ベル君が【アポロン・ファミリア】に入団するのは間違っているだろうか   作:七篠ロキ

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プロローグ
プロローグ


『オラリオには何でもある』

 

 幼い僕におじいちゃんはそう言った。

 

『見る目麗しい可愛い女子達は勿論のこと、お前の好きなエルフ、スタイル抜群な女神やその他モノモ、あ、やべ、涎が……運命の出会いも存在する。行きたきゃ行くがいいさ』

 

 英雄譚を手に持ち、英雄に対して憧れが止まらなかった子供の頃。

 

『うまく立ち回れば、富や名声を手に入れるだろう。だが、そこに足を踏み入れた者は否応なく時代のうねりに飲まれていく所だ』

 

 小さな僕を見下ろして、ただ淡々と。

 

『覚悟があれば行くがいい。これは、お前の道だ』

 

 おじいちゃん。僕は――――――――

 

 

 

 

 

 

「おい、坊主。起きろ」

 

 

 車輪の音と衝撃で夢から目を覚まし、慌てて飛び起きた。

 

 

「……すごい……!」

 

「あのオラリオを目にしたやつは全員そう言うぜ」

 

「ありがとうございます、おじさん! 僕、ここでもう大丈夫です!」

 

「え、おい、まだ着くまでかかるぞ!」

 

「大丈夫です! 走っていきます!」

 

 

 そう言って荷物を持ち、そのまま馬車から飛び降りる。

 

 少し転びそうになったけど、大丈夫。

 

 心配してくれるおじさんに手を振り、そのままオラリオの所へ走って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 僕の名前はベル・クラネル。

 

 歳は14になり、瞳の色は赤で、白の短髪を持っている。

 

 顔の特徴から見れば、何処か獣人である兎人に似ているとよく言われていた。

 

 僕とよく一緒にいたおじいちゃんの話だと、これらは僕の親からの遺伝らしい。

 

 …親と言われても、おじいちゃんの事以外、よく知らないんだけど…。

 

 今でも、昔おじいちゃんがモンスターと呼ばれる怪物から、僕を助けてくれた事は鮮明に覚えている。

 

 そのおじいちゃんも、いなくなってしまったけど…。

 

 そして、この世界は一般とされる人間の他、獣人やエルフ、小人やドワーフやアマゾネスといった亜種の人間と区別されている。

 

 それぞれの種族には特徴があり、例えばエルフは少し耳が長い事や、アマゾネスは全員女であり、褐色肌であったりなど。

 

 かなり昔だと種族間の争いはよくあったらしいけど、今ではかなり流行的ではある。特に世界の中心と呼ばれるオラリオでは。

 

 さらに人間以外にも、何と神様もいる。人間の姿で。

 

 『古代』と呼ばれる時代の終わりから今でも、天界と呼ばれる所から、様々な神様達がこの地上に降りて来ている。

 

 神様は寿命がなく、悠久の時を生きていられる。

 

 僕ら下界の者に無限の可能性をもたらす神々の『恩恵』によって、人類は急速に力を付けて、発展の道を辿るようになった。

 

 そのため、神様達は人々に尊敬され、畏怖されている。

 

 そして、この世界にはモンスターもいる。

 

 ダンジョンと呼ばれる穴から生み出されているらしく、人類の共通の敵として認識されていた。

 

 ダンジョンは地下迷宮とも呼ばれており、数多の階層に分かれている。

 

 ただし、日の光はなくても不可思議な光源で満たされており、見たこともない草花やそこしか採取不可能な鉱物が存在した。

 

 さらにモンスターには『魔石』があり、それも貴重な資源である。

 

 何より、ダンジョンには『未知』が沢山あった。

 

 今では探究者達は『冒険者』という名前に変えて、その『未知』を探求している。

 

 その穴の上にオラリオが建てられており、その都市が世界の中心と呼ばれる由縁でもあった。魔石の発掘による貿易などの商業的な意味もあると思うけど。

 

 そして僕は今、そのオラリオに入ろうとしている。

 

 目前で、取り調べをされている最中だけど。

 

 

「通行許可証はあるか?」

 

「え……な、何か必要なのですかっ?」

 

「見たところ旅の者ではないようだが……君も冒険者になりに来たのか?」

 

「は、はい! その通りですっ!」

 

「ハシャーナ。持ち物検査をしてみたが、その者から怪しい物は特になかった。『神の恩恵』もなかった」

 

「なるほどな……また可愛い面をしたやつが来たもんだな。どうしてオラリオに来た? 金か? 名誉か? それとも女か?」

 

「い、いえ、ダ、ダンジョンに出会いを求めにっ……」

 

「―――くっはははははははは!! 何だそりゃ、面白れぇガキだな、お前!!」

 

「ふっ……おい、ハシャーナ、勤務中だ。静かにしろ」

 

「いや、お前も少し笑ってたじゃねぇか……とりあえず、冒険者登録をするにはギルドの方に行ってくれ。冒険者の説明もそこで受けられる」

 

「あ、はい! ありがとうございます!」

 

 

 取り調べが終わり、ようやくオラリオに入れそうだ。

 

 荷物も無事であり、いざ都市の中に入ると。

 

 

「――――――――!!」

 

 

 まず、圧巻された。

 

 田舎育ちの僕は目を輝かし、周囲を見渡す。

 

 古風なような飲食店から、独創的な武器屋の商品まで、全ての物が新鮮のように思える。

 

 

「これが都会というものかぁ。とりあえず宿を探して、ギルドという所に行こう!」

 

