ハイスクールD×D~ベルの魔王が死んだとき   作:山寺獄寺

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※にじファンからの移転作です。

「ハイスクールD×Dとデビルサバイバーを混ぜたら面白そう」っていう妄想からスタートさせてみました。

主人公はデビルサバイバー オーバークロックでの魔王ルートを進んだ設定にしてあります。

少しばかり独自設定的な部分もありますので、そのあたりは優しい目でお願いいたします。

出来るだけゲーム未プレイの方にも解っていただけるように努力していきます。


魔人、死す

大天使メタトロンを倒したと同時に、俺のベル神(英雄)としての役割は終わった。

 

それでいいんだ、と思う。別段、今の生に未練があるわけでもないから。

ハルが言っていた「アンタからは夜の匂いがする」という言葉はまさしく正しいんだ。

そのことを言われたときは、内心の驚きを隠そうと必死だった。

 

いとこから無理矢理渡された悪魔召喚の力、ベルの王との戦い、そして魔王になるという決断。

 

そして――終焉――。

 

魔王になって何かがしたかったわけでもない。いとこは「魔王になれば、どんなことでも思い通りだ」なんて声高々に叫んでいたが、俺からすれば「くだらない」の一言ですんでしまう。

 

ただただ、生きたかった。

生きて、地獄のようだった東京から抜け出したかった。

それだけの話だ。

 

ベル神もくだらない。

 

神も、天使もくだらない。

 

悪魔もくだらない。

 

人のすぐ後ろに潜んで欲望の声に愉悦を見出す悪魔。

 

人の上に佇んで人を管理していた神。

 

そのどちらもが、その存在としての役割としては正しいのだ。

 

欲望によって人間を堕とそうとする悪魔と……。

 

人を律して彼らが正しいと思う道に導く天使。

 

そんな二つを比べるのはそもそも正しくない。

いや、正確には比べようがない。

だから、好き嫌いの判断なんて結局、人それぞれの感覚でしかないんだから。

 

 

そういった取捨選択の上で俺は魔王になることを選んだんだから。

 

 

天使として神の試練に立ち向かおうとした翔門会の巫女も、

 

最後の抵抗としてすべてを殺しつくそうとした男も、

 

自分の愛した女のために命がけで戦ったバーテンも、

 

愛する息子のために必死に包囲網と抜け出そうとした父親も、

 

困った人を助けるために、自分が恐怖の対象となっても誰かを救おうとした少女も、

 

許せない現実に打ちのめされて断罪をもって正義を貫こうとした少年も、

 

真実を求めて必死に生きていた少年も、

 

そして、絶望の中で必死に生き足掻いていた少女も、

 

命の価値を見失いながらも歌を歌い続けた女性も、

すべてが自分なりの決断をもって生きていた。

 

だから、俺は何より人間が好きだ。

 

あの囲いのなかで、絶望に打ちのめされても、必死に一日でも生き抜こうとしている人間の姿が、あまりにも眩しかった。

 

『生きたい』というあまりにも純粋で無垢で原初な願いが満ち溢れていたから。

 

そんな彼らのために、俺はベル神になったんだ。

 

 

最後の戦いも終わりを告げた。東京封鎖も終わることだろう。

 

俺の役目は終わったんだ。

意識だけが、すうっと自分の体から抜けていくような感覚。少しずつもやが掛かったように思考が間延びしている。

 

「ふぅん、コレが『死』か」

 

周りにいる仲間たちに聞こえないように、ポツリ呟いた。

 

特に、恐怖はない。

むしろ当然だと思っている。

あまりにも俺は生き急ぎすぎた。人間の体に六柱もの魔王を溜め込んだのだから仕方のないことだ。

 

けれども、消えいく意識のなか、俺の体の内側に途轍もない力が生まれつつあるのを感じていた。

 

ゆっくりと自分の腹部にそっと指を這わせる。

 

その手の平に感じるのは新たな王の息吹だった。

 

――なるほど、コイツが正当なるベルの王か。

 

俺のなかに集まったベル神の欠片。それがひとつに戻ろうとしている。

 

コイツは魔王としてどう生きていくのだろうか?

 

力強くも高潔な力の奔流。

 

もし仮にコイツが暴君であるならば、俺はコイツを殺さなくてはならない。

 

そう覚悟した瞬間、

 

〈我は悪魔を導く者。人間を滅ぼそうとは思わぬ。されど、人間が我らに牙を剥くならば、そのときは知らぬがな〉

 

厳かな声が頭に響いた。

 

なぜかは解らないが、この声の主が、俺の体から生まれつつある魔王のものだと解った。

 

だから、死に逝く寸前でありながら、のんびりと会話を続けていた。

 

人の世界を支配する気は――?

 

〈ない。天使は天界で、人は人の世で、悪魔は魔界で生きていく。その住み分けは必要なものだ。その境界を侵す気はない。人の思いによって召喚されることはあっても、我らから人間に手出しはせんし――させぬと誓おう、父上〉

 

父上、か。

 

高校二年で魔王の父親になるとは思わなかったな。

 

〈ククク、死ぬ間際にて、そのような思考が出来るとは……やはり面白い人間よな〉

 

どこまでも楽しげな声色だった。

俺の役目は終わったからな。あとはお前に任せるさ。頼んだぞ、息子よ。

 

〈任せよ、父上。ただし、この世にある改造COMPはすべて破壊し、父上の親類の――確かナオヤと言ったか、彼は殺す。彼の者はあまりに危険すぎる〉

 

それぐらいは仕方ない、か。コレはあまりにも危険すぎるからな。そんなことを考えながら、左手で握りこんでいたCOMPに力を込める。それだけで、COMPはガチャリと不穏な軋みを立てて武骨な機械部分を露わにして、そして二つに裂けた。破片が俺の皮膚を裂いたのか、手の中に妙な生温かさを感じる。痛みがないのは、俺の生が終わりつつあることの証明か。

 

不意に、一気に視界が狭くなった。見えている範囲も砂嵐が起きているように灰色に掠(かす)れ、明滅を繰り返す。そんな視界の真ん中で、仲間たちが駆け寄ってくるのが見えた。その顔は一様に慌てていた。ナオヤの顔にも驚愕が張り付いているのが見えて、内心笑みがこぼれる。

 

――じゃあ、さよならだ。

 

〈さらばだ、父上。それにしても――〉

 

別れを告げた俺に対して、どこか含みを持たせるような言葉を掛けてくる魔王。

 

なんだよ。

 

〈自らも魔王となり、そして新たな魔王を生んだ父上が、当たり前のように死ねるとお思いか?〉

 

その言葉が聞こえた瞬間――。

 

〈――『魔人の物語』はまだまだ終わらないのだぁッ、てね〉

 

突然聞こえてきたその言葉に導かれるかのように、俺の意識はどこかへ連れ去られた。

 

〈では、父上を頼みましたよ、混沌殿〉

 

〈はいはい任されましたぁーよッ!、と。ワタシもこーんな面白い人間を死なせるのは惜しいからねッ〉

 

 

 




第一稿終了。
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