ベル君が【アポロン・ファミリア】に入団するのは間違っているだろうか 作:七篠ロキ
侵入者二人「「撤収!!」」
効果はバツグンだった!
【ロキ・ファミリア】が参戦した直後、侵入者二人は去った。
気絶したベル達を含めた【アポロン・ファミリア】及び先に増援に来た【ガネーシャ・ファミリア】の手当てを施すため、【ディアンケヒト・ファミリア】が持つ病院に運び込まれていく。
【ロキ・ファミリア】の団長、フィン・ディムナと副団長、リヴェリア・リヨス・アールヴは「ヒュアぎントス~~~~~っ! べるぎゅ~~~~~~~~ん!」とオーバーに泣いていたアポロンを慰め、今回の騒動の概要の説明を受けて、そのあらましを振り返っていく。
「つまり、今回の騒動は、侵入者二人組を発見して、館に閉じ込めるため、出入り口をすぐに封鎖。その後、【アポロン・ファミリア】の少数精鋭で入り、立ち向かったけど」
「侵入者の一人が相当強く、戦力が削られたところに、巨大な植物が4体現れた。そこで駆けつけた【ガネーシャ・ファミリア】の協力があり、これを退けたが」
「外に出た侵入者達が現れて、先程の一人に【ガネーシャ・ファミリア】が戦闘不能になった。そこで、さらなる増援を呼ぼうとしたけど」
「向こう側にとって本命の食人花や巨大花を出して、それを阻止された。だがこれも、どうにか突破したが」
「最後は侵入者に全滅寸前にされた…。こうして振り返ると、その侵入者は最初、館に入って戦闘を行っていないことから、目的は何かの捜索だと思われるけど…。アポロン様、何か心当たりは?」
フィンがそう考え、アプロンに尋ねる。
「ぐすっ…、そういえば、侵入者のもう一人のタナトスが私に『宝玉』という物について聞いてきたな。あと、私の子供の単独犯とか予定が狂ったとかなにかも言っていたな」
タナトスが漏らしていた話を思い出し、結局あれは何の話だったのか考えていた。
「『宝玉』…? それは一体何だ?」
「いや、ぞれは私もわからない」
リヴェリアはまだ少し泣き顔になっているアポロンにより詳しく説明を求めたが、そこまで話を聞けなかったので、仕方なくフィンと推測で考えた。
「しかし、わざわざ捜索したってことは向こうにとって大事なものの一つだろうね。優先度はそこまで高いというわけじゃなさそうだけど」
「そのようだな。それに、向こうの持ち手のモンスターの方の、食人花や巨大花とか厄介なものもあるが、聞いている限りだと、こっちはあくまで試験みたいな感じだな。向こうの動きが消極的すぎる」
「ああ。…そして、侵入者の強さ。無詠唱で魔法を使うか…。やっかいだね。今後において、一番の問題点はそこだろうね…。アポロン様。侵入者の一人は神タナトスだと聞いているが、もう一人に心当たりは?」
【ガネーシャ・ファミリア】をたった一人で相手取り、返り討ちにさせた者。
今後のオラリオの平和を脅かす者になると確信し、フィンたちは何としてもこちらの情報を少しでも聞きたかった。
「ない。……いや、まてよ。確か、タナトスが何か口走っていたような…そうだ! あの時確か、相方を自称エイン、とか読んでいたな。しかし、それ以外の事は…」
「そうですか…。ありがとうございます」
そう言い、フィンとリヴェリアは話を終えてその場を離れ、被害の出た【アポロン・ファミリア】の敷地外を見渡し、何かを考えていると、そこにアイズとベートがやってきた。
「アイズ、ベート。どうだったか?」
「ごめん…。ダイダロス通りで見失った」
「あの野郎、一体どこに隠れたんだ…! 俺の鼻でも途中でにおいが消えてやがるし…!」
アイズとベートは、逃げた二人組を追っていたが、途中で巻かれてしまった。これを聞いたフィンは、二人を励ました。
「そうか…。いや、二人とも良く頑張った。遠征帰りで疲れているだろうに、よく働いてくれている」
「そうだな。フィンの言う通りだ」
