IZUMO ~蒼き戦士の戦記~ ~赤の英雄、蒼の復讐者~外伝   作:龍牙

50 / 63
第六楽章 -3-

休憩前とは明らかにアマテラスに対する態度が、(悪い方向に)変わった渚と七海の様子を気にしながら、休憩を終えた亨夜一行は朱雀の本殿へと向かう事になった。

 

 

「…ここもか」

 

 

「はい、回り道をするしかありませんね」

 

 

床が抜け落ちている廊下を渡れず、仕方なく回り道をする事になった。跳んで飛び越えられるかとも思ったが、向こう側との距離は届くかどうかはギリギリだろうし、着地する場所の足場も悪い。

 

なにより、ジャンプした直後に水中に生息している悪霊に襲われて引きずり込まれた後に相手のホームグラウンドで水中戦をするのは流石に勘弁して欲しいし。

 

 

そして、壊された床を迂回しながら進んでいくと、

 

 

「ここが…朱雀の本殿…なのか?」

 

 

「はい、その様です」

 

 

亨夜の言葉にアマテラスがそう返してくれる。亨夜達の前に有るのは大きな社だった。こうして近くから見てみると、その大きさを感じられる。

 

 

「それで…何処から行く?」

 

 

「ええと…」

 

 

目の前にある道は三つ。左右と正面に分かれている。流石に今までの事を考えると最後の聖獣の開放を黙ってみているとは思えない。間違いなく何かしてくると予想しているし、先程も何かの視線を感じたので、敵の狙いが気になっているのだが…。

 

 

(…敵の動きが分からない、って言うのも気分の悪い物があるな)

 

 

口には出していないが、今までの聖獣の封印の場で戦った相手も敵である以上にやり口に対して怒りを覚えた。その一転に於いては復讐の相手であるワーム以上に頭に来ている。

 

 

(…心は熱く思考はクールに。だな…)

 

 

軽く深呼吸すると亨夜は困った表情を浮かべているアマテラスへと向き直る。余計な回り道をしている時間は無い。ならば…

 

 

「とりあえず、正面から見てみよう」

 

 

余計な回り道をせずに一番近い正面を調べてみる事にしたのだった。

 

 

 

 

「…これは?」

 

 

入って直ぐに亀の様な物が書かれていた。両隣には灯り用の蝋燭が置かれている。

 

 

「これは…玄武様、でしょうか?」

 

 

亀の様な物を見てそう判断するアマテラス。そう言われて龍牙から教えられた『四神』についてのレクチャーを思い出す。

 

 

「…此処が北って事か、それとも…正面に朱雀が居るって事か?」

 

 

「さあ、そこまでは…あ」

 

 

「石?」

 

 

直進して直ぐに片側だけに石の置かれた祭壇と、その後ろに控える三つの赤い格子戸が有った。触ってみると祭壇に置かれている石自体は唯の石の様にも見える。

 

 

「なんだ…これ?」

 

 

「でも、格子戸が有るって事は……ここは檻なんでしょうか?」

 

 

「あっ、朱雀の社には、盗掘者を退ける為に色々と仕掛けが施されていると言うのは聞いたことがありますが」

 

 

「仕掛け?」

 

 

亨夜と七海に答えたアマテラスの言葉に亨夜は石の置かれた祭壇と三重の格子戸へと視線を向ける。

 

 

「じゃあ、これがそうなのか?」

 

 

「はい、多分。……と言う事は、おそらく祭壇の間はこの奥に」

 

 

アマテラスの言葉に格子戸の中を覗き込むが、向こう側の通路は折れ曲がっていて亨夜達の位置からでは中を伺う事は出来ないが、間違いは無い。付け加えると、格子戸の隙間はガタックゼクターでも通り抜けるのは難しいだろう。

 

 

「じゃあ、何とかこの三重の格子を通り抜けて向こう側に入るしかないか。ガタックゼクター」

 

 

亨夜が他のみんなに格子戸から離れる様に言って其処から離れると、亨夜の指示を受けたガタックゼクターが顎を鳴らしながら加速をつけて格子戸へ突進する。

 

 

「亨夜さん、何を!? 直ぐに止めさせてください!」

 

 

「い、いや、一撃試してみて壊れるかどうか試して…?」

 

 

「壊さないで下さい!!! お願いですから、そんな事を試さないで下さい!!!」

 

 

…流石に問答無用に破壊しようとするのは容認できないアマテラスが若干涙目になりながら亨夜を怒鳴って必死に止める。

 

 

だが、幸か不幸かガタックゼクターの一撃にも格子戸は耐え切った様子だ。その様子にアマテラスは安堵する。素材が何かは分からないが、少なくとも並の金属よりも強度は有るのだろう。

 

 

流石にガタックに変身して壊すと言う選択肢を一瞬でも取って見せたら、アマテラスが本気で泣きながら怒りそうなので考えから消しつつ、真面目に仕掛けについて調べようとする。

 

 

(…この先に朱雀の祭壇があるなら、神官の立場にある人間はこの先に入っていたはずだ。だったら…此処に仕掛けが有るはず…)

