ベル君が【アポロン・ファミリア】に入団するのは間違っているだろうか   作:七篠ロキ

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アポロン「さて、ベルきゅん達はどこにいるのか…」
ヒュアキントス「アポロン様、あのモンスター『ヒキガエル』が近くにいるかも…」
アポロン「慌てるな! その予感はしない!」
ヒュアキントス「で、ですが…」
アポロン「…は、そうだ!匂いで辿れば!」
ヒュアキントス「いや、流石にそれは…」
アポロン「あ、いたー! おーい、ベルきゅーん!」

本編の『怪物祭』中編に続く…


『怪物祭』後編

 一方その頃、闇派閥のアジトでは―――――

 

「……ふう、これが伝説のバストアップ液か…。配下の奴らに奪わせようとしても、どんな容器に入ってるかわからねえからな。予定が狂いまくっている今は下手な問題を起こしたくねぇし。まあ、何はともあれこれで…」

 

 そこには、景品とは別の容器に入れられていた怪しい液体が入っていた。

 

 ギルドや【ガネーシャ・ファミリア】の持ち物検査を潜り抜けるため、あらかじめ別の容器を持ってきた、そこに液体を移したのだった。

 

 この液体を早速飲もうとすると、そこにタナトスがやってくる。

 

 

「あれ、ヴァレッタちゃん、こんな所で何やっているの? それ何?」

 

「ああ、タナトス様。ふっふっふ。ついに手に入ったんだ! この伝説のバストアップ液が! これであの済まし顔をしたフィンが相手でも色仕掛けという作戦が可能になるかもよ!」

 

「あ、あれ、そうだっけ? 確かにヴァレッタちゃんって、胸はそんなに大きくはないけど…」

 

「うるせぇ! そこは言うな!」

 

「ていうかそれ、効果あるの?」

 

「すぐに効果が現れるって話だ! 効果は永続らしいから、早速使う!」

 

 

 そして、その液体をヴァレッタは飲み込んだ。効果は現れるのかと待ったが、全く変化がしなかった。

 

 

「ちっ! やっぱりガセか!」

 

「ていうかヴァレッタちゃん、凄い必死だったね。そんなに気にしてたの?」

 

「うるせぇな! これでも私は女だ!」

 

 

敵対する【ロキ・ファミリア】は、主神のこともあってか、女性の割合が多く、一部を除いてスタイルも抜群である。主神含んだ一部を除いて。

 

 それらに会うたびに若干心の中で、へこんでいるようだった。

 

 

「つーか、一体何の用だよタナトス様」

 

「ああ、そうだった。結局盗られた『宝玉』は見つからなかったけど、代わりになんか面白そうな子が見つけてね。さらおうとしたら【ロキ・ファミリア】に阻止されちゃって」

 

「それでその作戦を立てるために、わざわざ私の所まで来たってのか? いくら計画の修正をしようにしたって、『宝玉』の事が解析されたらどうあがいてもこっちの戦力が減るしな…。その穴を塞げれるのか?」

 

「うん。あの子の見立て上、なんとかなりそうかも。都市全体が協力とかなければ」

 

「……まあ、考えてやるよ」

 

「おお、流石ヴァレッタちゃん! 頼りになるねぇ!」

 

「そういや、あいつはどうした?」

 

「ああ、なんか使いすぎたから調整するって。最後の一発分計算が狂ったとかなんとか」

 

「あっそう」

 

「まあ、今はあっちの機会をうかがって「タ、タナトス様! 大変です!」…どうしたの?」

 

 

 そこで、配下の一人が慌ててタナトスの所まで報告に来た。その報告の内容を聞いたヴァレッタは、一瞬耳を疑った程だった。

 

 

「ほ、『宝玉』が、民衆の目に拾われました! そして、それがモンスターに寄生して…、今、大変なことになっています!」

 

「……はぁ!?」

 

「……ん? ヴァレッタちゃんの仕業じゃないの?」

 

「そんなわけあるか! 次の手も用意してないのに、そんなことしたら余計に都市全体が警戒して、こっちが動きにくくなるぞ! そしたら、実行するのがいつになるか見当もつかなくなる!」

