ベル君が【アポロン・ファミリア】に入団するのは間違っているだろうか 作:七篠ロキ
アポロン、ヒュアキントス「「ほあああああああ!?」」
はい、中編です。
後編のつもりが、滅茶苦茶文字数が多くなったので、一旦キリが良いところに切りました。
大会に逆転優勝して、ダフネさんが何か変な液体が入った容器を獲得した後、僕たちは闘技場へと向かった。
その途中、大会で白熱したのか、僕のお腹が鳴ってしまう。
「…少しお腹がすいてしまったから、途中で何か食べましょうか」
「そうするか」
「あ、じゃあ、ち、近くにもジャガ丸くんの出店がありそうだから、そこで買って食べましょう!」
「あ、ありがとうございます…」
は、恥ずかしい…。皆にフォローされてしまった。
とりあえず、闘技場のすぐ前にジャガ丸くんの出店があったので、皆でそこに行き、買おうとすると、再びあの神様と出会う。
「はい、いらっしゃいませー! って、また君達か!」
「あれっ? また!?」
「今日もバイトだったのね…」
「え、でも一昨日は私達が集合した所だったんじゃ…」
「ん? 誰? 皆の知り合い?」
「あれ、一人はまだ見かけた事はないな! 僕はヘスティア! 実は神様なのさ!」
「神様がバイトかよ!?」
「ちなみに今眷属を探しているんだ! どうだい? 僕の【ファミリア】に入らないかい?」
「いや、オイラは別にいいです」
「今なら団長になれるよ!」
「……」
「あんたも考えるな」
「ダフネちゃんは前に会った時、真剣に考えていたよね…」
前に僕の装備を買おうとした時、この神様が【ヘファイストス・ファミリア】が経営している店の店員として現れたんだっけ…。一昨日は今日僕たちが集合した所でジャガ丸くんの出店の仕事もしていたし、何か妙に出会うな…。
「とりあえず、注文を…」
「あ、そうだ! 君、確か3日前に『神の宴』でアポロンが言っていた期待の子だな!」
「えっ、何の話です?」
「どうだい? 僕の眷属にならないかい?」
「あ、あの、僕は「ヘスティアちゃん! 注文は何!?」「あ、ごめんよ!」…」
「注文は何になさるのですか?」
切り替えしが早い。手馴れている。一体、いつからバイトをしているのかな…?
「僕は抹茶クリーム味」
「ウチは苺バター味」
「私は梨レモン味」
「オイラは食べたことないからおすすめで」
「はいよー! おばちゃん! 抹茶クリーム味、苺バター味、梨レモン味、そしてこの店おすすめの特別メニュー、『ウルトラハイパーデラックススーパージャガ丸くん』を一つずつ!」
「なんか最後凄いのが出た!」
「どんな味なのよ…」
「予想できない…」
「……オイラ、大丈夫かな…」
そして待っていると、すぐに出てきた。
僕たちが注文した出来立てジャガ丸くんが出たけど、1個だけ、とてつもないオーラを放っているように見える。
「ねえ、あの、これって…」
「おすすめの『ウルトラハイパーデラックススーパージャガ丸』くんだよ! お会計は合計590ヴァリスとなります!」
「このおすすめ1個で500ヴァリス!?」
「まじかよ!?」
「…ルアン。あんたが頼んだのよ。ちゃんと食べなさい」
「……なあ、誰か交換し「「「嫌です」」」…」
「大丈夫だよ! ジャガ丸くん好きなら、中毒になるくらいおいしいよ!」
「逆に不安だ!」
「ルアン、飲み物とか買ってあげるから」
「…その気持ちだけはもらっておくよ、ベル…」
こうして、お金を払い、近くの広場で買ったジャガ丸くんを食べることになった。
「はい、いらっしゃいませ! って今度はロキ!?」
「ドチビ!? なんやぁ、自分、バイトでもやっているっつーのか?」
「な、何でここにロキが…」
「なんやぁ、『怪物祭』を楽しむために決まっとるやろ! こうして、眷・属・達と楽しめるからなぁ! あれ、ドチビはどうなっとるのかなぁ?」
