やはり俺がもう一つの現実で戦うのはまちがっている。 作:辻谷戒斗
それでは、今回もよろしくお願いします。
もう一つの現実、SAOというデスゲームが始まって、一ヶ月が経過しようとしていた。
それだけの期間が過ぎても、未だにこの浮遊城アインクラッドは一層も攻略されていない。
俺は、少しでもレベルを上げる為に《第一層迷宮区》に潜っている。
そんな俺の目の前には、レベル6亜人型モンスター、《ルインコボルド・トルーパー》と、ある一人のレイピア使いのプレイヤーがいた。
そのプレイヤーは《ルインコボルド・トルーパー》の斧を三連続で避け、反撃に細剣カテゴリのソードスキルである、単発突き攻撃《リニアー》を撃ち込む。そのパターン化された攻防を三回繰り返し、《第一層迷宮区》の中でもかなりの強敵である《ルインコボルド・トルーパー》をノーダメージで屠った。
そして、そのレイピア使いはよろめいて、通路の壁に背中をぶつける。そのままズルズルと座り込み、荒い呼吸を繰り返していた。
俺は、そんなレイピア使いの前をそのまま通り過ぎ、自分の獲物を探すためにゆっくりとその場から歩き出す。
……あのレイピア使いが放った《リニアー》は、今まで見てきたレイピア使いの中でも群を抜いた完成度だった。
まるで閃光を想起させるような、視認することも許さないスピード。正直、あのソードスキルはとても恐ろしく、そして同時にとても美しく見えた。
……ちょっとだけ見惚れていたのは内緒だ……。……ちょっとだよ?ガッツリ見惚れてなんかないよ?ホントだよ?ハチマンウソツカナイ。
それにしても、最後の一撃。あれ《リニアー》じゃなくてもよかっただろ……。「流石にさっきのはオーバーキルすぎるわ……」
「……待って」
「……あん?」
後ろから、声をかけられたので振り返る。俺に声をかけたのは、やはりというべきか先程まで戦っていたレイピア使いだった。
そして、俺はその声で一つの事実を知った。
……こいつ、女性プレイヤーじゃん……。話すの苦手なんですけど……。
「……オーバーキル?ってなに?それをしたら、何かあるの?」
……まさか、また心の声が漏れてたのか……?じゃないとオーバーキルの単語が出ることはないはずだ。
……本来なら無視して行きたいところだが、自分から言葉に出してしまった手前引き下がれない。ここはさっさと説明して立ち去るのが吉だな。
「……はぁ。あー、オーバーキルはだな、あれだ。モンスターの残りHP量に対して与えるダメージが過剰って意味だ。別にオーバーキルしてもシステム的なデメリットがあるわけじゃねえけど、効率が悪いんだよ」
「……効率?」
「そうだ。ソードスキルは集中力を要求されるから、連発しすぎると精神的な消耗が早くなる。帰り道もあるんだから、なるべく疲れない戦い方をしたほうがいいってことだ」
「なるほどね……。それなら問題ないわ。わたし、帰らないから」
「……は?か、帰らないってお前……。町にか?」
俺がそう問いかけると、そのレイピア使いの女性プレイヤーは小さく首を動かし、コクリと頷いた。
そんな女性プレイヤーに、俺は気になったことを質問する。
「……ポーションの補充とか、装備の修理とか、あとは睡眠とか……。この辺はどうしてんだよ?マジで」
「ダメージを受けなければ薬はいらないし、剣は同じのを五本買ってきた。……休憩は、近くの安全地帯で取ってるから」
女性プレイヤーのその言葉に、俺は絶句してしまう。
確かに安全地帯ならモンスターが出現しないので小休止くらいならできるが、とても熟睡できるような場所ではない。しかし、この女性プレイヤーはそんな安全地帯を宿代わりにしてダンジョンにこもり続けているというのだ。
にわかには信じがたい事実だが、女性プレイヤーの疲労困憊な姿を見るに、その言葉がまちがっていないのだと信じざるを得なかった。
「……何時間……いや、何日続けてんだ……?」
最初は何時間かを聞こうと思ったが、彼女の姿を見て何日かに変えた。
彼女のケープはもう、耐久力の損耗を示して各所がボロボロに解れていたのだ。
何時間かこもったぐらいでは、『ダメージを受けなければ』と豪語する彼女の、俺のケープと色違いのケープがここまでになるのは考えにくい。最低でも、二日はダンジョンにこもり続けているはずだ。
「三日……か、四日。……わたしから話しかけておいてなんだけど……もう、いい?そろそろこのへんの怪物が復活してるから、わたし、行くわ」
女性プレイヤーは薄手のレザーグローブに包まれた華奢な左手を壁にあて、よろよろと立ち上がった。
抜いたままの細剣を、まるで両手剣を片手持ちしているかのように重そうにぶら下げながら、女性プレイヤーは俺に背中を向け、一歩、また一歩と俺から遠ざかっていく。
俺はそんな細い背中に向かって、自分が思ったことをそのまま口に出した。
「……そんな戦い方してたら、お前死ぬぞ」
俺がその言葉を発した瞬間、彼女はピタリと歩みを止め、右の壁に肩を預けてゆっくり振り向いた。
