死にたがりのTSVR戦記   作:竜野 ニア

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4話 暴走幼女と爆走少女

 あれから一晩経って次の日の朝、陸斗は目を覚ますと同時に腕に温かいものが引っ付いている事に気が付いた。そちらに目を向けると、そこには陸斗の腕を抱き枕にして気持ち良さそうに眠る白夜の好かがあった。

 

「すぅ……すぅ……」

 

 それを見た陸斗はため息を一つ吐き、

 

「起きろ離れろ」

 

 容赦の欠片も無かった。陸斗は腕を乱暴に揺すった。

 

「むにゃ……ふにゃ!?」

 

「人の腕を枕にしてたわけだがよく眠れたか?」

 

 特に怒っているわけではないが、声に怒気を含ませて言う。

 

 すると白夜は顔を青ざめさせ、顔色を恐怖に染め、

 

「ふぇ? ひっ、あ、ご、ごめんなさい!」

 

「へ?」

 

 その反応は陸斗の予想の範囲外のものだった。そもそも白夜にしてはありえないことがあった。

 

 現在、白夜は顔色を恐怖に染めている。

 

 ある日を境に白夜は恐怖という感情自体を無くしていた。それ以来陸斗も白夜にこの反応は一部の例外を除いて見た事が無い。

 

(これも幼体病の影響か? いや、まてよ? この反応どこかで……)

 

 と、陸斗がそこまで考えたところで、

 

「部屋にいないと思ったらなんでここから白夜のにおいがするのさ!?」

 

 地味に怖いことを叫びながら美空が部屋に乱入してきた。

 

「ひうぅっ!」

 

 ついでに白夜がびっくりした。

 

 その状況に少しいらつきつつ、

 

「お前はノックという言葉を知らんのか!? でもナイスタイミング! ちょっと白夜の薬とってきてくれ!」

 

「薬? ってまさか!」

 

「そのまさかだ! この状態の白夜から目を離すのはまずいから俺が見とくからはよ頼む!」

 

「いえっさー!」

 

 返信はともかく目は真剣に、美空が部屋から出て行った。

 

 とりあえず陸斗はおびえて縮こまっている白夜に気を配りつつ、美空が帰ってくるのを待つ。

 

 しばらくして、美空が帰ってくるなり二人で白夜を押さえ、薬を飲ませる。この状態の白夜が会話が出来ない事は二人ともよく知っているので無理やりである。一切の容赦はない。

 

 しばらくし抵抗していたものの、すぐに薬の副作用により眠った白夜をベットに寝かせつつ、

 

「しろが薬飲むの忘れるって珍しいね」

 

「……貧血やらお前の風呂での騒動で疲れてたんじゃね?」

 

「………」

 

 心当たりがあったのでとりあえずスルー。

 

「そ、そういえば今回はラッキーだったね。あれはまだ当たりの部類でしょ?」

 

 そして話の方向転換。そんな美空に陸斗はジト目を送りつつ、

 

「……まあそうだな。あれ? 下手すりゃ俺朝から血溜まりの中だったのでは? ………あっぶねぇ」

 

 美空の言葉に同意しつつ、何気に自分が命の危機にあった事に気付き、冷や汗を流す。

 

 先程から二人が話しているのは四年前からの白夜の症状の一つ、『人格異常』起きている事は多重人格なのだが、問題はその数が異常な事とその落差である。

 

 先程の人格は全ての中で最も気弱なもので、他には急に周りの人間を殺そうとするものから自殺しようとするものまで数え上げればキリがない。今では白夜が任意に切り替える事も出来るらしい。切り替えた後はおそらく白夜の意識は無いが。この瞬間にもポコポコ増えているのではないかと思われている。

 

 そしてそれを抑えるためにあるのが先程飲ませた薬、愛夜華特製『人格安定剤』である。

 

 白夜の操作が効くのはあくまでこの薬が効いている間のみであり、この薬は丸一日で効果が切れる。先程の騒動は白夜が昨日の夜薬を飲み忘れたからである。

 

 脳に直接作用するので副作用として強烈な眠気と頭痛があるが、後半は白夜には関係ない。脳にかなりの負担がかかるので眠っても脳が休まらず、白夜は常に眠気に襲われている。

 

 一応市販化もしたらしく、使い道が無いかと思いきや世界には意外と二重人格等に悩んでいた人がいたらしく、思ったより売れたらしい。需要が少ない事には変わりないので割高にはなるが、愛夜華のおかげでうちてはほぼタダだ。

 

「とりあえずしろが起きるの待つか」

 

「そだね」

 

 

 

 それからしばらくして、研仁達に説明を終えて陸斗の部屋で拓海も交ぜて雑談をしていた時、

 

「ん、んぅ?」

 

「お、起きたか」

 

 白夜が目を覚ました。

 

「……あれ? どしたの?」

 

「お前どこまで覚えてる?」

 

 陸斗の質問に白夜は、

 

「……えーと、そらを部屋から追い出して寝ようとして……そこから記憶ない。……あ、薬飲むのわすれた」

 

「できればそれを昨日の晩寝る前に思い出してほしかった……」

 

「あーなるほど。でもなんでわたしりくの部屋にいんの?」

 

「理解が早くて助かるが、お前が昨日の晩来たんだよ」

 

「……? 記憶にない。りくはよくそれ了承したね」

 

「幼体病の影響だと思ったんだよ」

 

「ちなみに誰だった?」

 

「めっちゃ気弱なおどおどしてるやつ」

 

「なるほ──」

 

 なるほど。と白夜が納得したように頷きかけたところで悪寒を感じ、とっさにベットから飛び降りる。すると、

 

「しろーー! ただいまーー!! へぶっ!?」

 

