IZUMO ~蒼き戦士の戦記~ ~赤の英雄、蒼の復讐者~外伝 作:龍牙
「変身!」
《HEN-SHIN》
《CHAST OFF》《Change StagBeetle》
ガタックゼクターをベルトに装着し、ライダーフォームのガタックへと変身すると、サトリの存在を奪ったワーム…ドラゴンフライワームの背後に二体の緑色のサナギワームが現われる。
「ちょっと、さっきの白い奴が別の化け物に変わったけど、どうなってるのよ!?」
「脱皮した…んだろうな。」
「厄介な話だな。」
白いサナギワームが分断された時に彼女達の戦っていた白いサナギワームだと言う事は困惑の混ざった渚の言葉から理解できる。
戦闘力は低いとは言え硬い外皮に守られたサナギのワームが二体とクロックアップが出来ないとは言え成体のワームが一体、青龍の時よりも状況は悪いだろう。
まあ、カブトとガタックと言うカブト系ライダーの最強クラスが揃っているのだから戦力としては十分だろう。だが、それも余計な相手が現われなければの話だ。
『気を付けて下さい、亨夜さん。相手はこの世界のモノではない亨夜さん達の世界の怪物が悪霊の力を持ったと言う事になります。』
ふと、桃花の声が亨夜の耳に聞こえてくる。当然のことだが、精霊である彼女にとっても未知の相手。
ワームの持つクロックアップとは別の擬態能力…今まで前例こそ無かったが、超能力者等特別な能力を持った人間に擬態したらどうなるのかと言う疑問…。いや、そもそも…悪霊と言う敵に擬態したのだから当てはまらないのかもしれないが、
(…最悪の場合、相手は悪霊の力を持ったワームになったって事か。)
今までの前例を考えれば悪霊達は直接的な戦闘力を持った個体が多かった。寧ろ、だからこそ直接的な戦闘力が高いスサノオの様なタイプは厄介と言える。
逆にサトリは策を使うタイプ…今までの事を考えると間違いなく何らかの特殊な能力を持っていると言う事になるだろう。ワームの戦闘力に悪霊の持っている特殊な能力を持ったと言う事はそれだけで脅威だ。加えて、弱い固体とは言えワームが二体も居る。
「それで…作戦は無策で飛び込むわけじゃないんだろう? かなり厄介な状況だとは思うが…。」
心の中でそんな事を呟くと、カブトの声が響く。
「亨夜さま達は随分あの緑の怪物に詳しいようですが…?」
「あー…えーと…。」
「…オレ達の世界の『外側』からの招かれざる団体客って所だな。」
アマテラスの言葉にどう答えるべきか迷うガタック(亨夜)に対して、カブト(龍牙)は簡潔に答える。先ほどの会話から推測して渚とアマテラスの二人にはワームの事を話していない様子だった為にはっきりとワームの事は言ってないが。
そもそも、龍牙と亨夜の関係は友達ではない。寧ろ、最初は互いの立場の違いから完全に敵対して、今も所詮は敵の敵は味方と言う関係だ。協力するだけで仲間では無いと割り切っている。だからこそ、龍牙は亨夜の関係者に対しては余計な事は教えないのだ。それは良くも悪くも亨夜の役割だ。
「ちょっと、それってどう言う意味よ!?」
「言ってる場合じゃない…来るぞ!」
渚がカブトの言葉に疑問の声を上げた瞬間、ドラゴンフライワームが片腕を振り上げ従えているサナギワーム達が動き出す。
「このぉ!」
「はぁ!」
向かってきたサナギワームにレイピアと槍で渚とアマテラスが切りかかるがサナギワーム達の外皮の前に、サナギワーム達は『そんな物か?』と言う様な仕草で自分達が無傷で有る事をアピールする。
「嘘!?」
「やはり、私達の武器では太刀打ちできませんか?」
「たぁー!!!」
襲い掛かろうとするサナギワーム達に七海が放った矢が弾かれる。それでも、足止めにはなった様子であり、その一瞬を逃さず二人のライダー…ガタックとカブトがサナギワーム達の懐に飛び込む。
「ふっ!」
「はぁ!」
カブトがゼクトクナイガンを、ガタックがガタックダブルカリバーを振るい切り付けようとした瞬間、ドラゴンフライワームが二人のライダーへと腕と一体化した銃を向け、
「ぐっ!」
「くっ!」
銃を放つ事で攻撃を妨害し、二体のワームが追撃を開始する。
「クックックッ…この程度か?」
腕の銃を向けながらドラゴンフライワームはサトリの声でガタック達へとそう告げる。
「青龍の洞窟ではあの小娘を呼び出しただけだが、今回は違う。確実に始末してやろう。」
「あ、貴方が千夏ちゃんを!?」