 

「え、ど、どうしよう…」

 

「おい、場所は!?」

 

「は、はい! 闘技場です!」

 

「……クソッ、また計画が頓挫しちまった…」

 

 

 今から行っては、もう間に合わない。都市全体が既に厳重警戒に入ってしまっている。

 

 

「また、一から見直すことになっちまった…」

 

「……まさか、向こうがこんな手を打ってくるとは…」

 

 

 まさかの自滅覚悟の暴露を行われたことで、再び実行する日を大幅に延期することになってしまった。

 

 

「もしこれで、向こうの戦力の主力が複数死んだら今の話は変わって、逆にこっちはチャンスになるけどな」

 

「…で、一体何のモンスターに寄生したの?」

 

「はい!『オブシディアン・ソルジャー』であります!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場面は闘技場に戻る。

 

「―――――総員、戦闘準備! 一般客の方はギルドの人達からの避難指示に従ってください!」

 

 緊急のサイレンが鳴り響く。

 

 僕たちは、闘技場の中心の出来事で、意識がそっちに向けて唖然としていた。

 

 中に結晶らしきものが飛び出たと思ってら、それが動いて、目玉の予定だったモンスターの一匹、『オブシディアン・ソルジャー』に飛び移り、寄生した。

 

 そして、驚くことに、歪な体型をしていた『オブシディアン・ソルジャー』の体が、徐々に変化して、なんと上半身が人間の女性の形へと変化していったのだ。

 

 

「な、なんだあれ…」

 

「いや、すぐに【ガネーシャ・ファミリア】が対処してくれる! 今はすぐにここから出て…」

 

 

 アポロンがそう言い、ベル達は顔が蒼くなっていたカサンドラを抱きかかえて、ここから脱出しようとする。

 

 しかし、出入り口付近に何かが飛んできた。

 

 それは、先程闘技場にいた【ガネーシャ・ファミリア】の人だった。

 

 そしてその人の体は、血を流し、さらに、所々に岩石が埋め込まれているように見えている。

 

 ベル達は慌てて闘技場の中心を見ると、完全に変貌した『オブシディアン・ソルジャー』が、対応していた【ガネーシャ・ファミリア】を蹂躙していた。

 

 『オブシディアン・ソルジャー』の本来の戦い方からほど遠く、体の黒曜石の岩石類を高速で相手に発射していた。しかも、その軌道が不規則で、盾を構えていた人達から外れた岩石が、後ろからUターンして【ガネーシャ・ファミリア】の人達に埋め込んでいる。

 

 また、魔法を放っても、『オブシディアン・ソルジャー』の体の性質はそのままなのか、魔法の威力が減らされて、ほとんどダメージがない。

 

 また、接近しても『オブシディアン・ソルジャー』の本来の膂力とは全く桁違いの力を放ち、【ガネーシャ・ファミリア】の人達を盾ごと殴り飛ばしていた。

 

 さらに、【ガネーシャ・ファミリア】の主力のほとんどは僕たちの件で傷つき、逆に足手纏いとなるため戦えず、市民の避難誘導に徹しており、蹂躙されていく仲間の姿を見て唇を噛み締めている。

 

 その姿を見たベルはある決心をする。

 

 

「すいません。カサンドラさんをお願いします!」

 

「ちょっ、どこに行くのベル!」

 

「ま、待って、ベル、行かないで!」

 

「ヒュアキントス! 急いでベルきゅんを!」

 

「承知しました!」

 

「ベル、お前経過観察だろ! しかもLv.1だし、まともに戦えないって!?」

 

 

僕はカサンドラさんをダフネさんに渡し、みんなの制止を振り切って、闘技場の中心に向かった。少しでも時間を稼ぐために。

 

 しかし、ヒュアキントスさんが背後から近づいて、全速力で走れなかった僕はすぐにそのまま捕まえられた。カサンドラさんも立ち直ったのか、僕たちの方に来ようとしている。

 

 

「よく現実を見ろ! 貴様はまだLv.1だ! 今は【ガネーシャ・ファミリア】の奴らに任せて、我々はここを脱出するぞ!」

 