「ロキ様はついさっき私達を見つけて来たんじゃ…。3日前の『神の宴』で何があったか分かりませんけど、酒に酔いしれていたし…というか、話していた急用はもう済んだのですか?」
「レフィーヤ、しー! しー!」
「グギギギギ!」
「さっきの大会で、まさかの1回戦で負けちゃったからね」
「あの店の店員さん達、一人を除いて強かったね。あーあ、あの大会の優勝者から譲ってくれないかなー。あの伝説の液体」
「ん? なんや、伝説の液体って?」
「あの、とりあえず、注文を…」
「ほらぁ、ウチラお客様やで! はよ定番の台詞を言わんかぁ!」
「ご……、ご注文は何になさるのですか?」
「あっはっはっは! こりゃあ、傑作やわ!」
「畜生オオ!」
「とりあえず、おすすめを1つ、抹茶クリーム味を1つ、ココナッツ味を1つ、チョコレート味を2つで」
「ロキ! お前はこの店のおすすめを食わせん!」
「食うのはアイズたんだが…、なら、ココナッツ味を変更で、この店のおすすめを頼むわ!」
「あ、しまった!」
「墓穴を掘ったなぁ、ドチビ!」
広場に座り、そして、買ったジャガ丸くんを実食しようとしている。
ルアンはもう覚悟を決めた顔をしていた。
「ベル、もし俺が生き残ったらさ、『怪物祭』が終わった後、今度こそLv.2になることを目標にと、ダンジョンに潜りに行こうと思っているんだぁ」
「神様から聞いた死亡フラグ? が立っているよ、ルアン!?」
「ダンジョンに潜りに行くってのが妙に現実味があるわね…」
「では、いただきま~す」
そして、皆食べ始める。
ルアンもまた震える手で禍々しいジャガ丸くんを口に運んだ。
「……」
「ル、ルアン?」
一口目でルアンの動きが止まった。
「……」
「ど、どうなの?」
流石に心配になり始め、ルアンを揺らそうとする。
すると、僕たちの心配が杞憂かのように、一気に食べ始めた。
「な、なんだ~。脅かせないでよ~」
「…ん? あれ?」
ダフネは急に顔が青ざめていき、ベルはそれが目に入った。
「どうしたんですか、ダフネさん?」
「すぐ傍に置いた大会の景品がない!」
「ええ!?」
この事態に気づくと、それを持っているフードを被っていた人が逃げていくのをすぐに見えた。
「待ちなさい!」
「あ~ん、食べ始めたばっかりなのに~!」
「ルアン、追いかけよう!」
「…」
「ルアン?」
「ベル……、ここはオイラを置いて、先に行、け…」
ルアンは食べ終わった直後、その言葉を残し、前から倒れた。
「ル、ルアーーン!?」
「いいから放っておいていくわよ!」
「いや、でも…」
「こいつはダイニングメッセージを書こうとしている余裕がある! 水とか掛ければ目を覚ますわ!」
あ、ほんとだ。ルアンの右手が地面に『ジャガ丸くん』って書こうとしている。確かに大分余裕がある。
そのような行動に付き合ってられないため、ダフネさんはすぐにまだ口をつけていない飲み物をルアンに掻けた。
「……はっ! ここはどこ!? オイラは誰!?」
「ほら、もう目が覚めた」
「いや、何か悪化してません!?」
「とにかく、ベルはそいつを抱えてあの盗人を追いかけるわよ!」
「分かりました! …あれ、カサンドラさんは?」
「カサンドラは先に行ったわ! 私達も追うわよ!」
「あ、でも僕たち経過観察中じゃ…」
「あっ」
そんなやり取りがあって、ルアンを抱えた僕とダフネさんは全力で走れないが、それでも盗人を追い駆けに行った。
「ア、アイズたん。こ、このおすすめの、『ウルトラ何とかジャガ丸くん』の、味はど、どうや?」
「ロキ。『ウルトラハイパーデラックススーパージャガ丸くん』です。とてもおいしいです」
「何か見た目がとても禍々しいわね…」
「こ、これ、食べ物何ですか!?」
「アイズがあんなうれしそうに食べてるから、きっと大丈夫なんだね」
「せ、せやな! ティオナの言う通りや! 最初ドチビにやられたかと思ったけど、あのアイズたんがメッチャ嬉しそうに食べてるから、きっとそうなんや!」
「ん…、何か少し力が漲る…」
