IZUMO ~蒼き戦士の戦記~ ~赤の英雄、蒼の復讐者~外伝 作:龍牙
「亨夜ちゃんも皆も酷い~!」
さて、綾香が思わず抗議の声を上げる。どうやら最初のツクヨミの攻撃で気絶していた為に完全に先程の会話に加われずに終わった様子だった。
「あ、ごめん…綾香さん」
そんな訳で本編スタートです。
「くっ!」
亨夜がガタック・マスクドフォームへと変身すると同時に、両手を十字に組んで飛び出してきたホッパーワーム(緑)の蹴撃をガードする。
流石に強力な装甲に守られたマスクドフォームを一撃で砕く事は不可能だろう、事実罅一つ入っていない。だが、その衝撃に
「!」
そんなガタックに対してホッパーワーム(茶)がホッパーワーム(緑)の背中を蹴って天井スレスレまでジャンプし、今度は天井を蹴ってガタックへと飛び蹴りを放つ。
「ちっ!」
思わずそれに舌打ちしながらガタックは後ろに後退する事で、天井から放たれたホッパーワーム(茶)の飛び蹴りを回避する。
(…此処じゃマスクドフォームだと完全に不利だ)
ガタックバルカンだと避けられそうでもあり、流れ弾で間違いなく朱雀の神殿まで破壊してしまいそうなので、此処で下手に使うことは出来ない。…強力な武器を持っているのも考え物だ。
加えて二体のホッパーワームは、俊敏性と脚力だけでなくコンビネーションも良く二対一と言う状況を巧く生かしている。
「…考えるまでも無いか…」
マスクドフォームが不利ならライダーフォームになるだけ。そう考えるとガタックゼクターのゼクターホーンに触れ、
「キャスト・オフ」
《CHAST OFF》
《Change StagBeetle》
電子音と共にマスクドフォームを射出し、マスクドライダーシステムの本体と言うべきライダーフォームへとフォームチェンジする。
「キャア!」
なお、流石に慣れていたマスクドフォームの装甲の射出を余裕を持って避ける事の出来た仲間達と違い、アマテラス達と対峙していたツクヨミは近くを通り過ぎていくマスクドフォームの装甲に思わず悲鳴を上げる。
「な、なによ、今のは!?」
「オレの装甲」
横を通り過ぎる様にそう言ってライダーフォームのガタックがツクヨミと対峙している仲間達と合流すると、同様に二体のホッパーワーム達もツクヨミと合流する。
一度咳払いすると、ツクヨミは改めてガタックへと向き直り、
「………ふふふ。そう言えば、坊や。聞きたかったのだけど、どうして私がアマテラスじゃない事に気付いたのかしら?」
「それなら簡単だ。そいつ等だよ」
「“そいつ等”? まさか…この…」
ガタックはツクヨミの左右に控えている二体のホッパーワームを指差す。
「そいつ等の種族名は『ワーム』。本来なら、ネノクニとは違うオレ達の世界の外からの招かれざる客って所だな」
そう言ってガタックの仮面の奥で亨夜は笑みを浮かべる。実際『外』と言ったのは長々と話す必要は無いと言う意味も有るが、『宇宙』と言う概念をツクヨミに説明するのが面倒と言うのもある。
「オレは向こうじゃ、そいつ等と常日頃から戦ってるんだ。…悪いけど、ワームの擬態に比べたら何倍も見破り易い」
「そう言う事だったのね」
そう言って表情を歪ませるツクヨミ。己も配下として使っているから分かるワームの擬態能力。そんな相手と戦っているのだから、完璧と思っていた己の変装も簡単に見破られたのだと。
(忌々しい…)
思えば直感なのだろうが、最初に監視していた時も自分の視線に気付いたのだろうと考えると余計に、だ。だが、直ぐに元の調子を取り戻し、
「……そう言えば、そこの貴女達は彼と違って上手く引っかかってくれたわね。私の見せた悪夢、どうだったかしら?」
「え?」
「悪夢?」
ツクヨミの視線を受けた七海と渚が顔を見合わせる。
「っ! そう言えばさっき……アマテラスさんが、千夏ちゃんを殺す夢を見ました」
「え、七海ちゃんも? 私の場合は秋也お義兄ちゃんだけど」