「で、でも…!」

 

「思い上がるな兎風情が! 一体あの場で何ができるっていうんだ! 時間稼ぎにもならん!」

 

「……っ!」

 

「それに、もう少し【ガネーシャ・ファミリア】の奴らを信じろ! 今ああやって戦っているのに、そのあいつらの思いを貴様は踏みにじる気か!?」

 

「……」

 

「わかったらすぐにここから離れて…ッ!?」

 

 

ヒュアキントスの必死の説得でベルは折れ、逃げるように踵を返して、カサンドラもベルの所に到着して、引き返そうとする。

 

 そこに『オブシディアン・ソルジャー』がベルたちを飛び越えて、ルアン達も含めた市民の人達に襲い掛かってきた。

 

 

「う、うわあああああ!?」

 

「なっ…!?」

 

「く、来るなぁ!?」

 

「ほあああああああああああ!?」

 

「まずい! アポロン様、すぐにそこから離れて…」

 

「み、皆「どっせーい!」…え?」

 

 

 絶体絶命の中、そこには市民が当たらないように大剣が飛んできた。

 

 それを回避した寄生された『オブシディアン・ソルジャー』は、飛んできた方向を見て、迎撃態勢に入る。

 

 

「皆! ここは私達【ロキ・ファミリア】に任せて!」

 

「ここは任せろ!」

 

「アイズさん! ティオナさん! ティオネさん! 前衛はお願いします!」

 

「ん、わかった」

 

 

【ロキ・ファミリア】が駆けつけ、戦闘態勢に入る。

 

 また、その人達の登場によって人々は少しだけ活気が出て、ギルドの人達もすぐに避難指示を再開させる。

 

 

「皆さん、こちらです! 【ロキ・ファミリア】の人達の邪魔にならないように、回り込んで脱出してください!」

 

「皆ー! こっちだよー!」

 

 

 そしてエイナとミィシャが避難指示をして、人々を【ロキ・ファミリア】の人達が戦いやすくなるように誘導する。

 

 

「おー、ウチらの不安要素をすぐに解消させてくれたか」

 

「ロ、ロキ! なぜここに!?」

 

「それはこっちの台詞や」

 

「と、とにかく助かった…!」

 

 

 この光景を見て、僕たちも何とかなりそうだと思い、すぐに合流して謝りに行こうと思い、まずはカサンドラさんから謝ろうと顔を向いたら、カサンドラさんの顔色は全く良くなっていなかった。

 

 

「駄目…、足りない…! でもどうやってやればいいの…?」

 

「……え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

その声で、一瞬何故と思ったら、僕たちの後ろから足音が聞こえた。

 

 振り返ると、その正体は先程闘技場にいた、『バーバリアン』と『スパルトイ』だった。

 

それらのモンスターを調教した【ガネーシャ・ファミリア】の人達はダウンしており、目の敵かのように暴れて僕たちの方に襲い掛かってくる。

 

 

『『オオオオオオオオッ!』』

 

「うわあああ!?」

 

「……っ!」

 

「く、ここまでとは…!」

 

 

 そして、僕らは、それらと交戦することとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オオオッ!』

 

「く、この骨風情が…!」

 

 

『スパルトイ』は大盾を持ち、攻撃武器は剣や槍など個体によってそれぞれ異なるが、体も武器も骨でできているにもかかわらず、白兵戦は強く、ヒュアキントスは波状剣を持っているが、攻防が続いていた。

 

 

『ヴォオオオオ!』

 

「うわあ!?」

 

「きゃあ!?」

 

 

『バーバリアン』は『スパルトイ』と同じく戦士系の翼と角を2対持つモンスターであり、『スパルトイ』ほど敏捷さはないものの、力は強く、ベルとカサンドラは必死に避けていた。

 

 この2体のモンスターはギルド推定Lv.3から4である。

 

 ヒュアキントスはともかく、ベルとカサンドラが逃げに徹しているものの、今立っていられるのは奇跡である。

 

 

(ど、どうすれば…! このままじゃ…)

 

 

 どうにか瓦解策を考えようとする前に、相手が攻撃してきた。

 

