IZUMO ~蒼き戦士の戦記~ ~赤の英雄、蒼の復讐者~外伝   作:龍牙

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第四楽章『追いかけてくる過去』
第四楽章 -1-


 

さて、一度アマテラスの村に戻り暫しの休息した亨夜達は静かな夜を過ごしていた。

 

 

 

「龍牙ァ!!! お前、何変な外来種を持ち込んでんだよ!!!」

 

 

「あー…素直に謝る。すみません。」

 

 

…訂正、亨夜だけは思いっきり龍牙に対してネノクニに外来種(ワーム)を持ち込んだ事に対して文句を言っていた。

 

龍牙と剣の二人が戦っていたワーム達さえも巻き込んで、ネノクニに来る原因となったのが、龍牙がハイパーゼクターを暴走させた事にあるのなら、この世界にワームが現れた責任ははっきり言って龍牙にある。

 

 

「しかし、亨夜。この村の近くにもワームが何体か現れたけど…はっきり言って妙だ。」

 

 

「妙? 何の事だ?」

 

 

「ああ、あの時に生き残っていたワームの数を考えると…それほど多くない筈だ。オレは…“この世界に連れ込んだ全てのワーム”がこの村に現れたって思った位だ。」

 

 

龍牙の言葉に亨夜は思わず頭を抱えてしまう。渚と合流した時の事を含めて考えると、思わず最悪の考えが浮かんでしまう。

 

 

「じゃあ、何か…? この世界に持ち込んだワーム達がこっちで“繁殖”したって言う事か?」

 

 

「いや、それは無いだろう。異世界に飛ばされたと言うのに短い期間で繁殖したとは考え難い。それを考えるとアマテラス達がワームを見たって言う時期とのズレが大きい。」

 

 

「あの地球外生命体共をオレ達の常識で計るなよ。」

 

 

「ある程度の常識は有るだろう。だけど、これでオレ達は今まで以上に大きく動いてワームと戦う必要が有るな。」

 

 

「ああ、この世界にはオレ達以外に…“仮面ライダー”は居ても…悪霊側のようだしな。」

 

 

「お前が話していたスサノオって奴か。厄介な話だな。この世界のライダーは“人間”の敵でワームも悪霊側。何故だろうな…ライダーが怪物に味方して人に絶望を与える…。パラレルワールドの何処かにはそんな世界も存在しているんじゃないかって思えてくる。」

 

 

「それは…冗談だとしても笑えないな。」

 

 

苦笑を浮かべながら、そう言葉を交わす龍牙と亨夜の二人。次なる目的地、『玄武の城塞』へと向かう前日の夜はそうして更けて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、準備を整えて亨夜達は山の中にある玄武の城へと出発した。

 

 

「まったくもう、何でこんな場所に神殿なんか建てるのよ!!!」

 

 

渚が不満を漏らす。青龍の洞窟は平坦な草原にあったのだから、ある意味当然の事と言えるが…。

 

 

「確かに…神殿なんだから、もう少し利用し易い所に作ればいいのにな。」

 

 

「なるほど、四神相応か。」

 

 

思わず渚の言葉に同意してしまう亨夜に龍牙がそう呟くと、亨夜達に同行した龍牙へと視線が集まる。

 

 

「あら、よく知ってるのね。」

 

 

「ええ。」

 

 

龍牙に対して感心した様な声を上げる綾香にそう答える龍牙。

 

 

「なんだよ、それ?」

 

 

「四神…四聖獣はそれぞれ司る『方角』と『季節』、『地形』等が有る。例を挙げるとお前達が最初に行った青龍は『方位は東、季節は春、五行では木、地形は川』と行った所か? そして、玄武は『方位は北、季節は冬で五行は水、そして、地形は山』だな。恐らくだが、この城もそれに基づいて作られたんだろうな。」

 

 

「よく出来ました。よく知ってるのねえ、龍牙くん。」

 

 

