IZUMO ~蒼き戦士の戦記~ ~赤の英雄、蒼の復讐者~外伝   作:龍牙

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第四楽章 -5-

「改めて思うが、オレ達の世界のゴタゴタをこっちの世界に全面的に持ち込んでいる気がするよな…。」

 

 

「…何を今更…。それに、お前が言うなよ。」

 

 

思わず目の前の…無自覚の内での危険な外来生物を密輸してくれた張本人(龍牙)を横目で睨みながら亨夜は溜息を吐いて、そう呟く。

 

 

だが、改めて考えてみるとこの世界に存在している亨夜達の世界のモノは、龍牙に巻き込まれたワーム達だけではなくスサノオが持っていた紅いガタックゼクターにカブトと戦ったケタロス。

 

この世界…ネノクニが亨夜達の世界(アシハラノクニ)で死んだ者が向かう場所だとすれば、紅いガタックゼクターもケタロスも亨夜達の世界ではまだ誕生していないはずの亡霊だ。

 

そして、所持者がこの世界のモノのブラッドガタックゼクターは兎も角、ケタロスは明確にカブトに対して敵意を持って襲い掛かってきた。龍牙はケタロスとは出会っても居無いと言うのにだ。

 

 

「…やれやれ…。訳の分からない事だらけだな…。元の世界に戻ったら、絶対にZECTで紅いガタックゼクターの事を調べるぞ。」

 

 

そう、ケタロス以上にブラッドガタックゼクターの方が彼等にとっては訳が分からない存在だ。

 

ZECTの量産タイプの新型ゼクターの開発計画の中に存在しているケタロスは未来と言う時間軸において誕生するはずなのだろうが、ブラッドガタックゼクターは0号機として登録されているダークカブトゼクターと違いZECTで開発された記録さえ無いゼクターで有り、亡霊とさえ呼べない存在…そう評するべきだろう。

 

 

「そうしてくれ…。オレが皆既日食の世界で見た黒いカブトも一応はZECTにデータが残っていた事だしな。」

 

 

それは、玄武の城の中での亨夜達の合流後の僅かな時間での龍牙と亨夜…太陽の神(仮面ライダーカブト)と戦いの神(仮面ライダーガタック)の会話だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だか、急に出てこなくなったわね。」

 

 

「楽に進めるのは良いんだけどな。」

 

 

亨夜達が合流した後、玄武の城を進んでいく亨夜一行(パーティー)。

 

そんな中、渚が悪霊達が現われる率が低くなって来た事に対する呟きを零す。それに対して亨夜は注意を逸らす事無く彼女の言葉にそう答えた。

 

 

「なるほどな。この先に居るのは、雑兵が必要無いほどの強敵が守っているか…罠が有るか…その両方か…。そんな所だな。」

 

 

「はい、どちらにしてもあまり良い状況では有りません。」

 

 

「そうだな。」

 

 

亨夜の言葉に込められた意思を感じ取った龍牙とアマテラスの二人の言葉に亨夜が同意する。最前列を亨夜と渚の二人が勤めて、殿をアマテラスと龍牙の二人が、その中間を七海と綾香の二人が勤めているのだが、綾香の表情は暗く口数は少なくなっている。

 

 

(…余計な事を考えられる様に態々楽に進ませてくれるなんてな…ホント、効果的な事をしてくれるぜ。そう言えば…あの顔…何処かで見た気が…。)

 

 

ふと、あの男の顔に何処か見覚えを感じてしまう。綾香の関係者ならば、昔に会った可能性も有るが、それよりも後に見た記憶が有るのだ。

 

 

(…気のせい…だよな?)

