IZUMO ~蒼き戦士の戦記~ ~赤の英雄、蒼の復讐者~外伝   作:龍牙

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序曲-5-

「………無様だ。」

帰り道を歩きながら、そんな事を呟く。

ワーム相手とは言え仲間を巻き込みかねない戦い方、普段の亨夜らしくないあんな戦い方を見せてしまった結果、自分の手が傷つくのも構わず殴り続け、最後は味方に止められると言う結果だった。

「……らしくない……か。」

結果的に止められた挙句、矢車と剣の二人は怒るどころか『何か有ったのか?』と逆に心配されてしまったのだった。

「………オレも………最低………だな。ガタックに選ばれた時から、戦いには持ち込まないって決めてたものを…あんな形で持ち込むなんて…。」

…ガタックエクステンダーに関してはカブト(龍牙)と珍しくタッグで戦った時の無理が原因で『修理が不完全』と言う事も有り、再び預ける事となった訳で、彼自身謹慎中と言う事も有り、予備のマシン(マシンゼクトロン)の支給がされていないのが現状なのだ。

「…ん? あれは?」

前方に居るギターケースを持った男と見覚えのある後姿の女性。ギターケースを持った男は龍牙達と同じくZECTに所属していないゼクターの資格者…『風間 大介』…『仮面ライダードレイク』…一流のメイクアップアーティストで女好き。

恐らくナンパでもしているのだろう…だが…問題は声を掛けられている女性の方…あれは…。

「綾香さん;」

知り合いにナンパされている知り合い…どう言う対応すれば分からない情況が目の前に広がっていた…帰り道を変えて帰るべきかとも考えるが…。

「貴方はなんと美しい…まるで地上に降りた…えーと…えーと…。」

「……天使か……?」

「そうそう! それそれ! って、荒谷! 何故ここに!?」

風間が驚いて叫ぶと同時に蹴りを一発入れておく。

「…それはこっちの台詞だ! それにここは学校の帰り道だ。」

「あら、こちらの人、亨夜ちゃんのお友達なの?」

能天気な声で会話(?)に入り込んでくる綾香。

「いえ、ただの「そう、彼とは友達なんですよ!」って、ちょっと待て!」

亨夜が風間との友達発現を否定しようとした瞬間、亨夜の言葉を遮る様に彼の言葉に風間が思いっきり割り込んでくる。

「そうだったの。亨夜ちゃんにこんなお友達がいるなんて知らなかった。」

「だから、違う!!!」

彼女の天然っぷりを今更ながらに再確認しながら、互いに自己紹介をしている後からツッコミを入れるが、意味は無い様だ。

「私はきまぐれな…「仕事は良いのか?」…そう言えば、仕事に向かう途中でした。では、また改めて…。」

何時もの自己主張が始まる前に亨夜がそう呟くと風間はギターケースを持って立ち去っていく。

「さようなら~。」

そう言って仕事に向かっていく風間に手を振りながらそう告げると、改めて亨夜に向き直る。

「あの人、一流のメイクアップアーティストなんですって。立派なお友達が居るのね。」

「…そう言えばそうだったな…あいつ。あっ、所で…綾香さんは今帰りなんですか?」

普通ならば接点が出来ないであろう、風間の話題を続けられたくも無い亨夜はそう言って話題を変える。

「うん。今日は残業もないし。」

「そうですか。」

何時もと変わらないおっとりとした幸せそうな顔を眺めながら、それでも晴れる事の無い落ち込んだ気分に自然と声が暗くなってしまう。

「元気無いのね。」

「ええ、まあ。」

亨夜のすぐ後をゆっくりと歩きながら綾香は亨夜へとそう声を掛ける。綾香の家は亨夜の家のすぐ近くであり、帰り道はほとんど同じなのだ。

「何か悩み事?」

「…まあ…少し…。」

「なあに?」

「い、いや…あの…その、個人的な…問題なんで…。」

瞳を輝かせながら話を聞こうとする綾香に対してそうやって話しを誤魔化そうとするが…。

「うう、なんで相談してくれないの~?」

「あ、いや、そう言われても…。」

主に美由紀との喧嘩に対する事限定ならば、相談する事は別に嫌ではない。寧ろ、自分の学校の教師(保険医と兼任)でも有り、昔からの知り合いと相談相手としては悪くは無いだろう。単純に照れくさく言いにくいのだ。ライダー関係の部分を除いて…。