笑顔で龍牙を褒める綾香。思わず亨夜はその光景に苦笑いを浮かべてしまう。確かに龍牙の言葉通り、青龍の洞窟の中には川が流れていた。

 

 

「ええ、そうです。しかし…アシハラノクニにも、同じ発想があるのですね。」

 

 

「そうみたいねえ。」

 

 

「へえ、綾香さん、詳しいわね。歴史の教師も出来るんじゃないの?」

 

 

「まあね♪」

 

 

「まあ、オレには龍牙の奴が妙に詳しいのが気になるけどな。」

 

 

「ああ。陰陽道(そっち)についても一度勉強した事が有ったからな。」

 

 

綾香に対してそう告げる渚に笑顔で答える綾香。そして、龍牙は龍牙で亨夜の言葉に当然と言った様な表情を浮かべ答える。

 

 

「…どんな内容で勉強したんだ?」

 

 

「御婆様の伝でライダーになるべき日の為の訓練の時に学んだ古武道の流派でちょっとな。」

 

 

一瞬、龍牙の言葉に色々と突っ込み所が浮かぶ一同(アマテラス除く)だが、最初に浮かんだ突っ込み所は『こいつの祖母って何者?』と言った所だろう。

 

 

 

 

さて、そんな事を話している間に、目的地である『玄武の黒曜石の城塞』に着いた。

 

 

「ここが玄武の祭られている黒曜石の城塞です。」

 

 

名前の通り黒曜石で作られたらしいその城は、重厚感があり、中も黒曜石で閉められている。

 

 

「凄いな…。…随分と強固な城だけど……ここも悪霊に占拠されたのか?」

 

 

「はい、残念ながら……。」

 

 

視線を落とし何処か悔しげに告げられるアマテラスの言葉。

 

 

「先輩っ、張り切って行きましょう!」

 

 

そんなアマテラスを元気付けるように明るく告げられるのは七海の言葉。

 

 

「うん! みんな、気を引き締めていこう!」

 

 

「あんたもね。」

 

 

「兄さんが言っていた。『戦いは弱い方が勝つ。何故なら、強者は常に油断と言う最大の敵と戦っているから』てな。」

 

 

「おお~っ! それじゃあ、出発進行~~~♪」

 

 

亨夜の言葉にそう返す渚、龍牙、綾香が答え、拳を振り上げながら綾香が元気に先陣を切る。が、

 

 

「あらぁ~!?」

 

 

「っ!? 綾香さん、気を付けて!」

 

 

「…早速、最大の敵に襲われたな;」

 

 

足を滑らせて転びそうになった綾香に反応し、近くに居た亨夜と龍牙の二人が左右から腕を掴んで助ける。

 

 

「ううっ~…亨夜ちゃん、龍牙くん、ありがとう。」

 

 

「どういたしまして。」

 

 

「それにしても、よく滑るな。」

 

 

綾香の言葉に亨夜は答える。龍牙は掴んでいた手を亨夜へと預けて綾香の体制を立て直させると、床に触れてその感触を確かめながらそう呟く。

 

 

「は、はい、床までよく磨かれてるんで、滑りますから気を付けて下さい……。」

 

 

「…ちょっと遅かったようだな…。」

 

 

「こ、転ぶ前に言って欲しかったわ……。」

 

 

アマテラスが呆れ、龍牙が苦笑する。幸いにも助けが早かったので、渚と七海の反応も弱い。

 

 

「……はぁ……先が思いやられるわね。」

 

 

「まあ、気を付けて行けば大丈夫だろう。悪霊と戦う時は気をつけた方が良いけどな。」

 

 

呆れた様に言う渚の言葉に龍牙が苦笑を浮かべながら前半の言葉を、そして、表情を変えて真剣な物で後半の言葉を亨夜へと告げる。

 

 

「ああ。」

 

 

その言葉の意味を理解した亨夜も真剣な表情で答える。剣士にとって足場の微妙な変化は時に命取りになる事は亨夜自身も理解している事なのだ。

 

 

「皆さん、気を付けて下さい、来ます!」

 

 