「よし、それじゃ、ウチも……」
「……? ロキ?」
「あれ、急に何もしゃべらずに一気に食べてますね」
「それほどおいしいんだね」
「いや、これは…」
「……ア、アイズたん…。ウチは、この『怪物祭』が終わったら、アイズたんにバニーを頑張って着せるんや…ゲフッ」
「ロキが倒れた!」
「効果がアイズと違いすぎでしょ!」
「この『ウルトラハイパーデラックススーパージャガ丸くん』はきっと、真のジャガ丸くん好きではないと、口にしたら災いをもたらすもの…だと思う」
「何でアイズさんはわかるんですか!?」
「真のジャガ丸くん好きだから」
「説得力がありすぎるわね…」
「何か地面に『ジャガ丸くん』って書こうとしてるよ?」
「余裕あるわね…」
盗人が闘技場に入るのを見て、追ってきた僕たちだったが、結局見失ってしまった。
「折角優勝したのにこんな形で失う何て…」
「ごめんダフネちゃん…。見失っちゃった」
「オイラが前後不覚になってるときに、そんなことがあったのか…」
「うん…」
僕らが普通に話している時、ダフネさんの隙をついて盗むなんて…。恐らく、相当の手練れだということが結論された。
「一応怪しい人物を見かけたら教えるって、ギルドや【ガネーシャ・ファミリア】の人達からの協力は得られたけど」
「なんか見つかる気がしないね」
「うん」
そう話している時、僕の担当官であるギルドのミィシャさんが来た。
「あれ、ベル君じゃん。カサンドラちゃんも。どうしたのこんな所で」
「ミィシャさん!?」
「流石にすぐには全員には行き渡ってはいないか」
「?」
「実は……」
こうして、少しでも情報を手に入れようと、ミィシャさんに事情を話した。
「なるほどー。それじゃあ、そっちを探してみるよ」
「ありがとうございます」
「まあ、こういうのは主にギルドや【ガネーシャ・ファミリア】の仕事だからねー」
そう言うと、「今は『怪物祭』の方を楽しみなよー」と言い残して、一緒に来ていた同僚のエイナさんと別れて行った。
確かに、今闘技場に入ったけど、まだ肝心のメインイベントの方を楽しめていない!
「まあ、確かにそうだね。あれも、今になるとそこまで欲しいかって言われたら、絆とかそっちの方がいいわね」
「一番欲しがっていたのはダフネちゃんだけどね…」
「オイラは巻き込まれ損だよ! いや、大会は面白かったけどさ!」
「じゃあ、損はしてないわね!」
「ええー!?」
ミィシャさんに会って毒気を抜かれたのか、すっかり諦めたダフネさんはイベントの方を楽しむことになった。
あの大会は何だったのかとルアンは反発したけど。
「そういえば、あの液体って結局誰が造った物なんですか?」
「そうね…。この噂を聞いたのは1ヶ月前だけど、どこかの貧乳の女神様がむ…じゃなくて、何かを大きくしたいと躍起になって造ったもので、効果は計り知れないと聞いたわ」
「何だか妙に胡散臭いですね」
「うん。ダフネちゃんに教えちゃったのは私だけど、どうやって入手したのか、あの大会にそれが出るみたいで、頑張ったっていう感じなの…」
「まあ、まさかチーム戦とは思わなかったけど、大会自体は盛り上がったから、ケースバイケースよ!」
その言葉を聞いて、ある約束事を思い出した。
「あ、そうだ。実はサポーターとして僕が復帰した後に入れて欲しいという相談があって…」
「…どこの【ファミリア】の子?」
「【ソーマ・ファミリア】で、リリカル・アーデという小人族です」
「一応その場にオイラも聞いたけど、何か相当苦労しているみたいだぜ。同じサポーターとしてもよくわかるし」
「なるほどね…。でも【ソーマ・ファミリア】かぁ。うーん、どうしよ…」
「べ、ベル。『ブロックス』で多分その子と遊んだでしょ? その時はどうだったの?」
「第一印象で言えば……妹みたい?」
「……」
「……」
ダフネさんやカサンドラさんが考えている。もう少し何か付け加えるべきか?