 

『ヴォオ!!』

 

「な、舌…!?」

 

 

 『バーバリアン』がカサンドラに向けて舌撃をだし、カサンドラは避けようとするも、そのまま舌撃が背後にいた、ベルが持っていた短刀に当たり、取り落としてしまう。

 

 ベルはすぐに取ろうとするも、相手が許さない。

 

 

「ッ!?」

 

 

『バーバリアン』に蹴られそうになったベルはギリギリで避けたものの、短刀を拾えずに状況が悪くなる一方だった。

 

 

(このモンスターを後ろに行かせたら、市民の人達が危ない…!)

 

 

 僕は最悪の事態を防ぐため、どうにかして短刀を拾おうと考えていると、『スパルトイ』と戦っていたヒュアキントスさんがたまたま短刀に近づいて、それに気づいたのか、すぐに短刀を蹴って僕に返してきた。

 

 

「武器を落とすな! 貴様も冒険者だろう!」

 

「す、すいません!」

 

 

 どうにかすぐに手元に戻ったとはいえ、今のままではジリ貧である。

 

 早く援軍が欲しい。【ロキ・ファミリア】の人達はまだなのか。

 

 どうにかして一気にこの状況を瓦解する方法はないのか。

 

 ベルはそう考えていると、カサンドラが『バーバリアン』の様子を見ながら話しかけてくる。

 

 

「ベル…実は、私の夢のお告げの続きに、『骨と翼の協力がなければ悲惨なことになる』というお告げがあったの…。でもこれがどういうことなのかわからないの…」

 

 僕はこの話を聞き、首を傾げた。

 

 それは何なのかと考えて、そしてあることに気づき、思いついた。

 

 

「……そうだ! ヒュアキントスさん! このモンスターたちをどうにかして、【ロキ・ファミリア】の人達が戦っている『オブシディアン・ソルジャー』にぶつけることってできますか!?」

 

「べ、ベル!?」

 

「無理に決まっているのだろう!? 何を考えているんだ! こいつらは私達ではなく【ガネーシャ・ファミリア】の奴らに調教されたのだ! 私達の命令を聞くわけがなかろう!」

 

「でもそれは、僕たちにまだ調教されていないからですよね!?」

 

「今すぐに出来ると思っているのか!? こいつらは貴様らよりも強いぞ!」

 

「……それでも、やってみます!」

 

「…馬鹿が!」

 

 

 そうヒュアキントスさんは吐き捨てると、僕はまずは『バーバリアン』からどうにかしようと対峙する。

 

 

「……ベル、ほんとにやるの?」

 

「…はい。じゃないと、僕たちはここで終わる…」

 

「……わかった。私も、やってみせる」

 

 

 僕らの雰囲気が変わったのを感じ取ったのか、僕達がほとんど相手にならなかった『バーバリアン』は目を細め、僕らの事を見据えた。

 

 言葉が伝わらなくても、相手に伝えることが出来ることを【ガネーシャ・ファミリア】の人達がさっきまで見たショーで証明して見せた。

 

 つまり、理論上なら、今からでもできる。

 

 それを行うには…まず。

 

 

「フッ!」

 

『ヴォッ!?』

 

 

短刀を見当違いの所に放り投げた。

 

 この僕の行動に驚いたのか、『バーバリアン』は放り投げた短刀の方を見て、唖然としている様子だった。

 

 そして、僕らの方に向き直した『バーバリアン』に、僕とカサンドラさんは恐る恐る、少しずつ近づいた。

 

 

「……」

 

「……」

 

『ヴォ、ヴォッ!?』

 

 

この一連の行動が理解できず、動けずに困惑する『バーバリアン』。

 

 そして、至近距離まで近づき、立ち止まった。

 

 腕を振るえば当たる距離。

 

 この事実を僕たちは必死に考えず、誠心誠意で行動を示す。

 

 そして、二人でそっと抱きしめた。

 

 

『ヴォ、ヴォッ、ヴォ!?』

 

 

 未だに困惑する『バーバリアン』。

 

 そのまま、抱きしめていると、次第に少しずつおとなしくなってくる。

 

