IZUMO ~蒼き戦士の戦記~ ~赤の英雄、蒼の復讐者~外伝 作:龍牙
「亨夜、兄さんが言っていた。『過去も下味も忘れてはいけない物、忘れた所で必ず思い出す。向かい合い、受け入れるしかない。』ってな。」
「…今更だな。」
「…お前に対してはそうかもな。オレもお前もどんな形にしろ、過去と戦っている。…ただそれだけだ。」
龍牙は亨夜へとそう告げる。過去とは『向かい合っている』でも、『受け入れている』でも無く『戦っている』だ。
龍牙とっても、亨夜の“復讐”にしても、二人とも今はまだ過去とは戦っている段階であり、受け入れた訳でも向かい合っている訳でも無い。
「そうだな。」
龍牙の言葉に亨夜は同意の言葉を零す。それは、玄武の城へと旅立つ前夜、英雄(カブト)と戦士(ガタック)である二人が交わした会話。
結局の所、『過去』によって形成された『現在(今)』、それによって形作られたのが、今の龍牙であり、亨夜である。
受け入れ、向き合い、前に進むしかない。それがどんな形にしろ、『過去』なのである。
妙な声が聞こえてから亨夜達一行は何時もと違う綾香の様子に反して比較的順調に先へと歩を進めていた。
『クックックッ…。』
ある程度進んだそんな時だった。またあの声が聞こえてきたのは…
「誰だ! 姿を見せろ!」
「…そう言って、ハイワカリマシタと言って出て来てくれるとありがたいがな…。」
亨夜と龍牙の二人が前に立ち、アマテラスと渚の二人が殿になる形で後方組みの綾香と七海を挟む形で武器を構え臨戦態勢を取りながら、亨夜が叫ぶ。
『クックックッ……俺が誰なのかは……そこの小娘が、よく知ってるはずだぜ……?』
亨夜の言葉に帰っている正体不明の声。龍牙は声の位置から相手の居場所を探ろうとしたが、周囲に反響する事で判断できず、思わず舌打ちする。
「…小娘って……誰のことだ?」
「…流石にオレ達二人以外に全員女性だからな…。」
「って、呑気にそんな事言ってる場合じゃないでしょう!!!」
顔を見合わせて、妙に落ち着いた様子で謎の声に対して妙なボケ(一応正論だが)をしてくれている一行の中の男二人…亨夜と龍牙に渚がツッコミを入れる。
どんな時でもペースを崩さないその姿は、ライダーとして戦って来た経験ゆえなのだろうか?
『クックックッ……。』
だが、声は答える事も一行の様子に反応もしなかった。直接的、精神的と言う以前に攻撃ですらないが、はっきり言って相手の目的が分からないが故に不気味だ。
(…だけど、こうして繰り返しているって事は…。)
(考えられるのは二つ…効いていないか…効果が出ているか…か。)
声を聞き流しながら同じ様な考えに至る亨夜と龍牙の二人、
「(…反応を変えてみるか…。)よく分からないけどな…いい加減に出て来い!!!」
冷静な部分でそう考えながら、龍牙は焦った様に見せて叫ぶ。
『クックックッ…。』
そんな龍牙の叫びに対して不気味な声は一行の周囲を飛び回っている様に響き渡る。
「(反応なし…。狙いはオレ達の中の誰か…か。)亨夜。」
「分かってる。」
そう考えた後、一瞬だけ亨夜へと視線を向ける。その一瞬だけで亨夜は相手の考えが自分と同意権だと理解する。
『クックックッ……お前だって忘れてはいないはずだ……忘れたと言うのなら……思い出させてやる……。』
声はそれだけ言い残して、遠くに消え去って行った。
「…………。ふう…行ったみたいだな。」
「敵の襲撃は無いのはありがたいが…あれだと精神的に返って疲れるな…。」
完全に声が遠ざかったのを確認すると亨夜達は臨戦態勢を解く。
「もうっ、アレ、なんなの!? イヤラシイ!!!」
「なんだか寒気がします……気持ち悪い。」
相手の行動に怒りを露にする渚と、体を震えさせながらそう言う七海。
「だけど…あいつ、変な事を言ってたな。“小娘が知っている”って。」
「うん。」
その言葉に亨夜は渚へと視線を向け、
「で、小娘、なにか心当たりは有るか?」
