IZUMO ~蒼き戦士の戦記~ ~赤の英雄、蒼の復讐者~外伝   作:龍牙

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第四楽章 -4-

「たぁー!!!」

 

 

「はっ!!!」

 

 

「ふっ!!!」

 

 

渚、アマテラス、龍牙の三人が連携して七海の援護の下、亨夜達との合流を阻む様に現れる悪霊達と戦っていた。

 

 

(…こいつ等の動きと言い、あの銅色の仮面ライダーの現れたとタイミングと言い…。奴等は連携して動いているって考えた方が良さそうだな。)

 

 

龍牙は戦いながらそんな事を考えていく。

 

スサノオの下にある紅いガタック、今回のケタロスの存在、人間の敵となる悪霊の側に仮面ライダーが着いている。それは何時か亨夜と話した時に冗談として言った言葉が現実の物になっている様に感じずには居られなかった。

 

 

(まあ、あいつの事は心配ないだろう…。ガタックゼクターも一緒に居る様子だしな。)

 

 

そんな事を考えながら、龍牙は後から近づいてきた裏拳で殴り飛ばす。

 

 

(…まったく…心配をかけてくれるな…あの自称復讐者。…誰かを支えられる奴がお前の言う復讐者になんてなれる訳が無いって事は…絶対に自覚してないんだろうな、あいつは…。)

 

 

拳を振るいながら呆れの感情を浮かべた心の中で、友達でも無く敵でも無い、そんな相手へとそんな事を思う龍牙だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行動を開始した亨夜と綾香の二人だが、悪霊達に行く手を阻まれている龍牙やアマテラス達に対して、亨夜達二人は順調に進んでいた。もっとも…

 

 

「…前にも通らなかったか…ここ?」

 

 

「……うーん、この辺りは行ったり来たりを繰り返す場所みたいね。」

 

 

相手にしてみても勝手に道に迷っている相手に対して…態々雑兵を送り込んで道案内してしまう危険と手間を省いただけなのだろうが…。

 

 

後をガタックゼクターに守らせて前を歩いていた亨夜は、普段どおりの調子を取り戻した綾香を横目で見て安心する。そんな、先ほどまでの光景が幻だった印象さえ与える綾香の姿に安心していると、

 

 

「クックックッ……。」

 

 

狙っているかのように声が響くと、綾香が亨夜の服を掴んでいた。

 

 

「大丈夫。」

 

 

「うん……。」

 

 

木刀を握りながら亨夜は木刀を下ろして服にしがみ付く彼女を安心させる様に告げる。だが、先ほどまでのものとは違う。

 

 

「クックックッ……綾香ぁ、そいつがお前の。」

 

 

「ふっ!」

 

 

「ぎゃあぁぁぁぁ!!!」

 

 

アンダースローの要領で“それ”を投げ付けると、不気味な笑い声では無く悲鳴が響き渡る。

 

 

「青龍の洞窟でもそうだったけどな…。またお出ましとはご苦労なことだな……害虫(ワーム)。」

 

 

手の中に持っていた『棒手裏剣の様に先端を尖らせた木の枝』を手の中で握り締めて砕くと、前方へと殺意を込めた視線を向ける。嫌と言うほど感じた敵、ワームの気配…それを感じ取れないほど、亨夜は戦士として未熟ではない。

 

変身しない姿での牽制にでもなればと作っておいた即席の手裏剣だが、それなりの効果は有った様子だ。

 

 

「さて…聞きたい事は有るが、やっぱり外来種の害虫駆除の方が優先だよな…。」

 

 

目の前に現れた片腕が緑色の異形の腕に変化した中年の男を睨みながら、亨夜はガタックゼクターを受け止める。

 

 

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃ、た、助けてくれぇー!!!」

 

 

「逃がすかよ!!!」

 

 

悲鳴を上げて逃げ出していくワームを追いそうになった時、

 

 