そんな会話を交わす一同に対してアマテラスが警告の声を上げる。前に現れたのは、犬ほどの大きさの蜘蛛が四匹…一匹だけ茶色のものが存在していた。

 

 

「ああ、龍牙、ライダーに変身するなよ。」

 

 

流石にカブトやガタックのパワーでは黒曜石も簡単に砕いてしまう事から危険と警告の意を込めての言葉を龍牙へと告げる。だが、当の龍牙は竹で出来たと思われる手甲を両腕へと着け、

 

 

「分かっているさ。オレも…変身しなきゃ戦えないわけじゃない。さっ!」

 

 

亨夜の警告の言葉に軽い口調で答えながら最初に滑りやすい足場を気にせずに先陣を切って蜘蛛の姿をした悪霊達へと走り出す。その後に続いていくのは赤いカブトムシの姿の機械昆虫…龍牙のゼクター『カブトゼクター』だ。

 

 

「破ァ!!!」

 

 

飛び掛ってきた茶色の蜘蛛を避けて全ての運動エネルギーを破壊へと向けた見事に上段蹴りを放つ。

続いて襲い掛かる黄色い蜘蛛達を避けながらその内の一匹へと手刀を振り下ろし、黒曜石の床へと叩きつける。

後から襲い掛かろうとした蜘蛛はカブトゼクターが弾き飛ばし、最後に襲い掛かってきた一匹は踵落としで踏み砕く。

 

 

「あ、あの、龍牙さん、一人で無茶をしないで下さい!!!」

 

 

「ああ、すまない。数も手頃そうだったんでな。生身での戦いに慣れておこうと思った訳だ。」

 

 

手際の良さに呆然としていた一同の中で素早く再起動したアマテラスが龍牙へと抗議の声を上げる。龍牙はそんなアマテラスに謝罪しながら、調子を確かめる様に手を何度か握る。

 

 

「…すごいですね…龍牙さんって。」

 

 

「…素手ならオレより強いんじゃないか…? …少なくとも、武術の腕は美由紀よりも上か…。」

 

 

思わず感心した声を上げてしまう七海と亨夜。武道を学んでいる二人にしても龍牙の動きは思わず感心してしまう。特に亨夜はカブトとして戦うために様々な戦い方を学んできたらしい事は知っているが、実際に目の当たりにして驚いてしまっているのだ。

 

 

だが、有る意味、素手での戦い方を主体に学んだ龍牙にとってクナイを武器としているが基本が素手の格闘のカブトのシステムは最も馴染む物。相性は最高だった為にカブトでの戦闘経験も格闘技術に上乗せされていると言った所だろう。

 

 

 

 

さて、そこからは前線組みの亨夜、渚、アマテラスの三人に龍牙が加わった四人と後衛の七海と綾香の二人と言った六人パーティーで悪霊達を倒しながら順調に前へと歩を進めていた。

 

 

最初は龍牙の性格と先ほどの行動からチームワークに不安が残る亨夜だったが、龍牙は上手く渚や亨夜の動きをフォローしながら戦っている。意外とチーム戦には慣れている様子が伺えた。

 

 

「…お前、チーム戦って出来るんだな…。」

 

 

「…当然だ、オレもまた天の道を行く者だ。チームでの動き方もある程度理解しているさ。」

 

 

思わず普段の龍牙を知る亨夜がそう言うが当然と言う表情で答える龍牙だった。

 

 

 

 

「わっ! どあっー!」

 

 

「きゃっ、綾香先生!?」

 

 

「すべるぅ~っ!」

 

 

「わっ、先生、危ないっ………!」

 

 

暫く城塞の中を進んでいった亨夜達一行だが、その途中で再び綾香が足を滑らせてしまった。そんな綾香に慌てて叫ぶ七海と渚の二人。

 

 

「「………はぁ。」」

「………ふぅ。」

 

 

何処か呆れた様子で溜息を零す亨夜と龍牙、そして、アマテラスの三人。

 

 

「い、いててて………。」

 

 