故に亨夜は綾香がもう少し食い下がって、自分の悩みを巧く聞き出してくれる事を期待する。

「ううー、私は学園の保険医なのよー? 学生の悩みを聞くのも仕事なのにぃ。綾香先生に相談したい事ないの?」

「ええと…。」

保健室の先生に泣きつくと言う言葉を想像して、弱虫っぽくて嫌だと考えてしまう。それ故に返事を躊躇していると…。

「…それに、昔は『綾香お姉ちゃん、聞いてよ』って色々話してくれたじゃない。小さい頃はお人形さんみたいに可愛かったのになぁ、亨夜ちゃん。」

ライダーの亨夜しか知らない人間が聞いたら思わず驚愕の叫び声を上げてしまいそうな事をカミングアウトしてくれるこの女性。

ガッシャン!!!

その言葉と共に後方で何かが倒れる音が聞こえる。それに反応した亨夜が素早く振りかえるが、そこには何も無かった…。

(…気のせいか…?)「って、そんな昔の事まで遡らないで下さい。」

有る意味、永遠に封印しておきたい過去の話。『普段の亨夜』も『復讐者の亨夜』も無く、両親や妹がワームに殺されて祖父の家に預けられた時の…小学校低学年の頃の話しなのだ。確かに…美由紀や七海に触れ合う事で無反応だった最初の頃から少しは進歩した時、随分と綾香に懐いていた時期の話しだ。

流石に小学校高学年になれば、恥ずかしいと思って呼び方も変えたし、甘える事も無くなったのだが…ある種、あの時期の経験が亨夜の中の『日常』を作り上げていったのだろう。

「私にとっては、亨夜ちゃんはあの頃の亨夜ちゃんとやっぱりおんなじ亨夜ちゃんなのよ?」

「あ、あはは…; 喜ぶべきか、悲しむべきか?」

思いっきり複雑な心境の亨夜だった。

「そんな訳で、今更恥ずかしがる事なんか何も無いんだから、ほら、吐いちゃいなさい。」

「いや、そんな…取調べか尋問みたいな。」

「言うまで逃がさないわよ。」

「……仕方ないな……。」

苦笑を浮かべながらも、内心、無理強いされる形で悩みを打ち明ける口実を手に入れた事で少しだけ安心する。

「…実は…。」

ライダーとしての行動…ワーム相手への八つ当たり等の事を省いて、一連の出来事について説明する。出来るだけ感情的にならない様に気を付けながら、なるべく客観的に事情を話していく。手紙に関しては偶然拾ったとだけ言ってガタックゼクターの事を隠して。実際、手紙を落としたのは本当のことなのだろうから。

「なるほど…。」

「…オレは…どうしていいのか…分からなくて…。」

「そうなの?」

「自分が間違っているとは思えない。でも、美由紀が泣いてるのを見ると…酷い事をしている様な気がして…。」

その結果があの無様な戦い方なのだ。こんな感情を戦いへと持っていく…最悪、自分だけでなく、一緒に戦っていた二人まで巻き込んでしまいそうな真似をしてしまった。…自分が間違っていると言えないだけに余計に心境としては複雑なのだ…それと同時に解決方法が見つけ出せない自分が情けなくて、腹が立っている。

