IZUMO ~蒼き戦士の戦記~ ~赤の英雄、蒼の復讐者~外伝   作:龍牙

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第六楽章 -7-

一方、七海達三人は

 

 

「………」

 

 

「渚先輩……あの……」

 

 

落ち込んでいる様子の渚に七海は彼女を気遣う様に声をかける。……偽者が仕組んだ事とは言えアマテラスに言ってしまった事が原因だろう。

 

 

「分かってる……酷い事言っちゃったね、あたし」

 

 

「………」

 

 

最初から気付いていた亨夜に言われなければ何も知らないままだったかもしれない。そう考えると渚は情けなくなる。

 

 

「どうしよう……謝ったら許してくれるかな?」

 

 

「………」

 

 

落ち込む二人。渚の問いに七海も答えられない。亨夜から聞かされた言葉を思い出して余計に気分が沈んでいく。亨夜自身そんなつもりで言ったのでは無いのだろうが、それでもだ。そんな二人に綾香が優しく諭す。

 

 

「謝るしか……ないんじゃない?」

 

 

「……そう、だよね……」

 

 

そう、謝るしかない。例えそれで許してもらえなくても、今の彼女に出来る事は先ずは謝ることしかない。

 

 

「私も一緒に謝ります……」

 

 

「うん、ありがと……」

 

 

七海の言葉に渚がそう答える。そんな事を話し合っていた三人の前に、

 

 

 

 

「………うふふ」

 

 

 

 

「あっ!」

 

 

「アマテラスさん!?」

 

 

何処からか“アマテラス”がニヤニヤしながら三人の方へと歩み寄って来た。

 

 

「………」

 

 

「あ、あの………さっきは、酷い事言っちゃった……ごめん」

 

 

「ごめんなさい……私も、謝りたくて……」

 

 

すまなさそうにしている二人。そんな二人の謝罪の言葉に答える事無く“アマテラス”はゆっくりと距離を詰めていく。

 

 

「貴方達……」

 

 

普段の彼女から想像出来ない気味悪い含み笑いを浮べながら、“アマテラス”は二人に舐めるような視線を向けて、言った。

 

 

「あの亨夜って子のこと、好きなのね?」

 

 

「え?」

 

 

「アマテラスさん?」

 

 

突然の言葉に流石に“アマテラス”の様子がおかしい事に二人は気付く。だが、次の瞬間、

 

 

「げふっ!」

 

 

「きゃあっ!」

 

 

「ひぇぇっ!」

 

 

“アマテラス”の霊力による攻撃を受けて、三人は吹飛ばされた。

 

 

「な、何………?」

 

 

「いたた……」

 

 

「これは一体……」

 

 

「うふふふ、あはははははは! おバカさん! 誰一人として私の正体に気付かないなんて!」

 

 

戸惑っている様子の三人に“アマテラス”は嘲笑を浮べながら言い放つ。

 

 

「あ、あんた……アマテラスじゃないわね!?」

 

 

「当たり前でしょう? あはははは、私をあんな小娘と一緒にしないで欲しいわ!」

 

 

「それじゃあ、まさか、亨夜の言ってた………」

 

 

渚の言葉に嘲笑いながら答える“アマテラス”だったが、亨夜の名前を聞いた瞬間、その表情に一瞬だけ憎しみの表情が浮かぶ。

 

 

「そうよ、格子の仕掛けを壊したのも、亨夜って子を誘惑しようとしたのも子の私。あなた達を仲違いさせる為にね!」

 

 

最後に“アマテラス”は忌々しいと言う意思を隠すことも無く表情に浮かべながら、一言『亨夜って子には見破られたけどね』と付け加える。

 

 

「あ、貴女はなんなんですか!? まさか……」

 

 

七海の言葉に“アマテラス”の姿が一瞬掻き消え、その代わり別の女性が出現する。頭には鉢金を付けて、手首から先と首から上以外を覆うオリーブ色と群青色を貴重とした陰陽衣を纏い、腰には二本の刀を挿したアマテラスと似た女性。

 

 

「うふふ、私の名は『ツクヨミ』。ヨモツオオカミ様が腹心、亡者を束ねる将軍よ」

 

 

正体を現したその女…ツクヨミは自らの名を宣言する。

 

 

「……悪霊……!」

 

 

「ほんと、馬鹿揃いで助かるわ……こうも企みが上手く行くなんてね」

 

 

笑いながら、動けない三人にトドメを刺そうと近づいていくツクヨミ。

 

 

「我が妹ながら、本当にあの子も馬鹿ね……。こんな小娘共を頼りにするなんて」

 

 

「……い、妹?」

 

 

「アマテラスさんとそっくりの顔……まさか……」

 

 

