ベル君が【アポロン・ファミリア】に入団するのは間違っているだろうか 作:七篠ロキ
ヒュアキントス「あなたが一番あいつの傍にいた方が危ないです」
ベル「…zzz…何か寒気が…zzz…」
その後、爆発が起きた。
時は少しだけさかのぼる。
館に侵入した黒フード二人組を発見したヒュアキントス率いる編成隊は、捕らえようとするも、すぐに相手は攻撃を仕掛けてきた。ヒュアキントスたちはそれに応戦しようとする。しかし、
「あ、ちょっと待っててね…。よっと。これ、便利だよね」
それは音響波状合成装置であり、敵の手に渡ってしまったようだった。
出された音による攻撃により、ヒュアキントスたちは動きを止めてしまった。
その隙に、もう一人が魔法らしきものを使い、編成隊に襲い掛かってきた。
そして、今に至る。
「…残ったのは私とヒュアキントスのみか」
「リッソス、油断するなよ!」
「誰に言っている? 最初からそのつもりだ!」
そう虚勢しているが、内心焦りを見せていた。
17階層にいる『ゴライアス』をも少数精鋭で倒したこともあって、【アポロン・ファミリア】のメンバーは練度が高く、決して弱いわけではなかった。
しかし今回の侵入者は、それとはまた一線を超えていた。
(こいつのポテンシャル、下手をしたらLv.5クラスだ…! まともに戦っては、いくら何でもこちらに分が悪すぎる! 私の魔法でどうにかして…)
「タナトス。もう終わらしていいか?」
「ちょっ、名前を呼ぶな!? 一応、死因はこの植物ということにしようって言ったじゃないか…」
「…そうだったな。わざわざ、私に手加減させて、結局まだ死者は出ていなさそうだからな」
「そういうこと。本当は6日後に使うつもりだったらしいけど、予定が狂っちゃったらしくて、ここでこいつを使って、どのくらいの騒動になって、向こうの動きのことも試さないとね」
「結局、目的の人物や物、両方とも確認できなかったが、人物の方はもしかして外にいるのか? 」
「そうだと思うね。編成隊とやらにもいなかったし」
「物の方は、こいつらに聞くか…。おい、お前ら、
この館に持ち込まれた『宝玉』はどこに隠した?」
「「…?」」
二人は、何だそれはという顔をする。
「…? 妙に反応が鈍いな? おい、そっちはどうだ?」
「…こっちも特に反応しない。ということは、単独犯だな。そして、しゃべりすぎのようだぜ」
そう言うと、外の方が騒がしくなる。援軍が到着し、侵入者達を捉えようとしており、その事もまた侵入者達も理解する。
「それじゃあ、撤収するから、こいつを解き放つか」
「待て、貴様ら、逃がすか!!」
「君たちの相手はこいつだよ」
そして、どこから現れたか、巨大な植物が現れたのであった。
ギルドからの要請で、【ガネーシャ・ファミリア】のメンバー達が館の外にやってきた。
「ギルドから呼ばれて来た【ガネーシャ・ファミリア】のシャクティ・ヴァルマです。早速状況を」
「私は神、アポロンです。何か結構危ういから、早く二人を助け……っ!?」
「…な、何だ、ありゃ!?」
「きょ、巨大な植物!? しかも4体!?」
「お、おい、ベル! そういやあ、そのうちの一体の場所って…」
「…!? 僕たちの部屋から生えているように見える!?」
「そ、そんなことより早く、これをどうにかしないと…!?」
「【ガネーシャ・ファミリア】の皆さん! お願いだから早くどうにかしてくれーっ!!」
「あ、ああ、わかった。おい、おまえ達! 詠唱の準備をしろ! 2人を救出したら、直ちに魔法を放て!」
「「「「「了解!」」」」」
「――――あは。やっぱり、外にいた」
一方、ヒュアキントスとリッソスは、追いつめられていた。
「ガ、ハ…ッ!!」
「ク、ソ…ッ!」
巨大な植物の茎の鞭が二人に襲い掛かり、重傷を負っていた。
また、魔法を放とうと詠唱しようとするも、そちらを優先し潰し始めていた。
侵入者の二人は既に逃げられてしまっている。
「こ、こいつ…! 魔力に反応するのか…!」
「ク…どうすれば…!」
猛スピードで茎の鞭が振るうため、物理防御も高く、二人は攻め手に欠けていた。
「…ヒュアキントス。魔法を詠唱しろ」
「おい、それだとさっきのように、俺に集中攻撃するぞ!」
「俺が何とかしてみせる! このままじゃ、二人ともお陀仏だ!」
「…わかった。死ぬなよ?」
「お前もな」
二人はそう言い、前衛をリッソス、後衛をヒュアキントスとして配置し、早速取り掛かった。
「【我が名は愛、光の寵児】」
巨大な鞭が、ヒュアキントスの方に向かう。
それをリッソスが、威力を殺しきれなくても、必死でさばく。
(持てよ、私の腕…!)
