IZUMO ~蒼き戦士の戦記~ ~赤の英雄、蒼の復讐者~外伝   作:龍牙

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第五楽章 -6-

光の差さない闇の中で、ぶつかり合うは蒼いクワガタと銀のカブト。ガタックの振るうガタックダブルカリバーをヘラクスが避け、ヘラクスの拳をガタックがダブルカリバーで受け止める。

 

 

「こいつ!」

 

 

「オォォォ!!!」

 

 

同時に放ったガタックとヘラクスの回し蹴りが二人のライダーの中央でぶつかり合い、弾きあう。

 

 

「…『オレ』は『お前』を憎んでいるが、恨んじゃいないそうだぜ」

 

 

「っ!? どう言う意味だ?」

 

 

「『お前』がそんな風に変わる原因になったのは、『NEO ZECT』に有った。それだけの理由だ」

 

 

だからこそ、仲間を殺された憎しみはあるが、その原因となった事が自分達に有るからこそ、『亨夜』を恨んではいないと言う事だろう。

 

 

(…何が有った…? こいつの知っている『オレ』に)

 

 

ヘラクスの言葉を聞く度にそう思わずには居られない。もし、妹を殺したのがワームでは無く人なら、

 

 

(こいつの知っている『オレ』とオレは同じだ。間違いなく、“オレ”だ)

 

 

七海達や認めたくは無いが龍牙達と言った人達の影響か少しは変わって来たと思ってはいるが、ヘラクスの言葉の中の『亨夜』と根本で自分と近い部分を感じ取る事ができる。だからこそ、亨夜にはヘラクスの言う言葉が真実だと考える事ができる。

 

 

「だけどな、『お前』の仲間を殺したのが『オレ』だったとしても…お前に殺されてやる理由は無い!!!」

 

 

そう、亨夜(ガタック)には二重の意味でヘラクスに討たれてやる理由は無い。

 

 

亨夜はヘラクスの語る『亨夜』ではないし、所詮ワームである限り、それは借り物の恨みだ。自分とは言え他人への借り物の恨み。そんな恨みを晴らさせてやる義理など、亨夜には無い。

 

 

「ああ、そうだよな!!!」

 

 

「っ!?」

 

 

ガタックの言葉に同意の意思を示しながらヘラクスの攻撃は激しさを増す。今までは素手での格闘だけだったが、アックスモードのゼクトクナイガンを取り出して振り下ろす。

 

 

「くっ!?」

 

 

直感的に受け止めるのは危険と判断し、ガタックはヘラクスの振り下ろしたアックスモードのゼクトクナイガンを避ける。

 

カブトの場合、アックスモードはパワーに特化したマスクドフォームで使用し、ライダーフォームではクナイモードで使用している。その事から考えると、少なくとも、ヘラクスはパワーに特化したライダーシステム。正面からの殴り合いでは不利だろう。

 

ガタックの中の冷静な部分はそう判断した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『「どうしてこんな簡単な問題が出来ないの!?」』

 

 

 

-お母さんが、触ったら弾けそうなほどにピリピリとした表情であたしに小言を言う。算数のテストで0点を取ったので、こんなに不機嫌なのだ―

 

―………最近どうもお仕事が上手く行っていないらしいけど、それは多分関係ない-

 

 

 

『「ほら、掛け算は足し算より先なの! どうして分からないの!」』

 

 

『「うう……だって……」』

 

 

『「あなた、やる気あるの?」』

 

 

『「あ、あるよ。いっしょうけんめいだよっ!」』

 

 

『「やる気があったら、これくらい出来るはずよ!」』

 

 

『「でも、わかんないんだもんっ……」』

 

 

『「あなた、倉島家の娘として恥ずかしくないの? まったく、どいつもこいつも口先だけ、言う事を聞かないったら……」』

 

 

 

-あたしはお母さんの言うとおりにしてるのに、なんでこんなに起こられなくちゃいけないんだろう……―

 

―多分、表情に出たんだと思う。お母さんはそれを見咎め、言った-

 

 

 

『「何、その反抗的な目は!」』

 

 

『「ご、ごめんなさい!」』

 

 

『「倉島家の跡取り娘として、これくらいは出来て貰わないと困るのよ!」』

 

 

『「ごめんなさいっ……お母さんごめんっ……」』

 

 

 

-今にも叩かれそうな勢いだったので、慌てて謝る私―

 

―最近のお母さんは、ことあるごとにあたしを叩く-

 

 

 

『「……秋也だったら、このくらいの問題は三才の頃から解いてたわ」』

 

 

 

―お母さんが、よく分からない事を言った―

 

 

 

『「…あきや?」』

 

 

 

―聞き返す―

 

 

 

『「……な、何でもないのっ、それより、早くやりなさい! 終わるまでおやつは無しですよ」』

 

 

『「うう、だったわかんないんだもんっ」』

 

 

『「我が儘言うんじゃ有りません! ほんと、言う事を聞かない子……」』

 

 

 

―……。あたしは…。両親に愛されて育った。両親にちゃんと愛されて育ったと信じていた―

 