「くくく…。そうだ、あの小娘は貴様等の茶番で消えそうになったので、始末させたがな…。」
ドラゴンフライワームの声に真っ先に反応したのは…他でも無い、七海だった。七海は憎々しげな表情でドラゴンフライワームを睨みつける。
「この!」
サナギワームの体に蹴りを打ち込み距離を取ると、ガタックは七海へと声を掛ける。
「七海ちゃん、落ち着いて! 千夏ちゃんの時の事は…こいつじゃなくて、こいつが殺した悪霊の仕業だから…。」
「分かってます。でも!!!」
「ですが、私達の武器はあの緑の怪物には効きませんし。」
「亨夜達はあいつに邪魔されるし…どうするのよ?」
(切り札を切れば何とかなるが…どうする? ………いや、あれは今使うべきじゃないだろうな。)
今すぐ飛び込んでいきそうな七海を抑えながらガタックが説得するが、七海は直もドラゴンフライワームを睨み付けながら弓を握っている。
アマテラスと渚の武器は残念ながらサナギワームの表皮には効果が薄い。成体のような特殊な戦闘能力こそ無いが、サナギワームの表皮の強度はガタックとカブトの武器以外では効果が無い。
そして、カブトは自分の手元に有る切り札を切るべきかと悩むが、それを今使う事は気が引ける。
「…そう言えば、前に村に現れたって言ってたけど、その時はどうしたんだ?」
「はい、村に現われた時も我々の武器は効かなかったので、その時は勾玉を使ったんですが、それでも…。」
「そうか!? それなら…アマテラス、渚、七海ちゃん、綾香さん、攻撃用の勾玉をあいつらに…。」
「その間にオレ達で一気に倒す…か? 必殺技で決めるか?」
「今はそれしか方法も無さそうですし、お願いします、亨夜さま。」
「分かりました。」
「絶対に決めなさいよ、亨夜!」
「オッケー。」
それぞれの返事を聞いてカブトとガタックはそれぞれの武器を構え、七海と渚の二人にもアマテラスと綾香の持っていた勾玉を分ける。だが、ドラゴンフライワームの前に立つサナギワームの一体がその姿を変える。
「綾香ぁ…助けてくれ…またオレを殺すのか?」
「っ!?」
その姿を見た綾香が思わず息を呑む。サナギワームの姿を変えた姿は綾香の義父親の姿、目の前で擬態した姿を見せたとは言え、その姿には同様を隠す事は出来ない。
「あ、あの。あれって、もしかして……?」
七海がサナギワームの擬態した男を震える指で指差しながら問い掛ける。
「ええ。私の………お義父さんよ。」
綾香の告白に七海と渚の二人が固まってしまう。…ワームが擬態した偽者とは言え、目の前に居るのは綾香の義父の記憶を完全に持っている…言ってみれば本物では無いと言う一点を除けば99%は綾香の義父なのだ。
「…綾香さん…ごめん。あいつは…。」
「…亨夜ちゃん…お願い…お義父さんを…これ以上…あんな奴に利用させないで。」
「分かった。」
震える声で綾香がそう告げる。それに答え、ガタックダブルカリバーを構えながらガタックは綾香の義父に擬態したワームを殺す事を引き受ける。
「で、でも、あれって…綾香さんのお父さんなんでしょう…。」
「いいの…これ以上お義父さんをあんな風に利用されるのは耐えられない。」
綾香は震える声で渚の言葉にそう答える。
「行きます!」
「先輩、今です!」
綾香の言葉を合図に七海とアマテラスが綾香の義父に擬態したワームを含むドラゴンフライワーム達に向かって手持ちの勾玉を投げつける。
炎が、氷が、疾風が、雷、岩が一斉にドラゴンフライワーム達を飲み込んでいく。
「グッ、そんな物で!!!」
ドラゴンフライワームが腕と一体化した銃を乱射し勾玉を打ち落としていくが、それでも、投げつけられる勾玉の数の方が遥かに多い為に迎撃は間に合わない。
《ONE》《TWO》《THREE》
《Rider Kick》
重なって響く二つの同じ電子音、ワーム達の姿を隠していた爆煙を切り裂きながら近づいたカブトが擬態していないサナギワームの前に、擬態したワームの前にはガタックが、
「ライダー…。」
「…キック!」
二人のライダーの必殺の廻し蹴りが二体のワームを蹴り飛ばし、ガブトが蹴ったワームは爆散するが、
「あ、綾香…助け……。」
「逞しくて、私の好きだったお父さんが……私の大好きだった家族が、本当は嘘で固められた物だったなんて、思いたくなかった。」
助けを求める義父の姿のワームへと告げられる綾香の言葉…
