1単位から始める魔法学園生活   作:山城京@カクヨム

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第6話 気がかりなこととやるべきこと

 いつまでも教室にいるわけにもいかなかったので、俺達4人は学生街にあるカフェ「ショコラ」へと向かった。そこで作戦会議と題して議論をすることになった。

 

「まず、サーシャはどんな奴に単位を奪われたんだ?」

 

「ですから、私は単位を奪われたのではなくてあげたんですよ?」

 

「あーつまり、人それを新入生狩りにあったと言うんだよ」

 

「ガイダンスでも説明されたでしょ? 言葉巧みに新入生に単位争奪戦を仕掛けて単位を奪っていくって。サーシャはその被害に遭ったんだよ」

 

「ええ! でもそんな悪い人には見えなかったような……」

 

「詐欺師は皆人の良さそうなフリをするのが上手いものさ。だから、サーシャはそいつから奪われた単位を取り戻さなきゃいけないんだ」

 

「んでも、一回生の俺らが上級生に単位争奪戦挑んでも受けてもらえるもんかね? この時期の一回生なんて大した単位持ってないだろ」

 

 フレッドの言うことはもっともだ。だが、俺はそこにこそつけ込む隙があると見ている。

 

「普通に考えれば、一回生の、それも入学二日目の俺達は最初に与えられたスキル以外持ってない。だから、真面目に進級した上級生にただ単位争奪戦を挑んでも負けるけど、新入生狩りなんてやってる奴は落ちこぼれだと俺は思う」

 

「たしかにね。ちゃんと真面目にやってる上級生は相応のスキルを持っているだろうし、そもそも新入生狩りなんてする必要ないだろうしね。だから、私達にも勝ち目はあるかも」

 

「そうだ。それに加えてさっき退学を賭けた単位争奪戦の学園からのインセンティブについて調べたんだが、どうやら賭けた単位と同額の単位が勝者に与えられるらしいんだ」

 

「なるほどねえ。俺ちゃん読めてきたぜえ。この時期の一回生に負けるなんて考えないだろうから、チーム戦を挑むわけだ。そうすれば、ベッド単位数も多くなるから、単位に目の眩んだアホな上級生は簡単に挑発に乗るって寸法だ」

 

「だがこの作戦にも欠点はある」

 

「相手が予想通り挑発に乗ってくれるかは皮算用的な面があるよね」

 

「それもそうだが、そもそも現在所持してるスキルで上級生に勝てるのか問題だ」

 

「あーたしかに。ちなみに俺のスキルは戦闘にはあまり適さないぞ」

 

「私のスキルは他の人に身体強化をかけるスキルです。一人では戦えないです」

 

「アイシャは?」

 

「んーなんか爆発系のスキルみたいだけどよくわかんないんだよね」

 

「で、残ったのは俺のスキルか。厳しいな……」

 

 わかってはいたが、一回生が上級生に勝つのは並大抵のことでは実現しないようだ。俺のスキル、土を灰に変える能力、これも戦闘向きとはとても思えない。

 

「どーっすかなあ……」

 

「しゃーない。俺ちゃんがサーシャちゃんから単位を奪ったやつの情報を探ってくるよ。とりあえず顔と名前くらいは知りたいね。覚えてる?」

 

 フレッドの問いかけにサーシャは人差し指を顎に添えて思い出しながら口にする。

 

「んーと、お名前はたしかベルナルド・フスコさんだったような……」

 

「見た目は?」

 

「金髪のパーマがかかっていて、頬にそばかすがありました」

 

「オッケー。それだけわかれば十分だ」

 

「ホントに大丈夫なのかよフレッド」

 

「なーに俺ちゃんに任しとけっての! こういう情報を収集するのは俺の得意技なの」

 

「今できるのはこんな感じかなあ。なんかあまり問題解決に向かって進んだ気がしないけど、ごめんねサーシャちゃん」

 

「いえいえ、私のためにここまでやって頂けただけでも嬉しいです」

 

 これ以上議論しても物事が進まないだろうということで、今日はここで解散して、後は各々が履修した講義を受けることになった。

 

 履修した講義の都合上、四人一緒に講義を受ける機会が基礎魔法学以外になかった。そのため、真面目に講義を受けようと思ったのだが、俺の脳裏には二つの心配事があった。

 

 一つはサーシャの奪われた単位をどう取り戻すか。そしてもう一つは――。

 

「クロエ先輩……」

 

 昨日見たあの背中がどうしても忘れられなかった。

 