―でも……、本当にそう? そう思い込んでいただけなんじゃないの? 私は…。本当は愛されてなんかいなかったんじゃないの?―

 

 

 

『「亨夜ちゃんだって0点だったもん、あたしだけじゃないもん!」』

 

 

 

「…そうだ、亨夜と知り合ったのも、この頃だっけ。……あたし、なんで亨夜と仲良くなったんだっけ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐはっ!」

 

 

ヘラクスのキックがガタックの体を捉える。それによって後方に吹き飛ばされるガタックは何とか持ちこたえながら呼吸を整える。

 

 

「どうした、この程度か?」

 

 

「まだっ、まだ…」

 

 

ガタックとヘラクスの間にはライダーシステムのスペック以前に装着者の経験が圧倒的に相手に部がある。カブトと戦ったケタロスもそうだったが、何故ガタックよりも後に作られた代物であるカブティックゼクターの装着者に経験で負けているのかが気になる所だが…

 

 

『亨夜様、大丈夫ですか?』

 

 

ふと、桃花の声がガタックの…亨夜の耳に届く。

 

 

(桃花さん? 一応、危なそうなのは必死に避けてたけど…それでも、結構拙い…)

 

 

『私の術で回復出来れば良いのですが、残念ながら…』

 

 

桃花に言われるまでもない。残念ながら、ヘラクスはガタックに回復の隙など与えてはくれないだろう。

 

楓の術で牽制した上でなら好機(チャンス)も有るだろうが、流石に大きな術をそう簡単に二回も連発できない。

 

 

(…少しだけ無茶するけど、回復は頼んでも…)

 

 

『はい、お任せください』

 

 

 

 

《Raider Beat》

 

《Raider Cutting》

 

 

 

 

同時に流れる電子音。アックスモードのゼクトクナイガンを持った腕へとエネルギーが流れるヘラクスと、鋏上にガタックダブルカリバーを連結させるガタック。同時に足場を蹴ってガタックとヘラクスの武器が互いの中央でぶつかり合う。

 

 

「残念ながら、オレの方が有利みたいだな?」

 

 

「流石に、斧と鋏のジャンケンなんて、勝てると思っちゃ居ないぜ」

 

 

ヘラクスの言葉に軽口で返しながらガタックはガタックダブルカリバーを躊躇無く手放し、素早く地面を蹴って後ろに下がる。

 

 

「なんだと!?」

 

 

 

《1》《2》《3》

 

 

 

当然ながら、ガタックの手放したガタックダブルカリバーを弾きながら、ヘラクスのアックスモードのゼクトクナイガンは地面を叩き、そのまま深々と突き刺さる。それと同時に後方に跳びながらゼクターのスイッチを叩くガタック。

 

 

そして、武器を地面に突き刺したヘラクスに向かって足場を蹴る。それと同時にゼクターホーンを動かし、

 

 

「ライダー…キック!」

 

 

 

《Raider Kick》

 

 

 

動きを止めたヘラクスへと向かってガタックは飛び込みながらの上段廻し蹴りを放つ。だが、

 

 

 

《Raider Kick》

 

 

 

響き渡る聞きなれた電子音。ヘラクスもガタックの行動を読んでいたのだろう。ヘラクスもまたガタックに遅れながらも踵落しの体制でライダーキックを放つ。ヘラクスのライダーキックが上段廻し蹴りの体制で放たれたガタックのライダーキックとぶつかり合う。

 

 

「がっ!」

 

 

「うわぁっ!!!」

 

 

以前にもカブトとライダーキック同士の打ち合いの経験は有るが、今度は互いに必殺の意思を込めてはなった物。ぶつかった瞬間に発生した衝撃はその時の比ではない。

 

 

その衝撃に弾かれる様に、ガタックとヘラクスは必殺技の激突によって発生したダメージによって、変身を強制的に解除させられながら弾かれていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

亨夜がヘラクスと戦っている頃、秋也に案内されて七海、綾香、アマテラスの三人が着いた部屋は一切の光の無い漆黒の間…。

 

 

その部屋の中央に、まるで胎児の様に蹲って宙に浮いているのは…

 

 

「渚先輩!?」

 

「渚ちゃん!?」

 

 

意識を失って宙を漂っている渚だった。そんな彼女に慌てて駆け寄ろうとする七海と綾香だが、

 

 

「あ、危ないっ!」

 

 

「きゃあ!」

 

 

「ひゃん!」

 

 

渚に触れようとした瞬間、彼女達の手に鋭い痛みが走る。ちょうど、その瞬間、変身を解除させられた亨夜が何処からか吹き飛ばされてくる。

 

 

「くっ」

 

 

「亨夜先輩!?」

 

「亨夜さん!?」

 

「亨夜ちゃん!?」

 

 

ヘラクスとの戦いのダメージを受けた体を無理矢理立ち上がらせ、ヘラクスからの追撃に対応する為にガタックゼクターを手に取った亨夜に七海達三人が声をかける。

 

 

「亨夜ちゃん、大丈夫なの?」

 

 

「せ、先輩、酷い怪我です、直ぐに手当てしないと!」

 

 

「あの者はそれほどの強敵だったのですか…」

 