「…ケッ。まぁ、俺ぇは少し気分が晴れたぜ。何せ、昼間の帰りに、俺に啖呵を打ってきた変態野郎達が、すぐにこんな様になっているからな」
「ベートさん。喧嘩を売ったのは一人だけだった気が」
「こまけぇことはいいんだよ。大事なのが、雑魚は結局一生足手纏いってことだ」
「…ベートさん。私は、そういう所が、嫌いです」
「…そうかよ」
「無様だな」
「うっせぇ、ババア!」
「ベート、落ち着いて。一応、アポロン様から館内の探索の許可はもらっておいたから、保護が無事完了した後、総員で手分けして何かあるか探すぞ」
「「「了解」」」
「ん? どうしたのアイズ?」
ティオナが気絶して怪我をしていたベルを運んでいる様子を、アイズが見ていた。
「ティオナ…。…この子、今日の昼間に、見かけた…」
「ああ、昼間遠征帰りでベートが揉めたって言う話? この子がいたの?」
「うん…。昼間は何か血まみれだったけど」
「なるほどぉ。それで少し印象に残ったのか」
「…何か兎みたい…」
「あれ、そっち?」
そんな微笑ましい一悶着もあった。
【アポロン・ファミリア】壊滅状態となった、次の日。
【ディアケヒント・ファミリア】の病院のとある一部屋。
「……ん……、ここ、は…?」
僕はそこで意識を取り戻した。
目が徐々に光を集め、白い天井を見て、少し呆けてしていたけど、すぐに意識を失う前の事を思い出す。
「はっ、そうだ! 皆!」
「ふぇ!?」
「え、カサンドラさん!? …痛っ!」
「あ、ちょ、ベル、今は横になって!」
僕はすぐにベットから起き上がり、立ち上がろうとすると、カサンドラさんがすぐ傍で僕の事を看ており、驚いた声を上げると、僕の体の傷が痛みはじめ、それを見たカサンドラさんは慌てている。
そして横になった後、すぐに医者を呼んでくれた。
【ディアケヒント・ファミリア】の【戦場の聖女】アミッド・テアサナ―レさんから、僕の状態を教えてくれた。
「とりあえず、すぐに傷の方は何とか魔法で癒しましたが、まだ体の体力の方が完全に回復していません。ただでさえ、昨日の昼間の『ミノタウロス』の一件でもギリギリ経過観察には入らなかったですが、さらにそこから無茶に無茶を重ねましたから、今日を含めた3日間は入院。その次の日は退院が可能ですが、その後2週間は経過観察ですから、絶対に安静して下さい」
どうやら相当無茶を働いていたため、当分ダンジョン探索は打ち切りとなってしまった。
「また、後で今回の騒動の説明をあなたにも求められると思いますが、その時は出来るだけ首を動かさないでください」
「はい、わかりました」
「では、何かあったらそのベルを鳴らしてお呼び下さい」
「え、呼びましたか?」
「あなたではありません。では私は他の患者も見ないといけないので」
「あ、ちょっと待ってください! …その、他の人達はどうなったのですか」
「……今回の騒動での死者の数は、奇跡的に0ですが、今後の生活にも支障がある人も何人かいます」
「……そう、ですか…」
「さらに、まだ意識を回復していない人は全体の約半数います」
「………」
「では、これにて失礼します」
そう言い、アミッドさんは他の患者の様子を見に行った。そして、それと入れ替わるようにカサンドラさんが部屋に入ってきた。
そして、心配そうに僕に尋ねてくる。
「…ベル……、どう、だって…?」
「…3日間は入院。その次の日は退院ですが、2週間は経過観察だそうです」
「…そう、なの…」
「あの、カサンドラさん。その…、ダフネさんとか、ヒュアキントスさんとかは、どうなったの?」
「ダフネちゃんは今日の朝に目が覚めて、2日間入院して、その後1週間は経過観察みたい。団長様は昨日の夜中に目が覚めて、もう退院しているよ。経過観察もないみたい」
「…リッソスさんやルアンは?」
