IZUMO ~蒼き戦士の戦記~ ~赤の英雄、蒼の復讐者~外伝   作:龍牙

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序曲ー6ー

目覚ましの音に目を覚まして、亨夜は目覚まし時計を止める。

「…また、妙な夢だったな…。」

当然ながら、今日は美由紀は起しには来なかったらしい。まあ、昨日の今日では当然と言えるが…。

(夢の中ではっきりと夢と自覚できる夢…確か、『明晰夢』と言う奴か。)

これで三度目となる夢を思わず冷静に分析してしまう。

訓練次第で夢の中とは言え、神様の様に自由に空を飛べたり、文字通り無から有を作り出したり、逆に有を無にしてしまう事が出来るらしい。

(…あまり、自由に出来すぎても面白くないと思うけどな…。)

思わずそんな考えを持ってしまう。自由に何でも出来るのは逆に退屈であり、ある種の最大の不自由の一つでもある。

(…でも、夢の中で自分の意思で行動できたと言う事は…本当にあれは『明晰夢』と言う奴か?)「どうでもいいか。」

自嘲気味な笑みを浮かべて服を制服に着替えると、そのまま下に降りる。所詮は夢は夢、映画を見ている感覚で十分だと切り捨てる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう。」

「うん、おはよう。」

「美由紀は?」

下に降りると挨拶をしてきたのは六介一人で、食事の用意もなかった事から考えると答えは自ずと見えてくるが、一応、尋ねて見る。

「……先に学園に行ったみたいだぞ。」

そう言いながら、六介が食べているのはカップラーメン。お湯を入れて三分で出来あがるお手軽な品物で有る。

その頃…

龍牙「うん。朝はやっぱり、和食だな。」

葱と豆腐のシンプルな味噌汁と、塩鮭、漬物、ベーコンエッグに白い御飯と純和風な朝食を取りつつ、龍牙はそう呟いていた。

(…何故だ…。朝から良い物を食べている龍牙を幻視した気がするのは? ……作者の陰謀か?)「…まだ怒ってるのか、あいつは?」

「今日こそは仲直りするんじゃぞ。このままじゃと栄養失調で死んでしまうわい。……ワシが。」

「って、自分だけか!?」

「昨日、自分だけ良い物食べてきた奴が栄養失調になどなるかい。」

六介にツッコミを入れつつ席に座り、カップラーメンにお湯を注ぐ。

「……なあ。」

「ん?」

ただ座っているのも暇なので会話をしようと口を開く、気になるのは…やはり今朝の夢だろう。

「…出雲学園って使ってない教室が一杯あるよな。」

「まあな。」

「じゃあ、その内の一つに……。」

「うん?」

「…死体が埋まっている事はないか、女子学生の? いや、入った後、様子がおかしくなるっていう奴でも良いか。」

「………っ! ぶはぁっ!!!」

亨夜の質問に六介は食べていたうどんを噴出してしまう。大体…後半はワーム関連なのだろう…どう考えても。

「うわ、汚い! うどんを噴くな!」

「けほっ…けほっ……お前、朝っぱらから何言う取るんじゃ!?」

「いや、そんな怪談があるかなと思っただけ…。」

「ないない! 有ってたまるか!!!」

「そうか。」

思いっきり怒鳴り返されてしまう亨夜であった。もっとも、問うの亨夜は、それを意に介さず呑気にカップラーメンを啜っているが。

通学路…歩きなれた道を道の一番隅に植えられている桃の古木を眺めながら黙々と歩いていく。内心、バイク通学の許可でも貰うべきかと思案してしまう。もっとも、問題はどう祖父に交渉するかだが。

「着いた。」

何時もよりも長く歩いた気がしてしまう一人での通学路、学園に着くと思わずそう呟いてしまった。

(七海ちゃんに挨拶していくかな? 昨日の事を改めて謝っておいたほうが良いだろうしな。)