「いや……イヤ……嫌あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!」

 

 

パニックに陥っている綾香に気が付いて、我に返る。先ほどの様に顔色は青く、歯がガタガタと噛み合わない。その上、何度も『ゴメンナサイ』と言いながら首を何度も振っている。

 

 

「綾香さん、落ち着いてくれ!!!」

 

 

先ほどのワームが擬態した主が綾香が知っている…声の主なのだろう。相手の考えとしては、擬態した姿とは言え声だけではない現実の姿で現れようとしたのだろうが、亨夜にとっては幻覚等より余程遣り易い相手だったと言う事が相手の計算外だったのだろう。

 

だが、綾香に対しては効果は有った様子だ。

 

 

どうやって落ち着かせるかと考えながら悩んでいると、『これで二人目か』と心の中で舌打ちし、

 

 

「落ち着いて、綾香さん! あれは…人間じゃない、悪霊でも無い!!! あれは単なる紛い物だ!!!」

 

 

目の前に現れたワームが擬態した相手に心から怯えているのだろう、手足をバタバタさせている綾香に言い聞かせるように、そう叫ぶと、

 

 

「…紛い物…。」

 

 

「…見ただろう…あの緑色の腕…。あれはオレ達が青龍の洞窟で戦った蜂の怪物の仲間、アマテラスの言っていた緑の化け物だ。」

 

 

「で、でも、あれは…。」

 

 

「あいつ等は人間に擬態する能力を持っている。姿形だけじゃない……記憶もだ。」

 

 

「ど、どう言う事なの!? どうして、亨夜ちゃんは、そんな事を…。」

 

 

「…綾香さん…今から話すことは、関係者の神代や龍牙、前に話す事になった七海ちゃん以外には言わないでくれ…。」

 

 

「え、ええ。」

 

 

亨夜の言葉に頷く綾香に対して亨夜はゆっくりと、淡々と語り始める。ワームとZECT、そして…マスクドライダーシステムの事を…。

 

 

「亨夜ちゃん…貴方、そんな事をしてたの…。」

 

 

「ああ。オレは凛が死んだあの日から、ZECTに参加して…ワームと戦ってきた。」

 

 

七海の時と重なる様に返される反応。当然だろう…自分達が生活している裏で人類と別種族の生物の戦争が…しかも、自分達の身近にそんな戦いに身を置いていた人間が居る等とは信じられないだろう。

 

 

だが、信じるしか無いだろう、現実に青龍の洞窟では成体のワームを直に見て、サナギのワームの事もアマテラスを通じて聞いているのだから…。

 

 

「綾香さん…あれが誰なのかは知らないけど…あれは本物じゃない…ワームって言う化け物が写し取った劣化品に過ぎないんだ。」

 

 

一部の例外を除き、ワームの擬態は何処まで上手く真似たとしても所詮は劣化品と考えている。

 

仮にワームが己に擬態したとしても、完全なコピーは不可能だろうと考えている。相手がワームである限りその憎しみは永遠に消える事は無い。…ワームへの憎しみが無い『荒谷 亨夜』等、『荒谷 亨夜』では無いのだから。

 

 

だから、目の前に存在していた男の感情も……所詮は紛い物。

 

 

「だから、安心して…。ここには居ないから…。」

 

 

「う、うん。」

 

 

安心させるように綾香を抱きしめていると、

 

 

 

 

「…人に心配させて何やってるんだ…お前は?」

 

 

 

 

そんな声が響きました。

 

 

「「っ!?」」

 

 

その声に驚いて慌てて離れて声の聞こえた方を振り向くと、呆れた目で眺めている龍牙の姿があった。

 

 

「「りゅ、龍牙(くん)?」」

 

 

「お、お前…何時から…。」

 

 

「ついさっきだ。悲鳴が聞こえたからな、そこまで急いで突破させてもらって来た。ああ、それと…。」

 

 