 

『ヴォ、………ヴォオ……』

 

 

 そして、そっと離れると、完全におとなしくなった。

 

 

『…………ヴォオ……』

 

 

 どうやら、何とか気持ちは伝えらえたようだ。

 

 カサンドラさんはそっと『バーバリアン』の頭を撫で、「よしよし」としていた。

 

 それでも『バーバリアン』が暴れないため、どうやら成功したようだった。

 

 しかし、まだ喜んでいられない。

 

 

「次は、『スパルトイ』…!」

 

 

 今度は『スパルトイ』の方に向ける。

 

 しかし、今はヒュアキントスさんと戦っており、こちらの方を全く見ていない。

 

 現状だと、先程の『バーバリアン』の事は出来ないため、ヒュアキントスさんに頑張ってもらわないといけない。

 

 

「ヒュアキントスさん! こっちはなんとかしました! このままヒュアキントスさんは『スパルトイ』に勝ってください! 出来るだけ傷つけずに!」

 

「無茶を言うな! というか貴様らはそっちは成功したのか!?」

 

「はい! ですから、お願いします!」

 

「……馬鹿な……!?」

 

 

ベルたちが成功したことにヒュアキントスは戦慄を覚えていた。

 

 だが、『バーバリアン』が大人しくしていることで、嘘をついていないことを証明されている。

 

 これを一目見たヒュアキントスは、負けじと意地を見せた。

 

 

「だが、確かに負ける訳にはいかないな! フン!」

 

『オオオッ!?』

 

 

ヒュアキントスの攻撃のスピードが上がり、どうにかすぐに決着をつけようとする。

 

 『スパルトイ』はいきなり上がった攻撃のスピードを喰らい、よろけ始めた。

 

 すぐに体勢を取ろうとすると、それをヒュアキントスは許さず、攻撃のラッシュを繰り出す。

 

 『スパルトイ』は大盾を使ってこれを防ぎ、カウンターを浴びせようとすると、これを読んだヒュアキントスはカウンター返しを浴びせる。

 

 さらに体勢が悪くなり、尻餅をついた『スパルトイ』の顔の前に波状剣を突き出した。

 

 

「ハァーッ、ハァーッ、……貴様の負けだ!」

 

『オ、オオッ!?』

 

 

攻撃スピードを最大限繰り出して、息切れになりながらも、何とか『スパルトイ』を敗北させた状況を作り出した。

 

 この状況を利用して、すぐに『スパルトイ』から武器を奪った。

 

 そして、どうにか自分たちが仕組んだのではないということを分からせるため、寄生された『オブシディアン・ソルジャー』の方に指を差し、向こうが敵であることを伝えようとした。

 

 いうならば、神様が言っていた『呉越同舟作戦』である。

 

 共通の敵がいれば、相手は仲間だと認識してくれることである。

 

 そして、指を差した方を見た『スパルトイ』は、納得したのか、すぐにおとなしくなった。

 

 どうやら、『スパルトイ』の方も成功したようだった。

 

 

「よし、何とかなった!」

 

「や、やったぁ! もしかしたらこれで…!」

 

「まさか本当に成功してしまうのか…!」

 

 

 こうして僕達は、『バーバリアン』と『スパルトイ』を無力化させることを成功した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、ベルたちが調教を行っている間、【ロキ・ファミリア】の方では―――――

 

市民の人達は皆、避難誘導がほとんど終わっているが、攻防が均衡しており、お互い攻め手を欠けていた。

 

 

「なんかいつもの『オブシディアン・ソルジャー』よりも硬い!」

 

「うーん、いつもの大双刃だったらもう倒しているのに~」

 

「【エンペスト】を使ってもほとんど意味がない…」

 

「私の魔法でも歯が立たないなんて…」

 

 

 接近戦に持ち込み、厄介な岩石の追尾弾を出さないようにしている。

 

 しかし、レフィーヤやアイズの魔法の攻撃力が減らされて、決定打が打てず、戦闘が長引いてしまっている。

 

 

「こんの~! いっくよー!」

 

 