彼女のフードの奥の瞳が、薄赤く底光りしながら俺を射抜く。
「…………どうせ、みんな死ぬのよ。たった一ヶ月で、二千人も死んだわ。でもまだ、最初のフロアすら突破されていない。このゲームはクリア不可能なのよ。どこでどんなふうに死のうと、早いか……遅いかだけの、違い…………」
今までで最も長く、最も感情のこもった彼女の言葉が途中で揺らぎ、途切れた。
反射的に一歩踏み出していた俺の目の前で、女性プレイヤーは、まるで麻痺状態になったかのように緩やかに地面へとくずおれた。
「お、おい!お前!」
俺は慌てて彼女に駆け寄ったが、ただ気絶しただけのようだ。これこそソードスキル連発の弊害だろう。
この場に放おっておいてもいいのだが、そうすると彼女は確実に死んでしまう。これほどのプレイヤーは最前線でもそうそういない。間違いなく、今のSAOでの上位プレイヤーの一角だろう。
それにこのまま彼女が死ぬと俺の寝覚めが悪いし……。
はぁ……仕方がないが安全な場所に運ぶとしますか……。
「ハ、ハチ……だよな?」
不意に後ろから、今では聞き慣れるようになった声が聞こえた。
俺が聞き覚えのある声など、本当にたかがしれている。聞き慣れている声はなおさら少ない。
俺はゆっくりと声の聞こえた方を向き、その声の主を確認する。
「……キリトか」
そこには、黒髪で灰色コートの片手剣使い、キリトが立っていた。
キリトとは、デスゲームが始まった日、ホルンカの村でパーティーを組んでからの付き合いだ。
それから時々パーティーを組むようになり、今では俺がフレンド登録しているたった二人のプレイヤーの一人にまでなっている。
「合ってて良かった……。フードで顔が見えなかったから、そのケープと曲刀で予想したんだけどさ……。それで、そいつどうしたんだ?」
「あー、なんか気絶したっぽい。ここに置いとくのもあれだし、運ぶの手伝ってくれね?俺のアイテムを預かってくれるだけでもいいからよ」
「お、おう。まあいいけど。幸いストレージにも空きがあるし」
「助かる。じゃあ、取り敢えず迷宮区の外まで一緒に頼むわ」
「了解」
俺はキリトと共に倒れた女性プレイヤーを迷宮区の外まで運ぶため、彼女を抱えあげて歩き出した。
はい!今回はここまでになります!
ついにメインヒロインのアスナと、ソードアート・オンライン原作主人公のキリトが登場しました。
いかがでしたでしょうか?
今はまだハチアス感は少ないかもしれませんが、アスナとの関係はここから少しずつ進んでいきます。
そしてキリトと何があったのかは、後に物語上で明かされます。それまでお待ちください。
今回は少し短くなってしまいましたが、次回からはどのくらいの長さで書けばいいでしょうか?
短くてよければ、更新頻度は上がると思います。
更新頻度が上がるのがいいか、少し長くて一気に読めるほうがいいか、どちらがいいかコメントしていただけると嬉しいです。
そして現在、クロスオーバー先のアンケートでpixiv、ハーメルン共に圧倒的一位だった、『ありふれた職業で世界最強』とのクロスオーバーを執筆中です。
タイトルは『やはり俺がありふれた職業なのはまちがっている。』です。
八幡は始めそこまでチートではなく、戦闘職の中では最もありふれた職業です。
ヒロインは八重樫雫とティオを中心としたハーレムの予定です。
他のハーレム要員は皆様の意見も取り入れつつ決めていきます。
そして俺ガイル勢が一部アンチになってしまうかもしれませんので、ご了承ください。
次の投稿は恐らくこの作品になると思いますので、楽しみに待っていただけると幸いです。
最後に、引き続き次に書いてほしい『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』のクロスオーバー先を募集しています。
第一話のアンケートのところに、自分が書きたいと思っている作品を置いていますのでご協力よろしくお願いします。
また、第二話に第一話のアンケートに入り切らなかったクロスオーバー先の作品を置いておきます。こちらの方も投票の方よろしくお願いします。
そして、それ以外の作品でこの作品とのクロスオーバーを書いてみてほしい、などなどの要望がございましたらコメントにて教えて下さい。できるだけ書けるように色々考えてみますので。
それでは、ここまで読んでくださりありがとうございました!また次話、または次の作品にてお会いしましょう!
ここまでのお相手は、辻谷戒斗でした!
ヒロインについて
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メインアスナの八幡ハーレム
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ヒロインを八幡とキリトで半々ハーレム
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アスナ以外のキリトハーレムは原作通り