IZUMO ~蒼き戦士の戦記~ ~赤の英雄、蒼の復讐者~外伝 作:龍牙
中庭に立つ亨夜一行の前には苦しむ様に立っている、赤い顔に高い鼻、下駄や山伏装束と昔話の中で語られている『天狗』その物の姿があった。
「あれって、天狗って言う奴なの?」
綾香の言うとおり、その姿は今までの悪霊の中で最も『妖怪』と言う呼び名が相応しい相手だ。
「…どうみても、先輩の音撃戦士の担当の敵にしか見えないよな…」
一言そう呟く亨夜(ガタック)だが、聞こえなかった所為か誰からも突っ込みは返って来なかった。………そう言う楽屋ネタは本編では避けよう、亨夜くん。
「いや、それも楽屋ネタじゃないのか?」
………。そして、ワーム以外にも悪霊を呼び出した天狗を睨みつけながら、渚は宣言する。
「行くわよ!」
渚の宣言を切欠に、天狗との決戦の火蓋が気って落とされた。
「無視かよ?」
…いや、妙なボケは置いといてtake2
「ああ、行くぞ! キャスト、オフ」
素早くガタックゼクターに手をかけてマスクドフォームの装甲を弾き飛ばし(それによって何体かのワームと悪霊に致命傷を与えている)、ライダーフォームへと変身すると、ガタックもワームと悪霊の群へと向かっていく。
「ちっ! 厄介だな」
「どうやら、悪霊は一箇所に戦力を集中させていたようですね。どうりで、社の中ではあの男以外現れなかった訳です」
ライダーフォームへとキャストオフして向かってくる白いサナギワームを蹴り飛ばしたガタックに、アマテラスは裁縫で使う型紙の様な悪霊をナギナタで切り裂きながら冷静に答える。
家の中でヘラクスの変身者以外の悪霊が出てこなかった理由は理解できたが、それでこの状況が変わる訳では無い。このままでは数の暴力で押し切られるのは亨夜達の方だ。
はっきり言って今までは何回かに分けて戦えたから敵の真っ只中で有っても五人(一度だけ+一)と言う人数で十分に戦えてこれたが、今回の敵は大量の戦力を完全に僅か一度の戦闘につぎ込んでいる。
「これじゃあ、こっちがやられちゃうわぇ」
勾玉による援護を続けている綾香の声に心の中で同意する。一応はパーティーの中の最強戦力である以上、弱気な発言で味方の士気を下げたくないのだが…
(…ダメだ…指揮官の天狗にも近づけない…)
サナギワーム達をガタックダブルカリバーで切り裂くと、思わず数の多さにそんな考えが浮かんでくる。
一度火力で圧倒できるガタックバルカンが使えるマスクドフォームにプットオンするべきかとも考えるが、下手に前衛の自分が後衛に下がるのも拙いかと思い直す。
(クロックアップが使えれば…)
クロックアップの圧倒的なスピードの前ならば数の暴力を無力化できる。だが、無い物強請りは出来ない。
他の手段として手の中の楓の勾玉へと視線を落とし、多少消耗は有るが彼女の術で一掃出来ないかと考えた時、
「……っ!? 皆さん、ちょっと時間を稼いでください!」
何かを思いついた七海がそう叫ぶ。
「分かった!」
亨夜は七海の言葉にそう答え、七海に悪霊やワームが近づかない様にガタックダブルカリバーを振るいながら切り裂いていく。
「分かったわ! トロワー!!!」
渚が横ステップを利用した突きで複数の悪霊を一気に仕留める。丁度、渚が悪霊を仕留めた時悪霊を盾にする形でサナギワームが渚へと襲い掛かろうとする。
「うそっ!?」
「…っ。はぁ!!!」
悪霊を盾にして渚に襲い掛かろうとしていたサナギワームへとガタックは孤閃を放ち、サナギワームを一刀両断に切り裂く。
弧閃は元々刀…木刀では自由に使えているが、木刀よりも短い双剣では自由に使えるか否かは兎も角、ワームを倒せるだけの確証は無かった。
だから、弧閃でダメージを耐えて怯ませた所で追撃を加えようと思っていたのだが、一撃の破壊力は亨夜の想像以上に強力になっていたようだった。
(良し、上手く行った)
「ありがとう、亨夜!」
「ああ。それより、油断するなよ」
そう言葉を交わしながら、ガタックと渚はサナギワームと悪霊達との戦闘を再開する。
「やぁー!!!」
アマテラスは槍を振り回し、『つむじ風』の如く悪霊達を切り裂いていく。残念ながら外皮が厚いサナギワームへのダメージは期待できないだろうが、それでも、切り裂く事ができる悪霊達には必殺の一撃となった様子だ。
