IZUMO ~蒼き戦士の戦記~ ~赤の英雄、蒼の復讐者~外伝   作:龍牙

46 / 63
第五楽章 -9-

バタフライワームは配下の悪霊達にアマテラス達を狙わせ、自身はガタックへと向かっていく。

 

 

大振りに扇状になった腕を振り回す事で竜巻を巻き起こすと、ガタックがアマテラス達と一時的に分断される。

 

 

「っ!? 渚、これを使え!」

 

 

変身前に使っていた木刀を『何も無いよりはマシだろう』と思いながら渚へと投げ渡す。そして、

 

 

「キャスト、オフ」

 

 

 

《CHAST OFF》

《Change StagBeetle》

 

 

 

マスクドフォームの装甲を弾き飛ばし、ライダーフォームへとチェンジするとガタックダブルカリバーを構え、バタフライワームへと意識を向ける。

 

 

「はぁ!!!」

 

 

地面を蹴りながらバタフライワームへと切りかかるガタックだが、バタフライワームはそれよりも早く上空へと飛翔し、

 

 

「ケェェェェェェェエ!!!」

 

 

「っ!?」

 

 

天狗に擬態した影響か、外見からは似合わない咆哮を上げて地面に居るガタックへと竜巻を打ち出す。

 

 

ガタックはそれをバックステップで慌てて避けるが、その一撃の破壊力は地面を砕いた事実が物語っていた。

 

 

(…直撃したら拙いな…。だけど…)

 

 

空中を舞うバタフライワームを見上げながら、ガタックは有る考えに行き着く。攻撃力の高さ以上に厄介な物…それは、

 

 

(…空中の敵を相手に…どうやって戦う?)

 

 

ガタックは空中戦が出来ないと言う事だ。基本、空中の敵を専門に相手にする事が多いガタックだが、それはガタックエクステンダーが有るからであって、現在ガタックエクステンダーはZECTで修理中、最もバイク通学が出来ない限り学校から直接来てしまった以上、ガタックエクステンダーはどっちにしても使えなかった可能性は高い。

 

 

だが、結果的にガタックエクステンダーが無い以上、ガタックの空中の相手への攻撃手段は限られてしまう。しかも、ライダーフォームの姿では空中への攻撃手段はゼロと言って良いだろう。少なくとも、ガタックのスペックの上では、だ。

 

 

「ケェェェェェェェェェエエ!!!」

 

 

咆哮を上げて上空から襲い掛かってくるバタフライワームに対してガタックは、

 

 

「だったら…」

 

 

ガタックダブルカリバーを構えて動きを止める。二刀流と言う点で構えこそ違うが、変身前の木刀の構え方に近いその構えのまま、ガタックは仮面の奥からバタフライワームから一瞬さえも逃さず見据える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと、何してるのよあいつ!?」

 

 

折れた剣の変わりに亨夜から借りた木刀を使い-フェンシング用の剣と木刀では重量も重さも違う。なにより、亨夜と渚では握力なども違うので、扱いにくいとしか言えないだろう-悪霊達と戦いながら、亨夜の姿を見ると思わずそんな言葉が零れる。

 

 

「動かないと危ないんじゃ…」

 

 

「いえ、そうじゃないみたいです。多分、先輩は何かを狙っているんだと思います」

 

 

「ええ、恐らく…」

 

 

亨夜の考えが理解できない綾香と、亨夜の狙いが薄っすらとだが理解できている七海とアマラス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケェェェェェェェェェェェェェエエ」

 

 

扇を剣の様に振るいながら上空からガタックへと襲い掛かるバタフライワーム。そんなバタフライワームの攻撃をガタックはガタックダブルカリバーを構えたまま受け流し、

 

 

「破ァ!!!」

 

 

それと同時にガタックダブルカリバーを振るい、カウンターの形で切りつける。残念ながらその一撃は、致命傷とは言えないダメージしか与えられなかったが、ガタック(亨夜)の一太刀を受けたバタフライワームは声にならない悲鳴を上げながら地面に転がり落ちる事となった。