 

 適当な方向に足を向けて、歩いていく。

 

 しばらくすると、宿を見つけた。

 

 『INN』という看板を掲げており、二階建ての木造品のお店だった。

 

 

 「一晩800ヴァリスで、三日で2000ヴァリスかぁ。少し高いような気がするけど、この都市だとこれぐらいが相場なのかな?」

 

 

 僕はとりあえず3日分の宿を取り、荷物を置いてギルドに向かおうとする。

 

 ただ僕はこの時、現実を楽観視し過ぎた事が、すぐに思い知らされてしまう。

 

 

 

 

 

 ギルドに辿り着き、眼鏡を掛けたエルフの女性が受付をしていた。

 

 その人の説明を受け、いざ冒険者登録をしようとしたら、早速問題が発生する。

 

 

「それで、どこの【ファミリア】に所属しておられるのでしょうか?」

 

「えっ……」

 

「【ファミリア】に所属してないと、冒険者登録ができないのですが……」

 

「……」

 

「……」

 

「……そ、その……。が、頑張ってすぐに入ります!」

 

 

 オラリオに到着して、1日目。

 

 僕を迎えてくれる【ファミリア】探しが始まるのであった。

 

 

 

 

 

 

「また断られた……」

 

 

 

 オラリオに入って既に二日目。

 

 通算二十五連敗を喫した僕はがっくりと頭を垂れていた。

 

 冒険者になるには、僕の見た目からして第一印象は底辺だろうけど……いや、ダメだ、弱気になっちゃだめだ。まだ日は高い。

 

 空腹を満たすため、節約を心がけるにはありがたい『ジャガ丸くん』を購入し、お腹に溜める。

 

 何だかこれからも長い付き合いになりそうな気がするけど、僕は賑わうオラリオの街を走りだした。

 

 

 

 

 

 

 そう決意して、さらにそこから4軒の【ファミリア】を訪れたが、門前払いされてしまった。

 

 

「こ、心が折れそう……ぐすん」

 

 

 オラリオに来て希望とか期待とか、色々な思いを抱いていたのに。

 

 これじゃあ田舎の街にいた方がマシかもしれない。

 

 

「回れ右をして帰れ」

 

「金を持って来たら考えてやってもいいぞ!」

 

「サポーターの用意をして来い」

 

「貴様のような奴はいらん」

 

 

 非常にきつい言葉を立て続けに言われてしまった。

 

 さすがにどうしようなく傷付いている。

 

 しかも、もうすぐ夜になろうとしていた。

 

 僕はあと一度【ファミリア】に訪れて、断られたら今日はもう宿屋に戻ろうと決意する。

 

 懐からギルドの受付の人がピックアップしてくれた【ファミリア】の表の紙を見て、次の目的地への場所を確認した。

 

 

「えーと、次は……【アポロン・ファミリア】かぁ……入団してくれるといいなぁ」

 

 

 僕は弱気になりながら、そうつぶやくのであった。

 

 

 

 

 

 そして、いざ辿り着くと。

 

 

「すいません! 【アポロン・ファミリア】に入団したいのですが……」

 

「もうすぐアポロン様がお帰りなのだ! 部外者は立ち去れ!」

 

「せ、せめて話だけでも……!」

 

「ここは探索系の【ファミリア】だ。商業系ではない! 傍から見ても、お前には冒険者の才能は見当たらない! 諦めろ!」

 

「そ、そんな…」

 

 

 話を聞かせてもらえずに、一瞬にして追い払われた。

 

 手は何も出してこないので対応としてはまだマシな方だけど、さすがに厳しい。

 

 僕はとうとう諦めて宿屋に戻ろうとした時、ある神が現れた。

 

 

「おいおい、何を騒いでいるのだ?」

 

「ア、アポロン様……」

 

 

 どうやらここの主神のようだ。僕の方にも気づいてくれた。

 

 

「ん、その子は……?」

 

「どうやら入団希望者のようですが……」

 

「おいおい、それをすぐに帰そうとしたのか? それじゃあ、さすがに【ア

ポロン・ファミリア】の名折れとなるぞ」

 

「も、申し訳ございません……」

 

 

 憲兵の人が頭を下げ、謝っている。僕の方にも頭を下げた。

 

 アポロン様は僕の方に顔を向け、質問してきた。

 

 

「……で、君の名は?」

 

「べ、ベル・クラネルです!」

 

「ふむ…………ベルきゅ、じゃない、ベル君。うちに入団しないか?」

 

「え、い、いいのですか!?」

 

 

 まさかのお誘いに、僕は身を乗り出してしまう。何か今イントネーションがおかしかった気がするけど、気のせいだろう。

 

 

「あ、アポロン様、さすがにそれは……」

 

「アポロン様の命令だ。聞けないのか?」

 

「ヒュアキントス様、いつの間に……」

 

「この変神、まさか……まあ、いざとなったら止めるか」

 

「ダフネ様まで……」

 

「……?」

 

 

 次々と人が現れていき、アポロン様の意見を承認している。

 

 

「あ、ベル・クラネル君だっけ。いいのいいの。気にしないで」

 

「さあ、ベルきゅん!! 早速、わが【ファミリア】の恩恵をその身に刻もうか!」

 

「本当に大丈夫だろうな、この変態神!!」

 

「…………?」

 

 

 こうして僕は【アポロン・ファミリア】に入団することになった。

 

 

 




このアポロン、理性が抑えきれてない。ダフネ頑張れ。
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