龍牙は『こいつを使ってな』と言ってカブトゼクターを見せる。

 

 

「お前な…脅かすなよ。」

 

 

「脅かすな、じゃないわよ! あたし達がどれだけ心配したと思ってるの!?」

 

 

「な、渚!? 七海ちゃんにアマテラスも。」

 

 

響いた声は後から走ってきた渚の物だった。渚だけでなく、七海とアマテラスの姿も有った。

 

 

「強引な突破にはなったけど、適に戦力を分散させられる様なバカな行動を、オレ簡単に取ると思うか?」

 

 

しっかりとアマテラス達も連れてきていた龍牙はそう言って余裕そのものと言った笑みを浮かべる。

 

 

「もう、本当に心配したんですよ!」

 

 

「ごめん。」

 

「ごめんなさい。」

 

 

怒っている七海に対して謝る亨夜と綾香の二人。謝られた七海は慌てて『いいんです、悪いのは向こうなんですから』と言葉を返していた。

 

 

「ですが、お二人とも、ご無事で何よりです。」

 

 

最後にそう告げたのは、アマテラスだった。こうして、無事全員が合流できた訳だが…。

 

 

「!? みなさん………悪霊の気配が………します。」

 

 

動き出そうとした時、アマテラスが注意を促す。

 

 

「なに!?」

 

 

「あ、あれは……。」

 

 

目の前に蜃気楼の様に突然現れたのは…

 

 

「あれは…オレ?」

 

 

「それに……あれは、綾香先生!?」

 

 

まだ幼かった日の亨夜と綾香の二人の姿だった。

 

 

「あー…確かに面影があるな…。」

 

 

「…なにが言いたい?」

 

 

「…さあな。」

 

 

亨夜と昔の亨夜の顔を見比べながら何か言いたそうな表情を浮かべる龍牙を横目で睨む。

 

 

 

 

 

 

『「お姉ちゃん……どうしたの?」』

 

 

『「なあに? 亨夜ちゃん。」』

 

 

『「今日のお姉ちゃん、なんだかおかしい。」』

 

 

『「………。」』

 

 

覚えている…それは、

 

 

『急に遊園地に連れて行ってあげると言い出した綾香お姉ちゃん。オレも凛も最初は嬉しくてはしゃいでいた。でも……。』

 

 

記憶の中にある妹との…凛との思い出の一コマ…。凛と遊園地に遊びに行った最後の記憶。

 

 

『「なんでもないわよ、亨夜ちゃん、凛ちゃん。」』

 

 

『何時もと同じ綾香お姉ちゃんの笑顔。』

 

 

でも、それが変だって最初に気付いたのは凛だった。

 

 

『でも、オレや凛には分かった。』

 

 

-『何かが違う』って-

 

 

『「お姉ちゃん、何だか…少しだけ、怖い。」』

 

 

オレの後に隠れながら凛がそう呟く。

 

 

『「どうしてかな……? いつもと同じお姉ちゃんでしょ?」』

 

 

『「「………。」」』

 

 

『そう言われれば…そんな気もする。』

 

 

オレはそう思った。単なる気のせいだって…思い込もうとしていただけかも知れない…けど、

 

 

『オレや凛と向かい合っている時の綾香お姉ちゃんは、確かに何時もの綾香お姉ちゃんなんだ。』

 

 

だけど…

 

 

『「……。」』

 

 

何時もとは違う表情を浮かべている綾香さんが、

 

 

『オレ達から意識を離した時……、雲一つ無い青空を見上げてぼおっとしている時…。』

 

 

―『オレの知らない誰かの様な表情をする。』―

 

 

『「……ねえ、きょーお兄ちゃん、綾香お姉ちゃん、今日は早く帰ろ。」』

 

 

『「えっ……? だって、せっかく遊園地に来たのよ?」』

 

 

『「オレも…早く帰りたい。」』

 

 

『「……。」』

 

 