見かねたティオナが大剣を大振りで寄生された『オブシディアン・ソルジャー』に多大なダメージを与えようとしたが、簡単に避けられてしまう。

 

 そして、ついに均衡が崩れてしまった。

 

 

「あっ、しまった!」

 

「馬鹿ティオナ!」

 

 

 そして、寄生された『オブシディアン・ソルジャー』はティオナの腕をつかみ、もう片方の手でティオナに向かって裏拳を繰り出す。

 

 

「ぐおっ!? …でもまだまだぁあ!?」

 

 

 そのままその流れに逆らわず、体を回転させ、周りをけん制しつつ、ティオナを持っていた大剣ごと闘技場外に放り投げた。

 

 

「うそーー!?」

 

「ティオナ!?」

 

「ティ、ティオナさん!?」

 

「あの馬鹿…!」

 

「嘘やろ!?」

 

 

 前衛が一人、強制離脱された。

 

 この光景を見ていた主神含めた【ロキ・ファミリア】は驚愕の声を上げる。

 

 そして、その余裕を与えずに、岩石の追尾弾を繰り出そうとする寄生された『オブシディアン・ソルジャー』に、ティオネとアイズはすぐに接近して、それを阻止する。

 

 

「させない…!」

 

「くそ、こいつ、遠征の時もそうだけど、一体何なのよ!」

 

 

 魔法が有効でないため、ほとんど戦力外通告された形となったレフィーヤは、自分でも何かポーションを渡して回復させる以外に手伝えないか、手段を探していた。

 

 

(ど、どうすればいいの!? ティオナさんがいなくなってしまったら、物理的に大ダメージを与えられる人がもう…!)

 

 

 しかし、悪夢は続く。

 

 接近戦をしていたが、前衛が一人いなくなってしまい、一人当たりの負担が大きくなってしまい、ついに本来の武器ではなかったアイズの剣が壊れてしまった。

 

 

「しまっ、グゥ!?」

 

「アイズ!?」

 

「アイズさん!?」

 

「え、ちょっ、嘘やろ!?」

 

 

 そのまま攻撃を喰らい、アイズの体勢が崩してしまう。しかも終わらず、ここからさらに蹴りがアイズの腹に直撃してしまった。

 

 

「ガッ!?」

 

「やば、レフィーヤ! アイズをフォローして!」

 

「は、はい!」

 

 

魔法が有効でなくとも、レフィーヤはLv.3であるため、いないよりはマシである。

 

 再びアイズに攻撃しようとする寄生された『オブシディアン・ソルジャー』にティオネは攻撃をしかけ、その間アイズにポーションを飲ませ、すぐに復帰させる。

 

 

「ん…。ごめん、しくじった」

 

「だ、大丈夫です。それよりも、武器が…」

 

 

 だがこれでアイズの攻撃手段が蹴りしかなくなり、実質ティオネ一人で抑えることになってしまった。

 

 余裕だろうと思っていたことが、まさかこの状態にまで押されてしまったことに、ロキは非常に慌てて、飛ばされたティオナを探しに闘技場の外に出てしまっている。

 

 

『アァアアアア!』

 

「な、この!」

 

 

 寄生された『オブシディアン・ソルジャー』が地面に力いっぱい叩き、ティオネが躱すと、そこから後ろに飛んで距離を取り、ついに厄介な岩石の追尾弾を繰り出そうとする。

 

 盾を持ってない【ロキ・ファミリア】にとって、絶体絶命である。

 

 

「こんの……アバズレがぁ!」

 

 

ティオネが遂に怒り、すぐに近づこうと接近する前に、岩石の追尾弾が大量に発射されてしまった。

 

 

「がぁああああ、……なめんなぁ!」

 

 

ほぼすべて一番近かったティオネに命中し、いくつかは岩石が体に埋め込まれた形となったが、スキル【噴化招乱】と【大反攻】が発動した。

 

 そして武器を捨て、そのまま相手に殴りかかった。

 

 

『アァアアアア!?』

 

 

重い一撃が入り、寄生された『オブシディアン・ソルジャー』はよろめき、ティオネはそのまま拳のラッシュを繰り出す。

 

 

「オラーーーーー!」

 