「はぁ、ドジだなあ、綾香さん。」

 

 

苦笑を浮かべながら転んだ綾香を立ち上がらせる為に手を差し出す亨夜。

 

 

「うう…、そんな事言わないでよ、亨夜ちゃん。」

 

 

手を取って立ち上がりながら亨夜へとそう告げる綾香。

 

 

「いや、だって……あはは。」

 

 

「うう、笑わないでよ!」

 

 

先ほどの事を思い出してしまったのか、思わず笑ってしまう亨夜。ここが敵地だという事を忘れてしまうほどに和やかな空気が流れていた。

 

 

 

そんな亨夜の姿に龍牙は一人目を丸くしていた。

 

 

「どうしたんですか?」

 

 

「いや、何と言うか…オレの知っているあいつとは違うからな。」

 

 

「え? 亨夜って何時もあんな感じじゃないの?」

 

 

そんな龍牙の姿を不思議に思ったのか、そう問い掛ける七海。そして、渚は思わず龍牙の問いに聞き返してしまう。

 

 

「…そうか? オレの知っているあいつは『抜き身の刀』って言うのが似合うな。」

 

 

「先輩が…ですか?」

 

 

「そっちの方が全然想像出来ないわね。」

 

 

「…そうかも知れないな。兄さんが言っていた。人も料理も自分が知っている一面が全てじゃない。ってな。」

 

 

七海達の知る普段の亨夜と龍牙達が知る復讐者としての亨夜。その反面しか知らない者にとっては別の面の亨夜の姿を想像する事は難しいのだろう。

 

 

 

「もぉ……そんな事言うと、亨夜ちゃんの秘密、みんなに話しちゃうぞ?」

 

 

龍牙達が亨夜についての会話をしていた頃、怒った様子の綾香が亨夜に向かってそんな事を言う。

 

 

「えっ、何々?」

 

 

「………私も興味有ります。」

 

 

綾香の言葉が聞こえたのか、渚と七海の二人が食いついた。

 

 

「って、行き成り何を話し出すんだよ!?」

 

 

「えへへ、えっとね、亨夜ちゃんたらね、小学校に入るまで、「わー! わー!」もう、邪魔しないでよ。」

 

 

「するに決まってるだろ!?」

 

 

膨れる綾香の言葉に顔を真っ赤にしてそう叫ばずには居られない亨夜だった。

 

 

「そんなに、おねしょしていたのが恥ずかしいの?」

 

 

「って、またその話!?」

 

 

「ぷっ! くっくっ…あははははっ!!!」

 

 

「って、お前も何爆笑してるんだよ!?」

 

 

「イヤ…だって…普段の…お前から全然な…くっくっ…。あ、安心しろ…神代達には…黙ってて…やる、から。」

 

 

思わず笑い転げている龍牙に向かってそう叫ぶ。だが、龍牙に知られた以上はライダーの関係者にも恥ずかしい過去が広がる危険を持っている。…少なくとも、ZECTではなく、龍牙の仲間には広まるだろう。

 

 

「私、パンツ換えてあげたんだから。」

 

 

「わわっ……それはちょっと……凄いです。」

 

 

「くっくっ…確かに。」

 

 

「こ、子供の時の話だから!!!」

 

 

「へぇ……パンツをねぇ。」

 

 

顔を赤くしてそう言う七海と必死に笑いを堪えていると言う様子の龍牙。渚は渚でニヤニヤとした顔でそう言っていた。思いっきり恥ずかしい過去を暴露されてしまっている亨夜としてはこの空気を何とかしようと必死である。

 

 

話を切り出した当の綾香はそんな亨夜が慌てる様子を見て楽しんでいた。

 

 

「昔は良く美由紀ちゃんと凛ちゃんも一緒にお風呂に入ってたんだけど……。」

 

 

「えっ?」

 

「うわっ。」

 

 

ある種の爆弾発言に顔を真っ赤にして反応する七海と渚。

 

 

「…亨夜…お前…。」

 

 