 先程までしろがいた位置に一人の女が現れた。瞬間移動などではない。そう思える程の速度で踏み込んで来ただけである。ここにいる誰にも気付かれずにそんな人外じみた動きをしたのは、白衣のような白いコートに身を包み、下ろせば腰あたりまで届く黒髪をポニーテールにした、まだ高校生にも見える顔立ちの女、なんとなくお察しの通り白夜の姉、愛夜華である。

 

 しかしそこにいる全員は慣れたもので、

 

「姉ちゃんおかえり」

 

「「「あや姉おかえりー」」」

 

 特に何も無かったかのように返事をする。突然人が現れた? べつに愛夜華なら不思議ではない。むしろ本当に瞬間移動してきてもそこまで驚かない。それが紅月愛夜華という人間(?)である。

 

「うん! ただいま!」

 

 本人も特に気にした風はない。慣れているのか馬鹿なのか。どちらかというとアホなのだろう。紅月家は天然が多い。

 

「てゆうか大分早かったけどどうやって帰って来たの?」

 

 そして離せ、といつの間にか自分を捕まえて膝の上にのせている愛夜華に白夜が聞く。

 

「イギリスで軍用機借りてきた。」

 

「「「「………」」」」

 

「そのままこっちの基地で降りて朝イチだったから電車動いてなくて走ってきた。」

 

「田村さん生きてる?」

 

「お姉ちゃんより田村の心配〜? 田村は今下で休んでるよ」

 

「やっぱりコレといつもいるだけあって丈夫になってる……」

 

「コレって……。いくらなんでも傷つくよ〜? 君たちお姉ちゃんをもっといたわれ〜?」

 

「「「「……ふっ」」」」

 

「おいコラどーゆーことかなぁ?」

 

 四人が思わず鼻で笑うと愛夜華の額に青筋が浮かぶ。人類史のバグなどわざわざ心配する必要もないということだろう。ヤクザも逃げ出す殺気を前に四人とも特に気にした風もない。

 

「まあいいや。そんな事よりあや姉、しろの着せ替え遊びできるんだよ! しかも女の子の!」

 

「おい」

 

 本当にどうでもいいようで、美空がすぐに話題を変える。女の子のしろちゃんの抗議もなんのその。男二人の同情の視線も無視である。それを聞いた愛夜華も、

 

「そーだよねぇ。しろの着せ替え遊びなんて昔しろを女装させた時以来だね〜」

 

 しっかり爆弾を投下する。

 

「「「え?」」」

 

「ちっ」

 

 愛夜華による予想外の爆弾発言により三人が白夜の方を見、白夜が小さく舌打ちをする。

 

「ちょっとあや姉! なんで私も呼んでくれなかったのよ!」

 

 美空が馬鹿なことを叫ぶが全員無視。そんな状況に白夜は、

 

「姉ちゃん帰ってきたってことは買い物行くんでしょ? 用意してくる」

 

 逃げた。別に話せない理由は無いが、ただ単純に説明が面倒なだけである。そもそも、

 

「てかお前ら見た事あるでしょ?」

 

 それだけ言って白夜は陸斗の部屋を後にした。

 

 残された者達はというと、

 

「「「え?」」」

 

 混乱の極みにあった。

 

「『見た事ある』? たくみ、お前覚えてる?」

 

「覚えてないよ」

 

「美空〜お前は?」

 

「私がそんなイベント忘れるわけないじゃん」

 

「だよな〜」

 

 三人とも一切心当たりが無いらしい。

 

「ん〜? でも見た事あるはずだよ? あの時は『女装したうえでりく達と会って遊んでくる』って罰ゲームだったから」

 

 愛夜華がそう言うと、拓海が納得したように、

 

「なるほどね。そこに『その場で正体を明かす』ってのは無かったわけか」

 

「そりゃわからんわ。あいつの演技スキル無駄に高いし」

 

「うぐぐ……」

 

 美空だけ一人頑張って思い出そうとしているが他二人は既に諦めている。

 

 

 

 それから数分後、白夜が着替え終わり、出発しようとした所で愛夜華が。

 

「ちょっと待ちなさい。しろ、ちゃんと髪とかした?」

 

「え? べつにぼさぼさになってないし良くない?」

 

「え!? その長さでとかしてないのに寝癖無しなの!?」

 

 美空の驚きももっともである。なんせ白夜の今の髪の長さは腰まであり、座ってもぎりぎり踏まないくらいである。どれだけ寝相が良くても普通は寝癖がすごいことになる。しかし今の白夜にそういった様子はない。

 

「……髪質じゃない?」

 

 白夜もよくわからないので適当に答える。ちなみに寝癖がつかないのは昔からである。

 

「じゃあそこ座って後ろ向いて」

 

「……はーい」

 

 それから数分後、

 

「ふにゃあ……」

 

 白夜は溶けていた。

 

「……最初めんどくさがってた割にめっちゃ気持ちよさそうだな」

 

「……そだね」

 

「とろけた顔も可愛い」

 

 一人だけ感想がおかしいが、それは置いておいてしばらくして愛夜華がようやく満足したところでようやく外へ出ることになった。




 どうも。前回流れ的に俺のはずがあや姉に出番を取られた睦月拓海です
 アイツに聞いたところそもそも俺は影が薄めになるってマジ?
 まあ、そこはなんとかしてもらうとして次回予告ですね
 次回はショッピングと紅月姉妹の異常性について説明できたらなーとかアイツがぼやいてましたね
 というわけで

 次回:『化け物姉妹とショッピング』

 お楽しみに!!
 つかタイトルまんまだな
 そういえばアイツが暇つぶしにアプリでしろをデザインして冗談で友達に挿絵を頼んでみたところナメクジ波動砲の絵を渡されたらしい
 アイツお絵描き小学校並だからな
 ……ナメクジ波動砲って何?
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