「……リッソスさんは、まだ目が覚めていないの。打ち所がひどくて、気絶した後も殴られたような跡があるという話を聞いたの…。ルアンの方は無事みたい。昨日、食人花の群れから脱出して敷地外に出て、待ち受けていた闇派閥の手下からも逃げ切ったみたいなの」
「…他にも闇派閥の人達がいたんだ…」
「…うん。気絶したフリをしていた時に侵入者二人がそう話していて、逃げ切ったルアン本人からも聞いたよ…」
「そう、なんだ……同じ【ファミリア】の他の皆は?」
「今回の騒動に関わっていない人達を除いて、私たちの【ファミリア】の人達は、目が覚めた人は半数。入院日数と経過観測日数は人それぞれバラバラだけど、残りの半数は、今後の生活にも支障がある人も含めて皆、目が覚めていないの」
「【ガネーシャ・ファミリア】の人達は?」
「…詳しくはわからないけど、まだ何人か目が覚めていないらしいの。…あと、その、今回のことがあって、5日後の『怪物祭』もどうするか検討中みたい」
「……」
アポロン様が【ファミリア】内の親睦を深めようと考案し、見に行こうとした祭そのものが、中止の可能性が出てきてしまっている。
実際どういうものか少し楽しみだったのに…。
少し僕が気落ちしていると、その様子を見たカサンドラさんから、感謝の言葉をもらう。
「…あのね、ベル! 昨日、私を何度も助けてくれてありがとうっ! 『ミノタウロス』の一件もそうだし、食人花や巨大花の群れの時も、最後にさらわれそうになった時も!」
「…ありがとうございます」
僕は素直にその気持ちを受け入れる。
実は最後の方、結局殴られて、もう一度立ったような感覚があるけど、その事はほとんど覚えていない。倒れた後、何か背後にやたら熱いのが通過したような気がするけど。
でも、あの死力はどうにか活きたらしく、相手が僕に気を捕らわれていた間に、カサンドラさんは館に張ったバリゲードの隙間に身を隠せたらしい。
そして、僕はこれからの事について尋ねる。
「…あの、カサンドラさん。これから、どうするのですか?」
「うん。館がああなっちゃったから、直るまで宿を取って、ダンジョンで稼ぎをしないと。動けるのがほとんどいないから」
「そうなると、僕も退院したら装備もまた買え備えないと」
そう話していると、突然アポロン様が部屋に入ってきた。
「おーい、ベルきゅ~~~ん! 目が覚めたって聞いて飛んできたよ!」
「アポロン様! だからここは病院ですから静かにして下さい!」
…アミッドさんに激怒されながら。
頭に大きなたんこぶができているアポロン様は、部屋にある椅子に座り、僕に体の調子の方を聞いてきた。
「さてベルきゅ、じゃないベル君! 体の調子はどうだい!」
「先程カサンドラさんにも話しましたけど、3日間は入院。その次の日は退院ですが、2週間は経過観察だそうです」
それを聞いたアポロン様は残念そうな顔をする。
「そ、そうか…。それは、とても残念だな」
「あ、あの…。結局、今回の騒動は一体何が…」
「ああ、それを話さないとね」
僕は今回の騒動のあらましを注意深く聞く。
「と、いうわけなんだ! どうだい、何かわかったかい?」
「あ、あの…神様の方もほとんどわかっていないんじゃ…」
「ああ! だからこうして、みんなに聞いているのさ!」
いや、それは、皆もあまりわからないんじゃ…。
「で、今後の事なんだが、館は騒動に関連する物の探索が終わった後、一先ず【ゴブニュ・ファミリア】に修理を頼んでおいている。それまで、各自で宿を取って直るまでそこで泊まるようにする事! まあ、修理代が馬鹿にならず、資金のほとんどがこれに吹っ飛んでしまうけどね!」
と、少し涙目になりながら僕に伝える。
今回は、僕たちの実力不足が現れたことになったこの騒動。
仲間が傷つき、自分も悔しい思いをした。
そしてベルは、この事を思い出し、病室である決意をする。
「神様…。僕、強くなりたいです」