 

ついに寄生された『オブシディアン・ソルジャー』の体は亀裂が入り、しかも一撃が入るたびに亀裂が走り始めた。

 

 たまらず寄生された『オブシディアン・ソルジャー』は再びジャンプして、そこから逃れようとする。

 

 そして向かった先は、丁度調教を終えたベル達がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 向かってくるモンスターに驚き、状況がより緊迫していることがベル達は判断する。

 

 

「こいつもこっちに来たのか!?」

 

「【ロキ・ファミリア】の皆は!?」

 

「一人こっちに向かってくるよ!」

 

「どきなぁああああああ!」

 

「「「ほわあああああ!?」」」

 

 

 1人は先程のトラウマを思い出したのか、ベル達3人は一緒に向かってくるティオネを見て、悲鳴をあげる。

 

 そしてそのまま突っ込み、無防備の体勢になった相手にさらに重い一撃を浴びせる。

 

 寄生された『オブシディアン・ソルジャー』の体はさらに大きく亀裂が入り、もう少しで倒せる状態となる。

 

 しかし、もう一撃お見舞いしようとしたティオネの傷だらけの拳を受け止められてしまう。

 

 そしてそのまま、ティオネの拳を握りつぶした。

 

 

「~~~~~~~っ! こんのぉお!!」

 

 

 それでも負けじともう片方の拳を握りしめ、トドメを刺そうとしたが、相手の強烈な膝蹴りが早く、渾身の一撃が空振りとなってしまった。

 

 

「ご、は、あっ!?」

 

「ティオネさん!?」

 

「ティオネ!」

 

 

 急いで近づく【ロキ・ファミリア】の二人の悲鳴はむなしく、さらに、そこから至近距離で岩石の追尾弾を全弾ティオネにうちこみ、殺そうとしたが、意外な形で救った。

 

 

『ヴォオオオオ!』

 

『アァアアア!?』

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「な、なにが…?」

 

「モ、モンスターが人を助けた!?」

 

「………何、それ…」

 

 

 『バーバリアン』の舌撃で、寄生された『オブシディアン・ソルジャー』を少し吹き飛ばし、攻撃を阻止してティオネを救う。

 

 そしてそのまま『スパルトイ』が骨でできた大盾と剣を持って寄生された『オブシディアン・ソルジャー』に迎撃する。

 

 まさかの形で救われたティオネは戸惑い、この一連を見たアイズとレフィーヤは戦慄した。

 

 

「『調教』が上手くいきました!」

 

「正直、これはどうかと思うぞ…」

 

「団長様、今は冒険者云々の事はおいといてください」

 

「調教!? こんな短時間で!? あなたたちがあのモンスター達を!?」

 

「……信じ、られない……」

 

 

 戸惑いが隠せず、いまだ現実を飲みこめていないアイズとレフィーヤ。

 

 だが、『スパルトイ』と寄生された『オブシディアン・ソルジャー』が戦っているのを見て、これが現実であることがまざまざと見せられる。

 

 『バーバリアン』もそこに行って、『スパルトイ』を援護しようとしている。

 

 すごいことになった…。

 

 モンスターとモンスターが戦っている。

 

 ダンジョンではよく見られる事であるが、でもこんな形で…。

 

 最初に提案したのは僕であるにもかかわらず、戸惑いが隠せないのは僕も一緒だった。

 

 カサンドラさんやヒュアキントスさんも、【ロキ・ファミリア】の人達も唖然としてその光景を見ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『スパルトイ』の攻撃が、亀裂が走っている体にめがけて攻撃すると、寄生された『オブシディアン・ソルジャー』は苦しみが走り始めている。

 

 お返しとばかり寄生された『オブシディアン・ソルジャー』は岩石の追尾弾を浴びせようとすると、正面からの攻撃は『スパルトイ』の大盾によって防がれてしまう。

 

 また、Uターンして後ろからあてようにも、骨でできている『スパルトイ』は多少は苦しむが、『バーバリアン』がそれらを舌で迎撃してほとんど撃ち落としている。

 

 さらに、『バーバリアン』の体当たりで、寄生された『オブシディアン・ソルジャー』の体はもう限界寸前となった。

 