何時もの様に中庭を通って弓道場へと向かう道を歩いた時、

「………。」

いきなり、目の前に美由紀が現れた。まだ怒っているのだろう、その表情は昨日と一切変わっていない。もっとも、夕方分かれて以来顔を見てはいなかったが。

「美由紀。」

「……何処行くの?」

「…弓道場。」

「……七海ちゃんのところに行くのね。」

「ああ。何を今更? 何時もの事だろう?」

問い詰めるような彼女の言葉に、亨夜の言葉も思わず棘の有る冷たい口調になってしまう。

「また、私に隠れてひそひそ内緒話をするのね?」

「……なんだそれは?」

呆れながらそう言った後、昨日の七海との電話を思い出す。

「…美由紀、お前…少しおかしいぞ? 七海ちゃんにまで酷い事を言ったらしいじゃないか?」

「……告げ口するなんて、ずるい子。」

顔を伏せながら美由紀はそう言い捨てる。

「…そんな訳ない事くらい、分かるだろう!!!」

「どうだか。」

「お前、いい加減にしたらどうだ? 七海ちゃんは親友だからあんな風に言ってくれるんだ。」

「ふん、お目当ては別に有るんじゃないの?」

そっぽを向いて、美由紀は吐き捨てる様にそう言った。

「……だから、どうしてそう言う結論になる?」

それに対して、亨夜は意味が分からないとばかりに思わずそんな言葉を返してしまう。

「お兄ちゃんに取り入る口実に私の事なんか持ち出して、ほんっとに嫌な子。」

亨夜はその言葉で自分の中の何かが切れた様な気がした。亨夜は、不機嫌の理由が自身に有るとしたら、自分に対して何を言っても構わないとは思っていた。寧ろ、そこから分かる事も有る。だが、本気で心配してくれている相手に今の言葉は許せなかった。

「美由紀!」

『パァン!』と乾いた音が響く、亨夜の平手が彼女の頬をぶっていたのだ。呆然として、ぶたれた頬を押さえる美由紀だったが…次の瞬間、

「うわぁ!」

ジェットコースターの様に急速回転する視界に情けない声を上げる。右腕をロックした上での素早い足払い……古流武術特有の間接と投げの複合技だ。

「ぐはっ!」

そして、そのまま思いっきり石畳にたたきつけられる。龍牙を除けば亨夜が地に伏す相手は彼女くらいではないだろうかとも思える、今日この頃。

(…少しは手加減しろ…。)

「………お兄ちゃんなんか、大っ嫌い!!!」

心底憎そうに捨て台詞を残して美由紀は走り去っていく。そして聞こえるのはチャイムの音色…。

「ふぅ、早く着替えて教室に戻らなくちゃ……って、うわぁ!」

更衣室へと急ぐ七海が、足元に転がってうめいている亨夜を見て悲鳴を上げる。

「な、七海ちゃん……。」

「先輩! 大丈夫ですか!?」

「あまり大丈夫じゃない……痛いし…寒いし……。」

本気で自分を心配してくれる七海の優しさに感動しつつ、心配する事無く、仮に目撃したらあっさりと流すであろう、龍牙の姿が簡単に想像できるだけにその感動も一入である。

とっさに受身を取ったのでダメージは軽減できたが、思いっきり床に…それも石の部分に叩きつける投げ技は、十分に亨夜を動けなくするほどの破壊力はあった。

「捕まって! 保健室に連れていきます!」

「本当にごめん…めんどうをかけて…。」

「でも、誰がこんな酷い事を。」

「………。」

『貴方の親友兼私の従妹です』と言うべきか思い、一瞬黙ってしまうと七海もそこから察してくれたようだ。

「はぁ………相当へそを曲げてるんですね。」

「そうみたいだ。」

爽やかな石鹸の香りと、弓道着の吸った汗の僅かな匂い、肩を貸している七海ちゃんのポカポカとした暖かく優しい背中が、愛しくて…(By 亨夜)

(…久しぶりに癒された気分だ…。情けないけど…微妙に幸せ…。)

