです。)

 

 

「だ、だって、父さんがおとこはおんなのこにてをだしちゃいけないって。いて、いて、いてぇって、もうっ……。」

 

 

すっかり美由紀にボロボロにされた亨夜。何時もの事なのだろう、凛はそんな二人を眺めながらクスクスと楽しそうに笑っている。

 

 

「ぷっ……。」

 

 

「……?」

 

 

凛の笑い声とは違う声に気が付いてそちらへと視線を向けると、そんな亨夜達の遣り取りが可笑しかったのか、七海がふきだしてしまっていた。

 

 

「……くすくす……。」

 

 

「あっ。」

 

 

そんな七海を亨夜はきょとんとした様子で見ていた。

 

 

「わらった。」

 

 

「……。」

 

 

嬉しそうにそう言う亨夜に恥ずかしくなったのか、七海は俯いてしまう。

 

 

「わらうとかわいいね、えーと……。」

 

 

「………。」

 

 

「えーと…。」

 

 

名前はまだ覚えていないのだろう、中々名前が出てこない様子の亨夜。

 

 

「ななみ。」

 

 

そんな亨夜に不機嫌そうに七海は自分の名前をもう一度教えた。

 

 

「うん。今は…ななみちゃん。」

 

 

「今は、じゃないよ。ななみは、ずっとななみだよ。」

 

 

「そうか。じゃあ、ななみちゃんは、ずーっとななみちゃんでいいんだね。」

 

 

「うん。」

 

 

「…よかった。ともだちになるのに、名前がたくさんあったらたいへんだなって思ったよ。」

 

 

「………。」

 

 

「よろしくね、ずっと同じ、ななみちゃん。」

 

 

「うん……よ、よろしく。」

 

 

「バカなおにいちゃんだけど、かんべんしてね。」

 

 

そう言って七海に話しかける美由紀と、

 

 

「う~…きょーおにいちゃんのバカ!」

 

 

ポカっと亨夜を殴って居なくなる凛だった。

 

 

「なんだよ…あいつ。ちょっとまってて、りんのやつ、つれてくるから。」

 

 

そう言って凛を追いかけて走って行く亨夜。

 

 

「えへへ…。」

 

 

そんな二人の様子を眺めながら楽しそうに笑う美由紀。

 

 

そして、そんな亨夜達の姿を見ながら、七海は思ったのだった。

 

 

(……この人なら、ずっとかわらずそばにいてくれるかもしれない。わたしはわたし、どこにいってもこのわたし……。いさんもそうぞくもしんけんもかんけいない、かわらない『ななみ』を見つめてくれる人かもしれない。)

 

 

と。

 

 

 

 

 

 

 

 

『もちろん、すぐにお父さんやお母さんのことも好きになったけど……。』

 

 

それは、七海と、亨夜の初めての出会い…。

 

 

『わたしがさいしょに好きになった人は、きょーやちゃんだったのです……。』

 

 

それが、七海が初めて『好き』と言う言葉を知った頃の物語…

 

 

つづく…





亨夜に問うアマテラスと、七海の決意、亨夜と七海の初めての出会いの第三楽章の四話目でした。



翔「何気に妹の凛ちゃんの初登場だったな。」



正確に言うと…彼女本人の初登場ですけどね。今後回想以外で登場するであろう、彼女はワームが擬態して居るので、正確には本人とは言い難いですからね。



輝「で、七海ちゃんの決意と。」



浩平「アマテラスがガタックゼクターの事に疑問を持って質問したみたいだけどな。」



輝「確かに…何でもう一つガタックゼクターが有るのか? ガタックゼクターがあの世界に有るのか? 疑問が多いな。」



まだ物語は序盤ですからね。ブラッドガタックゼクターの存在等についてはまだ疑問には思っていても明らかになるのは先の話です。そろそろ第三楽章も決着に近づいてきましたが、



翔「まだワームの影は無いな。」



…ふっ、それについても多くは語れませんね。それでは、次回をお楽しみに。
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