 

 

思わず自分自身にそう問い掛けると、

 

 

「この感覚…またか…。」

 

 

「そうみたい、だな。」

 

 

綾香の過去の光景が現われた時の様な感覚が再び現われる。

 

 

「嫌ぁ……。」

 

 

綾香が目を深く閉じて耳を塞ぎながらそんな悲鳴を上げたのを合図とする様に、亨夜達の前に再び過去の映像(ビジョン)が現われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

映し出されたのは土砂降りの雨の中、龍牙とアマテラスを除いた全員には見覚えの有る…亨夜の自宅…塔馬家の門の前に立つ過去の綾香の姿。

 

 

『「………。」』

 

 

『何時の間にか、私は亨夜ちゃん達の家の前に立って居ました。』

 

 

(…正しくは家を空けがちな父さん達によく爺ちゃんの所に預けられてたんだけどな…。)

 

 

『今も対して変わらないか』と最後に付け加えながら、独白の様に響く声に思わずそんな事を心の中で返す。

 

 

『夕立が酷くて……。肩までぐっしょりと浸す滝の様な雨の下、私はただ立ち尽くしていました……。』

 

 

「…あの日の…記憶…なのか…?」

 

 

思い出しそうだった、あの日の記憶を連想させる映像に思わず亨夜は誰にも届かないほどの…本人さえも気付かないほどの小さな声で呟く。

 

 

そして、過去の綾香の姿を見て思わず息を呑む。

 

 

『私の手には……雨で洗い流されてなお血で赤く染まっている果物ナイフ。』

 

 

それはドラマの中のワンシーンの様な光景だった。だが、それを演じているのは、目の前に有るのは自分達が知っている人物の過去の姿…その姿と彼女の表情は決して演技などでは無い…それが嫌でも現実の光景として実感させられてしまう。

 

 

『どうしよう……私、どうしたらいいんだろう……?』

 

 

そして、それを見ている者達の意志とは関係なく響く。過去の綾香の心情の独白と言う名のモノローグ。

 

 

『家には帰れない……。帰れるわけが無い……。だけど、他に行く所は何処にも無い……。』

 

 

その姿と語られる独白だけで彼女の過去に何が有ったのか、亨夜達は…特に仮面ライダーとしての役割上、人の死に近い所に立つ亨夜と龍牙の二人は直に理解してしまった。

 

 

『亨夜ちゃん達の家は……。ダメ。亨夜ちゃんには会えない……。』

 

 

(…いや、それ以前にオレの父さんって警察関係者だから、特にダメじゃ…。)

 

 

思わず過去のモノローグにそんなツッコミを入れてしまうのは、日々ツッコミ役としての役割を担っているが故の彼のサガなのだろうか? 一応、表向きは警察の幹部となっている(息子も知らない)ZECTのトップで有る亨夜の父親の事は置いておいて…直も過去の独白は続いていく。

 

 

『血に汚れた私を……亨夜ちゃんに見せる事なんて……。あんな、汚れを知らない少年に……私の大事な亨夜ちゃんにこんな私を見せるなんて……出来ない。』

 

 

(…やれやれ…人のプライベートを覗き見するとは…随分と趣味の悪い相手だな…。)

 

 

悪霊となった関係者と言うよりも明らかに目の前のそれは綾香本人の過去の記憶なのだろう。綾香との関係の薄い龍牙はそんな事を思いながら、この光景を見せている敵の所在を探す為に周囲に注意を向ける。

 

 

だが、術者の姿だけでなく、気配さえも探る事は出来なかった。

 

 

龍牙がその事に思わず舌打ちする中、静止画の様な映像を流れる雨とそれによって流れるナイフを汚していた血が動いている映像である事を伝えている過去の光景を背景として独白が流れていく。

 

 

『何処にも居場所が無い……。私は立ち尽くしていました。ざあざあと雨が激しくアスファルトを叩く音が、まるでオーケストラの様にあたり一面に反響して……。私は無限に広い空間に、たった一人で置いてけぼりにされた様な気分になりました……。』

 

 

その独白は綾香を除いた全員が頷きたくなる。目の前の光景は彼女自身がその時に見ていた風景…彼女自身の心情を映し出した物なのだろう、映像としての光景だが…本当に彼女以外に誰も居ない…そんな空間と感じさせられた。

 

 

『「……ん?」』

 

 

『その時、声がしました。』

 

 