ライダーの関係者達が聞いたら間違いなく、亨夜に擬態したワームかと勘違いしそうな事を考えている間に保健室へと到着する。

「あら、いらっしゃい。早くも本日一人目のお客さん?」

「お、おはようございます、綾香先生。」

「あら、七海ちゃん………と、うわっ、亨夜ちゃん、どうしたの!?」

七海に肩を借りて歩いてきた亨夜を見て思わず驚きの声を上げる綾香だった。

「いえ、ちょっと、美由紀に投げ飛ばされて……。」

既に隠しても意味はないので素直に白状する。

「はぁ………。あ、七海ちゃん、もういいわよ。後は任せて、早く授業に戻って頂戴。」

「はいっ、お願いします。……じゃあ、先輩、また後で。」

「ああ、ありがとう。世話になったね、七海ちゃん。」

「いえいえ、どういたしまして。それじゃ、失礼します。」

亨夜の礼にそう返して『ぱたぱた』と七海がドアを閉めて去っていく。綾香は亨夜の上半身を脱がせて後を向かせて、地面に叩きつけられた背中のあちこちを撫でたり、押したりする。

「つぅ。」

「あら、ごめんね……ここは?」

「ぐ。」

「………。ここは?」

「いっ。」

「あらら、ここまで派手にやられるものなのね……。」

「酷い物ですか?」

流石に病院送りだけは勘弁して欲しい。…ライダーバトルやワームとの戦闘ではなく、兄妹(?)喧嘩で病院送りになった仮面ライダー…格好が悪すぎる。

「ううん、タダの打撲。ただ背中全体を叩きつけられているから、こりゃあ、暫く相当痛むわよ。」

「うわぁ…。」

受身を取っていてもそのダメージ…。…これで、無防備に受けていたらどうなっていたのだろうかと考えると、それだけでも恐ろしい。…『有る意味、彼女もカブトの適合者に向いているのでは?』等と考えてしまう。

「もう、お兄ちゃんなのに情けないなあ。」

「素手であいつに勝てる男はそうはいないと思います…。」

綾香に背中をスプレーで冷やして貰うと逃げる様に保健室を出て朝の授業に向かうのだった。

…『日常生活ヘタレ』…その称号は相変わらずであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

痛みに耐えつつ教室にたどり着いた亨夜が一時間目の支度をしながら一息ついていると、

「亨夜ー!」

「渚?」

笑顔で渚が近づいてくる。

「何よ、その心底嫌そうな反応は?」

「…心底嫌なんだ…。」

「むかっ! ……まあいいわ、とにかく今はそれどころじゃないのよ。」

「今日はどうしたんだ?」

「これよ!」

バン! っと、亨夜の前に出現した包み紙。中身は想像できる…ある種、必殺技級の破壊力を持った例の代物。

「もう一度、ケーキ勝負よ! さあ、食べなさい!」

「………。」

「『三度目の正直』よ! 絶対美味しいから。」

「…『二度有る事は、三度有る』とも言うぞ。」

「………。」

亨夜がそう言うと渚はどこからか剣を抜きつつ、睨みつけてくる。

「分かった。食べるから、剣を収めてくれ。」

亨夜の言葉に満足したのか、剣を収める。

「よろしい。……最初から素直に食えばいいものを。」

「…渚、酷っ!」

覚悟を決めて包み紙を開き、渚の作った少なくとも見た目はまともなカスタードケーキを手に取り、過去の経験から行き成り食べるのは戸惑われるので、まずは外見からとばかりに観察する。

「…相変わらず外見だけは完璧だ。」

「だけって言うな!」

「問題は味だ。」

「食えば分かる! さあ!」

「…分かった。」

覚悟を決め、手に取っていたカスタードケーキを恐る恐る口に運ぶ。一瞬の沈黙、亨夜がケーキを口に運び、咀嚼し飲み込むまでの間に流れる、短くも、当人達に取っては長い沈黙。

「……………どう?」

「おお……。」

「や、やっぱり不味い?」

不安そうに聞いてくる渚。

「いや、大丈夫だ。これなら食えなくない。」

ケーキ生地はガチガチに固く、しかも粉っぽいが、カスタードクリームの甘さで誤魔化せば、食べれない事はない。はっきり言って過去二回の経験からの進歩として考えれば大きな進歩だろう。

(…美味いとは言えないが、まあ食えるだけましか。)