「誰が小娘か!!!」
「ぐはっ…。」
「…ナイスパンチ…。」
一番可能性が高いと判断した渚へと問い掛けるが、返事は怒りに満ちた叫び声とグーパンチで返ってきた。亨夜をパンチ一発でKOした拍手と共にそんな言葉を贈る龍牙だった。
「あんなスケベオヤジに知り合いは居ないわよ!!!!」
「わ、私も……心当たりは無いです。」
「私も……無いです。」
「そうか…。」
渚、七海、アマテラスの順に帰って来た『心当たりは無い』と言う否定の言葉に『うーん』と考え込む。
そんな亨夜の頭を引っ張り、龍牙は小声で耳打ちする。
「…亨夜…相手の言葉をオレ達の知識だけで考えない方が良いかもしれないぞ。」
「…どう言う意味だ?」
「…『小娘』と言う言葉は『女性』と言う意味で捉えた方が良いかもしれない…。そう言う意味だ。」
龍牙は亨夜の言葉にそう答えると、意識を周囲の警戒へと向ける。
「…………。」
ふと、龍牙からそう告げられた後に綾香に視線を向けると、綾香が一人だけ黙り込んでいた。
「綾香さん、黙り込んじゃって……どうしたの?」
「……まさか……。」
「? 綾香さん!!!」
「……!!! きゃあっ!」
「っ!?」
反応が返ってこない綾香を不思議に思い、少しだけ強めに名前を呼び、ポンと肩を叩くと、返ってきた反応は何かに襲われたかの様な本気の悲鳴だった。それに思わず話しかけた亨夜も驚いてしまう。
「ど、どうしたんだよ!?」
「あ、ご、ごめん……ちょっと、考え事を。」
「(…まさか…。)………。」
再び先へと進む為に歩き出しながらカブトゼクターと共に殿を務めている龍牙へと視線を向ける。
「…綾香さんの様子が変だって事に気が付いてたのか?」
水路が廻っている場所を通り過ぎ、今は見る影も無いがアマテラス曰く、『かつてはここに来る者達が一夜を明かしたらしい部屋』を半分ほど通り過ぎた頃、龍牙を睨みながら亨夜は『嘘は許さない』と言う意思を込めた視線を向けてそう問い掛ける。
「ああ。さっきの三人の反応からな…。あの声は綾香って人に向かって言っていたんだろうな。」
「…なんで態々遠まわしな事を…。」
「…まあ、直に気付く程度には言ったつもりだったけどな…。なるほど、よく見ているんだな…周りの人達の事を…。」
亨夜の言葉に龍牙は笑みを浮かべながら返す。そんな龍牙の態度に亨夜は思わず怒りを覚えてしまう。
「みんな、敵よ!!! って…;」
「邪魔だ!!!」
「…一人で前に出すぎだ…。」
行く手を阻むように出てきた悪霊達を薙ぎ払う亨夜と後を追いかけながら確固撃破する龍牙の二人。
「…なんだか…先輩とあの人って…。」
「友達じゃないって言ってる割には…仲良いわよね;」
「…そうですね…; 本当にあの御二人は何者ですか?」
言い争いをしながら互いのフォローをして見事な連携を見せながら戦う二人の様子を見ながらそんな感想を零してしまう渚、七海、アマテラスの三人だった。思わず『本当は仲が良いんじゃないのか?』と思われている事も気付かず二人は悪霊達を全滅させ、再び一行の殿に着く。
「…それで…心当たりは無いのか?」
「…オレが知っている限りじゃ…特に…そう言えば…。」
七海の時と手口が似ている事を感じながらも、『今回の方が性質が悪い』と感じつつ、龍牙に促され、声に関係している人間の存在を思い出そうとする。
「…そう言えば、オレ達が渚と出会った時は居なかったよな…。確か…十年くらい町を離れていたはず…。その十年の間の事か…? ……ッ!?」
過去の事を思い出そうとしていると、一瞬だけ頭痛が走る。
「どうしたんですか、先輩?」
前を歩いていた七海が立ち止まり、振り返って心配そうに見ている。
「いや、大丈夫だよ、七海ちゃん。」
心配そうに問い掛けてきた七海に対して亨夜は大丈夫だと答える。実際、一瞬だけの痛みだったので、心配させるほどの事ではない。
(…綾香さんは…なんで十年も街から離れていたんだ…?)