そんな中、彼女の独白と共に初めてその光景に新たな登場人物の気配が…他の人間の存在が感じさせられた。

 

 

「…誰だ…?」

 

 

「爺ちゃん…。」

 

 

塔馬家の門を開いて現われた老人…新たな登場人物である六介の姿を見て龍牙と亨夜の二人がそんな声を零す。亨夜の言葉に面識の無い龍牙は目の前の人物が亨夜の祖父なのだと理解する。

 

 

『「……綾香ちゃん……? 綾香ちゃんじゃないか!?」』

 

 

『「おじいさま……六介おじいさま……。」』

 

 

『「何が有った!? どうしたんじゃ!?」』

 

 

驚きを露に映像の中の六介は過去の綾香に問う。

 

 

『「………。」』

 

 

過去の綾香はそれに無言で答えていた。

 

 

『ふっっ…と、意識が遠くなりました。』

 

 

『「その手に握っておるのは一体……。」』

 

 

『「………。」』

 

 

『視界が白く霞んで……。』

 

 

彼女の手の中に果物ナイフに気が付いた六介の問いかけに答える事無く、彼女の独白通りに映像は白く染まっていく。

 

 

『全てがザアザアと言う雨の向こうへ消えて行く様で……。』

 

 

目の前の映像が彼女の中の過去の記憶を元として作られたものだとするのなら、この瞬間、意識を失ったのだろう。恐らくは…精神が自己防衛の為に…気絶を促したのだろう。

 

 

『「……! 綾香ちゃん! 綾香ちゃん、しっかりしろ!」』

 

 

『抱きとめられた感覚ももう殆ど無くて……。』

 

 

白く染まった映像の中で綾香の独白と、六介の声だけが響き、映像は完全に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あれは…。」

 

 

「嫌っ……なんなの!? こんなの、みんなに…亨夜ちゃんに見せないでぇっ!」

 

 

亨夜がそう呟いた時、綾香か耳を塞ぎ、目を閉じながら悲鳴を上げる。

 

 

どう言う原理かは知らないが、目を閉じても、耳を塞いでも、その声は聞こえ、映像は見えてしまったのだろう。

 

 

「うわっ!?」

 

 

綾香は突然前に居た亨夜を押し飛ばし、何処かへと駆け出していった。

 

 

「ちょっと、綾香さん!?」

 

 

亨夜は慌てて彼女を追いかける。

 

 

「………! ダメです、みんな一緒にいないと…。」

 

 

「まっ、待ってください!」

 

 

「亨夜! 先生!」

 

 

「亨夜! っ!? 待て!」

 

 

アマテラス、七海、渚の順に綾香と亨夜に向かってそう叫びながら後を追って走り出そうとした時、龍牙が慌てて三人を止める。

 

 

「龍牙さん、早く亨夜さん達を追いかけないと…っ!? これは…。」

 

 

「そう言う事だ…オレ達にお客さんって所だろうな…。」

 

 

足止めする様に現われる悪霊達。しかも、現われたのはそれだけではない。

 

 

「っ!? あれって…。」

 

 

「何よ…あの気持ち悪い化け物達!?」

 

 

指揮官の様に現われた一匹の白い怪物と二匹の同じ姿の緑色の怪物に対して嫌悪感を露に武器を構えながら、そんな声を上げる七海と渚の二人。

 

 

「あれは……色は違いますが、以前村に現われた緑の化け物と同じ姿です!? 後にいるのは…緑の化け物達です!!!」

 

 

その正体を教える様にアマテラスが叫び声を上げる。

 

 

「…白いサナギ態のワーム…か。」

 

 

目の前に現われたのは時折現われる通常のワームとは違う変わった行動をする固体の白いサナギ態のワームだった。

 

 

「やはり、悪霊達の仲間でしたか?」

 

 

「もしくは…悪霊達の軍門に下ったって所なんだろうな。」

 

 

アマテラスの言葉に補足するように呟きながら、思わず頭を抱えながら目の前に現われた白いサナギ態のワームを一瞥しながら呟く。

 

 