 

 

 

 

「知っているはずだ…。この日、何かが有った…でも、何が有った…? 何で思い出せない。」

 

 

「……亨夜ちゃん! ……や、止めて……。お願い、思い出さないで。」

 

 

「わ、分かった。」

 

 

何かを思い出しそうになっている亨夜を綾香は必死に止める。その剣幕に圧されて亨夜は思考を霧散させた。

 

 

だが、今回の事で確信が持てた。あれは間違いなく亨夜と綾香の記憶…自分達しか知らないはずの…今は居ない亨夜の妹の姿がそれを証明していた。そして、今回の敵の策は綾香を狙っている物で有り、それには亨夜達の前に映し出された記憶の断片、それが関係していると。

 

 

「……どう言うことですか?」

 

 

「今のは……なんだったの?」

 

 

「…………。」

 

「…………。」

 

 

問い掛けてくる七海と渚の二人には説明する事無く沈黙で返した。

 

 

「先を急ごう。ここで立ち止まっている訳にも行かないだろう?」

 

 

「はい。それに、ここは……なんだかいやな予感がします。」

 

 

「ああ。」

 

 

龍牙とアマテラスの二人がそう言って先を急ぐ事を促した。二人の意見には亨夜自身も同感だ。アマテラスの言うとおり、ここには何か嫌な予感がする。そして…。

 

 

歩き出した一行の中で亨夜は龍牙へと視線を向ける。

 

 

「…龍牙、ここにワームが居た。」

 

 

「そうか。」

 

 

亨夜の言葉に大して驚きもせず龍牙は何処か素っ気無く答える。自分がワームがこの世界に出現する原因なのだから、それも当然だろう。

 

 

「あ、あの…先輩、ワームって…先輩達が戦っているって言ってた…相手の事ですよね。」

 

 

二人の会話を聞いていたのか、七海がそんな言葉を零す。それに対して龍牙は亨夜に対して呆れを含んだ視線を向ける。

 

 

「…お前…知られたのか…? 良いのか、バイトとは言え秘密組織のメンバーが?」

 

 

「バイトって言うな。」

 

 

そもそも、ライダーとは言え仮にも秘密組織が高校生のアルバイトを雇っている時点で激しくどうかと思うが。

 

 

だが、それ以上に伝える必要がある事が有る。

 

 

「完全に悪霊達の仲間なんだろうな…連中は。」

 

 

「…地球外生命体なんだから、他所に行けば良いものを…。」

 

 

「あ、あの…そう言う問題なんですか、龍牙さん。」

 

 

「ってか、お前が連れてきたんだろう…密輸入して。」

 

 

「…人を犯罪者の様に言うなよ…。それに…相手は羽化前のサナギだ、オレが連れてきた連中だったか、それとも…死んで此方に渡った個体なのか…外見から判断は付かないだろうな。」

 

 

「ったく、後者だったら、地球外生命体の分際で迷惑な話だな…。」

 

 

軽く会話を交わす二人だが、七海は何処か震えながら弓を強く握っている。…恐ろしいのだろう…近くに居る相手が、友人が、家族が、人ではない化け物になって襲ってくると言う光景が…。

 

 

そんな七海を安心させる様に亨夜が肩をポンと叩く。

 

 

「先輩。」

 

 

「大丈夫だ。そんな事はオレ達がさせないからさ。」

 

 

「はい。」

 

 

亨夜の言葉に安堵したのか七海から怯えが消えていた。

 

 

 

つづく…




第四楽章『追いかけてくる過去』の四話目でした。



輝「…ワームの存在暴露、その第二段だったな…。」



残る白虎と朱雀の所では渚とアマテラスの二人への暴露を予定してますけどね。



翔「…完全にネタバレだな。」



そうですね。自分の知る亨夜とは違う亨夜の姿を知る戦友と、新たに現れたワームの影…。それでは次回もお楽しみに。
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