ふと、思い浮かぶのはその疑問。妙な引っ掛かりを感じて疑問を浮かべるが、望んでいる答えは残念ながら浮んでこない。
そんな時だった。
「っ!? 亨夜、前に走れ!」
「っ!?」
突然の龍牙の叫び声に応えて亨夜は慌てて前に走り木刀を構えて後ろを振り返る。そんな亨夜の態度に他の者達も同様にそれぞれの武器を構え臨戦態勢を取る。だが、
「なに!?」
「そんな!? あれって…。」
「先輩のに似ている…。」
「嘘でしょ?」
「亨夜さんの物とも悪霊の鎧とも似ていますが…。」
龍牙が必死に攻撃を避けている相手の姿を見て思わずそんな感想を零してしまう一同。
龍牙に襲い掛かっている…もっと言えば亨夜達に襲い掛かった来た存在に似た物は、その場に居た全員が見覚えが有った。亨夜の変身するガタック…アマテラスを除けば…龍牙の変身していたカブトと言った所だろう。
それは、カブトに似た形状の蒼い複眼と赤銅色の装甲に包まれ、片方の肩には比較的重層なアーマーに覆われ、もう片方の肩は軽装な銀の装甲を持ち、頭部にはカブトムシ…『ケンタウルスオオカブト』をイメージさせるホーンを持った戦士(仮面ライダー)。
だが、亨夜には腕に装備されたブレス…『ライダーブレス』に装着された『ゼクター』らしき物に対しては資料と言うレベルだが確かに見覚えがあった。
(量産試作型ゼクターシリーズ『カブティックゼクター』…試作タイプの一号機…『タイプ:ケタロス』!? どうして、オレ達の世界で完成もしていないゼクターが…ネノクニに現れる!?)
ゼクトクナイガンを持って龍牙に襲い掛かる赤銅色の戦士…『仮面ライダーケタロス』に対して亨夜は心の中で驚愕の叫びを上げる。
亨夜が知る限りでは、カブトとホッパーシリーズをベースにして設計され試作機となる三機の開発が進められており、それ等は未だ完成しては居ない。カブトの量産タイプでありながら、そのスペックはカブトと同等かそれ以上の能力を持つ、新型ゼクターシリーズ。その内の一つが…それを使い変身したライダーが、タイプ:ケタロスによって変身した仮面ライダー…『仮面ライダーケタロス』なのだ。
目の前に居るのは死人所の話ではない。目の前に存在しているのは、未だに完成さえしていないゼクターを使い変身した仮面ライダー。それは、例えるのならば『未来の亡霊』と言うべきだろうか?
「ふっ!」
幸いにも龍牙だけを狙っている事から、襲い掛かるケタロスの腕を蹴り、クナイガンを弾くとそのまま僅かに距離を取り、手を振り上げ、カブトゼクターをその手の中に収める。
「兄さんが言っていた…。」
ゆっくりと宣言するのは己への鼓舞…
「…『オレの進化は光よりも早い、この宇宙の何者もオレには追いつけない』ってな。お前が未来の亡霊だと言うなら…オレは…その未来さえも追い抜き、過去に変えるだけだ!!! 変身!!!」
《HENN-SHINN》
ベルトへとカブトゼクターを装着させ、銀色の装甲が龍牙の全身を覆い、『仮面ライダーカブト・マスクドフォーム』へと変身する。
「キャスト・オフ!」
《CHAST OFF》《Change Beetle》
ゼクターホーンを反対側へと動かし、銀色の装甲を排除し、本来の姿であるライダーフォームへと変身する。
天を指差す様な仕草と共にホーンが定位置へと動き、電子音が響き渡る。
戦いの神『仮面ライダーガタック』に続く形でネノクニに光臨せしは、光を支配せし太陽の神。その名は、
神速の太陽神
『仮面ライダーカブト・ライダーフォーム』
「まさか、彼もあの様な物を持っているなんて…。」
「まあ、オレとあいつ以外にも神代も持ってるけどな…。龍牙、オレも加勢する。来い、ガタックゼクター!」
龍牙の変身に驚愕を浮かべているアマテラスに苦笑を浮かべながら、ガタックゼクターを召喚し、その手の中に収める亨夜。
そんな時だった。
『きゃあっ!!!』
「ッ!? 綾香さん!?」
綾香の悲鳴と共にそちらへと視線を向けると…亨夜の意識はそこで途絶えたのだった。
つづく…
第四楽章『追いかけてくる過去』の二話目にして亨夜と龍牙の所でそれぞれ超展開です。まあ、次の話に繋がる形の話でしたけどね…。
輝「…劇場版ライダーのケタロスか…;」
ブラッドガタックゼクターだけでは無いんです♪ まあ、黄金のライダーであるコーカサスの出番は予定してませんけど…。
翔「…『未来の亡霊』…妙な言い当てだな。」
昔読んだ小説にも有りましたね…。現在の主人公達に未だ出会わぬ未来の亡霊が襲い掛かる。と言う話は…。
そんな訳で、次回は声の正体に迫る亨夜SIDEと、初のライダーバトルを行う事になるカブトVSケタロスとのライダーバトルの龍牙SIDEの予定です。