IZUMO ~蒼き戦士の戦記~ ~赤の英雄、蒼の復讐者~外伝   作:龍牙

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第六楽章 -5-

「なるほど…」

 

 

七海と渚の二人が向かった門の前に着いた亨夜はそう呟く。

 

 

「格子が開いてたか…。これなら、二人が中に居るのも分かるな。だけど、おかしい…なんでオレの所が開いて無くて、此処が…。いや…もしかしたら、開いているのは…此処だけか?」

 

 

考えられる理由としては二つ。一つは、一箇所を開けると自動的に別の場所の格子が三つ同時に開く、または何処か一箇所の格子が完全に開く。もう一つは、誰かが中から完全に開放したという事。

 

 

前者ならまだ良い。明らかにセキュリティーとしては大問題だが、一番安心できる答えでもある。後者は考えられる“誰か”は間違い無く悪霊側…可能性として高いのは亨夜の前に現れた偽アマテラス。それだとしたら、完全にこれは悪霊達の罠だ。

 

 

「…どうする…?」

 

 

念の為に綾香とアマテラスが向かった場所にも行って二人と合流するべきか、このまま急いで先へ進んで七海と渚の二人を探すべきか。

 

これが罠なら一刻も早く合流した方が良いだろうが、逆にアマテラス達二人を狙っているのかもしれない。考えれば考えるほど深みに嵌って行く。

 

 

「…それにしても…」

 

 

先程から雑魚の悪霊が出てこない。パーティーが分散されていて戦力は大きく削られている現状で何もしてこないのは明らかに不自然だ。

 

……この場合、考えられる理由はただ一つ。この近くに雑魚の悪霊達よりも上位の存在が居ると言う事だ。改めて考えてみて、その可能性に当てはまるのは偽アマテラス。

 

 

「…仕方ない…。急いで二人を探そう」

 

 

まあ、先程のアマテラスの偽者の事も説明する必要が有る事だし、急いで二人を探す事を選択した亨夜だった。

 

 

下手に時間を経て誤解が深くなるよりも先に二人を見つけて説明した方が良いだろうし、今の状況で誤解を解く前にアマテラスとは顔を合わせない方が良いだろうとも考えた亨夜は急いで祭壇の間の中へと入っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、七海ちゃん! 渚!」

 

 

亨夜は祭壇の間の中に入ると二人の名前を叫ぶ。

 

 

「は、はぁ~い、亨夜。どうしたの?」

 

 

「せ、先輩、何処行ってたんですか?」

 

 

何事も無かったかのような笑顔を装って現れる二人。……引き攣った笑顔、不自然なまでに明るい口調。…はっきり言って不自然な程の笑顔だ。

 

 

「い、いや…二人を探してたんだけど…」

 

 

「そ、そーなんだぁ。あたし達も亨夜を探してたんだよ?」

 

 

「なかなか見付からないから、下手に動かず此処で待ってる事にしたんです」

 

 

「………」

 

 

どう見ても下手な嘘だ。………完全に偽アマテラスとの一件を見られたか聞かれたかした様子だ。それも、最後の所はしっかりと聞いていなかったと言うオチ。

 

 

まあ、二人の場を取り繕おうとしている配慮は亨夜には嬉しいが、この場合は先に誤解を解くのが先だろう。………このまま下手にアマテラスと合流したら、余計に厄介な事態になりそうだし。

 

 

「あ、あの二人とも…さっきの事なんだけど」

 

 

「ん? さっき?」

 

 

「何の事ですか?」

 

 

「いや、だから…さっきのアマテラスは多分に…」

 

 

『偽者』と言いかけた所で新たな声が響いてくる。

 

 

「あれれ? 何でみんな此処に居るの?」

 

 

「………! 皆さん、何処に行ってたんですか!?」

 

 

(ま、拙い!)

 

 

そんな言葉と共に二人が亨夜達の所へと走ってくる。その自体に思わず心の中で動揺してしまう。現状では、アマテラスへの誤解はまだ解けていない。そんな状況でアマテラスと合流してしまったたら…。

 

 

「………」

 

 

「むっ」

 

 

(…最悪だ…)

 

 

七海と渚の態度が露骨に悪くなる。…これが悪霊達の策略だとすれば、大成功とし言いようが無いだろう。

 

偽者だと知っているのは亨夜だけなのだし、ワームにも言える事だが、あれほど精密な変装をされると偽者だと証明するのも難しい。

 

せめて、もう少し後に来てくれればフォローのしようも有ったのだが。

 

 

