夜中の10時、街中の公園にある噴水の前に僕は立っている。もう、自由になりたい。そんな気持ちだけが僕を動かしている。噴水の中に入り、手に持っていたカバンの中から小さなナイフを取り出す。そして、それを自分の手首を切ろうとしたとき、
「待ってください!」
そんな声が聞こえた。声のほうを見ると、高校生ぐらいの伸長の子がこちらに向かって叫んでいる。なんでこんな時間に子供が出歩いているんだ。と思いながら、
「お前には、関係ないだろ。子供はさっさとおうちに帰れ。」
と言ったがその子は全く帰ろうとしない。
「さっさと帰ろよ!」
強く当たったが、それでも帰ろうとしない。どうしようか考えていると、その子のほうから話しかけて聞いた。
「おじさん、自殺しようとしたんでしょ。そんなのだめだよ。」
僕は、その言葉にカチンと感じた。人の気も知らないで。どうせこいつもあいつらと同じだ。
「うるせぇ。ガキの知ったことか。」
そういって、今日は帰ろうとした。こんな子供が来なければ今頃楽になれたのに。
「あの!」
その子は帰ろうとする俺の近くにまで来る
「何かつらいことがあるなら、私が聞きましょうか?」
と聞いてきた。俺はこの言葉に怒りを感じた。
「てめぇみたいなガキに何がわかる!全てを奪われた俺の気持ちが!」
その子を突き飛ばして、俺は帰ろうとする。だが、
「そんなの話してみないとわからないじゃん。」
その子はまだ俺のことを止めようとしてくる。
「いいじゃん。ただ、話してくれればいいんですよ。」
ふと、その子の言った言葉に俺は優しさを感じた。こんな優しさを感じるのはいつぶりだと、俺は泣き崩れてしまう。そして、公園のベンチに座り、自分より完全年下の子に自分の抱えているものをすべてぶつけた。女に騙されて、金品を取られたこと。会社で上司のミスを擦り付けられ会社をクビにされたこと。そこに助けが来たかのようにきた女性もただの金目当てだったこと。こんな事。この子に話しても何も変わらないのに、変わらないのに僕はすべてを話した。その間、彼女は反論をするわけでもなく、ただ聞いてくれた。話し終わったとき
「けど、それは人生を終わらせていい理由にはならないです。そんなんじゃ、あなたは救われてないじゃないですか。」
と言って、俺の両手を握る。その手はまるで心の氷を解かしてくれるように暖かかった。
「あなたは今、下に落ちている。ただ、何もしないで。そんなんじゃ報われないじゃないですか。女が何ですか。仕事が何ですか。そんなの、人生のほんの一部でしかないですか。本当に大事なのは、登りあがることなんじゃないんですか。」
彼女の言葉を聞いていると、なぜだか両目から涙が出てくる。こんな、大人になって涙なんてみっともないと思いながらも、涙は流れ続ける。そんな顔を見せるのが恥ずかしくなって顔を下げ、
「ありがとう・・・。」
声にならない声を出し、目の前の少女にお礼をする。その声が聞こえていたのかいないのかわからないが、
「どういたしまして。」
と言って彼女は手を放す。暖かさが離れていく感覚から俺は反射的に顔を上げる。しかし、すでに彼女の姿はどこにもなかった。残ったのは、彼女からもらった、小さなぬくもりだった。そこから、僕は決意する。自殺なんか絶対にしない、と。
あの日から数か月が過ぎ、僕は自分で会社を築築き上げた。昔の友人や、先輩、後輩たちと一緒に頑張っている。そして、後輩の子からプロポーズをされ付き合うことになった。ほんとに、あの時、人生を投げ出さなくてよかったと思う。あの時、僕に話しかけてくれた少女は今どこで何をしているかわからなかったが、つい先日、この話を友人に話したとき、その子のことが分かった。あの子は、俺が公園で会う3年前に自殺をしていたそうだ。どうやら、同級生や先輩からのいじめを受けていたらしく、日に日にエスカレートするいじめに耐えれなくなり、僕と出会ったあの公園で自殺をしたようだ。今考えてみれば、あの時会った彼女の制服はどこの高校の物でもなかった。きっと、その子みたいに自殺をするような奴がが出ないようにするためにお前に声をかけたんだよ。と友人は言った。俺は、その日の夜にあの公園に向かった。夜の10時に。そこで俺は、あの日と同じように噴水の中に入る。そしたら、あの子の声が後ろから聞こえてきた。
「私と話がしたいなら、普通に来てくださいよ。」
その声には呆れと喜びの二つがあるのだと感じた。
「今回は、君の話を聞きたいなと思ってね。」
そういって、僕は噴水から出て、ベンチに座る。
「私の話・・・?わかりました。いろいろ教えちゃいますよ。」
そういって彼女もベンチに座り、二人でいろんな話をした。
本文を読んで皆さんはどのように感じましたか。
私は、このように人の支えになる人が増えていってほしいと願います。
皆さんも周りの誰かが困っていたらその人の支えになってあげてください。