 

 

「…《水影》…。上手く行ったな」

 

 

ガタック(亨夜)は先ほどの技の名を呟くと、改めて地面に倒れたバタフライワームへと視線を向ける。

 

動きを止める事で相手に対して『遠距離攻撃』では確実に倒せないと言う判断と、『動きを止めている隙に接近して確実にトドメを刺す』と言う考えを浮かばせ、トドメを刺そうと近づいた時にカウンターで切り裂く。

 

と言う感じで相手の攻撃に対するカウンターを《水影》で狙っていたのだが、亨夜の狙いは上手く行ったものの、残念ながらそれによるダメージはそれほど大きくなかった。

 

 

「…………。ケェェェェェェェェェェェェェェエエエエエ!!!」

 

 

立ち上がると怒りに満ちた咆哮を上げるバタフライワーム。土を着けられた事が屈辱だったのか、傷を着けられた事が屈辱だったのかは分からないが、結果的にバタフライワームはガタック(亨夜)に対して怒りの感情を抱く事になった様子だ。

 

 

「っ!? こいつ!」

 

 

咆哮を上げながらバタフライワームは滅茶苦茶に扇状の腕を振り回し、大量の竜巻を巻き起こす。

 

 

「「きゃあ!」」

 

 

「渚! アマテラス!」

 

 

狙いも何も無いそれは手下の悪霊さえも巻き込んでダメージを与えていく。幸いにも巻き込まれた渚とアマテラスのダメージが大きくなかった事から、滅茶苦茶な連射では先ほどの様な高威力は無理と言う事なのだろう。

 

 

「ケェェェェェェェェェェエエエ!!!」

 

 

渚とアマテラスがバタフライワームの竜巻に巻き込まれた事で動きを止めた瞬間に生まれた一瞬の隙、それを突いてバタフライワームはガタックへと竜巻を放つ。

 

 

「っ!? しまった!?」

 

 

避けられないと判断したガタックは、ガタックダブルカリバーを持ちながら両腕を組んで衝撃に供える。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」

 

 

防御も虚しくガッタクの体は成す術も無く吹き飛ばされる。滅茶苦茶な連射とは違い、ガタックの隙を突いて放ったそれは十分に力を込めた一撃だったのだろう。

 

 

「亨夜ちゃん!」

 

 

「先輩!」

 

 

バタフライワームの竜巻の影響を受けなかった後衛の七海と綾香の二人が叫び、ガタックは近くの木で体を支えながら立ち上がる。

 

 

「七海ちゃん、綾香さん、オレなら大丈夫だ。オレよりも…」

 

 

ダメージは大きかった物のマスクドフォームほどの強度は無いとは言えマスクドライダーシステムの中でも最強と言われた戦いの神(ガタック)の装甲に守られている亨夜は動けなくなるほどではなく、十分に立ち上がれる。

 

 

だが、弱いとは言え生身でそれを受けた渚とアマテラスのダメージは別だ。直ぐに綾香が駆け寄って勾玉による治療を始めているが、戦える者が七海一人に減った状況は歓迎できないだろう。

 

 

(仕方ない、楓さん、頼む)

 

 

『分かりました、亨夜様』

 

 

「七海ちゃん、これを!」

 

 

心の中で楓とそんな会話を交わし、楓の勾玉を七海へと投げ渡す。

 

 

「え? は、はい!?」

 

 

亨夜(ガタック)から投げ渡された勾玉と亨夜(ガタック)を交互に見て七海はそう答える。

 

 

「くっ!?」

 

 

七海へと楓の勾玉を渡す。楓の力を借りた姿(フォーム)への変身は不可能になってしまったが、少なくともバタフライワームによって分断された状況では広範囲を攻撃できる楓の力は向こうに有った方が有効だろうと判断した結果だ。

 

 

「ケェー!」

 