 

「七海ちゃん、綾香さん、アマテラス、無事だったのか? オレの事より、渚は…?」

 

 

ヘラクスの意思なのか、それとも単なる偶然なのかは分からないが、結果的に分断させられた七海達に合流させて貰った。傷ついた亨夜を心配して駆け寄る彼女達にそう答える。同時に彼女達との合流は、

 

 

「渚!?」

 

 

渚が居る場所に彼女達が居る可能性が高く、その考えは当たっていた。

 

 

「待って下さい! 結界が張られています………! 渚さんの魂を閉じ込めて、無へと返そうとしている……」

 

 

「なん、だと? それじゃあ、どうやったら助けられる!?」

 

 

アマテラスの言葉に渚に近づこうとした亨夜は足を止める。はっきり言って科学的な物から離れた分野は亨夜にとって完全に専門範囲外だ。もっとも、科学的な分野も亨夜はそれほど知識があるわけではないが。だからこそ、其方の方面で一番詳しいであろうアマテラスに渚を助ける手段を尋ねるが、

 

 

「……私達には何も出来ない……。敵は結界の中……言うならば渚さんの心の中、異世界に居るのです」

 

 

彼女から帰ってきたのは否定的な答えだった。

 

 

「…最悪だな…」

 

 

アマテラスの言葉に思わずそう呟いてしまう。『心の中』…其処で一番強いのは、他でもない、その異世界の支配者でもあり、神でもある本人自身だ。アマテラスの言葉の先は言われなくても想像出来る。

 

 

「だから、渚さんが自らの精神力でこの結界を打ち破る以外には、手が無いんです!」

 

 

(綾香さんの時と一緒か…? 下手したら、もっと性質が悪いかもな…)

 

 

アマテラスの言葉に亨夜は綾香との一件の事を思い出すが、あの時は綾香に直接呼びかける事ができた。だが、今回は渚に声が届くかさえも分からない。綾香の時と同じだったとしても、声が届かない分、あの時よりも敵の行動の性質は悪い。

 

 

「アマテラス、外から無理矢理助け出す方法は…無いのか?」

 

 

外部から何とかする方法が無いのか、結界のシステムに外部から干渉して解く事は出来ないかと聞いてみるが、

 

 

「ダメです! そんな事したら、渚さんの心は二度と戻らないくらい滅茶苦茶に壊れてしまう!」

 

 

「くっ! それじゃあ……」

 

 

アマテラスの言葉に悔しげに宙に浮く渚を見る。アマテラスの言葉を信じれば…今の亨夜達に出来るのは、

 

 

「今は、ここで見守るしかありません…。…渚さんの、心の中での戦いを…」

 

 

ただ見守る事だけ。

 

 

「くっ」

 

 

アマテラスの言葉に当たって欲しくなかった考えを肯定されてしまう。見守る事、何も出来ない自分の無力さに対して悔しげな表情を浮かべながら、亨夜は、

 

 

「……渚。渚、負けるな! 敵がどんな奴かは知らないけどな、お前の心はそんな奴に簡単に負けるほど、弱くないはずだ!」

 

 

唯一出来る事。そんな風に渚に対して、届いているのかどうか分からない声で励ます事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―もうその時から、あたしは今のあたしだった―

 

 

 

心の中で渚はそれを思い出す。

 

 

 

―誇り高き倉島家の家柄に相応しいあたしである為に、日夜努力を怠らなかった―

 

―………まあ、ちょっと成績は悪かったけれど、それは頭の良し悪しだからしょうがない―

 

 

 

それは、出会った頃の事、

 

 

 

―クラス委員長を勤め、生徒会長を勤め、卒業式では卒業生代表も勤め、流石は倉島家のお嬢様だと、人の注目を集める事に躍起になったものだった―

 

―そんなあたしが亨夜と話す様になったのは……うーん、どうしてだっけ―

 

―あっ、そうだ―

 

 

 

それは、亨夜と渚の出会い。

 

 

 

―あいつ、最初はあたしの事いじめてたんだ―

 

―……掃除をサボる男子の事を終わりの会で注意したのがきっかけで、あたしは男子に目の敵にされていたのだ―

 

―もちろん、あたしはそんなの全然平気で、逆にぶん殴って泣かしてやったくらいのものだけど……―

 

―あいつだけは…亨夜だけは、全然へこたれる様子も無くあたしにちょっかいを出してきたのだ―

 

―『お転婆なお嬢様には手を出すな』みたいな不文律がクラスに出来上がってたのに、あいつはそんな事気にもせず、最初の目的なんかすっかり忘れて、殆ど趣味みたいに毎日あたしをからかっていた―

 

 

 

ただ、一人だけ亨夜は渚に対して変わらずに接していた。

 

 

 

 

つづく…

 





っな訳で久しぶりに更新の蒼き戦士の戦記の第五楽章の六話目です。



翔「ガタック対ヘラクス戦は引き分けか」



…まあ、ヘラクスとケタロスはそれぞれ亨夜と龍牙に決着を着けてもらう予定ですからね。序盤で終わらせても面白くないですしね。では、

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