「皆さん、一度下がってください!」
七海の声を聞いた一同は直ぐにその場から離脱、それと同時に、
「たぁー!!!」
七海の声が響くと同時に上空から無数の矢が雨の様に降り注ぐ。上空から落下する事で重力を味方につけた矢は次々と悪霊達に突き刺さり、ダメージこそ薄い物のサナギワーム達も動きを止めて防御の体制に入る。
「今だ! プット・オン」
《PUT ON》
敵の動きが止まるとガタック(亨夜)はゼクターに触れる。それと同時に電子音が響くと同時に弾き飛ばしたマスクドフォームの装甲がガタックの元へと戻っていく。
マスクドフォームの装甲がガタックの体に装着されるとガタックはライダーフォームからマスクドフォームへとフォームチェンジする。
「喰らえ!!!」
両肩のガタックバルカンを動きを止めていたサナギワーム達を向けて放つ。
ガタックの両肩に装着されたそれによる一斉射撃…否、半ばそれは“射撃”と言うよりも“砲撃”と言った方が良いだろう。それはサナギワーム達を一斉に吹き飛ばす。
「着弾確認ってな…。これでワームは一掃でき…」
「このっ、バカァー!!!」
纏めてサナギワームを一掃したガタックに向かって渚は思いっきり叫ぶ。
「な、なんだよ?」
「私の家の中庭で…なんて物使ってるのよ!!!」
サナギワーム達を吹き飛ばした破壊痕を指差しながら叫ぶ渚の迫力に、思わず圧倒されるガタック。
………まあ、それも当然の反応だろう。だって………。
「あんたはあいつ等と一緒に、私の家まで吹き飛ばすつもりなの!?」
「い、いや、ホラ、ちゃんと家には当たらない様に気を付け……」
「気を付けるくらいなら、最初から使うなー!!!」
もっともな渚からのツッコミだった。
「先輩、流石に危険すぎます」
「そうよね、あれはちょっと…」
「そんな、七海ちゃん、綾香さんまで」
確かに最善とは言えない判断だろうが、サナギワームを一掃するのにはこれが一番効率が良いのだ。サナギと比べて戦闘力が大幅に上昇する成体のワームだが、《防御》の一点置いては何気に生態をサナギの方が凌駕している場合が多々有る。
そんな硬い外皮に覆われ力も強いサナギのワームを一掃するには、高火力の武器で一気に吹き飛ばすのが一番効率が良いのだ。が、
「もう少し、場所を考えなさいよ!!!」
「だ、だから、オレが悪かったって言ってるだろ!?」
流石に中庭でガタックバルカンの全弾発射は拙すぎるだろう。どう考えても、これは亨夜が悪い。
「あ、あの、皆さん今はそんな事を話している場合ではありません!」
「そ、そうだな!」
アマテラスの言葉に気を取り直すと、流れ弾に当たったのかヨロヨロと立ち上がっている天狗と、爆風に吹き飛ばされて目を回しているその側近らしき、小鳥の様な姿の小型の悪霊へと向き直る。
「…って、またその系統かぁ!?」
「ピヨ!?」
小鳥の様な姿の…改めて、デボスズメと似た姿の色違いの悪霊を指差しながら思わず叫んでしまうと、声に驚いてその悪霊も目を覚ます。
どうも、毎回デボスズメ系の敵には酷い目に合わされる事が多い亨夜だった。………どうしても、本気で攻撃出来なくなる外見ゆえだからだろうか。
「こいつ…態とか…狙ってやってるのか?」
「っ!?」
妙な言いがかりと一緒に殺気を向けられている事に気付いた天狗は慌てて首を左右に振って否定しているが、ガタック(亨夜)にはそんな事を信じる義理もない。………最初から敵だし………。
「亨夜ちゃん、落ち着いて」
「そうです。確かに、ちょっと可哀想な気もしますけど…」
「…親玉狙えば勝手に逃げるか…」
ガタック(亨夜)の呟きが聞こえたのは真っ赤な顔の天狗の顔が僅かに青くなる。
「あ、あの~。ですから、今はそんな事を話している場合では無いでしょう!!!」
「そうよ、早くあいつを倒さないと!」
「わ、悪い…」
アマテラスと渚の二人に思いっきり怒られて頭を下げると、ガタック(亨夜)も改めて天狗へと向き直る。…側近の小鳥に対して意図的に意識を向けないのは戦意を保つ為だろう…。
「ケェェェェェェェェェェェェェェエ!!!」
「えい!」
叫び声を上げて再び手下の悪霊達を呼び出そうとするが、それを遮るように七海の放った矢が天狗の肩に突き刺さり、その痛みによって手下の悪霊達の召喚が遅れる。これ以上の物量の召集を封じれば次にする事は一つだけ。