そう思いながらも口に出していないのは亨夜自身過去の経験を吸収して進歩していった証拠だろう。

「やったぁ!」

そんな亨夜の心の内を知ってか知らずか? 渚は素直に喜びの声を上げ、ガッツポーズで飛びあがる。

「ああ、驚いた。三日の間でここまで上達したのはすごいぞ。」

「ほんと!? 嬉しいっ!!! 三時起きで頑張った甲斐があったわ!」

「朝から碌に食べてないし。これなら、腹の足しにはなるな。」

「ふふん、やっと私の実力のほどを認める気になったのね!」

そう言ってケーキを口に運ぶ亨夜を見ながら、渚は満足げに笑いながら言った。

「いや、食べ物のカテゴリーに入った訳で有って、断じて美味いわけじゃないぞ。」

ケーキの最後の一口を飲み込むと、亨夜は渚と自分の認識の差を補足する様にそう言いきった。

「……きーっ! なんでそう一言多いのよ!」

何処からともなく剣を抜き放つ。

「いや、だから、剣は止めろ!」

「問答無用!」

亨夜の静止の声も聞かず、そう叫び、渚は亨夜へと襲いかかる。

(しまった、さっきのダメージがまだ!?)

流石にさっきのダメージがまだ残っているのだろう、流石の亨夜も避ける事しか出来なかった。

「亨夜のバカ~~っ!」

剣を振りまわしながら叫ぶ渚、その剣を必死に避ける亨夜。何時もの光景が繰り広げられていくのだった。

さて、四時間目の数学の時間帯。三時に起きたと言う渚が机に突っ伏して眠っていて、先生に指されて慌てると言う珍事が有り、今朝のケーキの礼にと亨夜が回したカンペによって事無きを得たと言う事件があったが、それ以外は問題なく過ぎ去り、時は昼休み。

(さて、今日は気分を変えて学食で何か食べるか。)

既に『キング・オブ・カニコロパン』の称号を得ている亨夜だったが、毎日同じ物では飽きが来る。第一今朝の渚のケーキのお蔭で空腹ではないのだから。

「おお、亨夜、いいとこで会った。」

そう考えて廊下へと降りた時、今来たばかりだと言う感じの理事長…六介と出会うのであった。どうでもいいが、昼になってからとは重役出勤と言っても遅すぎるのでないだろうか?

「いいとこってなんだよ、じいちゃん?」

「さっき、美由紀ちゃんとすれ違ったんじゃ。まだ、ご機嫌斜めじゃったぞ?」

「……そうだろうな…今朝も投げ飛ばされたし。」

「早いとこ仲直りするんじゃぞ……。」

「それができるなら、したいけどな……。」

そう言って六介と分かれた後、今後、少なくとも食事の問題を解決しなければ、色々と拙いだろう。

(…龍牙の頭を下げて作りに来てもらうべきか…? いや、ライダーの関係者はなるべくじゃ、近寄らせたくないし…。)

今後の食糧問題を解決する策を思案するが、一向に良い考えは浮かんでこない。そんな事を考えながら売店の前を通りかかる。

そこには何時もの様にカニコロパンを求める餓狼(生徒)達が群がっていた。『キング・オブ・カニコロパン』と呼ばれるほどに勝利の栄光(カニコロパン)を得つづけた男は、余裕の表情でそれを眺める。

「そうだ。」

何かを思いつくと亨夜はその列の最後尾へと並び、

「おばちゃん、カニコロパン一つ。」

例によって何時もの如く、ライダーとして鍛え抜いた身体能力を最大限に活かしつつ、カニコロパンを得ると、大事に鞄の中へとしまう。

「あとで美由紀にやるか。大好物だからな。」

子供じゃないのだから、この程度で仲直りできるとは思えないが、少なくともきっかけ程度にはなるだろうと考える。その時、

「あの……亨夜先輩。」

「ん?」

後から誰かに声を掛けられた。

「君は。」

「あのっ、さ、坂下留美ですっ、昨日はごめんなさい……。」

後を振り向くとそこには昨日の少女…坂下留美が立っていた。美由紀のクラスメイトで、亨夜と美由紀の喧嘩の原因で、彼に憧れているという少女。

「ああ。一応、言っておこう、はじめまして。」

「あの、昨日はなんか美由紀ちゃんに酷い事言っちゃって……。」

「いや、気にする事はない。あれはどう考えても、美由紀が悪い。」

「言い過ぎたと思って謝ったんだけど、すごく美由紀ちゃん怒ってて。」

(…彼女に対して、お前に怒る権利はないと思うオレはどうかしているのか…?)