そんな彼の横顔を見ながら、綾香は言う。

「……亨夜ちゃんは間違ってないわよ。確かに、悪いのは美由紀ちゃんだと思う。」

「……でも……あいつにも、なにか事情が有ったのかも…オレに言えないような…。」

自分もそんな事情を持っているから言える…。

「…オレは…それも知らずに…あいつを…。」

……だから割り切れないのだ。

「そうやって、美由紀ちゃんを思いやってあげる気持ちがあるなら、大丈夫よ。美由紀ちゃんだって、きっと分かってる。」

「…そう…ですか…。」

「優しいじゃない、亨夜ちゃん。いいお兄ちゃんしてるよ。」

「…正確には…従兄妹ですけどね。」

今の話しだけで何故こんなに自信一杯に言いきれるのか分からず半信半疑ながら、そう告げる。

「自信持って!」

他の人間にそう言われると自然に安心してくるのが分かる。

「それで……七海ちゃんは美由紀ちゃんサイドについてるのね?」

「まあ、オレがそう頼んだから。」

亨夜自身、巧く七海が美由紀を慰めてくれる事を期待してそう頼んだのだ。二人は親友どうしなのだから…。

「そっか。じゃあ私は亨夜ちゃんについてあげる。」

いきなり綾香がそんな事を言って優しく亨夜の頭を撫でる。

「え!?」

「だって、亨夜ちゃんだって味方は欲しいでしょ?」

「だ、大丈夫だ。これくらいは…自分で解決できるから。」

子供扱いされていると思って思わずそう断ってしまう。

「もう、そんな遠慮しないでっ!」

そう言って、ポンっと背中かを叩かれる。

「…あ、あはは…なんだかな…。」

亨夜は戸惑いながら、少しだけ気分が楽になるのを感じていた。

「……亨夜ちゃんはまだ若いんだから、うまく行かない事だって有るし、そう言う時は誰かに頼っても良いんだよ。」

「……綾香さん……。」

その言葉に今まで何度自分が誰かに頼ろうとしていたかと考えてしまう。『ライダーとしての自分は決して他人を寄せ付けず、一人で復讐と言う目的の為にZECTの中で上に行く事だけを考えていた。派閥も理解者も必要無い…。自分がガタックの資格者である限り、武器は有る。復讐が果たせれば、その時点で組織に価値など無かったのだから。』っと。

そんな事を考えながら、『悔しいけど、おっとりのんびり天然ボケ系に見えても、やっぱり、自分より年上なんだな。』等と失礼な事を考えてしまう。

(…オレが考えてるより、ずっと…オレや美由紀の事をよく分かってるのかもな…。)

自分で何とかしようと思っていた事も…意地を張っていただけ…そんな事事態、彼女にはお見通しのかも知れないと考えてしまう。

「まあ、難しい問題かも知れないけど、何とかなるよ。元気出してね。」

「うん………ありがとう、先生。」

思わず今まで似ない穏やかな声でそう答える。丁度話が一段落ついたそんな時に帰り道が分かれるT字路に差し掛かる。

「それじゃあ、また明日ね、亨夜ちゃん。」

「ああ、また明日…。綾香さん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま。」

と言って引き戸を空けた時、

「うわ!」

行き成り不機嫌そうな顔で美由紀が立っていたのに驚いて悲鳴を上げてしまう。

「………。」

「…た、ただいま…美由紀。」

凍り付きそうな位冷たい目で、見下ろす様に亨夜を睨みつける視線に恐ろしい物を感じてしまう。

「綾香さんと一緒だったんだね。」

「ん?」

突然の言葉に思わず呆気に取られてしまう。

「いたじゃない。綾香さんと。」

何時から、何処から見ていたのか、問い詰めるような口調で美由紀が言う。正確には綾香だけではなくもう一人、余計なのも一時居たのだが。

「ああ。一緒だった。」

別に否定する理由もないので亨夜も素直に答える。

「ふーん仲「おお、ここがお前の家か、我が友アラーヤ!」……誰?」

「神代?」

会話に割り込んでくる声に驚いて後ろを振り向くと、そこにはいつのまにか『神代 剣』の姿があった。何故か一緒に矢車の姿まで有る。

(まさか…。)