そして、横目で白い視線を向ける龍牙。

 

 

「だから、子供の頃の話だ!!! って、凛の名前が出てきた時点で気付け。」

 

 

思わず凛の名前が出て来た事で表情を暗くしてそう告げる亨夜。綾香も自分の発言が拙かった事を悟ったのか、一言『ごめん』と謝った。

 

 

「……でもね…亨夜ちゃんたらね。私のカラダに興味持っちゃって……。」

 

 

ぽっ、と顔を赤らめる綾香。

 

 

「せ、先輩……?」

 

 

「あんた、小さい頃から、そんな………。」

 

 

「…すまん、流石にフォローできない。」

 

 

絶対零度の冷たさを含んだ口調で告げられる七海と渚の言葉と、明らかにそんな亨夜の反応を他の視点で居る様子の龍牙。七海と渚の二人は明らかに引いている。

 

 

「ち、違う!!! 断じて違う!!!」

 

 

「『綾香さんのお胸は凛や美由紀と違って膨らんでるから、大人のお胸なんだね?』だなんて……。それで、凛ちゃんと美由紀ちゃんが怒っちゃってねぇ……。」

 

 

ポン、と亨夜の肩を叩く龍牙。そして、一言。

 

 

「…何処かの『スーパー弁護士』でも今のお前の弁護は無理だろう。」

 

 

「って、他のライダーのネタを使ってボケるな!!!」

 

 

妙なボケをしてくれた龍牙にツッコミを入れる亨夜。

 

 

「美由紀ちゃん達もね。」

 

 

「あっ…あ~…オレのイメージがどんどん下がっていく…。」

 

 

どんどん暴露される恥ずかしい過去に思わずそう呟いてしまう。微妙に亨夜を見る七海の視線は鋭くなってきているし、アマテラスは一人我関せずを貫いているし、龍牙に至っては……。

 

 

「……ふっ……。」

 

 

心底楽しそうな悪役笑いを浮かべてくれている。

 

 

「だ、大胆。」

 

「凄いわね。」

 

「子供の言う事だから!!!」

 

 

上記は一部の会話より抜粋。

 

 

 

…どうでも良いが、完全に此処が敵の重要拠点で有る事を忘れている様子である。

 

 

 

「私もあの頃は未熟だったからなぁ~。亨夜ちゃん達にうまく説明できなくて、困っちゃったわ。」

 

 

「ま、また、そんな意味深な言い方を…。……すみません……。もう、勘弁してください。」

 

 

綾香の暴露話にすっかり項垂れている亨夜だった。

 

 

「今だったら、保険の授業でたっぷり教えて上げられるんだけどね♪」

 

 

「うぅ…。」

 

 

胸の辺りを強調するような姿勢で冗談を言う綾香に顔を真っ赤にしてしまう亨夜。同時に悟った瞬間だった。『この人には勝てない』と。

 

 

(……それにしても、あの時は本当に、近くに住んでた綾香さんは爺ちゃんの家に出入りしてたよな。おじさん達とも爺ちゃんの付き合いが長かったし…。)

 

 

思わず…妹が…凛が生きていた頃の事を思い出す亨夜。まだ妹が生きていた頃…両親の都合で凛と一緒に祖父の家に預けられていた頃の話だ。

 

 

(…でも、何時の間にか、綾香さんはあまり遊びに来なくなったな。あれは…なんでだったんだ? 何か切欠が有ったはずだけど…? …綾香さんの両親の離婚だったか…あの時期に有った切欠になりそうな事は? でも、違う気もするしな。)

 

 

そして、湧き上って来る一つの疑問。

 

 

(…思い出せない…。あの頃は今のオレが想像出来ないほど、子供だったしな。)

 

 

だが、亨夜は気付かない。過去は常に追いかけ続ける物。それが…どんな物であれ、本人が永遠に背負い続ける物…。

 

 

「あら、亨夜ちゃん、どうしたの?」

 

 

黙り込んで考え事をしていた亨夜に綾香が怪訝そうに問い掛ける。

 