ベルはそう考えていると、ルアンからのフォローが入る。
「…深い意味はないと思うぜ。根から悪いやつではなさそうだったし」
「…まあ、いいでしょう」
「え、ほんと!?」
「まあ、問題を起こすというなら即刻この話はなかったことにするけどね」
「まあ、これであいつも喜ぶだろうぜ!」
教育係から許可を下りたことで、僕が復帰した時、新たなサポーターがチームに加わる事になった。
「…いいの、ダフネちゃん? 同じ【ファミリア】で統一された少人数のパーティーで、なおかつ既にサポーターがいるのに、そこに違う【ファミリア】のサポーターを加えたら、仲良くしようとしたら気を遣うことになって、逆にダンジョン攻略が難しくなると思うけど…」
「今のベルは駆け出しだし、いずれ私達の教育も終わって離れるから、その時にベルのパーティーにその子残っていたら、精神的にも誰もいないよりは立ち直りが早くなるからね。ルアンも今の現状だと本当は別のパーティーのサポーターだし。何故かあいつはあの騒動までこっちにいたけど」
「…そうだね。今のベルはまだ駆け出しだから、私達のパーティーに組み込むのは、なし、なのね…」
「…カサンドラ。あんたがベルを気に入っているのはわかるけど、ダンジョンの攻略は命がけだから、余り不安要素は残したくないの。中層に行くなら特に。大人数で行くのならわかるけど…」
「……わかった…」
「ぶえっくし!」
「どうしたの、ロキ? まさか風邪を引いたとか言わないよね?」
「いや、さっき誰かウチの噂をしていた気がしてな」
「…?」
「…あれ、そういえば、ロキ様って前に何か変な液体かホームで造ってませんでしたっけ?」
「ギクッ!?」
「…そういえば、それは結局どうしたのよ?」
「…効果を試す前に、ゴミだと勘違いされて廃棄されたわ」
結局、盗まれた物は最終的にギルドや【ガネーシャ・ファミリア】の人達に丸投げすることになった。
そして、僕たちは空いている4人席に座り、モンスターたちが調教されたショーを見た。
「…!? え、あれはついこの間座学の時にミィシャさんが言っていた、11階層に出現する『インファルト・ドラゴン』!?」
「へぇ、【ガネーシャ・ファミリア】はあんなのも調教したんだ。まあ、確かに希少種だけどね」
「こうして眺めると、やっぱりでけぇな」
「あ、『シルバーハック』や『ゴブリン』がよじ登っている」
「そしてそのまま…『インファルト・ドラゴン』の首を滑り台にして、少し離れている台に空中でムーンサルトしてそのまま着地した!?」
「奇想天外すぎるでしょ!」
そして僕たちは、【ガネーシャ・ファミリア】のショーの数々を見て、非常にのめり込んでいる。特に僕とカサンドラさんが。
「あ、今度は『ヘルハウンド』と『アルミラージ』が出た」
「あれはまさか、ベル?」
「ほんとだ。ベルが出てるよ」
「違うよっ!?」
「ベルがサーカスに出るのね。一体どんなショーにするのかしら?」
「完全に違うからねっ!?」
「ん? あの輪に油を塗ってるね」
「あ、ほんとだ。…おい、『ヘルハウンド』が人に向かって火を噴いたぞ!」
「あ、避けた」
「そのまま火の輪にしたわね」
「そしてそれを…『ヘルハウンド』が輪っかの中をジャンプして潜り抜けた!?」
「それに『アルミラージ』も続いた!?」
「ベルはあまり無茶しないで!?」
「いや、『アルミラージ』の事ですよねっ!?」
「あ、今度は左右に炎の輪を複数移動させて、タイミングを見計らって一気に輪を潜り抜けさせるつもりね」
「結構難しくありませんかそれ?」