 果たして本当にクロエ先輩は私利私欲のためだけに新入生狩りを行っているのだろうか。

 

 会って間もない上に、大した話しをしたわけでもない。だけど、どうしてかあの人のことが気になる。

 

 初めて会ったあの時、俺がプレートを持っていないと言ったらあの人は大講堂への道をデタラメに教えただろうか? 俺にはとてもそんな風な人には思えなかった。

 

 そうしたことを考えていたら、気がつくと今日履修した講義を全て終えていた。つまり、放課後になってしまっていた。

 

「はぁ、やっちまったな」

 

 講義内容が全然頭に入っていない。ダメだな、いつまでもこんな調子じゃいけない。どこかで気持ちを切り替えて、まずはサーシャの単位を取り戻すことに集中しよう。

 

 ぶらぶらと学生街を歩いて時間を潰して腹を空かせた俺は、学食では早い夕飯を食べた後、寮へと戻った。

 

「フレッドはいないのか……」

 

 たぶん、今朝話してたようにサーシャから単位を奪った奴の情報を収集しているんだろう。

 

 一人になると余計なことばかり考えてしまう。俺の悪い癖だ。こんな日はさっさと寝るに限る。少し早いがもう寝てしまおう。

 

 帰ってきたフレッドが困らないように、一つだけ灯りを点けたままベッドへと潜り込んだ。

 

 

 翌日、フレッドが情報を集めてきたということで、俺達は再びショコラに集まっていた。

 

「昨日今日で情報を集めてくるなんて、お前すごいな」

 

「俺っちの手にかかればお茶の子さいさいよ。どうよ女性陣、好感度上がった?」

 

「はいはい、上がったから早く教えてよ」

 

「フレッドさんはすごいですねえ。優秀さんです」

 

 好感度かどうかはともかく、純粋なサーシャの中ではフレッドという人物の株が上がったのは間違いなさそうだった。

 

「サーシャちゃんマジ女神。まあそれは置いといて、いいか? フスコって野郎は端的に言って落第寸前の落ちこぼれ野郎だ。真面目に講義にも出ずに、自分よりも弱い奴にだけ単位争奪戦を挑んでは単位を得てるって野郎だ」

 

「ってことは条件が一つクリアされたな。俺達が単位争奪戦を挑んだら受けてくれそうだ」

 

「だな。んで、これが重要。なんでそんな野郎が二回生になれたのかって話だが、それは奴が所持してるスキルの特殊性に原因がある」

 

「すごい強いスキルでも持ってるの?」

 

「強いっていうか、珍しいスキルだ。操作系のスキルで、土でできたゴーレムを操れるらしい。でもその操れるってのがお粗末でな、簡単な命令しかできないらしい。どうだ? 勝ち筋はありそうか?」

 

 土でできたゴーレムか。ゴーレムというと力強い人形を思い浮かべるが、いくら簡単な命令しか実行できないとはいえ強力であることには変わりないだろう。

 

 ……待てよ、俺のスキルと相性がいいんじゃないだろうか。

 

「確認だが、そのゴーレムって一度に何体も出せたりするのか?」

 

「まさか。そんなに有能な奴なら新入生狩りなんてやってねえよ」

 

「なら、いけるはずだ」

 

「エル、なにか考えがあるの?」

 

「考えってほど考えじゃない。けど、やるしかない。後は勝利条件だ。こちら側がルールを設定するような流れに持っていく。その条件さえクリアできたら、後は流れでいくぞ」

 

「そんなこと出来るんですか~?」

 

「出来る出来ないじゃない。やるんだ。よし! そうと決まれば早速フスコを探しに行くぞ」

 

「そう言うと思って優秀な俺ちゃんはもう誘き出してたりして」

 

「マジかよ」

 

「フスコの部屋にラブレターを置いてきたからな~。今頃は校舎裏でソワソワしながら俺らが来るのを待ってるはずだぜ~」

 

「なんて惨いことを……」

 

 邪悪な笑みを浮かべ、「イシシ」と笑うフレッドに空恐ろしいものを感じながらも、同時にフスコに同情してしまった。男の純情を弄ぶのはよくない。

 

「私にはとても思いつかない作戦ですねえ」

 

「……もしかして、フレッド君ってほんとに優秀だったりして……?」

 

「フレッドが優秀かどうかはともかく、フスコの居場所がわかっているのなら話しは早い。とっとと行ってサーシャの単位を取り戻すぞ」

 

 そうして、俺達はフスコが待つ校舎裏へと向かった。

 

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