「もうっ、ちゃんと打ち合わせたとおりにやってくださいよ!」

 

 

そんな亨夜達三人の心情に気付ける訳も無いアマテラスは怒っている。

 

 

「あ、ああ…悪い、アマテラス、綾香さん。……ところで、アマテラスは今まで何処に居た?」

 

 

念の為の確認だ。偽者であるとは確信できていたが、本物のアマテラスが操られていた可能性も僅かながらある。

 

 

「何時までたっても格子が開かないし、おかしいなと思って様子を見に行ってみたら、みんな居ないし…」

 

 

「………(…偽者で間違いないか…。ワームの擬態とは違う様子だけど…変装する為の術もあるのか…)」

 

 

あの時のアマテラスは偽者で間違いなかったようだ。アマテラスの言葉に現状を考えると、先にアマテラス達と合流した方が良かったかとも思ってしまう。

 

 

「とは言え、良かったです、皆さん無事で」

 

 

「あ、ああ」

 

 

…本人にどう説明するべきかと迷ってしまう。ストリートに『偽者が出た』と伝えても良いのだが…。

 

 

「あ、あのさ、アマテラス…さっき…」

 

 

「……ふんっ、悪かったわねっ!」

 

 

先程の事を教えようとする亨夜の言葉を遮って露骨に吐き捨てるような口調で渚がアマテラスに食って掛かる。

 

 

「どうせ私達は足手まといですよ! あんたみたいに日がな一日中バケモノと喧嘩してる奴とは違うんだから!」

 

 

…最悪な事にしっかり偽者と指摘する以前の会話は聞かれていた様子だ。…この様子だと運が悪い事に偽者だと指摘した所は聞いてないのだろう。

 

思わずこの計画を立てた張本人の高笑いが聞こえてくる思いだ。

 

 

(…あの偽者…今度逢ったら覚えてろ)

 

 

間違いなく、この策を考えたのはあの時に会ったアマテラスの偽者だろう。取り敢えず、次に会った時にはこの怒りをぶつけることに決めた亨夜だった。

 

 

「なっ………!」

 

 

「ち、ちょっと………渚先輩!」

 

 

流石にその渚の言葉にはオロオロとしながらフォローしようとする。

 

 

「な、渚さん、行き成り何を……」

 

 

そんな渚に少し気圧されているアマテラスに渚が言い募る。

 

 

「前々から言いたかったんだけどね! あんたって、あたし達のこと悪霊と戦う為の道具だと思ってない!?」

 

 

「えっ………」

 

 

渚のあんまりな物言いに一瞬、唖然とするアマテラス。

 

 

「な、何て事を……とんでもないっ!」

 

 

アマテラスも流石に渚のこの言葉には怒った。

 

 

「あんた、可愛い顔して、目の色一つ変えずに人を殺せる女だものね………」

 

 

「わ、私、そんなんじゃ有りませんっ!」

 

 

「だってあんた、あの千夏って子の事……」

 

 

「渚先輩っ!」

 

 

口喧嘩なんかに持ち出してはならない名前を口に出した渚を、七海が声を荒げて静止する。

 

 

「………う、ごめん………」

 

 

流石にそれは拙かったと反省した渚は七海に謝る。

 

 

「と、とにかく! あたしはあんたのこと信用できないから」

 

 

「………」

 

 

渚のその言葉にアマテラスは黙り込み、ムッとしている。

 

 

「な、なあに? 何がどうしたの?」

 

 

話題の急展開について行けず、どう仲裁すれば良いのかも分からずに、綾香はオロオロとしている。

 

 

(仕方ない)

 

 

亨夜としても此処であの時のアマテラスが偽者だったと教えても、庇っているだけと思われかねないので、先ずは渚を落ち着かせる事を選択する。

 

 

「そう言うなよ。アマテラスはオレ達の為にわざわざこうやって危険を冒して一緒に来てくれてるんだ」

 

 

そう言って渚を説得しようとする亨夜を、渚は睨みつけて言い返す。

 

 

「それだってどうだか! だって結局、あの四聖獣ってのを悪霊から助け出すためじゃない! この子にしたら、あたし達を…あんたの力を良い様に利用してるだけじゃないの!?」

 

 

そう思うのも無理は無いだろう。何故か悪霊側に存在しているマスクドライダーシステムの中核であるゼクターや、マスクドライダーシステムの誕生の理由となったワーム。

 

それに対抗するには同じライダーの力を持っている亨夜や、龍牙、剣の三人でなければ対抗は出来ないだろう。特に玄武と白虎の所では敵も二人のライダーを投入してきた。

 