 

 

そう考えながら周囲を見回してそれらしき物がないか調べると、

 

 

「…これだよな…」

 

 

石が置かれている祭壇に視線が止まる。祭壇の上には二つの窪みが有るようで、片方には丸い石が置かれている。明らかに『私が仕掛けです』と言っている様な物だ。パターンとしては動かす事だが…

 

 

「この石…動く」

 

 

「そうですね。転がせば、この台の窪みに嵌められそうです」

 

 

「やってみるか」

 

 

石は重かったが、一人でも十分に動かせる重さだった。亨夜が動かした石を窪みの上に置くと、ガラガラと言う大きな音を立てながら、

 

 

「あっ」

 

 

「格子戸が………!」

 

 

格子戸の一つが上がっていった。

 

 

「こういう仕掛けなのか。だったら、あと二つの格子戸も…」

 

 

「別の場所に同じ様な仕掛けが有るかも知れないわね」

 

 

「じゃあ…」

 

 

亨夜が手を離した瞬間、折角動かした石が独りでに元の場所に戻ってしまい、格子戸も再び降りてしまった。

 

 

「これが仕掛けか…誰かが抑えてないとダメそうだな。…まあ、これだけ分かり易い所に有るなら、これくらいのセキュリティーは有りそうだけど…」

 

 

「…せきゆりてい…ですか?」

 

 

「…セキュリティー…。あー…盗掘者避けの手段の呼び方と思ってくれ…」

 

 

「取り敢えず、他の場所の見てみましょう」

 

 

亨夜の言葉に?マークを浮べているアマテラスに意味を分かり易く説明していると、綾香がそう提案する。

 

 

「そうですね。あと二つの仕掛けの位置を見つけよう!」

 

 

そして、左右も調べてみる事にした一行。他の場所にも同じ仕掛けが有り、格子戸を上げて置く為には石を動かして押さえておく必要が有った。付け加えると、虎と龍らしい絵が有ったが、多分白虎と青龍なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一通り調べると一同は中央の仕掛けの前で仕掛けについて知りえた情報を話し合っていた。

 

 

「つまり、三箇所の仕掛けを同時に稼動させないといけないってことね」

 

 

「まあ、ある程度は時間差があっても良さそうだけど…」

 

 

三箇所を調べた後、綾香がそう結論付けると亨夜がそう付け加える。

 

 

「三箇所それぞれに誰かがついている必要が有るから…」

 

 

「三つに分かれて行動する事になりますね」

 

 

「なるほど……そう言えば、朱雀の社を神官達が訪れる時は、何時も三人一組でした……」

 

 

七海の言葉にアマテラスが納得しように呟く。三つの仕掛けを同時に動かす事で間違いは無さそうだ。

 

 

さて、亨夜達が話し合っていると、渚が口を挟んでくる。

 

 

「……? あれっ? どう言うこと? 三つに分かれるって?」

 

 

渚は全然意味が分かって無さそうだった。亨夜はそんな渚に呆れながら溜息を吐いて言った。

 

 

「……はぁ……。渚、お前は今までの一連の出来事を見て何を考えてたんだ?」

 

 

「……えーと、あの……不思議な仕掛けが一杯だなあって」

 

 

結論。何も考えてなかった様だった。

 

 

「お前、やっぱりバカだろ? 特にパズルとかって苦手だろ?」

 

 

「な、なんですってぇ!」

 

 

殴りかかってくる渚の拳をバックステップで避けている亨夜。

 

 

「あー、もう、喧嘩しないの。それより、どう言うチームに分かれるか決めましょう」

 

 

「そうだね。……バカはほっといて」

 

 

「まだ言うか!!!」

 

 

「危なっ! だから、殴るな」

 

 

一言多かった亨夜に渾身の力を込めて殴りかかる渚だが、それは亨夜に受け止められる。

 

 

「もう、渚ちゃんったら! ……亨夜ちゃんも、その辺にしときなさい」

 

 

「はい」

 

「はぁーい」

 

 

二人を窘めた綾香の言葉で気を取り直すと、仕掛けに対応する為のチーム編成の会議になる。

 

 

「三つに分かれると言う事は……1チーム一人になっちゃうって事ね」

 

 

「そうですね」

 

 

亨夜達一行はガタックゼクターを除けば五人。三つのチームに分けると、どうしても一人になるチームが出来る。

 

 

「じゃあ、それは……悪いけど、亨夜ちゃんかな。あんなに重い石、女の子は一人じゃ動かせないもの」

 

 

「そうだね。オレが一人になるのが妥当かな」

 

 

そう言って翳した亨夜の手にはガタックゼクターが収まった。

 

 

「オレにはこれも有るしね」

 

 

少なくとも、マスクドライダーシステムを持っている亨夜なら力仕事は一人でも余裕だろう。これで一人になるチームが決まり、残りは四人の中から二人を選ぶのだが…

 

 

「……それじゃあ……」

 

 

「あたしは七海ちゃんと組むわ」

 

 

