IZUMO ~蒼き戦士の戦記~ ~赤の英雄、蒼の復讐者~外伝   作:龍牙

56 / 63
第六楽章 -9-

亨夜の変身したガタックが二体のホッパーワームの相手を引き受けたとき、ツクヨミの相手は残ったアマテラス達だけとなった。

 

…成体ワームの相手はライダーである亨夜以外ではクロックアップが出来ないとは言え難しいだろうと考えた結果だが、相手は悪霊の将軍…今までの敵の中でも強敵である事には変わりは無い。そんな相手と亨夜が二体のワームを倒すまでの間とは言え戦わなければならないのだ。

 

 

「なるほど、あの坊やはあの二匹を優先したようね」

 

 

四対一と言うのにツクヨミは不敵に笑っている。それは先程までの嘲笑とはまた違った笑みだ。

 

 

「行きますよ、渚さん!」

 

 

「オッケー!」

 

 

最初に仕掛けるのはアマテラスと渚。

 

 

「舐められたものね……。あの坊や抜きで倒せると思われるなんて」

 

 

二人を迎撃する様にツクヨミの手から炎が撃ち出される。炎の呪法なのだろう。

 

 

「くっ!?」

 

 

「こんな物!」

 

 

打ち出された炎の呪法は不意打ちでもなければ、避けられない距離でもない。前衛組みのアマテラスや渚なら簡単に避けられる。だが、

 

 

「それは囮よ!」

 

 

続いて双剣を抜いたツクヨミの体が回転しながら、アマテラスと渚を襲う。アマテラスも似た様な技である『つむじ風』を持っているが、似たタイプの技なのだろう。

 

 

「うっ!」

 

 

「ううっ!」

 

 

防ぐ事には成功したもののダメージは完全には防ぎきれない。二人は吹飛ばされながら体制を立て直す事に成功する。

 

 

「姉さん、ごめんなさい!」

 

 

回復すると同時にツクヨミへと槍を振るうアマテラス。

 

 

「別に謝らなくても良いわ」

 

 

だが、ツクヨミはアマテラスの槍を嘲笑を浮べながら双剣で受け流す。それによって狙いがそれた槍は床へと突き刺さる。ツクヨミはそれを踏みつけて深々と社の床に突き刺すと同時に持ち手であるアマテラスへと追撃を加えようとする。

 

 

「このっ!」

 

 

「ふふっ、甘いわね」

 

 

続いて後ろから向かってきた渚のレイピアを片方の双剣で防ぐ。

 

 

「嘘っ」

 

 

「確かに私は直接戦うのは得意じゃないわ。でもね、舐めないで貰いたいわ」

 

 

余裕でも見せるようにクスクスと嗤いながらツクヨミは追撃を加えるでもなくアマテラスと渚から離れていく。

 

 

「このォ…バカにして」

 

 

「落ち着いてください、渚さん」

 

 

その態度に怒りを露にする渚を落ち着かせるアマテラス。明らかにツクヨミの力は自分達を上回っているのは明白。怒りに任せて冷静さを欠いて戦っても勝てる相手ではない。

 

 

「でも!」

 

 

だからと言って渚には簡単に納得できるものではない。……自分達四人よりも亨夜一人の方が厄介だと思われていると言う事実は、だ。

 

 

急いでそんな二人へと先程まで手を出せずに居た後衛組み……七海と綾香の二人が合流する。

 

 

「渚ちゃん、二人だけじゃダメよ」

 

 

「でも、だったらどうすれば…」

 

 

「こっちは四人なんですから…」

 

 

「分かりました、それで行きましょう」

 

 

「あら、来ないの? なら、私から行かせて貰うわ」

 

 

ツクヨミの声が響くと四人は急いでその場を離れる。一瞬でも反応が遅れれば危なかっただろう、その証拠に四人の立っていた場所を雷が焼いていた。

 

 

「危なっ」

 

 

「渚先輩、アマテラスさん、援護します!」

 

 

「分かったわ!」

 

 

「はいっ!」

 

 

七海の言葉を聞き二人が言葉を返し向かっていく。

 

 

「たぁー!!!」

 

 

上空から雨の様に降り注ぐ矢、正確にツクヨミへ向かって行く矢は初めて七海が使った時に比べて正確さが増している。

 

 

「そんな物」

 

 

ツクヨミは竜巻を放ち自身へと向かって来る矢を吹飛ばす。七海の矢は風の呪法によって防がれたが、それによって一瞬だけとは言え好機(チャンス)が生まれる。

 