 

それを見たバタフライワームは再び上空へと舞い上がると、上空から燐粉を撒き散らす。

 

 

「っ!? な、なんだ!?」

 

 

バタフライワームの燐粉の影響なのか、燐粉を浴びた部分からガタックのシステムの動きが鈍くなる。

 

 

「ガァ!?」

 

 

燐粉を浴び続ける事で装甲の各部で火花が飛び散り、小規模な爆発を起しながら、ガタックへの変身が強制的に解除される。

 

 

「な、なんだ?」

 

 

見れば目を回したようにガタックゼクターがフラフラと飛び回りながら地面に落ちる。急いでそれを拾うと再びベルトに装着させるが、変身時の電子音は響かず無反応のままだ。

 

 

「っ!? 変身できない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「一体何が?」

 

 

『恐らくは、あの蝶の怪物の仕業です』

 

 

「え?」

 

 

疑問の声を零した七海の言葉に楓が答える。

 

 

『初めまして、七海さん。私は楓と申します。恐らく、あの燐粉には相手の意識を乱す効果が有ると思われます』

 

 

楓の考えでは恐らく、天狗への擬態の影響か、それとも元々持っていた能力か、バタフライワームはゼクターの意識を混乱させる能力が有る。そう推測していた。

 

 

「そんな、それじゃあどうすれば…」

 

 

『七海さん、亨夜様の事も心配ですが、今はこの状況を切り抜けるのが先決です。私の力をお使いください』

 

 

「はっ、はい!」

 

 

 

強酸霧(アシッドガス)!―

 

 

 

「くっ、くぅっ…」

 

 

楓の呪法『強酸霧(アシッドガス)』によって周囲に居る悪霊達を強酸の霧が包み込む。以前の桃花と戦った時に亨夜が使った時の様に、だ。だが、当の七海は力を大きく消耗させる呪法を初めて使った事に声を上げてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ!」

 

 

バタフライワームの攻撃を必死で避けながら、変身が解除させられた亨夜はガタックゼクターが混乱から回復するのを待つ。

 

 

(正気に戻す勾玉は有るけど)

 

 

治療用の勾玉は一通り全員に行き渡るようにして有るが、残念ながら機械であるガタックゼクターが勾玉の力で回復するとは限らない………と言うよりも、回復すると考える方が間違いだろう。寧ろ、この場合はガタックゼクターを混乱させたバタフライワームの能力が異常と捉えるべきだろう。

 

 

「ガァ!」

 

 

バタフライワームの蹴りが亨夜の体を捉える。何とか後ろに跳ぶ事でダメージは最小限まで抑えられたが、それでもワームの攻撃を生身で受けたのだからダメージが少ない訳が無い。

 

 

何とかガタックゼクターを手放さずに居たが、地面に倒れた亨夜が立ち上がる前にバタフライワームが近づいていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「亨夜!」

 

 

勾玉の力で回復した渚が立ち上がりながら亨夜の姿を一瞥しながら、

 

 

「ふざけるな! あんた、私に言っておいて自分はそんな奴に負ける気なの!? あんたは、そんな奴に負けるほど弱くないはずでしょう!?」

 

 

思わず亨夜に向かってそう叫ぶ。あの記憶の中の“亨夜”も、自分の知っている亨夜もネノクニで戦っている亨夜の姿も、どうしても一つには結びつかない。

 

だが、そんな彼の姿にはしっかりと自分の知っている、どれだけ変わっても決して変わらない亨夜の強さが残っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつ、勝手な事を…っ!」

 

 

バタフライワームを蹴り飛ばしながら立ち上がると、まだ混乱しているガタックゼクターをより強く握り締めながら、

 

 

「何時まで寝惚けてる気だ、ガタックゼクター! さっさと目を覚ませ!」

 

 

手の中には桃花の勾玉、そして、ガタックゼクターを『ショック療法だ』と言わんばかりの勢いで力強くベルトのバックル部分に叩きつける。

 