帰り道で聞こえた物音の正体に思い浮かびながら、何故ここに居ると言う様な事を聞こうとした瞬間。

「悩みがあるのなら、何故オレに相談しない。オレは相談においても頂点に立つ男だ。」

「…いや、それに頂点とか関係有るのか?」

剣へとツッコミを居れていると、ポンと亨夜の肩を矢車が叩く。

「その通りだ。悩みがあるなら、オレ達にも相談してくれ。何時でも相談に乗るぞ。」

「ああ…ありがとうございます。矢車さん。」

「よし、では早速、悩みを聞こう。」

何故か剣に引きずられて何時の間にか待機しているリムジンへと連れていかれる。

「今日は部下と一緒に宴会の予定なんだ、君も一緒にどうだ?」

「いや、これは強制参加って…あのー…美由紀さん。」

連行された亨夜を暫く呆気に取られていたが、それ以上は何も言わず美由紀は家の中に入っていく。

夜…祖父である六介へと連絡を入れ、バイト先の人達による焼肉屋での宴会に参加する事となったと連絡を入れてあったとは言え遅くなった帰宅。

「今度こそ、ただいま。」

「亨夜、ちょっと来い。」

帰ってすぐに後から亨夜の肩を誰かが掴む。

「じいちゃん。御免、理由は…電話を変わってもらった人、矢車さんって言うんだけど…。」

「いや、それはいい。何があったんじゃ? 美由紀ちゃん、随分とご機嫌ナナメじゃぞ?」

「いや、まあ…ちょっと、喧嘩した…それだけだ。」

「一人で食べてきたお前には分からんだろうが、あんな様子で部屋に篭られちゃ、晩飯作れとも頼めんし、困るんじゃ。亨夜、お前謝って仲直りして来い。」

「いや、何でオレが悪いことになってる。」

「そんなん知らん。いいか悪いかじゃない、お前と美由紀とどっちが飯を作るのがうまいか、つーことじゃ。」

その言葉に思わずずっこけてしまう。

「って、アンタは飯の心配しかし取らんのか!?」

「いいから聞くんじゃ。」

亨夜のツッコミを黙殺しつつ、彼に肩を叩いて諭すような口調で六介は言う。

「こう言う時はな、男が折れなきゃしょうがないんじゃ。」

「なんだそれ?」

「美由紀ちゃんはやきもちを妬いとるんじゃぞ。」

「はぁ?」

その言葉に思わず呆けた声を上げる。

(やきもち…美由紀が…オレに…?)「あのさ…従兄妹同士だろうオレと美由紀は。」

「いいから、謝って来いって、それで事が済むなら安いもんじゃ。」

「…いや、だから…なんでやきもちと思う?」

「お前、本当に分からんのか? あの子があんな風に意固地になるなんて、他に理由がないじゃろうが。」

やきもちと考えれば全ては説明がつく。そもそも…兄妹として育ってきたが、本来は従兄妹同士なのだ。…問題はないだろうが…一応、少しは問題あるだろう。と言うのは亨夜の弁だ。

「どうせ誰か他の女の子に鼻の下伸ばしてたんじゃろ。」

「…それに関しては、全面的に否定させてもらう…。」

そもそも、自分が考えるべき事は『復讐』だけ。今はそれ以外には考える事など…何もないのだ。

「……。」

「…ともかく、今回の事について言わせて貰うなら…謝るなら、あいつの方からだ。あいつはそれだけの事をやった…オレにじゃなくてな…。」

「わからん奴じゃのう。」

「分らず屋で結構だ。」

結局、その日は美由紀は部屋に閉じこもって外に出る事はなかった。…嘆くのは六介唯一人…結局、仕方なく亨夜が龍牙に頭を下げて料理アドバイスを貰う事で夕食を『一人分だけ』作る事となったのだ。(亨夜は矢車や剣に誘われて、食べてきたし。)

 

 

 

 

 

 

おまけ…

亨夜(いや、今日はZECTの…シャドウの集まりのはずだろう?)「何で、お前達がここに居る、龍牙、岡崎!?」

矢車「ああ、彼らも誘ったんだ。龍牙君にはシャドウに協力してもらっているな。」

龍牙「…正確には矢車さん個人に協力しているだけだ。」

亨夜(…なんだったんだ…何時かのオレの苦労って?)

亮也「すいません、肉追加。」

龍牙「…あとライスと烏龍茶を四つずつだ。オレ達は未成年だから、酒は飲めないだろう。」

亨夜「…普通に馴染んでるな、シャドウに。」

 

 

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