 

「え? あ、ああ…なんでもないけど。」

 

 

「えへへ、…思い出しての?」

 

 

「ち、違うから!!!」

 

 

綾香がジト目で薄笑いを浮かべている綾香にそんな反応を見せる亨夜。………本当に違うのだが…。

 

 

「もう、照れないの!」

 

 

ポンポンと背中を叩く綾香に困った様子の亨夜。改めて確信してしまう。綾香には絶対に勝てないと。

 

 

 

そんな時だった。

 

 

 

周囲の空気が変る。

 

 

「クックックッ……。」

 

 

最初に闇の中…何処からか響いてきたのは不気味な含み笑いの声。

 

 

「ひゃぁっ……。」

 

 

「だ、誰っ!?」

 

 

「……むっ。」

 

 

その声に警戒する一同。

 

 

「誰だ!?」

 

 

「……。」

 

 

木刀を握る亨夜と無言のまま構えを取り周囲に注意を向ける龍牙。

 

 

「クックックッ……小娘がぁ……。」

 

 

響き渡る声はまるで地獄の亡者の様な唸り声。それは黒曜石の壁に反射して出所を掴ませない。

 

 

「くっ、敵か?」

 

 

「その様だな。」

 

 

それぞれのゼクターを手に取り何時でも変身出来る体勢に入り警戒を強める亨夜と龍牙の二人。

 

 

「どこから来るか分かりません…。…皆さん、気を付けて!」

 

 

槍を構えながら警戒の声を上げるアマテラス。

 

 

「クックックッ…。お前は忘れても、オレは忘れない……。……クックックックッ……。」

 

 

警戒を強める一同を他所に声の主はどんどん遠ざかりながら最後に意味深な事を言い残し何処かへと行ってしまった。

 

 

「なんだったんだ?」

 

 

「なーんか、ヤな感じの声だったわね。」

 

 

「そうですね……。」

 

 

「…挑発にも聞こえたけどな…。(いや、正確にはオレ達の中の誰かに向けられた言葉…。オレと龍牙以外の誰かにか…? そう聞こえた。)」

 

 

気味悪がる一同だが、

 

 

「? 綾香さん?」

 

 

ふと、視線を綾香へと移した時、綾香は青ざめた表情で呆然と立ち尽くしていた。

 

 

「(…あの言葉は…綾香さんに向けられた言葉?)顔色が悪いけど、どうしたんだ、綾香さん?」

 

 

「あ……な、なんでもない……。」

 

 

「大丈夫? 少し休んだ方が…。」

 

 

「なんでもないから……気にしないで。」

 

 

明らかに何かがありそうな言葉だ。それは付き合いが浅い龍牙にさえも『何か有る』と言う事を気付かせる響きを含み、浮かべられた笑顔は何処か作り物めいていて…同時に『拒絶』の意思を含む様に見えた。

 

 

「…そうですか…。何時でも言ってくれれば、休憩を取るから。」

 

 

「うん、大丈夫だから。」

 

 

それは…綾香の後を…追いかけ続けた過去がすぐ其処まで迫っていた瞬間だった。

 

 

 

つづく…




第四楽章『追いかけてくる過去』突入です。



翔「…過去は常に人を支配し続ける物だな。罪は償った所で、罪人でなくなると言う訳じゃない。忘れていたとしても同じ事。永遠に背負い続ける十字架と言う事だな。…オレが始さんを封印したように…な。」



君の場合は全人類と個人を天秤にかけた……と言うと聞こえは悪いですけど、かなり深刻な状況でしたからね。



翔「例え、全人類の為と言う免罪符が有ったとしても、オレは仲間を一人犠牲にして、一人の女の子を悲しませた。永遠に背負い続けなきゃならない過去で、十字架だ。誰が許してくれても…始さんや全人類がオレを許してくれても…天音ちゃんや、何よりオレ自身がオレを許せないさ。」



あー…なんだか、暗い話になってきちゃいましたね。それでは、次回をお楽しみに。
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