「まあ見てなって…ほら」
「え、あんな綺麗に…」
「そしてまた『アルミラージ』も続いた!?」
「だからベルは無茶しないで!?」
「ですから、『アルミラージ』を僕だと認識しないで下さい、カサンドラさん!?」
「あっはっはっはっは!」
「――――――さて、お客様、まだまだショーは続きますよ。続いては、水中にすむ大蛇のモンスター『アクア・サーペント』のペントちゃんが――――――」
「あ、私少し席を外すね」
「ウチも」
「え、二人ともどこに行くのですか?」
「少し飲み物を買いに。さっき飲もうとしていたのはルアンを起こすために使ってしまったし」
「あ、そうですね。結局あの時ジャガ丸くんを食べられませんでしたし」
「…そ、そうね」
「……?」
「さては盗人を追い駆けている間ももったいないからってジャガ丸くんを食べてたな」
「前後不覚になったルアンは後で覚えてなさい」
「私も手伝うわ、ダフネちゃん」
「あ、じゃあ、二人とも気をつけて」
「すぐ戻るわ」
「絶対あのジャガ丸くんに何か入っていたって! じゃないといくら何でも前後不覚にはならねえよ!」
「あはは…」
さっきのジャガ丸くんの話をしていた僕たちに、聞きなれた声が聞こえた。
ベルは振り返ってみると、そこにはアポロンとヒュアキントスが走り込んでいた。
「あ、いたー! おーい、ベルきゅーん!」
「お待ちくださいアポロン様!」
「え、神様?」
「え、何でアポロン様がここに? ヒュアキントスまでいるし」
「ふっふっふ。これでも私は神だからな。眷属の位置の把握ぐらい造作もないのさ!」
「………」
な、何かヒュアキントスさんがすごくやつれている。多分、何かがあって相当苦労したことがあったと顔に出ている。
そんな顔をしていたヒュアキントスは、あることに気づく。
「ん? ダフネとカサンドラはどうした? 一緒じゃないのか?」
「え、何で知っているんですか!?」
「はっはっはー! 実は朝にベルきゅんたちが集合していたところを見てな! そこから私達も混ぜてくれようと探していたのさ!」
「その時に混ざればよかったじゃん…」
「……それは」
「それは私がアポロン様と行動しようとしていた時、ルアン達が既に動いてしまったからな。おかげで探すのに苦労した…。特にあのモンスターヒキガエルに襲われたとき、ダンジョンにいたときより恐ろしく感じたぞ…!」
「そ、それは大変だったんですね…」
そんな話をしていると、ダフネが戻ってくる。
「お待たせ…て、何でここにアンタ達がいるの!?」
「あ、丁度入れ違いに会ったんです」
「フハハハハハ! 水臭いじゃないか! 私達も一緒に見ようではないか!」
「ダフネ、カサンドラはどうした?」
「ああ、飲み物を買おうとしたら、何か眠たくなったらしくて、仮眠室で寝てる」
「それはあのジャガ丸くんのせいだって! 絶対何か仕込んでいたんだって!」
それを聞いて、ルアンはジャガ丸くんに何か仕込まれていることを主張する。
いや、でもルアンのはそうだったとしても、他の人は自分のも含めて何ともないんじゃないかな…。
「ル、ルアン、一先ず落ち着いて」
「……? おい、一体何があったのだ」
「ジャガ丸くんで前後不覚になった」
「……どういうことだ?」
「カサンドラはいつものやつよ。ダンジョンでもあったことがあるから」
「ふむ、ホームでもよくあることだ」
「……」
もしかして、前に言っていた夢のお告げの事かな…。確かあれは、夢のお告げの事を話しても、皆から信じてもらえないと言っていたけど、その原因って何なのかな…?