 

「トロワ!!!」

 

 

素早いステップと共に放たれた三連続の突き。複数の相手に対する同時攻撃用の技だが、今回はツクヨミを相手にした時間差の攻撃となる。

 

 

「ふっ!」

 

 

それをツクヨミは双剣を利用して正確に防ぐ。だがこれで………呪法と武器を使わせる事に成功した。

 

 

「えい!」

 

 

続いて綾香が勾玉を投げつける。渚の突きを防いだ直後のツクヨミは回避する事が出来ず、呪法による迎撃と回避も間に合わない。

 

 

「そんな物!? っ!?」

 

 

ツクヨミは投げつけられた勾玉を双剣で切り裂く事で迎撃するが、直ぐに自分の判断が間違っていると気付かされた。勾玉の光がツクヨミの視界を奪い、光が消えた瞬間、

 

 

「しまった!」

 

 

「やった、大成功!」

 

 

ツクヨミの視界にはアマテラス達の姿が何人も見える。先程綾香が投げた勾玉は『迷玉』と呼ばれる物で、敵に対して混乱を与え、味方に対しては混乱から回復させる力を持っている。

 

 

「これで!!!」

 

 

「うっ!?」

 

 

ツクヨミが回復する前に飛び出したアマテラスの【連撃】が切り裂く。

 

 

「くっ…少しだけ甘く見すぎていたようね」

 

 

そう言いながらツクヨミもまた迷玉を取り出すと、迷玉の光がツクヨミの意識を回復させる。

 

 

「今度はそうは行かないわ!」

 

 

ツクヨミの手から黒い霧の様な呪法が放たれる。流石に明らかに『これは毒です』と言っている様な物に特攻する奴はいない。当然ながらそれは使った本人であるツクヨミにも分かっているのだろう、

 

 

「きゃあ!」

 

 

黒い霧を切り裂いて放たれた亨夜の孤閃に似た衝撃波が渚へと直撃する。

 

 

「渚さん!」

 

 

「まだよ!」

 

 

ツクヨミの声と共にアマテラス、渚、綾香の三人の中央で強力な爆発が起こる。

 

 

「「「きゃあ!!!!」」」

 

 

それは炎の上位の呪法『エクスプロージョン』。突然の爆発によって吹飛ばされる七海と綾香。後ろからの爆発に何とか立つ事の出来たアマテラスだが、

 

 

「ふふ、油断大敵よ」

 

 

「くっ!」

 

 

アマテラスの槍を弾き首筋へと双剣を突きつける。それは事実上のツクヨミからの勝利宣言。そして、トドメを刺そうと振り上げた瞬間、

 

 

 

『残念ながら、それはこっちの台詞だ』

 

 

 

「っ!?」

 

 

ツクヨミの振り下ろした双剣をガタックダブルカリバーで受け止めた亨夜(ガタック)の声が響く。

 

 

「お前は…」

 

 

「手間取ったけど、ワームは倒した。……あとはお前だけだ。最後にもう一度だけ警告させて貰う………観念しろ」

 

 

「黙れ!」

 

 

そう叫びながら切りかかってくるツクヨミの双剣をガタックは正確にガタックダブルカリバーで捌いていく。

 

 

「くっ」

 

 

「…残念ながら、武器が同じなら…オレとガタックに変身してるオレとお前とじゃ……俺に分がある。直接戦うタイプじゃないお前が、正面からオレと戦ってる時点で勝負は着いてる!」

 

 

「ふざけるな! そんな素人同然の技でえらそうな事を。それに、どれだけ強い武器でも、それだけで…」

 

 

何度目かのぶつかり合いの末に金属の砕ける音が響く。砕け散った欠片に映し出されるのは……

 

 

「そ、そんな…」

 

 

呆然と結末を受け止めているツクヨミと、

 

 

「…オレの勝ちだ…」

 

 

ダブルカリバーを振り下ろした体制でそう呟くガタックの姿だった。

 

 

「悪いけど、オレの専門は二刀流じゃない。だけどな、我流だろうがオレのそれは命懸けの戦いの中で磨かれたって言う自信なら……幾らでもある。加えて、ライダーシステムの身体能力の強化は…経験程度じゃ埋められないぜ」

 

 

淡々とこの結果になった要員を説明しながらガタックが再び、

 

 

「ううっ……」

 

 

「…最後通告だ…。観念しろ………お前の、負けだ」

 

 