無数の鞭が振るう。ヒュアキントスが自己最速で詠唱を進めるごとに、スピードと数が多くなってくる。
「が、う…、こ、んのぉ…」
必死に払ってみせるリッソス。腕の出血が激しくなってきた。
意識を飛ばさないように噛み締め、抗っている。
わずか十数秒であるが、永遠に思える十数秒である。
しかし、現実は無常であった。
「しまっ…ガハァ!!」
武器が先に限界に達して、砕き散ってしまい、リッソスに直撃して、吹っ飛ばされる。
しかし、稼いだ時間は、無駄ではなかった。
「【―――来たれ、西方の風】!」
ヒュアキントスの詠唱が完了した。後は放つのみ。しかし、その直前。
「ぐ、あ………っ!!」
前衛がいなくなってしまい、鞭がヒュアキントスに直撃し、吹っ飛ばされ、壁に激突する。
「~~~~~~~~っ! 【アロ・ゼフュロス】!」
しかし、歯を食いしばり、必死に魔力を手放さなかった。
右手から放たれた太陽の如く輝く大円盤が、高速回転しながら鞭を切り裂き、驀進する。
しかし、放たれた方向は巨大な植物から少しそれている。だが、それを修正するかのようにカーブして、植物の頭に進む。
この魔法は、自動追尾属性を持ち、標準した対象に命中するまで消滅しない。必中である。
だがそれでも、巨大な植物はそれを察していないのか、避けようとする。
そのようなことは許されず、真横を通過する間際、
「【赤華】!!」
円盤は眩い輝きを放ち、爆発する。
爆発を直撃した巨大な植物の頭は吹っ飛び、全身が灰となって消滅した。
「………や、やった、ぞ……、リッ、ソス……」
この一撃で魔力を最大限使い果たしたヒュアキントスは、巨大な植物は灰になったことを見届けた後、そうつぶやき、気を失って倒れる。
その後、救助隊が現れ、ヒュアキントスとリッソスは回収され、館を脱出した。
ヒュアキントスとリッソスが巨大な植物と戦っている間、館の外は――――
「さて、君た「うおおおおおおおおおおっ!?」…えっ」
「こいつら、魔力に反応するのか!?」
「はっ、そうだ! 落ち着いてくれ、イルタさん! 良いこと思いついたんだ! こいつら、『怪物祭』の超大目玉にしようぜ! 客も絶対驚いて喜ぶし! そうに決まってる! 空気読めよおっ! そうだったら、俺の火炎魔法で業火の渦に閉じ込めてやるぜえええええええええええ!!」
「黙れ、イブリ! だったら、囮作戦だ! イブリが魔力をあいつらの間近で練って、引き付けている間に放つぞ!」
「いや、それ、俺の負担、滅茶苦茶大きすぎない!?」
「俺たち【ガネーシャ・ファミリア】団員の中で随一のトラブルメーカーの威力をあいつらにも発揮しろ!」
「敵をひっかきまわすのがお前の持ち味のひとつだろ!」
「うわああああああああああああっ! みんなひでえよおおおおおおおおおおおお!」
「お願いですから冷静になって下さい!? あとイブリうるせぇ!!」
「団長、早く来てくれぇー!!」
(か、介入しにくい…!)
―――――――『喋る火炎魔法』を自称する【ガネーシャ・ファミリア】のお祭り男こと『火炎爆炎火炎』、イブリ・アチャーによって、敵味方侵入者含め、全員ひっかきまわされていた。
(な、なんか【ガネーシャ・ファミリア】の人達…)
(チームワークがすごいバラバラ…)
(こ、こんな、人達、どうやってまとまっていたの…?)
(でも、なんか、巨大な植物相手に少し余裕があるように見える…)
(こ、これ、私の館、修理代が半端じゃないことになりそうな気が…)
【アポロン・ファミリア】の団員たちは、その光景を見て、様々なことを思っていた。
そしてここで、団長のシャクティ・ヴァルマさんからの救出完了の声が上がる。
「救出は完了した! 後はお前たち、一気に仕留めろ! こいつらの弱点は頭だ!」
「「「「「「了解!」」」」」」
そして、さっきとは別人かのように動き、一気に連携が取れる。
その間に魔法の詠唱が始まり、巨大な植物がそっちに攻撃しようとするも、
「お、丁度いいのあるじゃん。これを分解して…、それっ!」
と、ハシャーナがバリゲートに取り付けていた音響波状合成装置を瞬く間に分解して、その中見から電力源である魔石を取り出し、巨大な植物に放り投げる。
すると、巨大な植物がそっちの方に気を取られ、逆に魔術師の軍団から離れていく。
そして、詠唱が完成し、魔法が解き放たれる。
「―――――――――――」
巨大な植物らの頭に魔法が着弾し、3体とも灰となって消滅した。
「す、すごい…!」
「結局、【ガネーシャ・ファミリア】の団員は全員無事だな」
「流石は都市の警護部隊と呼ばれる実力はあるわね」
「う、うん」
「ふー、良かった…。とりあえず、修理代は馬鹿にならなそうだけど、おかけで助かっ…!?」
「……」
「あ、もう終わったー?」
「「っ!!?」」
この場にいる総員が振り向くと、そこには黒フードを着て、仮面をつけた二人組が立っていた。
僕らの今日一日の戦いは、まだ終わらなかった…。