ツクヨミの言葉に驚愕を露にする渚達三人。そして、ツクヨミの言葉と彼女のアマテラスに似た外見から七海は何かを察する。

 

 

「察しがいいわねお嬢ちゃん。その通り、私はあのアマテラスとか言う小娘の双子の姉。同じ一族の血を引く者よ」

 

 

右手を振り上げながら、ツクヨミはにやりと笑いながらも、憎悪を込めて言った。

 

 

「それじゃあ、さようなら、異界の娘達…。…せめて一撃で葬ってあげるわ」

 

 

「………」

 

 

ツクヨミの無慈悲な宣言に思わず目を閉じる三人だが、

 

 

「……あっ……」

 

 

「なっ……!?」

 

 

金属と金属がぶつかり合う硬い音に気づいて目を開けると、自分達を葬ろうとしたツクヨミを刀を防いでいたモノが見えた。硬い音を立ててツクヨミの一撃を穂先で受け止めていたのは……アマテラスだった。

 

 

「あ、アマテラス!」

 

 

「アマテラスさん!」

 

 

「助かったぁ……」

 

 

「三人とも、大丈夫ですか!?」

 

 

助かった事に対して思わず安堵の声を上げる三人。アマテラスが寸前の所で割って入り、ツクヨミの攻撃を逸らしたのだった。

 

 

「……くっ、もう少しの所を……」

 

 

「悪霊め! 覚悟!」

 

 

あと一歩と言う所でトドメを刺すのを邪魔され、忌々しげに呟くツクヨミを睨みながらアマテラスは槍を構えなおす。

 

 

「悪霊とは酷いわねえ、実の姉に向かって」

 

 

ツクヨミは一歩後ろに下がると、そんな事を良いながらも虎視眈々とアマテラスの隙を狙っている。

 

 

「何を馬鹿なことを……」

 

 

アマテラスの一撃をツクヨミは片手一本で受け止める。

 

 

「嘘じゃないわよ…。…貴女だって知っているはずよ、『夢を紡ぐ力』を持つ、私達一族に伝わる掟」

 

 

「そ、それは……まさか!?」

 

 

ツクヨミの言葉の正しさを証明しているかのようにアマテラスに同様が浮かぶ。いや、実際知っているのだろう。

 

 

「そうよ、私は貴女と同じ血を引く者。掟に従い荒野に捨てられた呪われし双子の片割れ。貴女の実の姉なのよ!」

 

 

僅か一瞬だが、その言葉に気を取られたアマテラスに致命的な隙が現れる。当のツクヨミはその一瞬の隙を逃さずアマテラスの下腹部に蹴り技を放つ。

 

 

「ぐぶっ……!」

 

 

「貴女が……村人どもに神の使いよ、神聖なる巫女よとちやほやされている間に……」

 

 

先程の一撃で蹲るアマテラスの頭に、憎悪を込めた叫びと共にツクヨミの容赦の無い蹴りが何発も叩き込まれる。

 

 

「私は地を這い、草を食み、畜生以下の環境で生きてきたのよ……」

 

 

「そんな……私、知らなかった……」

 

 

その言葉は頭に叩きつけられる蹴り以上にアマテラスの心を抉る刃となる。

 

 

「誰も貴女に教えなかったのね……酷い話。でも、それも仕方ないわ」

 

 

今まで以上の憎悪と共に力を込めた蹴りで弾き飛ばされるアマテラス。

 

 

「ぐっ………」

 

 

「ううっ……アマ、テラスっ……」

 

 

七海と渚の二人は先程のダメージが抜けず、動けない。そんな二人を一瞥もせずにツクヨミはゆっくりとした足取りでアマテラスへと近づいていく。

 

 

「私達の一族に伝わる力………『夢を紡ぐ力』は、自然の摂理を曲げる物として忌み嫌われている………。そのくせ、奴等は私達の力を借りないと、悪霊どもに対抗できない」

 

 

淡々としていながらもこれ異常ないほどに憎悪の篭った言葉で語りながらアマテラスの前に立つと、

 

 

「もういい加減気付いても良い頃よ。貴女は……いえ、私達の一族は、ヤツラの良い様に利用されているのよ!!!」

 

 

「そんな……私はそんな風には……」

 

 

「だから貴女は人が良いって言うのよ!!!」

 

 

「げはっ!」

 

 

再び下腹部を蹴り上げられ、口から血を吐き、苦しむアマテラス。

 

 

「私は違うわ…。…こんな、終わりにしてやるの。ヨモツオオカミ様は、私の力を認めてくれた」

 

 

「貴女は……悪霊どもの味方についたのですか?」

 

 

「そうよ! そして、私と私の一族を虐げてきた人間どもを皆殺しにしてやるの! あはは、あはははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!」