確かに、夢の内容が余りにも現実味がなくて、唯一夢のお告げの事を信じることができるらしい僕でも、さすがにそれはと言える内容もあった。
そのせいで、『ミノタウロス』の件に巻き込まれてしまった事があったけど。
ただ、ここまでくると、もしかして、何かの【スキル】の効果なんじゃ…。でもどうして僕だけ…?
そう考えていると、凄い汗でカサンドラさんが戻ってきた。
「あ、カサンドラ、もういいの?」
「あ、あの、カサンドラさん。実は聞きたいことが「皆! 早くここから逃げて!」…えっ?」
カサンドラさんの叫び声で、僕らの周りの人達が騒然としていた。
「はぁ、また夢のお告げとか言うの? いくら何でもここは無理でしょ」
「カサンドラ、ここにはアポロン様もおられるのだ。盛り上がりに欠けることはするな!」
そう言うと、カサンドラさんはヒュアキントスさんに向かって必死に懇願していた。
「団長様! 団長様! お願いします! どうか、どうか、私の言葉を信じてください!」
「黙れといっている! 寝言も大概にしろ!」
しかしヒュアキントスは拒み、腕を振り払って激昂する。
ダフネは撥ねのけられたカサンドラさんをなんとか受け止めた。
そこに、アポロンが諫める。
「まぁまてヒュアキントス。カサンドラ、一体何があった。お前が寝ている時に襲撃されたのか?」
「ああ、なるほど」
「あ、あの、カサンドラさん。一体、どんな夢を見たんですか? 何かのモンスターが解放されてしまったのですか?」
僕は夢のお告げと呼ばれる内容を聞こうとする。
「いいえ、いいえ! 違います! もうすぐに来てしまう! 生まれてしまう!」
「「「「「―――――――は?」」」」」
何を言っているのか、神様であるアポロン様や、夢のお告げの呪いらしきものに耐性がある僕にも理解できなかった。
生まれる? 一体どういう事?
そのままの意味なら、外のモンスターが卵を産んで、そこから生まれるっていう事?
でもそれだと、生まれてくるモンスターは親のモンスターよりも非常に弱くなるし…
僕は頭を悩ませた。
そこで、アナウンスが入る。
「――――――さて、お客様、お待たせしました! 今回の『怪物祭』の目玉、何と深層に出現し、非常に凶暴ですが、今回調教を成功させました! ご覧下さい! 『バーバリアン』、そして『オブシディアン・ソルジャー』、『スパルトイ』であります!」
このアナウンスを聞いた時、カサンドラさんの顔色は、非常に悪くなった。
「あ、ああ、ああああああああ!?」
「お、落ち着いてください! このアナウンスとあなたの見た夢のお告げに、一体何と関係が…!」
「おい、カサンドラの夢が正しい事前提に話を進めるな! 何がどうなって…」
「……投げ込まれる……!」
そう言うと、檻から出た深層に出現するモンスター3体の前に、ある容器がどこからか、闘技場の中央へと投げ込まれた。
その容器の形は、見覚えがあった。
僕たちが優勝し、獲得した得体のしれないものを入れていた容器の色も形もそっくりであった。
【ガネーシャ・ファミリア】の団員たちがそれに気づき、急いで回収しようと動くが、先に投げられた容器が地面につき、割れる。
しかしそこから現れた物は液体ではなく、固体だった。
その固体は、何か中にモンスターの胎児らしきものの閉じ込めた、丸い結晶のように見える。
そして、大きな鳴き声が響いた。
「―――――――――ァアアアアアアアアアアア―――――――」
「うわ、何だ!?」
「うるさっ、何あれ!?」
「【ガネーシャ・ファミリア】の演出じゃないのか!?」
「というか、何か動いてないか!?」
「何か、まずい気がする…!」
「まさか逸れてしまったシルを探している時に…!?」
「エイナ、あれって何!?」
「あれは、まさか…ガネーシャか!?」
「今はツッコミをかませる余裕がないです、ガネーシャ様!」
「…やべぇわ、アレ」
「あれって、遠征で見たモンスターに、似ている…!」
「……あらあら。私が事を起こす前に、誰かが始めたようね」
――――本当の、『祭』が始まる。