死にたがりのTSVR戦記   作:竜野 ニア

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2話 身体検査

 片付けが終わった白夜は、現在リビングにいた。

 

 今のからだがどこまで動かせるか確かめるためである。

 

「まずは」

 

 白夜は近くにあったゲームセンターのコインを拾い上げた。以前、陸斗達と裏表をあてるゲームをした時に使ったものだ。なぜそんな事をしていたかというと暇だったから。

 

 それを指の上にのせ、深呼吸してから、指を弾く。

 

 ピィィン、という音とともにコインが回転しながら宙を舞う。

 

 頭の奥でバツン!という、なにかが切り替わるような音が響いた。

 

 すると白夜の視界では世界から色が抜け、コインに描かれている文字がはっきりと見えるくらいに回転が遅くなる。

 

「………」

 

 しばらくそれを眺めた後、世界に色が戻り、落ちてきたコインを掴む。

 

 やった事としては簡単だ。人間の脳にはリミッターが設けられており、本来は全体の機能の30パーセント程しか使えない。それを外し、集中力を限界まで高めただけのことだ。もちろん身体能力の底上げも出来るが、最悪筋断裂を起こしたりするのであまり使わない。

 

 いわゆる、火事場の馬鹿力というやつである。

 

 白夜はそれを自分の意思で引き出すことが出来る。愛夜華はとあるゲームにちなんで『リフレックスモード』とか呼んでいたが、もちろん敵に発見される必要はない。ちなみに白夜もあのゲーム大好きである。

 

 以前、少し死にかけた事があったので、その時にコツをつかんだ。転んでもただでは起きないとはこのことである。

 

 だが、白夜自身これがあまり好きではない。自分の身体が生きろと言っているようで嫌なのだ。

 

 ──自分はこんなに死にたがっているというのに。

 

 

 

 それから数時間程からだを動かし、身体能力は以前と変わらないことが分かった。そして視覚、聴覚、嗅覚が以前にもまして鋭くなっていた。元々人間にしてはかなり良い方だったのが、さらに強化されている。

 

「なんでだろ? まあ、いっか」

 

 当の本人はその程度の認識のようだが。

 

 ふと、時計を見ると、すでに昼の一時前だった。

 

「あー、ご飯食べなきゃなんないのかあ、めんどくさい」

 

 朝も食べずに今まで数時間ぶっ通しで動き続けており、胃も空腹を訴えてきているが、ただめんどくさい。動き続けてからだがだるいというのもあるが。

 

「……まあいっか、ないとは思うけど戻ってるかもしれないし、ないとは思うけど」

 

 そんなに期待してないので二回言った。

 

 それでも面倒には変わりないので、冷蔵庫にあったものと朝の残りのご飯で簡単なチャーハンを作った。

 

 味はしらない、というよりここ数年あまり気にしてないが、だてに数年間毎日料理を作り続けてない、しっかり美味しそうにできた。味はしらん。

 

「いただきます。………はぁ」

 

 ひと口食べた後、ため息を吐いてまたもそもそと食べ続ける。やがて食べ終わり、

 

「ごちそうさま。………そりゃそうだよねぇ」

 

 これは朝ベットから落ちたあたりから分かっていたのでたいした発見ではない。

 

 それからさっさと片付けを終えた白夜は、からだが本格的に眠気を訴えてきたのでリビングのソファーに倒れこんだ。

 

(このからだは体力が無い、っと。まあどうでもいいや。ねよ)

 

 白夜がそんな事を考えつから数秒ですぅすぅという寝息が聞こえ始めた。

 

 の○太君程とは言わずとも、かなり寝付きは良いようだ。

 

 その後、目を覚ますといつの間にか帰ってきていた三人が白夜の寝顔を覗き込んでおり、「なにしてんの?」とツッコんだのだが、それはまた別の話。

 

 

─────────────────

 

 

 結局病院に行く事になり、現在白夜の通っている近場の病院の待合室に母こと由美と二人である。

 