配下の召喚が遅れた隙を逃さず、前衛の三人…ガタック(亨夜)、渚、アマテラスの三人が天狗へと向かっていく。
何気に高火力のガタックバルカンは周囲の被害を考えると、何処に有るのか分からない白虎の宝玉や渚の家の事を考えると一体だけの天狗には使用できない。ならば、ガタックで出来る事は一つだけ。
「オリャア!!!」
「っ!?」
顔面に向かって思いっきりパンチを打ち込む。ライダーフォームよりもパワーに特化したマスクドフォームのパワーでのそれを受けた天狗は、簡単にそのまま後ろに吹き飛ばされる。
「やぁ!!!」
立ち上がった天狗をアマテラスの槍が追撃の形で切り裂き、ヨロヨロと後ろに下がると今度は、
「行くわよ!」
渚の放った飛び込み突きが天狗に突き刺さるが、
パキン
「そんな!」
今で使っていた渚の剣が音を立てて折れてしまう。
「渚さん!」
「危ない! 渚先輩が!」
ガタック、アマテラス、渚の三人の攻撃に晒されて天狗はそれを逃さず、これまでの憎しみを込めて、無防備な渚に一撃を加えようと扇を思わせる武器を持っている腕を振り上げる。
「えい!」
そんな時、綾香の投げた勾玉が当たった事で爆発音を上げてそのまま天狗の体は炎に包まれる。
「悪いけどな…オレ達を忘れるな!」
ガタック・マスクドフォームのパンチが天狗へとトドメの一撃として打ち込まれ、殴り飛ばされる。あとはキャストオフしてライダーフォームになった後にライダーキックでトドメを刺す事もできるが、
「あと少しなのに」
折れてしまった剣を見ながら渚は悔しげに呟く。武器を失ってしまった以上、これから先の戦いで渚は完全に戦力ダウンだろう。
少なくとも、此処からの戦い……天狗との戦いでは悔しいだろうが後衛に廻って貰うしかない。
そんな事を考えていると殴り飛ばされた天狗の後ろに誰かの人影が見えた。
「お兄ちゃん!?」
「待て、渚!」
真っ先に気付いた渚が声を上げて近づこうとするが、ガタック(亨夜)は慌てて彼女を止める。
「邪魔しないで、お兄ちゃんが…」
「違う、あいつは…」
ガタック(亨夜)が言葉を続けるよりも早く天狗が後ろを振り返ろうとして瞬間、天狗の体が異形の物に変わった『秋也』の腕に貫かれていた。
「ワームだ」
幽霊だった秋也にしては実体がはっきりしている時点でおかしいと思った。だからこそ止めた訳だが、この時の亨夜の判断は間違いなく正しかった。
恐らくは秋也に化けて不意打ちでも狙っていたのであろうワームは、予想よりも早く天狗が追い詰められているのを見て、予定を変更して天狗にトドメを刺したのだろう。
「ピ…ピィー!!!」
天狗がトドメを刺されたのを見た側近が怯えて逃げ出していくが、誰も其方へ注意を向ける事はできなかった。
天狗にトドメを刺した『秋也』の姿が天狗と同じ物へと変わっていく。ネノクニに渡った影響なのか、ワーム達は幽霊である秋也にも擬態できていた。そして、今回は完全に人から逸脱した天狗の姿に擬態したのだ。
…予断だが、原典とは僅かに違いDCD版のカブトの世界では人よりも小型のキバット族の『キバーラ』にさえ擬態しているのだから、人以外に擬態するのが初めてと言う訳では無い上に人以外にも擬態できると言う事実は証明されているのだろうが。
だが、亨夜の前で人以外の物に擬態したのは、これが初めてだ。
…魔化魍とかにも擬態できるのか、非常に気になる所だが、本編に関係ないのでそれは置いておいて…。
「ケェェェェェェェェェェェェェェェエエエ!!!」
天狗に擬態したワームが咆哮を上げると再び悪霊達が集まってくる。そして、天狗に擬態していたワームが緑のサナギのワームの姿に戻ると、ワームの体が赤く発光し、体の表面が崩れ落ちる。
「随分と大人しい姿のワームだな」
その姿を見た亨夜(ガタック)はそう呟く。天狗に擬態した影響なのか、片腕が蝶の様な扇と一体化し、白い柔らかな曲線で作られた白い体。蝶のワーム『バタフライワーム』は悪霊達に号令をかけるように扇と片腕を振り上げる。
つづく…
ってな訳で第五楽章もラストが近い蒼き戦士の戦記です。
翔「で? NOVEL大戦の更新は…」
オリジナルライダーの動かし方が中々上手く行かないので