 

「……た、確かに、そう言う面が有るのは否定しませんが……。…だからって、それは、あんまりじゃないですか!?」

 

 

怒りを露にするアマテラス。普段は落ち着いている彼女のそんな感情的な姿は初めて見る。

 

 

「私、こんなに一生懸命みなさんの為に尽くしてるじゃないですかっ! 分かってくれてると思ってた……。…それをなんで、いきなりそんな……」

 

 

「い、いや、分かってる、分かってるよ…アマテラス!」

 

 

「ふんっ! 亨夜は甘いわよっ! 良い様に誑かされて………。あたし、こいつの事嫌いっ」

 

 

「っ!? 渚! もう止せ!」

 

 

「さっき亨夜だって言ってたじゃない!」

 

 

「…言ってた?」

 

 

「確かに亨夜は言ったわよ? 『オレも、確かに彼女が怖い』って!」

 

 

「っ!?」

 

 

渚の指摘に思わず黙り込んでしまう。確かに亨夜が言ってしまった言葉だ。そして、彼の沈黙は彼から嘘を吐くと言う選択を除外してしまった。

 

 

「えっ……?」

 

 

目を見開いて亨夜の顔を見つめるアマテラス。

 

 

「そ、それは…」

 

 

「言ったわよね?」

 

 

「………」

 

 

「私も……」

 

 

さっきから黙っていた七海が、おずおずと口を開いた。

 

 

「私も……聞きましたよ、先輩」

 

 

「あれは…」

 

 

七海の一言が完全に亨夜の逃げ道を消し去る。

 

 

「亨夜さん……」

 

 

『嘘だと言って欲しい』そんな意思が手に取って分かる、すがるようなアマテラスの視線。だが、既に此処で嘘は言えない。下手に誤魔化す事も出来ない。

 

 

「た、確かに言った。けど、あれは!」

 

 

「ほら、みんなそう思ってるんじゃない!」

 

 

『そんな意味で言ったんじゃない』と亨夜が言葉を続ける前に、渚がアマテラスに向かって叫ぶ。

 

 

「そんな……」

 

 

「そりゃあ、あたし達は元の世界に帰りたいからあんたの言うとおり戦うわよ? でもね、それはそれだけなんだからね!」

 

 

「………」

 

 

「亨夜も、あたし達も、別にあんたのこと信用してるわけでもなんでもないんだからっ! ヘンに誤解しないでよね!」

 

 

「………!!!」

 

 

「だいたいアンタは……!」

 

 

「っ!? アマテラス!」

 

 

行き成り亨夜を突き飛ばして、アマテラスは闇雲に走り出す。

 

 

「お、おい! ちょ、ちょっと、アマテラス!」

 

 

慌てて呼び止める亨夜の言葉を聞かず、アマテラスは角を曲がって走り去っていく……。

 

 

「渚っ!」

 

 

振り返り、渚に向かって叫ぶ。

 

 

「なっ……何よ……」

 

 

反論する渚の表情も、流石に言いすぎたと思ったのか、どこか弱気だ。

 

 

「……こっちは私に任せて、亨夜ちゃんはアマテラスちゃんを追いかけて」

 

 

硬直する場の空気に、綾香が助け舟を入れる。

 

 

「…分かりました。…二つだけ言っておくぞ」

 

 

「な、なによ…」

 

 

綾香の言葉にそう答えると、亨夜は渚へと向き直り、

 

 

「一日中バケモノと喧嘩してて…悪かったな」

 

 

「っ!? そ、それは…その」

 

 

そう、そもそも、バケモノと戦っているのはアマテラスだけではない、亨夜もそうだ。元の世界では日常の裏側でZECTの一員(バイト)として、マスクドライダーシステムの適合者の一人として、バケモノとワームと戦っている。

 

 

渚がアマテラスへと言った言葉はそのまま亨夜にも言える言葉になってしまう。

 

 

「…それともう一つ…。二人が見た…オレと一緒に居たアマテラスは、誰かが化けた偽者だ」

 

 

「………」

 

 

亨夜の言葉に答えない渚と、その直ぐ後ろで後ろめたそうにしている七海、困った表情の綾香を置いて、亨夜はアマテラスを追いかけて走り出した。

 

 




ってな訳で第六楽章の第五話でした。



翔「…修羅場…?」



いや、修羅場って。



翔「まあ、よく使われている意味とは違うかも知れないけど…なあ?」



…まあ、修羅場である事は否定できないかも。



翔「だろ? それじゃ、次回もお楽しみに」
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