「………。」
「でもね、あれは嘘じゃないって思える様になったの。高校生の頃の私はお父さんを恨む事しか出来なかった。」
擬態したワームを通じて…ワームの中にある義父の記憶を通じて綾香は義父へと言葉を続ける。
「でも今は…自分で働くようになって、辛い事や悲しい事…少しは味わう様になったから、あの時のお父さんの苦しみも、少しだけ分かるようになったの。」
その言葉が本当の義父へと伝わるかは誰にもわからない。だが…
「人間だから…辛い事があった時、優しく在れる人ばかりじゃない。時には人を傷付ける事もある。だけど、それは……それはその人の全てを否定するばかりじゃないのよね?」
最後に告げられる言葉は…何年もの間…伝えたかった問い。
「お父さん。私に十年以上かけてくれた愛情は…嘘じゃ、ない、よね?」
綾香の義父がワームに擬態されたと分かった時、調査をした時、綾香の義父の死の直前の暮らしも解った。
「あ……や……か。」
そして、ガタックのライダーキックを受けた事による限界が来たワームは…先ほどまでの悪霊に呼び出された時のままの表情とは違う表情を浮かべながら。
「あ……り……が……と……う。」
様々な意志が込められた言葉を告げる。
-もしかしたら、本来はワームとは…-
「さ……よ……う……な……ら。」
その言葉を残して爆散した。
-死者の記憶と意思を預かり、残された者へと伝える為に擬態能力を持ったのかもしれない。-
その姿を綾香は死者を見取るに相応しい表情で見送った。
「バカな…何がありがとうだ!? さようならだ!? こんな茶番を…。」
「「黙れ!」」
「ひっ!?」
目の前の光景に錯乱した様子で叫ぶドラゴンフライワームに対して、重なって響くガタックとカブトの怒りを込められた言葉、
「兄さんが…いや…貴様のような奴にはこの言葉を聞く価値も無い!!!」
カブトの手の中に握られる銀色のゼクター『ハイパーゼクター』。それをベルトの腰の部分へと装着すると、
「お前の様な外道…一分…一秒も永らえさせる気は無い!!! 感謝しろ…楽に死ねる事を!!! ハイパー…キャスト・オフ!」
《Hyper Cast Off》
《Change Hyper-Beetle》
その姿を新たなものに変える。
光を支配せし太陽の神の全てを超越した最強の姿…
『仮面ライダーカブト・ハイパーフォーム』
「そうだな…お前も…奴への怒りを込めて…倒す!!! 最後の慈悲だ…一撃で叩き潰してやる!!!」
《Change StagBeetle》
《FORM POISON》
ガタックが姿を変えるのはこの世界で手に入れた新たな力エレメントフォーム・ポイズン。
「く、来るな!!!」
ハイパーカブトとガタックPに対して恐怖を感じたのか、後ずさりながら銃を向けるドラゴンフライワームだが、
「貴方だけは…!」
「絶対に許さない!」
「ギャ!」
七海の放った矢が腕に、綾香の投げた勾玉が顔に当たり顔を炎に包む。
「はあー!!!」
「たあ!!!」
続いてアマテラスの槍が、渚のレイピアがドラゴンフライワームの体に突き刺さる。
そして、二人が離れたところで響くのは…最後を告げる電子音。
《MAXIMAM RIDERPOWER》
《MAXIMAM POISON ELEMENTPOWER》
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」」
全身の装甲が展開され背中から光の翼の如くエネルギーを噴出しながら飛び蹴りの体勢で向かってくるハイパーカブトと、楓の呪法・アシッドガスの力をタランチュラアンカーに集め向かってくるガタックP。
「ハイパーキック!!!」
「『アシッド・デス・ブレイク!!!』」
「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
二人の仮面ライダーの必殺技を受ける光景…それがドラゴンフライワーム…サトリと言う悪霊を奪ったワームの最後に見た光景だった。
カブト・ハイパーフォームの登場した蒼き戦士の戦記の第四楽章『追いかけてくる過去』の七話目でした。
翔「…随分と派手だったな…龍牙(カブト)が。」
…まあ、ガタックの方の新フォームは他の所に廻そうと思ったので。…流石に活躍が一度だけって言うのも面白くないと思ったというのも有りますね。では、次回もお楽しみに。