「夢? 仮眠の時の事か? あいつが見せたって…?」
「なるほど、そう言う事……ですか」
「アマテラスちゃん、何か知ってるの?」
ツクヨミの言葉に七海と渚が休憩中の仮眠の時に見た夢を思い出し、ガタック(亨夜)が疑問の声を上げる。二人の言葉とツクヨミの言葉にアマテラスは何かに気が付いたのだろう、その表情が険しくなる。
「人を眠りに誘い夢を見せ、心を惑わせる。そんな魔道の術が有ると以前聞いた事があります。恐らくそれでは無いかと…」
「なるほど、その術で渚と七海ちゃんに悪夢を見せて、アマテラスへの不信感を煽って、オレ達を精神的に分断しようとした。…そう言う事か?」
「……ええ、そうよ。まさか、貴方に仕掛けた策の悉くが失敗してしまったのには驚いたけど、其処の二人には、ああも狙い通りに行くとは思わなかったわ」
ツクヨミは嘲笑うような笑みを浮かべる。亨夜に仕掛けた策は悉く防がれてしまっていたが、逆に亨夜さえ巻き込まなければ上手く行ったのだから。
「ふふ…完全に貴方の事だけは私が甘く見過ぎていたようね」
「…策を持って戦う奴が、こうして面と向かっている時点で勝負は着いてないか?」
「だ、黙れ!!!」
ガタック(亨夜)の指摘に思わず表情を歪めて叫ぶツクヨミ。
「ごめんね、アマテラス。あたし達がバカだったわ」
「本当に、ごめんなさい」
「いいえ、私こそ」
「ううん、あたし達がまんまと引っかかったんだから」
「そうです。私の弱い心につけ込んで私達を分断させようなんて…許せないです!」
「弱い心、ねえ」
七海の言葉にツクヨミは嘲笑を浮かべる。
「あなた達の中で一番心が弱い者って…貴方じゃないのかしら、坊や」
そう言ってガタックへと視線を向ける。
「…自覚してるよ…」
その言葉に反論しようとする七海達を手を翳して押し留める。………最初から自覚している、自分自身の心の弱さなど。
「…アマテラス…二体のワームはオレが戦う。ツクヨミは皆に任せた」
「分かりました」
ガタックの言葉にアマテラスが同意を示すとガタックは二体のホッパーワーム達へと向かっていく。
二体のホッパーワームの蹴りを主体とした連携攻撃を両手のガタックカリバーで受け流しながら的確に避けているが、残念ながら反撃の糸口は掴めず居る。
(…このぉ…)
二体以上の成体ワームと戦った経験も有るが、二体のホッパーワームは成体ワームの中でも上位に入る戦闘力を持っているだろう。
いや、正確には個々の能力の高さだけでなく、連携によって個々の能力を足し算した以上の力を発揮している。片方への反撃を残る固体が攻撃を仕掛ける事で防ぐ。
(…
『そ、そんな事は無いと思うのですが』
そんな事を思っている
流石にワームにとってネノクニの環境が合っているとは考えられないが、考えられる理由はクロックアップが使えない環境で戦う為に戦闘力を強化した、そう考えた方が良いだろう。
その考えの元で推測するなら、二体のホッパーワームは余計な付加能力を排除した事で格闘と連携に特化した固体。
(…厄介だな…)
再び緑の固体の背中を蹴って上空から襲い掛かってくる茶色の固体を避けて、茶色の固体へとカウンターによる斬撃を浴びせようとした瞬間、今度は踏み台となった緑のホッパーワームの廻し蹴りがガタックを捉える。
「っ!? うわぁっ!!!」
無謀な所に打ち込まれた廻し蹴りに苦悶の声を上げるガタックへと追撃の形で茶色のホッパーワームの蹴りが打ち込まれる。
「ぐっ!」
『『亨夜さん!』』
二体のホッパーワームの蹴り技に曝されながらも、ガタックは相手の蹴りに合わせて後ろに飛ぶ事でダメージを軽減すると共に相手から距離を取る。
「こいつ等…」
仮面の奥でホッパーワーム達を睨みつけながらそう呟く。
(…ポイズンのワイヤーで捕獲…いや、こっちが網を張り切る前に逃げられる。ホーリーの呪法は……オレに上手く当てる自身が無い;)