「私のせいでお兄ちゃんと喧嘩になったって。」

「なんだそれは…?」

美由紀の様子を聞き思わず頭を抱えてしまう。

「それで、せめて先輩にだけでも、迷惑掛けたことをちゃんと謝りたくって。」

留美は俯いて亨夜から視線をそらし、落ち着かなさそうにそわそわしながら、そんな事を告げる。

なけなしの勇気を出しての告白が、こんな結果へと繋がってしまい、一番の被害者は彼女だろう。

「いや、あれはどう言われても仕方ない。悪いのは美由紀だ。寧ろ、折角の告白の返事も出来ずに…誤るのはオレの方だ。」

優しく笑いながらそう言って亨夜は留美を安心させる。

「そ、そんな…。」

頬を赤らめながら恥ずかしげに亨夜を上目遣いで見上げる可愛らしい仕草、恋までは発展しなくても、好感だけは持つには十分だろう。

「返事だけど…。」

「はい…えっ? 返事って?」

何の話しだか分かっていないという様子で留美が返す。

「ラブレターの返事だけど…。」

「は、はいっ! そう、返事! 手紙の返事ですねっ。」

彼女自身半ば諦めていたのだろう、亨夜の言葉が意外だとでも言う様に慌てて姿勢をただし、緊張した様子で答えを待つ。

「いや、そんなに緊張しなくていい。」

「は、はい。た、たって、私、告白するのも答えを聞くのも初めてだから。」

「それを言ったら…オレも、答えを言うのも、告白を受けるのも初めてだ。」

そこで彼女の緊張を解す様に一呼吸だけ空ける。有る意味、どう返答すべきか迷った挙げく、少なくとも今の自分に出せる最も適切な答えを告げる。

「…オレはまだ君の事は何も知らない。だから、彼女としてどうか? と聞かれても返答に困る。だから、先ずは友達から…って言うのはダメかい?」

ぱちぱち、と瞬きをして、彼女は声も出さずに固まっている。

「……? どうした、留美ちゃん?」

「い、いえ、だだだ、ダメじゃないです、喜んでっ!」

やっと意味が分かったと言う様子でどもりながら、慌てて返事をする。

「そうか。じゃあ、今からオレ達は友達って言う事で。」

「…と言う事で?」

「先ずは昼食でも一緒に食べようか?」

そう言って学食を指差しながら、美由紀の兼でのお詫びも兼ねて亨夜は留美を誘う。

「は、はいっ!」

二人が並んで渡り廊下を抜けようとした時、

「………。」

「きゃっ!?」

「……お前な。」

怒りに燃えた瞳で何時の間にか美由紀が二人を睨みつけていた。

「留美ちゃん?」

「な、なあに、美由紀ちゃん?」

絶対零度の超低温を感じてしまいそうな声で美由紀が口を開くと、その声に怯えて留美は後ろに数歩下がる。

「……良かったわねえ、お兄ちゃんと仲良しになれて。」

「う、うん……あの。」

留美が何か言おうとした時、彼女の言葉を遮って、美由紀が言う。

「……私とお兄ちゃんを仲違いさせておいて、自分だけ幸せになるんだ。ひどいよねぇ。」

「そ、そんな。」

絶句する留美を見下ろしながら、なおも美由紀は笑いながら言葉を告げる。

「あははははは、別にいいよ。好きにしたら? だって、私なんか、絶交なんでしょ?」

「あ、あれは……勢いで。」

「ふん、いいわよ。こっちこそせいせいするわ!」

「み、美由紀ちゃん……。」

「お兄ちゃんも…貴方も…大ッ嫌い! 勝手に、どこででも好きなだけいちゃいちゃしてればいいのよ! 私なんかほっといて!」

そんな捨て台詞を残して、美由紀は踵を返して亨夜達の前から走り去っていく。

「あいつは…。ごめん、留美ちゃん。オレは美由紀を。」

「は、はい。」

 

 

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