綾香が提案する前に渚が手を挙げてそう言った。

 

 

「えっ?」

 

 

「……別にいいでしょ?」

 

 

「あ、いや、いいんだけどね……別に」

 

 

「七海ちゃんも、それで良いわね」

 

 

「あ、はい、私もそれでいいと思います」

 

 

「それじゃ、決まりね!」

 

 

何処か強引に渚が提案すると七海もそれに同調する。二人が同意の上なら『そうだね』の一言で終わる会話だが、二人の言葉と態度からは別の意思を感じる。

 

 

「………」

 

 

考え過ぎかもしれないがそれは、

 

 

(…まるで二人がアマテラスと組むのを嫌がっている様にも見える…)

 

 

二人の感情からは拒絶の意思が感じ取れる。明らかに休憩前よりも二人のアマテラスに対する態度は…。

 

 

(…悪くなってる…。何が有った? ただ休憩していただけのはず…)

 

 

此処までで何か二人のアマテラスに対する拒絶が酷くなるような事は無かったかと考えてみるが、特に変わった事は起きていなかったはずだ。

 

 

「……じゃあ、アマテラスちゃんは私とね?」

 

 

「は、はい、それじゃあ、そう言う事で……」

 

 

アマテラスも二人から拒絶されていると感じたのか、少しだけ口ごもりながらそう答えた。

 

 

「それじゃあ、七海ちゃん達は左に行って頂戴。私達は右。亨夜ちゃんは真っ直ぐね」

 

 

「了解」

 

 

「はい」

 

 

「分かったわ」

 

 

「分かりました」

 

 

「それぞれ石を動かしたら、それが元に戻らない様に押さえながら待機」

 

 

全員から返事が返ってくると綾香はそれぞれの行動についての説明と注意点に移る。

 

 

「格子戸が全部開いたら、素早く中に入りましょう。見た所、石が元に戻って格子戸が閉まるまでに三十秒くらいはタイムラグが有るから、大丈夫よ」

 

 

「それなら入る時は問題ないな」

 

 

祭壇の石から手を離して格子戸を潜り抜けるまで三十秒も有れば十分だろう。あとは問題点は一つ。

 

 

「あ、でも、中に入ったら仕掛けは動かせなくなっちゃうけど………大丈夫かな? 閉じ込められたりしない?」

 

 

渚がそう不安げに呟く。そう、問題は帰りだ。少なくとも、神官達が三人一組で出入りして居たと言う事は出る方法はあるはずなのだが…

 

 

「多分、中には外に出られる様な別の仕掛けが有る筈です」

 

 

「そうね。そうじゃないと出られないもんね」

 

 

アマテラスと綾香の言葉に納得する一同。悪霊達に外に出る為の仕掛けが壊されていないかと言う不安も有るが、それなら入り口の仕掛けも壊されている筈なので、その心配は無いだろう。

 

 

「それじゃあ、みんな…行くぞ!」

 

 

「おー!」

 

 

「分かりました!」

 

 

「じゃあ、行きましょう、アマテラスちゃん」

 

 

「はい。みなさん、お気をつけて………」

 

 

こうして亨夜達は三箇所に分かれて進む事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

亨夜は格子戸を見ながら他の格子戸が開く気配が現れるのを待っている。中央に集まって話し合っていたので、中央の仕掛けを担当している亨夜は他のチームよりも早く着いてしまうのだが…。

 

 

「…明らかに七海ちゃんはアマテラスを怖がっている様だったよな…」

 

 

七海の瞳からそんな感情を感じ取っていた。どこか、悪霊となった千夏と出会った直後……話し合う事を決意する前よりも悪い兆候が感じられる。

 

 

(…オレの考え過ぎなら良いんだけどな…)

 

 

七海だけでなく渚…悪い夢で飛び起きてから明らかに今まで以上にアマテラスへの苦手意識…いや、既に苦手意識などで済ませられるレベルでは無く、敵愾心と恐怖心と言う感情に昇華されてしまっている。

 

 

(…だとしたら、夢へ干渉してきたと言う事か…。考えられるなら、千夏ちゃんと秋也さんの時の夢…)

 

 

明らかに開く両側に都合の良い夢を見るのは、偶然とは考えられない。あの時に感じた視線から考えると……。

 

 

「っと、そろそろ良いか」

 

 

一人で考えるには丁度良いかと考えてそんな事を考えていると、我に帰る。石を動かそうと祭壇に近づいた瞬間、

 

 

 

『………亨夜さん』

 

 

 

後ろから声がした。その声に気が付いて後ろを振り返ると、

 

 

「…アマテラス?」

 

 

綾香と一緒に行った筈のアマテラスの姿が有った。

 

 

(…いや、何だ…この違和感…。彼女は………誰だ?)

 

 

いや、微かながら亨夜は彼女から感じられる違和感を感じ取る。

 

 

 

 

つづく…





ってな訳で第六楽章の第三話でした。



翔「何と言うか…直接戦うよりも効果的な作戦だな」



…有る意味、相手によっては有効な手かもですからね。それでは
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。