下手にエレメンタルフォームにチェンジしたとしても、単独の使用では二体同時に戦うのは不利な点が多い。
(…考えていても仕方ないか)「楓さん!」
『お任せください!』
―
ガタックに向かって来ようとした二体のホッパーワーム達に対して楓の呪法を開放させると、荒れ狂う毒と酸によって動きを止める二体のホッパーワーム。
「先ずは…」
《Change StagBeetle》
《FORM POISON》
アシッドガスによる足止めを行い、エレメンタルフォーム・ポイズンへと姿を変える。
「ふっ!」
ガタックP(ポイズン)は素早くタランチュラアンカーをホッパーワーム達へと射出すると同時に動き出す。
「「っ!?」」
タランチュラアンカーから伸びるワイヤーがホッパーワーム達に巻き付きその動きを止める。必死にそれを引き千切ろうとするが、それによって余計にホッパーワーム達に絡まっていく。
格闘に特化したホッパーワーム達の能力では、ポイズンフォームのワイヤーは一度捕獲してしまえば引き千切るのは難しいと考えての行動だ。同時に、一度蜘蛛の巣に捕らえられた昆虫が身動き出来ないように、強力な跳躍力もワイヤーで捕らえてしまえば意味を成さない。
《MAXIMAM POISON ELEMENTPOWER》
―
素早くガタックゼクターのボタンを叩き、楓の呪法『
「『
捕縛したホッパーワーム達へと楓の力を借りたエレメンタルフォーム・ポイズンの必殺技『
素早く茶色の固体がアシッド・デス・ブレイクの盾となった事で、緑色の固体はダメージを受けたものの必殺技の直撃とワイヤーから開放される。
《Change StagBeetle》
《FORM HORY》
続いて『エレメンタルフォーム・ホーリー』へとフォームチェンジすると、杖型の専用武器『ブロッサムロッド』へと五種の勾玉を装填する。
跳躍力を利用してガタックH(ホーリー)へと襲い掛かろうとするホッパーワーム(緑)に対してブロッサムロッドから竜巻を放ち迎撃する。
「残念ながら…一体になれば、これで制圧できる」
竜巻によって吹飛ばされたホッパーワーム(緑)へと火球を放つ。動かない的に当てるのなら大丈夫だが、正確に狙うと言うのはまだ出来ない。だが、ある程度の面での制圧ならば、その心配も少なくて済む。
「っ!」
慌ててホッパーワームが上空に跳んで避けるが、天井を蹴ろうとした瞬間、
「いい加減見飽きるな、その動き」
ガタックH(ホーリー)は雷を放つ。どれだけ早く動こうとしても、クロックアップ無しでは電撃よりも素早く動く事は不可能だ。加えて、空中に跳んでいるだけならば自由に動くことは出来ない。ならば、最初から上空に跳ばせてから電撃によって迎撃する。それがガタックH(ホーリー)の狙い。ブロッサムロッドから五種の勾玉が外れ、五つの和魂が装填される。
《MAXIMAM HORY ELEMENTPOWER》
―
周囲に満ちる桃花の呪法『
「喰らえ…」
「『
一回転させたブロッサムロッドをホッパーワーム(緑)へと叩きつけると、過剰すぎる桃花と五つ分の和魂の回復の力がホッパーワームへと流し込まれる。
「っ!?!?!?!?!?!?!?」
それと同時に過剰すぎる癒しの力によってホッパーワーム(緑)の全身が崩壊していく。
「…こっちは片付いたな…。アマテラス達は…」
ホッパーワームの崩壊と共にガタックは通常のライダーフォームの姿に戻る。そして、ホッパーワーム以外に敵が居ない事を確認するとツクヨミと戦っているアマテラス達と合流に急ぐ。
つづく…
ってな訳で第六楽章の八話目でした。
翔「って、ツクヨミ戦前にホッパーワーム戦は終わりかよ」
イメージ的にはゲーム版で連れている二体の悪霊って感じですね、ホッパーワーム達は。仲間達からの援護も無いので、相手の実力の高さも有って、亨夜も苦戦しました。
翔「…で、次回は?」
亨夜合流前のツクヨミ戦と合流後の決着ですね。それでは。