 

 

そう告げて笑い出すツクヨミの表情は正に狂喜と言った物だ。

 

 

「そんな……間違ってる……」

 

 

苦しげに呻きながら、アマテラスは狂ったように笑う姉の顔を見上げる。

 

 

「そう言う訳だから。貴女達には死んでもらうわね」

 

 

簡単な用事を頼むような気安さで、ツクヨミは目の前で蹲る実の妹に対して残酷なことを言い放つ。

 

 

「可哀想だけど、それがヨモツオオカミ様の命令なのよ」

 

 

そう言っているが、彼女の目には『可哀想』等と言う感情は浮かんでいない。

 

 

「………ぐっ」

 

 

「………ううっ………」

 

 

「………先輩………」

 

 

ツクヨミが今にも三人にトドメを刺そうと、刀を持った右手を振り上げる………。

 

 

「……死ねぇっ!!!」

 

 

その時、

 

 

「ぐっ!」

 

 

ツクヨミの手首に青い影が激突し、手の中にあった刀を弾く。ツクヨミの刀を弾いた青い影…ガタックゼクターはツクヨミの前に立ち顎を開きながら彼女に対して威嚇をしてみせる。

 

 

「ぐぅっ! ………何者!?」

 

 

「何者は無いんじゃないか? この状況でオレ以外に他に誰かいるか、偽者さん!?」

 

 

地面を蹴って走りながら木刀を一閃。それはツクヨミに当たる事はなかったが、狙い通りツクヨミを後退させることには成功する。

 

 

「良かった。間に合った……」

 

 

亨夜は木刀をツクヨミへと木刀を突きつけて安堵の声を零す。

 

 

「先輩!」

 

 

「亨夜!」

 

 

「亨夜さんっ!」

 

 

素早く桃花の勾玉を取り出してそれを握り締め、その呪法の力、桃花の力を解放する。

 

 

 

 

-聖息吹(ホーリーブレス)-

 

 

 

 

亨夜を、正確には彼の持つ勾玉を中心に広がった癒しの光が三人の傷を癒す。

 

 

「アマテラス、焦るのは分かるけどあんまり一人で先に行くなよ。見失ったじゃないか!」

 

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 

アマテラスへとそう声をかけながらも、亨夜は一瞬たりともツクヨミからは注意を逸らしてはいない。

 

 

「ちっ……思ったより早い……」

 

 

そんな亨夜をツクヨミは舌打ちし忌々しげに睨み付ける。

 

 

「そう言う訳だ。話は全部聞かせて貰った。最初は術か何かの擬態とでも思ったけど、お前がアマテラスに化けていたのか」

 

 

少なくとも最初からツクヨミが化けたアマテラスが偽者だと言う事に気付いてはいたが、まさか実の姉だとは思わなかった為に動揺していて飛び出すのが遅れたと言うのは心の奥に仕舞って置く事にした亨夜だった。

 

 

「………」

 

 

「さあ、観念して貰おうか」

 

 

「ふん、策略は失敗したけれど、まだ私が負けた訳じゃあないわ!」

 

 

「出来ればお前とは戦いたくない。アマテラスの姉さん…なんだろ?」

 

 

「甘いことを……。っ!?」

 

 

そう言った瞬間、ツクヨミの髪が揺れ首筋スレスレに亨夜の持つ木刀が添えられた。距離を付けて居合いの要領で振り抜いて、首筋寸前で止めたと言う訳だ。

 

 

「…悪いが、オレは其処まで甘くない。そっちがまだ戦うって言うなら…倒すまでだ」

 

 

「………っ。まあ、怖い怖い。戦いたく無いと言うなら、一方的に攻撃して貴方に死んで貰うだけだったのだけど…」

 

 

ツクヨミは後ろに跳んで亨夜達から距離を取る。

 

 

「お前達!」

 

 

「ワーム!」

 

 

ツクヨミの言葉に従って二体のホッパーワームが姿を現す。ホッパーワーム(緑)とホッパーワーム(茶)はツクヨミを護衛するように前に立つと、ツクヨミと共に亨夜達に襲い掛かる。

 

 

「来る! みんな、気をつけろ!!!」

 

 

亨夜はそう叫び飛来するガタックゼクターを受け止めるとベルトへと装着。

 

 

「変身!!!」

 

 

《HENN-SHINN》

 

 

仮面ライダーガタック・マスクドフォームへと変身する。

 

 

 

 

 

 

 

つづく…




ってな訳で第六楽章の七話目でした。



翔「…ツクヨミ戦の前段階って所だな。……何気にボス戦と同時に出現したのは初めてだな、成体のワーム」



まあ、パターンも変えた方がいいと思ったので。それでは。
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