そう宣言すると、ツクヨミは地面に膝を着きへたり込む。ダメージを受けた渚や七海、綾香達も立ち上がっている。亨夜(ガタック)達五人の勝利だ。

 

 

「………」

 

 

ツクヨミは亨夜達の顔を憎々しげに一通り睨みつけると、言った。

 

 

「………殺せ!」

 

 

「………」

 

 

「………」

 

 

ツクヨミの言葉に応える様に亨夜はダブルカリバーを首筋に突きつけ、溜息を吐くと

 

 

「…………止めた。流石に、何も出来ない奴を…増してや、アマテラスの姉は殺せない。何より、言われたとおりにトドメを刺すのは…何か、気に入らない」

 

 

「………」

 

 

そう言った瞬間、ガタックゼクターがベルトから外れ亨夜の変身が解除される。ガタックゼクーさえも判断したのだろう。ツクヨミは既に何も出来ない、と。それが心から屈辱だったのか、ツクヨミは顔を歪めながら黙り込んでいる。

 

 

「………ツクヨミ……姉さん………」

 

 

「………」

 

 

そんなツクヨミにアマテラスが、優しくその手を差し伸べた。

 

 

「姉さんとお呼びして……構いませんよね?」

 

 

「………」

 

 

「厳しい掟によって姉さんに強いられた過酷な日々の事は、どんなに侘びても足りません……」

 

 

「……知った口を」

 

 

「でも………今からでも、遅くない……」

 

 

尚も憎々しげに自分を睨む姉に対してアマテラスは、

 

 

「私達と一緒に、村に帰ってくれませんか?」

 

 

そう言った。

 

 

「………!」

 

 

驚きの表情でツクヨミは妹の顔を見上げる。

 

 

「私から村人達には話します。せめて普通の人間として、私達と共に暮らしていけるように……」

 

 

「……無理よ……」

 

 

ある意味では予想通り、ツクヨミから帰ってきた言葉は拒絶の言葉だった。だが、唯一予想に反しているのは、彼女の言葉が悲しげな響きを含んでいることだろう。

 

 

「そんな事ないです! 掟とて所詮人の定めた物! 人に変えられぬ筈は無い……!」

 

 

「違う、無理なのよ」

 

 

必死に説得するアマテラスの言葉にツクヨミはそう返す。

 

 

(……もしかして…ツクヨミが言っているのは…)

 

 

先程の様子を見る限り、ツクヨミの拒絶は感情からの物では無い。そう考えると一瞬、残酷過ぎる考えが亨夜の頭を過ぎる。アマテラスに伝えるのは残酷過ぎる考えだけに伝えるかどうか悩む。

 

 

「それは……」

 

 

「うるさいっ!!!」

 

 

ツクヨミの悲痛な叫びと共に大地が弾ける。

 

 

「くっ!」

 

 

「きゃあ!」

 

 

思わず仰け反ってしまう亨夜達。ツクヨミが先程まで蹲っていた所には、床に大穴が開いていた。そして、そこには既にツクヨミの姿は無かった。

 

 

「どこに…」

 

 

「………! 上よ!」

 

 

渚の言葉に従って全員が上を見上げると、宙に浮かんだツクヨミが、悲しげな瞳で亨夜達を見下ろしていた。

 

 

「姉さん!」

 

 

「うるさい! 私を姉と呼ぶな! ………もう遅い、無理なのよ!」

 

 

「そんなっ……それじゃ、あんまりにも……」

 

 

「何もかも捨ててしまった私には……もう戻れない!」

 

 

悲痛な響きを持って響くツクヨミの叫び。

 

 

「姉さんお願い、私と一緒に……」

 

 

妹の言葉を最後まで聞かず、ツクヨミはそれを打ち消すように悲痛な叫び声を上げる。

 

 

「人間共! 私を逃した事を後悔させてやるわ! 次に会う時には………一人残らず皆殺しにしてやるから!!!」

 

 

「姉さん!」

 

 

(…まったく…随分と下手な演技だな…。そんな泣きそうな声で言うことじゃないだろうが…)

 

 

アマテラスの呼びかけの虚しく、ツクヨミは虚空へとその姿を消して行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

つづく…

 




ってな訳で第六楽章の九話目でした。



翔「…どうコメントすればいい?」



何気にゲームより強いかもしれないツクヨミさんでした。



翔「その分、亨夜合流後は直ぐに片付いたな」



まあ、連戦ってのも有りますけどね。それでは、次回は朱雀開放から第一部完の期間までの予定です。では。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。