緑色のサナギワームは別に居る事は不思議ではない。龍牙が此方に来る時に巻き込まれてしまった固体なのだろから。

 

 

だが、その中に白い固体が存在するはずは無かったと言う事だけは確信できる。

 

 

「考えるのは後か…変身!」

 

 

《HENN-SHINN》

 

 

何故白い固体まで存在しているのかと言う事を考えるのは目の前の固体を倒してからと考えながら、カブトゼクターをベルトへと装着させ、電子音と共に龍牙は仮面ライダーカブト・マスクドフォームに変身し、アックスモードのクナイガンを抜く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「綾香さん!」

 

 

綾香を追いかけてかなりの距離を走った気がする中、亨夜は後を振り返って他の四人が居ない事を改めて確認する。

 

 

「……七海ちゃん! 渚! アマテラス! …序に龍牙。」

 

 

名前を呼んでも返事は返ってこない。綾香を追いかけた結果、仲間達と逸れてしまい、完全に闇の中に一人きりになってしまった訳だ。

 

 

「…はぁ…お前がいるから、完全に一人きりじゃないか…。」

 

 

そんな事を呟いて目の前を飛んでいるガダックゼクターへと視線を向ける。

 

 

「はぁ…だけど、困ったな…。」

 

 

思わず頭を抱えてしまう。アマテラスや龍牙と一緒であろう七海と渚の二人は悪霊が出ようが、ワームが出ようが、少なくても安全と言えるだろう。

 

アマテラスは悪霊の、龍牙はワームの専門家と言えるのだから。

 

 

寧ろ、逸れてしまっている亨夜と綾香の方が危険だ。

 

 

亨夜がどうするべきかと思いながら頭を抱えていると突然、

 

 

「嫌ぁ……ダメ……見ないでっ、見ないで亨夜ちゃんっ……!!!」

 

 

綾香の悲鳴と共に亨夜の前に…綾香の過去の出来事…それを理解する上で決定的と言える映像(ビジョン)が現われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は何処かのアパートの一室…オレンジ色の夕日が部屋を染め上げる黄昏時…。

 

 

『……蒸し暑い真夏の黄昏時……。』

 

 

そのアパートの窓際に座り込んでいるのは、過去の綾香の姿…。

 

 

『「……綾香……。」』

 

 

『「お義父さん…またなの?」』

 

 

今までのビジョンの中で一番現実感を漂わせているのは、アパートの一室を完全に再現しているだけでなく、亨夜が見ている光景の中に居るからなのだろう。

 

 

そこに居る過去の綾香や彼女の義父に触れようとしても触れられないのは、それが現実ではなく、見せられているだけの過去なのだからなのだろう。

 

 

だが、それでも、近づいて注視する事はできる。

 

 

(…やっぱり…この男、つい最近…何処かで見た記憶がある…。っ!? そうか!?)

 

 

近づいて注視した事で初めて気が付いたのは、それが綾香の義父で有る事を忘れていたからだけではないだろう。それは亨夜にとって、数多く有る上の一つだから…。

 

 

思い出した記憶に満足する中、映像の中の義父は過去の綾香に対して何時も投げかけているであろう言葉…それを見ている亨夜に対して全てを理解するのに十分であろう言葉を投げかける…。

 

 

『「……綾香、文句を言うな……お前は、私のモノなんだ……。」』

 

 

『「………。」』

 

 

「…っ!? …これが…綾香さんを苦しめていた過去の…根源か…?」

 

 

 

つづく…




久しぶりの蒼き戦士の戦記の第四楽章『追いかけてくる過去』の五話目でした。



翔「本当に久しぶりだな…。」



…次の話に出すワームが中々決まらなくて…。前回は蜂でしたから、今回は蜻蛉の予定なんですけどね。



翔「カブト系ライダーのモチーフと同じワームと言った所か。」



原典のカブトに出てこなかったワームとしては最適ですからね…スコルピオワームを除いて…。



翔「確かにな…。」



それでは、そろそろ第四楽章もラストです。それでは。



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