 先程由美が買って来た赤いヘアピンを前髪でクロスするようにとめ、同じく赤いヘアゴムで首の後ろで髪をまとめており、首と手首にはいつもの黒いチョーカーとリストバンドの代わりに包帯が巻かれている。なぜ赤なのか聞くと、「白い髪に黒いのもおかしくない?」とのこと。多分趣味だろう。

 

 ちなみに服装はズボンは全て大きかったので上から大きめのサイズのパーカーを着ている。前にチャックとか付いてないやつである。下着? あるわけないじゃん。

 

「しょっぱなからこれはどうかと思いますが母上?」

 

「仕方ないでしょ。服無かったんだから。大丈夫、見た目は可愛いわよ」

 

「見た目じゃなくて中身の話なんですけどね?」

 

 二人がそんな話をしていると、名前を呼ばれたので診察室に向かう。診察室に入ると、

 

「くみちゃん久しぶり」

 

「……しろ? どしたのその格好」

 

 白衣を着た黒髪を短く切りそろえた女がいた。もちろん医者である。

 

 白夜にくみちゃんと呼ばれた彼女は、紅月 久美子(あかつき くみこ)白夜の担当医で、研仁の上の妹でもある。

 

「それを診てもらいに来たんだよ?」

 

 

 

 その後の診察の結果、

 

「DNA鑑定とかはまだ結果が出ないから分からないけど、事例は少ないけどおそらく『性転病』だと思われますね」

 

「なに? それ」

 

「……まんまじゃん」

 

 白夜と由美の質問に、

 

「まあ読んで字のごとく性別が変わる病気だね。ざっくり言うと遺伝子のバグ?」

 

「本当にざっくりね」

 

「………」

 

「ただ気になるのが、性転病では体格が大きく変わることは無い、ってところかな?」

 

「そうなの?」

 

「………」

 

「性転病はあくまで遺伝子のバグだからね。完全な性転換ってのもおかしいけど。そうなると別の病気もかかっている可能性もあるね」

 

「別の病気?」

 

「………」

 

「そ、こっちはある意味性転病以上の奇病だね。性転病以上に事例は少ないけど『幼体病』って言ってこちらもその名の通りからだが幼児化する病気。ただ問題なのが精神も退行する、ってところだね。簡単に言うとアポ○キシン4869プラス精神退行」

 

「……大丈夫なの?」

 

「………」

 

 かなりギリギリの問題発言に少し不安になる由美。

 

「そこ? セウトくらいかな? それよりもしろさっきから喋らないけど大丈夫?」

 

 先程から無言で虚ろな目で虚空を眺める白夜に少し心配になる久美子。

 

「……だい、だい? じょう、ぶ」

 

「うん、大丈夫じゃないね」

 

「あぁ、これはさっき検査用に血を抜いたから貧血起こしてるんじゃないかしら?」

 

「……たしかに少し多めだったけどそんなにとってないよ?」

 

「もともと貧血体質でさらにからだ縮んだからじゃない?」

 

「……なるほど。ところでしろ、感覚とかなにか変化でた?」

 

「……痛覚、味覚……かわりなし。他がすこし鋭くなった……かな? リフレックスモードも問題なし」

 

「……そっか。じゃあしろもそろそろ死にそうだし今日の診察は終了です。またなにかあったら来てね。おだいじに〜」

 

「ありがとうございました〜」

 

「……ましたー」

 

 そして母娘は帰路に着くのだった。




 ……どーも。先程貧血で半分以上意識がないしろをそらが風呂に連れ込むのを黙って見過ごした如月陸斗です
 申し訳ないがあいつは俺には止められん
 次回予告か
 とりあえず病院で検査を受けたので姉である愛夜華に連絡をする事にした一同、そこではいつも通りすぎる愛夜華の様子が──

 次回:『我らが姉は世界最強!』

 次回もお楽しみに!!
 あや姉大喜びしそうだな……あ、風呂場の方からなにやら騒ぎが……
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