 もう体が持たないと考えたのか、寄生された『オブシディアン・ソルジャー』はみるみる体が元の歪な形を取りはじめ、元の姿に戻ると、ついに先程の固体の結晶を排出した。

 

 

「あれか!」

 

「すぐに回収して何かに保管を…!」

 

「あ、まずい!」

 

 

その結晶は、今度は『バーバリアン』にめがけて移動し、寄生しようとする。

 

 が、その前に『スパルトイ』がその結晶を骨の剣でたたき割り、結晶は灰となった。

 

『オブシディアン・ソルジャー』は動けず、そのまま体の亀裂が入り、魔石が出てきて、そちらも灰となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

 

 まさかの決着で、『バーバリアン』と『スパルトイ』が「やったぜ!」とばかりにハイタッチをしているのをよそに、僕らはそのまま唖然としていた。

 

 我に帰ったのは、ロキ様と先程投げ飛ばされて復活してきたティオナさんがこの状況を見て、「「なんだこれー!?」」と叫んだ時だった。

 

 そして、アイズさんからの質問に、僕たちの無言の静寂は完全に晴れることとなった。

 

 

「……あの、そういえば、君達の名前を、聞いていなかった…」

 

「……そうですね。僕はベル・クラネルです。」

 

「…わ、私は、カサンドラ・イリオンです。」

 

「…【アポロン・ファミリア】団長、ヒュアキントス・クリオだ。今言ったこいつらも【アポロン・ファミリア】の団員だ」

 

「…私はアイズ・ヴァレンシュタイン…」

 

「私はレフィーヤ・ウィリディスです」

 

「ティオネ・ヒリュテよ。で、あそこにいるのが、片方が私の妹で…」

 

「あれ、なんか皆、自己紹介している? 私はティオナ・ヒリュテだよ!」

 

「で、ウチが【ロキ・ファミリア】の主神であるロキや! ここにいる一人を含めた美女4人が【ロキ・ファミリア】の団員や!」

 

 

 一通り自己紹介を済ませると、今度はレフィーヤが『バーバリアン』と『スパルトイ』に指を指しながら何か迫真に迫るかのようにベル達に質問する。

 

 

「で、あのモンスター達をどうやってあの短時間で調教させたんですか?」

 

「「………気合と愛情で」」

 

「フッ…」

 

「ふざけてますよね!?」

 

「レ、レレ、レフィーヤ、お、おお、落ち着いて」

 

「いや、アイズさんが一番落ち着いてください!」

 

 

 ベル達の納得できない回答でヒュアキントスは思わず鼻で笑い、レフィーヤは今度は怒気が交えるが、アイズの尋常ならざる動揺にすぐに消え失せる。

 

 それを見たティオネは今頃になって体中が痛みはじめ、誰かから回復してもらおうと促す。

 

 

「……とりあえず、誰かポーションくんない?」

 

「あー! ティオネ、滅茶苦茶ボロボロじゃん! 一体、私が来るまで何があったの!?」

 

「あんたが変なミスさえしなければよかったのよ!」

 

「だって、まさか投げ飛ばすなんて思ってなかったもん」

 

 

 ティオナのミスを責め立てるティオネに、ティオナは反論し、姉妹の口喧嘩が始まりそうになる。

 

 ベルは慌てて止め、そしてまずしなくてはならない優先事項について話そうとする。

 

 

「あ、あの、僕たち、あの調教したモンスターをどうするか話さないといけないんじゃ…」

 

「そういや、何あれ?」

 

「この人たちが短時間で調教したモンスターたち」

 

「「えっ」」

 

「そして、トドメを刺したのもあのモンスターたちです」

 

「「え、ええええええ!?」」

 

「まあ、普通そんな感じで驚くわね…」

 

「は、ははは…」

 

 

 が、すぐに話題がそれ、結局【ガネーシャ・ファミリア】がこちらに来るまでモンスター達は大人しかったので、ほったらかしのままになった。

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、僕らの『怪物祭』は、緊急事態が起きたことで、強制的に終わりを告げられることとなった。

 

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