 

「変身!」

 

 

 

《HENN-SHINN》

 

 

 

正常に響く電子音、だが、マスクドフォームを飛ばしてライダーフォームに変身すると、

 

 

 

《Change StagBeetle》

《FORM HORY》

 

 

 

楓の時と同じ電子音が響き渡った瞬間、装甲が桃色になり、桃の花のようなパーツが背中の装甲に現れ、桃の花をモチーフにしたパーツが付いている杖型の専用武器『ブロッサムロッド』を手に取る。

 

 

「…これが、オレの…オレ達の新しい力」

 

 

五つの勾玉がガタックの手から離れ、ブロッサムロッドの中に消えていく。新たな力を得たガタックを脅威と思ったのか、バタフライワームはガタックへと竜巻を放つがガタックは、

 

 

「行け!」

 

 

ブロッサムロッドより放たれる竜巻がバタフライワームのそれを相殺する。

 

 

「っ!?」

 

 

同時に発生した炎がバタフライワームを飲み込み、炎毎全身を凍りつかせ、隆起した岩が氷を砕くと同時に拘束し、空から降る稲妻がバタフライワームを飲み込む。

 

 

 

 

 

 

「す、凄い…。何時の間にあんな事が…」

 

 

「あれは、勾玉の力ですが…もしかして、あの杖が力を増幅しているのでしょうか?」

 

 

自在に呪法を操るガタックの姿を見ながら呆然と呟く綾香と、その様子からブロッサムロッドの力を推測するアマテラス。

 

 

 

 

 

 

 

勾玉の力を増幅する力を持った専用武器《ブロッサムロッド》を使う亨夜と契約した精霊・桃花の力を借りた新たな姿、エレメントフォームの一つ『仮面ライダーガタック エレメントフォーム・ホーリー』!

 

 

「これで、遠距離もオレの間合いだな」

 

 

『はい、参りましょう、亨夜様!』

 

 

地面に突きつけると同時に隆起する岩が再びバタフライワームを拘束する。それと同時にブロッサムロッドから五色の勾玉が外れ、五つの同じ色の勾玉が装着される。

 

 

 

《MAXIMAM HORY ELEMENTPOWER》

 

聖息吹(ホーリーブレス)

 

 

 

周囲に満ちるのは、桃花の呪法『聖息吹(ホーリーブレス)』の力はブロッサムロッドへと集中、同時に杖に装着された勾玉の力も発動する。

 

 

「受けてみろ…」

 

 

『これが私達の』

 

 

「『力だ(です)!!!』」

 

 

一回転させたブロッサムロッドをバタフライワームへと叩きつける。

 

 

「『聖華燎原(ホーリーエクストリーム)!!!』」

 

 

叩きつけられたブロッサムロッドから癒し力をバタフライワームへと向けて一気に開放。本来の効果を理解し、それとは逆の事を行う為に回復用の勾玉である『和魂』を五つ同時に使いブロッサムロッドで増幅した癒しの力を桃花の呪法の力に上乗せした。

 

その結果は、

 

 

「っ!?!?!?!?」

 

 

バタフライワームの体がブロッサムロッドより与えられた過剰な回復力に耐え切れず崩壊していく。

 

 

 

「これって…?」

 

 

「傷が癒えて行きます」

 

 

そして、味方へは本来の効果で有る回復を行う。回復と防御さえも無視した攻撃を与える必殺技となったのだ。

 

 

「やったわね、亨夜」

 

 

バタフライワームを倒した亨夜の姿に渚は静かにそう呟くのだった。

 

 

 

 

つづく…

 







ってな訳で結構長くなってしまった第五楽章も次回で終了です。



翔「次回で第五楽章終了で、次は朱雀の所か…」



はい、七海、綾香、渚と続いてアマテラスがメインの朱雀の社が舞台となった話です。そして、姿を現す新たな敵の幹部…。では、次回の最終楽章もお楽しみに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。